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化学物質の管理を解説

2024/02/29 2024/03/13

【化学物質】特別有機溶剤は、第一種、第二種のどちらの有機溶剤にあたるのか?法令より解説

特別有機溶剤は、もともと有機溶剤中毒予防規則上の有機溶剤であった化学物質が、特化物となった化学物質であることは開設いたしました。


では、特別有機溶剤は、第一種、第二種の区分はあるのでしょうか?

特別有機溶剤は、第一種、第二種、第三種?

特別有機溶剤は特化物になります。特別有機溶剤は、第一種、第二種の区分はあるのでしょうか?
この点、特化則は、有機則の条文を準用しています。特化則上、有機則を準用する規定はいくつかあるのですが、特化則38条の8を見てみましょう。

(特別有機溶剤等に係る措置)
第三十八条の八 事業者が特別有機溶剤業務に労働者を従事させる場合には、有機則第一章から第三章まで、第四章(第十九条及び第十九条の二を除く。)及び第七章の規定を準用する。この場合において、次の表の上欄に掲げる有機則の規定中同表の中欄に掲げる字句は、それぞれ同表の下欄に掲げる字句と読み替えるものとする。

e-Gov 特定化学物質障害予防規則

そして、第一種、第二種、第三種の有機溶剤の定義は、有機溶剤中毒防止規則の第1条に記載されています。

有機則
(定義等)
第一条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 有機溶剤 労働安全衛生法施行令(以下「令」という。)別表第六の二に掲げる有機溶剤をいう。
二 有機溶剤等 有機溶剤又は有機溶剤含有物(有機溶剤と有機溶剤以外の物との混合物で、有機溶剤を当該混合物の重量の五パーセントを超えて含有するものをいう。第六号において同じ。)をいう。

三 第一種有機溶剤等 有機溶剤等のうち次に掲げる物をいう。
イ 令別表第六の二第二十八号又は第三十八号に掲げる物
ロ イに掲げる物のみから成る混合物
ハ イに掲げる物と当該物以外の物との混合物で、イに掲げる物を当該混合物の重量の五パーセントを超えて含有するもの

四 第二種有機溶剤等 有機溶剤等のうち次に掲げる物をいう。
イ 令別表第六の二第一号から第十三号まで、第十五号から第二十二号まで、第二十四号、第二十五号、第三十号、第三十四号、第三十五号、第三十七号、第三十九号から第四十二号まで又は第四十四号から第四十七号までに掲げる物
ロ イに掲げる物のみから成る混合物
ハ イに掲げる物と当該物以外の物との混合物で、イに掲げる物又は前号イに掲げる物を当該混合物の重量の五パーセントを超えて含有するもの(前号ハに掲げる物を除く。)

五 第三種有機溶剤等 有機溶剤等のうち第一種有機溶剤等及び第二種有機溶剤等以外の物をいう。
(以下略)

e-Gov 有機溶剤中毒予防規則

では、準用を当てはめてみましょう。まずは、特別有機溶剤は以下になります。

「労働安全衛生法施行令(以下「令」という。)別表第三第二号3の3、11の2、18の2から18の4まで、19の2、19の3、22の2から22の5まで若しくは33の2に掲げる物(以下「特別有機溶剤」という。)又は令」

3の3 エチルベンゼン
11の2 クロロホルム
18の2 四塩化炭素
18の3 一・四―ジオキサン
18の4 一・二―ジクロロエタン(別名二塩化エチレン)
19の2 一・二―ジクロロプロパン
19の3 ジクロロメタン(別名二塩化メチレン)
22の2 スチレン
22の3 一・一・二・二―テトラクロロエタン(別名四塩化アセチレン)
22の4 テトラクロロエチレン(別名パークロルエチレン)
22の5 トリクロロエチレン
33の2 メチルイソブチルケトン

