2024/04/01 2023/04/21
【安全衛生】化学物質の自律的管理における、がん原性物質の調べ方について解説
がん原性のある物質として厚生労働大臣が定めるものについては、実際にどのようなものでしょうか。
こちらについてわかりやすく解説いたします。
がん原性物質の調べ方について解説(リスクアセスメント)
がん原性物質とは
がん原性物質は法令上、労働安全衛生規則577条の2第3項に記載があります。
(※ 表記は「がん原性」が正しく、「がん原生」ではありません。)
こちらに、「がん原性がある物として厚生労働大臣が定めるもの(以下「がん原性物質」という」と記載されています(黄色ハイライト、太字です)。
e-Gov 労働安全衛生規則労働安全衛生規則(ばく露の程度の低減等)
第五百七十七条の二 事業者は、リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う事業場において、リスクアセスメントの結果等に基づき、労働者の健康障害を防止するため、代替物の使用、発散源を密閉する設備、局所排気装置又は全体換気装置の設置及び稼働、作業の方法の改善、有効な呼吸用保護具を使用させること等必要な措置を講ずることにより、リスクアセスメント対象物に労働者がばく露される程度を最小限度にしなければならない。
2 事業者は、前項の規定により講じた措置について、関係労働者の意見を聴くための機会を設けなければならない。
3 事業者は、次に掲げる事項(第三号については、がん原性がある物として厚生労働大臣が定めるもの(以下「がん原性物質」という。)を製造し、又は取り扱う業務に従事する労働者に限る。)について、一年を超えない期間ごとに一回、定期に、記録を作成し、当該記録を三年間(第二号(リスクアセスメント対象物ががん原性物質である場合に限る。)及び第三号については、三十年間)保存するとともに、第一号及び第四号の事項について、リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う業務に従事する労働者に周知させなければならない。
一 第一項の規定により講じた措置の状況
二 リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う業務に従事する労働者のリスクアセスメント対象物のばく露の状況
三 労働者の氏名、従事した作業の概要及び当該作業に従事した期間並びにがん原性物質により著しく汚染される事態が生じたときはその概要及び事業者が講じた応急の措置の概要
四 前項の規定による関係労働者の意見の聴取状況
4 前項の規定による周知は、次に掲げるいずれかの方法により行うものとする。
一 当該リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う各作業場の見やすい場所に常時掲示し、又は備え付けること。
二 書面を、当該リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う業務に従事する労働者に交付すること。
三 磁気ディスク、光ディスクその他の記録媒体に記録し、かつ、当該リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う各作業場に、当該リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う業務に従事する労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。
この労働安全衛生規則577条の2は、リスクアセスメントの一般的な記載ですが、がん原性物質については、以下の項目につき、30年間の保存義務があります。
① リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う業務に従事する労働者のリスクアセスメント対象物のばく露の状況
② 労働者の氏名、従事した作業の概要及び当該作業に従事した期間並びにがん原性物質により著しく汚染される事態が生じたときはその概要及び事業者が講じた応急の措置の概要
詳しくは、以下の記事で解説しております。
がん原性物質とは
がん原性物質ですが、国が行う化学物質の有害性の分類の結果、発がん性の区分が区分1に該当する物質になります。
告示のポイント
1 作業記録等の30年間保存が必要ながん原性物質の範囲
労働安全衛生法に基づきリスクアセスメントの実施が義務付けられているリスクアセスメント対象物の
うち、国が行う化学物質の有害性の分類の結果、発がん性の区分が区分1に該当する物であって、令和3年
3月31日までの間において当該区分に該当すると分類されたもの。
ただし、以下のものおよび事業者が上記物質を臨時に取り扱う場合を除く。
・エタノール
・特別管理物質※
※ 特定化学物質障害予防規則第38条の3に規定する特別管理物質2 適用日 令和5年4月1日
