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化学物質の管理を解説

2023/07/04 2023/04/09

【安全衛生】作業主任者の役割とは?職務遂行における留意点と事前に把握すべき要点

作業主任者とは、労働安全衛生法においてどのような資格を持つ人のことを指すのか、そして作業主任者が業務を遂行する際に注意すべき事項についてお話しいたします。

作業主任者の役割とは?職務遂行における留意点と事前に把握すべき要点

作業主任者に関する条文を解説

作業主任者については、労働安全衛生法14条に記載があります。
作業主任者の役割は、「労働者の指揮」と「その他の厚生労働省令で定める事項」を行うことです。

労働安全衛生法 (作業主任者)
第十四条 事業者は、高圧室内作業その他の労働災害を防止するための管理を必要とする作業で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う技能講習を修了した者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該作業の区分に応じて、作業主任者を選任し、その者に当該作業に従事する労働者の指揮その他の厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない。

e-GOV 労働安全衛生法

そして、作業主任者となるためには、作業の区分によって違うのですが、免許の取得、又は技能講習の修了が必要です。
免許は行政法上での許可に該当し、許可とは法令によって規定されている一般的な禁止を特定の場合に解除し、適法に一定の行為を許可することを指します。
簡単に言うと、通常は許可されていない行為を、免許を取得することで合法的に行うことができるということです。

  • 免許による作業主任者の資格
    →高圧室内作業主任者、ガス溶接作業主任者、エックス線 作業主任者などその他多数あります。
  • 技能講習による作業主任者の資格
    →特化物作業主任者、有機溶剤作業主任者、石綿作業主任者などその他多数あります。
    技能講習を受けて、最後に修了試験を受け合格することが必要です。

作業主任者の選任ですが、選任をした後、当該作業主任者の氏名及びその者に行なわせる事項を作業場の見やすい箇所に掲示する等により関係労働者に周知しなければなりません(労働安全衛生規則18条)。
しかし、周知すればよいので、衛生管理者や、産業医のように選任したことを労働基準監督署へ届け出を行う必要はないということになります。

労働安全衛生規則(作業主任者の氏名等の周知)

第十八条 事業者は、作業主任者を選任したときは、当該作業主任者の氏名及びその者に行なわせる事項を作業場の見やすい箇所に掲示する等により関係労働者に周知させなければならない。

引用:労働安全衛生規則

周知をしなければ作業主任者が従事した労働者を指揮したことにならないのでご注意ください。

作業主任者の選任と労働者の指揮について

ここには、様々な論点があります。
例として、Aさん、Bさんが作業主任者となる資格を有している場合で考えてみましょう。

ケース
  1. 作業場にAさんが作業主任者である旨の標示があるが、Aさんがいつもいるわけではない場合
    Aさんがいないときは作業主任者を選任していないことになります。
    Aさんがいないときは、別のBさんを作業主任者に選任したうえで、周知し直さなければなりません。
    Aさんが作業主任者ですと周知しているにもかかわらず、Aさんがいないときに作業主任者が必要な作業で事故が起きたら大変なことになります。
  2. 特化物を扱う24時間稼働のプラントの作業主任者としてAさんの名前がプラントに掲示してあるが、1年以上ずっとそのままの場合
    この場合、Aさんが1年間365日24時間、作業場に在中していることになってしまいます。Aさんがいないときには、別の作業主任者の資格を有する人であるBさんを選任した旨を周知しましょう。
    そのために、各勤務時間帯において、きちんと作業主任者がいるような体制を作りましょう。
  3. この作業場は3人の作業主任者資格を有する人がいるので、3人の名前を全員併記しておこう。
    これは、よくあるのですが、まずいです。
    事業者は、同一の場所で作業を行う場合において、当該作業に係る作業主任者を2人以上選任したときは、それぞれの作業主任者の職務の分担を定めなければなりません(労働安全衛生規則17条)。
  4. 今日の石綿作業主任者はAさんの予定だったのだが、Aさんが現場にこれなくなった、他に作業主任者の資格を持っている人がいない、どうしよう。
    はい、その日は作業主任者を選任すべき作業はできませんので作業は中止しましょう。このような事態を防ぐために、作業主任者資格を有する人を何人も養成しておきましょう

③の事例における、作業主任者の職務の分担に関する条文は以下になります。

労働安全衛生規則 (作業主任者の職務の分担)
第十七条 事業者は、別表第一の上欄に掲げる一の作業を同一の場所で行なう場合において、当該作業に係る作業主任者を二人以上選任したときは、それぞれの作業主任者の職務の分担を定めなければならない。

e-Gov 労働安全衛生規則

 