e-Gov 労働安全衛生法施行令

では、有機則の第一種有機溶剤、第二種有機溶剤、第三種有機溶剤の定義にそれぞれ当てはめてみましょう。

第一種有機溶剤に該当する特別有機溶剤

「第一条第一項第三号イ」の「令別表第六の二」を「令別表第三第二号11の2、18の2、18の4、22の3若しくは22の5に掲げる物又は令別表第六の二」と読み替えます。また、「又は」を「若しくは」に、「第一条第一項第三号ハ
 」の「五パーセントを超えて含有するもの」を「五パーセントを超えて含有するもの(令別表第三第二号11の2、18の2、18の4、22の3又は22の5に掲げる物を含有する混合物にあつては、イに掲げる物の含有量が重量の五パーセント以下の物で、同号11の2、18の2、18の4、22の3又は22の5に掲げる物のいずれか一つを重量の一パーセントを超えて含有するものを含む。)」に読み替えます。

すると以下のようになります。

三 第一種有機溶剤等 有機溶剤等のうち次に掲げる物をいう。
イ 令別表第三第二号11の2、18の2、18の4、22の3若しくは22の5に掲げる物又は令別表第六の二、第二十八号若しくは第三十八号に掲げる物
ロ イに掲げる物のみから成る混合物
ハ イに掲げる物と当該物以外の物との混合物で、イに掲げる物を当該混合物の重量の五パーセントを超えて含有するもの(令別表第三第二号11の2、18の2、18の4、22の3又は22の5に掲げる物を含有する混合物にあつては、イに掲げる物の含有量が重量の五パーセント以下の物で、同号11の2、18の2、18の4、22の3又は22の5に掲げる物のいずれか一つを重量の一パーセントを超えて含有するものを含む。)

つまり、11の2 クロロホルム、18の2 四塩化炭素、18の4 一・二―ジクロロエタン(別名二塩化エチレン)、22の3 一・一・二・二―テトラクロロエタン(別名四塩化アセチレン)、22の5 トリクロロエチレンは、第一種有機溶剤として扱うことになります。以下、まとめます。

第一種有機溶剤に相当する特別有機溶剤

11の2 クロロホルム
18の2 四塩化炭素
18の4 一・二―ジクロロエタン(別名二塩化エチレン)
22の3 一・一・二・二―テトラクロロエタン(別名四塩化アセチレン)
22の5 トリクロロエチレン

そして、含有量が重量の五パーセント以下の物であっても、クロロホルム、四塩化炭素、一・二―ジクロロエタン、一・一・二・二―テトラクロロエタン(別名四塩化アセチレン)、トリクロロエチレンを1%以上含んでいる場合は第一種有機溶剤となります。

なお、「第二十八号若しくは第三十八号に掲げる物」は、特別有機溶剤ではない、有機則上の通常の第一種有機溶剤となります。

第二種有機溶剤に該当する特別有機溶剤

では、第二種有機溶剤の定義ですが、「第一条第一項第四号イ」において、「令別表第六の二」を「令別表第三第二号3の3、18の3、19の2、19の3、22の2、22の4若しくは33の2に掲げる物又は令別表第六の二」と読み替えます。また、「又は」を「若しくは」に読み替え、さらに、「第一条第一項第四号ハ」の「五パーセントを超えて含有するもの」を「五パーセントを超えて含有するもの(令別表第三第二号3の3、18の3、19の2、19の3、22の2、22の4又は33の2に掲げる物を含有する混合物にあつては、イに掲げる物又は前号イに掲げる物の含有量が重量の五パーセント以下の物で、同表第二号3の3、18の3、19の2、19の3、22の2、22の4又は33の2に掲げる物のいずれか一つを重量の一パーセントを超えて含有するものを含む。)」に読み替えます。