発がん性の区分が区分1に該当する物についてですが、具体的には、日本産業規格、JIS Z 7252(GHSに基づく化学物質の分類方法)の付属書Bに定める方法による有害性の分類の結果、発がん性区分1に該当する物質になります。なお、JIS Z 7252は、令和5年5月24日に改定されています。
基安化発0524第1号 令和元年5月24日)。
厚生労働省 労働安全衛生規則第577条の2第3項の規定に基づきがん原性がある物として厚生労働大臣が定めるもの
日本工業規格「JIS Z 7252 GHSに基づく化学品の分類方法」及び「JIS Z 7253 GHSに基づく化学品の危険有害性情報の伝達方法-ラベル,作業場内の表示及び安全データシート(SDS)」の改正について(公示) 基安化発0524第1号
令和元年5月24日
このがん原性物質については、エタノールと特定管理物質が除外されています。特定管理物質については、特化則により既に個別の規制が存在しているため、特化則の規定が適用されます。
エタノールの除外に関しては、エタノールおよびその主な代謝物であるアセトアルデヒドが食道などで悪性腫瘍を引き起こすことが明らかにされているため、発がん性が区分1Aに分類されているようです。この除外の理由について、厚生労働省の資料によれば、エタノールについて以下のように説明されています。
エタノールは、国によるGHS分類で発がん性区分1Aとされているが、これはアルコール飲料として経口摂取した場合の健康有害性に基づくものであることを踏まえ、業務として大量のエタノールを経口摂取することは通常想定されないこと、疫学調査の文献からは業務起因性が不明であることから、対象から除外した。
発がん性の区分が区分1とは
では、発がん性の区分が区分1に該当とはなにか、GHS区分の説明を見てみましょう。
GHSについては、以下の記事で解説しています。
GHS分類は以下のガイダンスを参照しましょう。
GHS区分は、健康有害性によって、区分が様々なので注意しましょう。JIS規格において、発がん性についての区分は、区分1A、区分1B、区分2と分類されています。この1Aはヒトに対する発がん性が知られている化学物質を指し、1Bはヒトに対して恐らく発がん性がある化学物質となります。
具体的な、がん原性物質の調べ方
具体的な、がん原性物質については、以下の告示にて定められています。こちらを調べれば、がん原性物質がどれかわかりますね。PDFで公表されていますので、PDF上で、CAS番号を検索するのがよいかと思います。
CAS番号については、以下の記事を参考にしてください。
なお、物質により、令和5年4月1日からと、令和6年4月1日からがん原性物質となるものがありますが、2024年4月1日においては、すべてががん原性物質となります。
労働安全衛生規則第577条の2第3項の規定に基づきがん原性がある物として厚生労働大臣が定めるもの(令和4年厚生労働省告示第371号)厚生労働省告示第371号
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_29998.html
労働安全衛生規則第577条の2の規定に基づき作業記録等の30年間保存の対象となる化学物質の一覧(令和5年4月1日適用分)(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/11305000/001033355.pdf
※ 更新されているかもしれないので最新ページを確認しましょう。
なお、SDSにも記載されます。
安衛則第577条の2の規定に基づくがん原性物質に該当することは、SDSの適用法令欄に記載されることになっています。SDSはJIS規格により、何番目の項目に何を記載するか決まっています。15番目の適用法令欄をチェックしましょう。
まとめ
労働安全衛生法577条2項の規定に、がん原性物質について定められています。その中で、がん原性物質について、作業記録やリスクアセスメント対象物健康診断の結果等の書類の30年間保存が必要になります。
がん原性物質は、リスクアセスメント対象物の中からGHS分類結果で発がん性区分1に該当すると分類された物質が分類されています。エタノールと特化物における特定管理物質は除外されています。
具体的な、がん原性物質については告示にて定められていますのでチェックしましょう。
また、SDSの15番目の適用法令にも記載されます。
労働衛生コンサルタント事務所LAOは、化学物質の自律的管理について、コンサルティング業務を行っております。
産業医として化学物質の自律的管理に対応可能な医師はあまりいないと思われますが、継続的なフォローも必要なため、産業医又は顧問医としての契約として、お受けしております。
個人ばく露測定のご相談やリスクアセスメント対象物健康診断の実施についても対応可能です。
化学物質の個別的な規制についても得意としています。
Zoom等のオンラインツールを用いて日本全国対応させていただいております。
詳しいサービス内容は以下のページをご参照ください。