作業主任者の具体的な職務内容について

作業主任者が具体的にどのような業務を行うかについては、それぞれの規則に定められています。
例として、いくつか挙げてみましょう。

作業主任者の職務の内容
  1. 有機溶剤中毒予防規則(有機溶剤作業主任者の職務)
    第十九条の二 事業者は、有機溶剤作業主任者に次の事項を行わせなければならない。
    一 作業に従事する労働者が有機溶剤により汚染され、又はこれを吸入しないように、作業の方法を決定し、労働者を指揮すること。
    二 局所排気装置、プッシュプル型換気装置又は全体換気装置を一月を超えない期間ごとに点検すること。
    三 保護具の使用状況を監視すること。
    四 タンクの内部において有機溶剤業務に労働者が従事するときは、第二十六条各号(第二号、第四号及び第七号を除く。)に定める措置が講じられていることを確認すること。
  2. 特定化学物質障害予防規則(特定化学物質作業主任者の職務)
    第二十八条 事業者は、特定化学物質作業主任者に次の事項を行わせなければならない。
    一 作業に従事する労働者が特定化学物質により汚染され、又はこれらを吸入しないように、作業の方法を決定し、労働者を指揮すること。
    二 局所排気装置、プッシュプル型換気装置、除じん装置、排ガス処理装置、排液処理装置その他労働者が健康障害を受けることを予防するための装置を一月を超えない期間ごとに点検すること。
    三 保護具の使用状況を監視すること。
    四 タンクの内部において特別有機溶剤業務に労働者が従事するときは、第三十八条の八において準用する有機則第二十六条各号(第二号、第四号及び第七号を除く。)に定める措置が講じられていることを確認すること。
  3. 労働安全衛生規則(ガス溶接作業主任者の職務)
    第三百十五条 事業者は、アセチレン溶接装置を用いて金属の溶接、溶断又は加熱の作業を行なうときは、ガス溶接作業主任者に、次の事項を行なわせなければならない。
    一 作業の方法を決定し、作業を指揮すること。
    二 アセチレン溶接装置の取扱いに従事する労働者に次の事項を行なわせること。
    イ 使用中の発生器に、火花を発するおそれのある工具を使用し、又は衝撃を与えないこと。
    ロ アセチレン溶接装置のガス漏れを点検するときは、石けん水を使用する等安全な方法によること。
    ハ 発生器の気鐘の上にみだりに物を置かないこと。
    ニ 発生器室の出入口の戸を開放しておかないこと。
    ホ 移動式のアセチレン溶接装置の発生器にカーバイドを詰め替えるときは、屋外の安全な場所で行なうこと。
    ヘ カーバイド罐かんを開封するときは、衝撃その他火花を発するおそれのある行為をしないこと。
    三 当該作業を開始するときは、アセチレン溶接装置を点検し、かつ、発生器内に空気とアセチレンの混合ガスが存在するときは、これを排除すること。
    四 安全器は、作業中、その水位を容易に確かめることができる箇所に置き、かつ、一日一回以上これを点検すること。
    五 アセチレン溶接装置内の水の凍結を防ぐために、保温し、又は加温するときは、温水又は蒸気を使用する等安全な方法によること。
    六 発生器の使用を休止するときは、その水室の水位を水と残留カーバイドが接触しない状態に保つこと。
    七 発生器の修繕、加工、運搬若しくは格納をしようとするとき、又はその使用を継続して休止しようとするときは、アセチレン及びカーバイドを完全に除去すること。
    八 カーバイドのかすは、ガスによる危険がなくなるまでかすだめに入れる等安全に処置すること。
    九 当該作業に従事する労働者の保護眼鏡及び保護手袋の使用状況を監視すること。
    十 ガス溶接作業主任者免許証を携帯すること。

このように、各種規則に作業主任者の行うべき業務が法令に列挙されています。
作業主任者は、自分が職務として何を行わなければならないか、法令よりきちんと把握しておきましょう。
少し注意が必要なのは、特定化学物質作業主任者の以下の部分です。

四 タンクの内部において特別有機溶剤業務に労働者が従事するときは、第三十八条の八において準用する有機則第二十六条各号(第二号、第四号及び第七号を除く。)に定める措置が講じられていることを確認すること。

これは、特別有機溶剤は特化物であり、有機溶剤でもあることから、両方の対応をしなければならないということになります。タンクの内部についても有機溶剤と同様の対応が必要です。


罰則について

作業主任者を選任しなかった場合、どのような結果が生じるのでしょうか?
はい、罰則があります。

労働安全衛生法第14条に違反した場合、同法の第119条に基づいて罰則が適用されます。
具体的には、最長6ヶ月の懲役または50万円以下の罰金が課される可能性があります。

では、労働基準監督署への届出が必要な他の安衛法上の役職についても罰則をチェックしましょう。
届出とは、行政庁に対し、一定の事項の通知をする行為ということになり、選任の事実につき文書を作成し、労働基準監督署へ提出することになります。
労働基準監督署への届出が必要なスタッフとしては、衛生管理者と産業医があります。
衛生管理者を選任しない場合は、労働安全衛生法第12条の違反となり、同法の第120条に基づき、50万円以下の罰金が課される可能性があります。
同様に、産業医を選任しない場合は、労働安全衛生法第13条の違反となり、同法の第120条に基づき、50万円以下の罰金が課される可能性があります。

したがって、労働基準監督署への届出が必要な衛生管理者や産業医を選任しなかった場合の罰金額が50万円以下である一方で、届け出までは必要がなく周知だけが必要な作業主任者を選任しなかった場合刑罰である、最長6ヶ月の懲役または50万円以下の方が刑罰が重くなります。
これは、作業主任者の選任が重要であり、指揮すべき労働者の生命と健康に関わるためとされています。

まとめ

作業主任者は、労働災害を防止するために重要な制度です。
作業主任者を選任して指揮を行う場合には、さまざまなルールが存在しますので、これらを把握しておきましょう。
適切に作業主任者を選任し、周知し、労働者の指揮を行いましょう。

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この記事を書いた人

清水 宏泰

1975年生まれ。公衆衛生分野の専門家。現在はさまざまな組織の健康問題を予防するためにLAOにて行政書士・社労士・労働衛生コンサルタントとして活動しています。主に健康、心理系、産業保健の情報について発信していきます。

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