すると以下のようになります。

四 第二種有機溶剤等 有機溶剤等のうち次に掲げる物をいう。
イ 令別表第三第二号3の3、18の3、19の2、19の3、22の2、22の4若しくは33の2に掲げる物又は令別表第六の二第一号から第十三号まで、第十五号から第二十二号まで、第二十四号、第二十五号、第三十号、第三十四号、第三十五号、第三十七号、第三十九号から第四十二号まで若しくは第四十四号から第四十七号までに掲げる物
ロ イに掲げる物のみから成る混合物
ハ イに掲げる物と当該物以外の物との混合物で、イに掲げる物又は前号イに掲げる物を当該混合物の重量の五パーセントを超えて含有するもの(令別表第三第二号3の3、18の3、19の2、19の3、22の2、22の4又は33の2に掲げる物を含有する混合物にあつては、イに掲げる物又は前号イに掲げる物の含有量が重量の五パーセント以下の物で、同表第二号3の3、18の3、19の2、19の3、22の2、22の4又は33の2に掲げる物のいずれか一つを重量の一パーセントを超えて含有するものを含む。)(前号ハに掲げる物を除く。)

つまり、3の3 エチルベンゼン、18の3 一・四―ジオキサン、19の2 一・二―ジクロロプロパン、19の3 ジクロロメタン(別名二塩化メチレン)、22の2 スチレン、22の4 テトラクロロエチレン(別名パークロルエチレン)、33の2 メチルイソブチルケトンを第二種有機溶剤として扱うことになります。以下、まとめます。

第二種有機溶剤に相当する特別有機溶剤

3の3 エチルベンゼン
18の3 一・四―ジオキサン
19の2 一・二―ジクロロプロパン
19の3 ジクロロメタン(別名二塩化メチレン)
22の2 スチレン
22の4 テトラクロロエチレン(別名パークロルエチレン)
33の2 メチルイソブチルケトン

そして、含有量が重量の五パーセント以下の物であっても、エチルベンゼン、一・四―ジオキサン、一・二―ジクロロプロパン、ジクロロメタン(別名二塩化メチレン)、スチレン、テトラクロロエチレン(別名パークロルエチレン)、メチルイソブチルケトンを1%以上含んでいる場合は第二種有機溶剤となります。

なお、「第一号から第十三号まで、第十五号から第二十二号まで、第二十四号、第二十五号、第三十号、第三十四号、第三十五号、第三十七号、第三十九号から第四十二号まで若しくは第四十四号から第四十七号までに掲げる物」は、特別有機溶剤ではない、有機則上の通常の第二種有機溶剤となります。

特別有機溶剤で第三種有機溶剤となる物質はありません

特別有機溶剤には、第三種有機溶剤となる化学物質はありません。

特別有機溶剤を1%以上を含んでいる場合

特別有機溶剤でない、有機則上の有機溶剤については、有機溶剤として5%超の場合に、有機溶剤の対策が必要になりますが、特別有機溶剤については1%超であれば、第一種相当、または第二種相当の特別有機溶剤となります。先ほどの第一種有機溶剤等の定義と、第二種有機溶剤等の定義をもう一度見てみましょう。

そして、黄色ハイライト部分に注目しましょう。

三 第一種有機溶剤等 有機溶剤等のうち次に掲げる物をいう。
イ 令別表第三第二号11の2、18の2、18の4、22の3若しくは22の5に掲げる物又は令別表第六の二、第二十八号若しくは第三十八号に掲げる物
ロ イに掲げる物のみから成る混合物
ハ イに掲げる物と当該物以外の物との混合物で、イに掲げる物を当該混合物の重量の五パーセントを超えて含有するもの(令別表第三第二号11の2、18の2、18の4、22の3又は22の5に掲げる物を含有する混合物にあつては、イに掲げる物の含有量が重量の五パーセント以下の物で、同号11の2、18の2、18の4、22の3又は22の5に掲げる物のいずれか一つを重量の一パーセントを超えて含有するものを含む。)

