事務所LAO – 行政書士・社会保険労務士・労働衛生コンサルタント・海事代理士

【安全衛生】産業医・労働衛生コンサルタントは労働基準法・民法を勉強すべきです

「産業医専門なので、労働安全衛生法は任せてください!!」と言う、労働衛生に専門知識を持つ産業医や労働衛生コンサルタントの方々は多く存在します。

確かに、産業医は労働安全衛生法について十分な知識を持っている方も多いのですが、今回は労働安全衛生法だけでは様々な問題に対応できないことについてお話しいたします。
産業医は、労働基準法と民法、その他法令を知っておかなければなりません。

今日は、そんな内容についてお話しいたします。

産業医・労働衛生コンサルタントは労働基準法・民法を勉強すべきです。

労働安全衛生法と労働基準法

基本的な話ですが、法律の第1条は目的条文として、その法律の目的が記載されています。
新しい法律が制定された場合には、必ずその法律の第1条を読むべきです。

それでは、労働安全衛生法の第1条を見てみましょう。
第1条の詳細な解説は別の記事で提供しますね。

労働安全衛生法
(目的)
第一条 この法律は、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)と相まつて、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする。
e-Gov 労働安全衛生法

よく見ると「労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)と相まって」と書かれていますね。
つまり、労働安全衛生法は労働基準法と一緒に適用される法律です。

労働基準法を知らないと、様々なことが理解できなくなることがあります。
たとえば、以下のような例が挙げられます。

  • 時間外労働の算定で、80時間超は医師面談の対象となりうるが
    1年単位変形労働時間制の場合はどうなるのか?
  • 就業上の措置を行う際に労働条件はどうやって確認すればいいのか?
  • 労災の場合の災害補償責任と労災の関係は?
    特殊健診で要精密検査だった場合は、労災が関与するかもしれませんよね。
  • 就業規則の読み込みと理解、判例の動向


その他にも様々な例があります。
私は、産業医や労働衛生コンサルタントには労働基準法の知識が必要不可欠だと考えています。
労働基準法の体系的な学習は、社会保険労務士の領域ですね。産業医と社会保険労務士の連携は非常に重要だと思います。

 労働基準法と民法

それでは、労働基準法を勉強すればいいのかという話になるのですが、それだけでは足らないと思います。

よく、社会保険労務士は民法を知っておくべきといわれます。実は、現在の社会保険労務士試験の範囲には民法が含まれていません。将来的には民法が試験範囲に含まれる可能性もありますが、現時点では含まれていません。

そして、労働基準法は、民法の特別法として位置づけられます。一般的な法律や規定を「一般法」と呼び、特定の対象に特化した法律や規定を「特別法」と呼びます。

つまり、特別法は一般法の存在に基づいています。特別法が適用されない場合には民法が適用されます。したがって、最低限の民法の知識も必要と考えられます。

たとえば、以下のような例があります。

  • 書面を送った際の意思表示の効力発生時期等(民法97条)
  • ノーワーク・ノーペイの原則は民法が根拠である(民法624条)。
  • 労災保険の給付・災害保証が適用されない部分の債務不履行責任(民法1条2項、民法405条)
  • プライバシー権(憲法13条)と不法行為責任(民法709条)
  • ハラスメント加害者の不法行為責任(民法709条)

このように、いろいろありますね。

 その他法令

産業医・労働衛生コンサルタントが勉強すべき法令はたくさんあります。

  • 両立支援・メンタル不調者の休職に関連する厚生年金法、健康保険法
  • パワハラに関するパワハラ防止法
  • ハラスメント関係の男女雇用機会均等法
  • 喫煙関係の健康増進法
  • 健康増進・健康経営に関与する高齢者医療確保法

その他、多数の法令を知っておかなければなりません。

まとめ

産業医や労働衛生コンサルタントの中には、労働安全衛生法に強いと主張する人が多いですが、実際に労働安全衛生法を十分に理解し活用するには、労働基準法も知る必要があります。
労働基準法の学習には、社会保険労務士の知識が役立ちます。

しかし、労働基準法自体は民法の特別法であり、民法自体も一般的な法律として知識を持っておく必要があります。社会保険労務士の試験範囲には民法が入っていないので、私としては、行政書士試験は民法を勉強できるのでお勧めです。

その他にも、関連する法律は非常に多く、知らなければならない法令も多数存在します。

正直なところ、法律は答えが一つではないのですよね。さまざまな説が存在し、判例によって答えが変わっていくこともあります。

私自身、元々自然科学研究者であり、基本的には真実の答えは一つであり不変のものだと考えていました。しかし、法律の世界では複数の答えが存在し、併存し、変化することを理解するのに苦労しました。
結局、常に学び続ける必要があるということです。

 

 

 

 

 

 

 

 

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この記事を書いた人

清水 宏泰

1975年生まれ。公衆衛生分野の専門家。現在はさまざまな組織の健康問題を予防するためにLAOにて行政書士・社労士・労働衛生コンサルタントとして活動しています。主に健康、心理系、産業保健の情報について発信していきます。

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