四 第二種有機溶剤等 有機溶剤等のうち次に掲げる物をいう。
イ 令別表第三第二号3の3、18の3、19の2、19の3、22の2、22の4若しくは33の2に掲げる物又は令別表第六の二第一号から第十三号まで、第十五号から第二十二号まで、第二十四号、第二十五号、第三十号、第三十四号、第三十五号、第三十七号、第三十九号から第四十二号まで若しくは第四十四号から第四十七号までに掲げる物
ロ イに掲げる物のみから成る混合物
ハ イに掲げる物と当該物以外の物との混合物で、イに掲げる物又は前号イに掲げる物を当該混合物の重量の五パーセントを超えて含有するもの(令別表第三第二号3の3、18の3、19の2、19の3、22の2、22の4又は33の2に掲げる物を含有する混合物にあつては、イに掲げる物又は前号イに掲げる物の含有量が重量の五パーセント以下の物で、同表第二号3の3、18の3、19の2、19の3、22の2、22の4又は33の2に掲げる物のいずれか一つを重量の一パーセントを超えて含有するものを含む。)(前号ハに掲げる物を除く。)

黄色のハイライト部分の解釈ですが、ちょっとわかりにくいですよね。「五パーセントを超えて含有するもの」と(令別表第三第二号11の・・・・ものを含む。)との関係がよくわかりません。行政にも確認したのですが、こちらは両方を満たす場合になります。条件としては「かつ」になります。

「五パーセントを超えて含有するもの」
かつ
「(令別表第三第二号11の2、18の2、18の4、22の3又は22の5に掲げる物を含有する混合物にあつては、イに掲げる物の含有量が重量の五パーセント以下の物で、同号11の2、18の2、18の4、22の3又は22の5に掲げる物のいずれか一つを重量の一パーセントを超えて含有するものを含む。)」

つまり、有機則の普通の有機溶剤(トルエン、キシレン等)と、特別有機溶剤を足して、5%を超えるものを有機溶剤として扱うということになります。

 中間まとめ

以上より、特別有機溶剤の混合物がどの種別の有機溶剤に該当するかをまとめますと、以下の図のようになります。

なお、第一種相当の有機溶剤と、第二種相当の有機溶剤をまとめます。

特別有機溶剤の有機則上の種別のまとめ

第一種有機溶剤に該当する特別有機溶剤

11の2 クロロホルム
18の2 四塩化炭素
18の4 一・二―ジクロロエタン(別名二塩化エチレン)
22の3 一・一・二・二―テトラクロロエタン(別名四塩化アセチレン)
22の5 トリクロロエチレン

第二種有機溶剤に該当する特別有機溶剤
3の3 エチルベンゼン
18の3 一・四―ジオキサン
19の2 一・二―ジクロロプロパン
19の3 ジクロロメタン(別名二塩化メチレン)
22の2 スチレン
22の4 テトラクロロエチレン(別名パークロルエチレン)
33の2 メチルイソブチルケトン

こちらは、旧有機則での第一種と第二種とリンクしています。

エクセル表を作っておきました

上記、有機溶剤の表をエクセルにてまとめておきました。

有機溶剤の表2024

 

 まとめ

特別有機溶剤は特化物ではありますが、有機則を準用しているため、第一種、第二種の有機溶剤として扱わなければならない場合があります。したがって、第一種有機溶剤相当となる特別有機溶剤と、第二種有機溶剤相当となる特別有機溶剤は存在することになります。

このように、第一種有機溶剤相当、第二種有機溶剤相当の有機溶剤も含めた合計のパーセンテージが5%を超えていなければ、有機溶剤として扱わなくても大丈夫です。しかし、特別有機溶剤は特化物であり、1%超の場合には、特化物としての対策が必要となります。

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この記事を書いた人

清水 宏泰

1975年生まれ。公衆衛生分野の専門家。現在はさまざまな組織の健康問題を予防するためにLAOにて行政書士・社労士・労働衛生コンサルタントとして活動しています。主に健康、心理系、産業保健の情報について発信していきます。

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