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【心理学・人事労務担当者向け】失敗したときは誰のせい?(内的帰属と外的帰属について)

なにかに失敗した時には原因は何かと考えると思います。
皆様は、この原因が自分にあるか他人にあるか、どちらに考えるか偏っていないでしょうか?
今回の話は非常に重要です。
産業医や人事労務向けというだけでなく、誰にとっても生き残るために役に立つ理論でしょう。

失敗したときは誰のせい?(内的帰属と外的帰属について)

内的帰属と外的帰属

皆様は、内的帰属と外的帰属という言葉を聞いたことがありますでしょうか。自己帰属・他者帰属と呼ぶこともあります。
このブログでは、内的帰属と外的帰属と呼びます。

Rotter&Weinerの原因帰属理論という理論があり内的帰属と外的帰属についてが提唱されました。
内的帰属と外的帰属とは、人が自己の行動や結果をどのように解釈し、その原因をどこに帰するかという概念を表しています。

内的帰属は、自己の内部要因や能力、意図に原因を帰する傾向を指します。例えば、失敗したのは自分に能力がないからだと思ったりする傾向です。
一方、外的帰属は、外部の要因や状況に原因を帰する傾向を指します。外的帰属の傾向がある個人は環境や他者の影響、偶然などが結果を左右すると信じます。例えば、テストで低得点を取った場合、外的帰属の思考パターンでは、「問題が難しかったから低得点だった」、「たまたま運が悪く知らない範囲が出題された」などと考えます。

Weinerら(1971)は,「人は達成に関連した事象の結果を解釈し予測するために帰属の4要素を用いるとして、能力(ability)、努力(effort)、課題の困難度(task difficulty)、運(luck)をあげ、さらにこれらを特徴づけ、分類するために2つの原因次元を設定しました(引用:Weinerの達成動機付けに関する帰属理論についての研究 奈須正裕)。
図にすると以下のようになります。

この中で、内的要因が不安定な場合の原因は「努力」になりますが、努力ということは時間をかけて準備すれば対応が可能です。
また、外的要因で安定している、つまり困難な課題の場合には、外的要因が安定しているからこそ、十分に検討した対策を実行することが可能です。

 内的帰属と外的帰属、偏りすぎてはいけない

外的帰属に偏りやすい人は、結局自分ではどうしょうもならないという考えがあります。外的帰属は自分個人の責任を軽減する一方で、自己防衛的な意図や責任転嫁の傾向を持つ場合もあります。そして、内的帰属に偏りやすい人は、成功や失敗に対して自分の責任を感じ、努力や学習によって状況を改善しようとする傾向があります。

どちらに偏るかは、統制感の差、コントロール感によります。この帰属のの個人差のことを「統制のコントロール感」(ローカスオブコントロール)といいます。頑張れば自分の運命を変えられるという人は内的帰属に向きます。自己効力感が低いと外的帰属に偏りやすくなると言われています。すべてが内的帰属、つまり自分の責任であるとの考えに偏っても自分を苦しめることになります。

ローカス・オブ・コントロールの理解を見つめ直すことで、個人の人生の質や達成感に影響を与えるかもしれません。内的コントロールを促進し、自己効力感を高めることは、個人の成長や幸福につながるかもしれません。後述のセルフサービングバイアスと併せて、自分自身のローカスオブコントロールの所在と、バランスよくコントロールするにはどうすればいいかを考えてみましょう。
ローカスオブコントロールは重要な概念です。

セルフサービングバイアスについて理解して、避けるように努めましょう

もう一つ、重要な概念として、セルフサービングバイアス(self serving vias)があります。この言葉も知っておきましょう。自己奉仕バイアスともいわれます。
なお、バイアス(バイアス)とは「偏り」を意味します。統計や、電子回路設計などでも使われる言葉です。
このブログでは、セルフサービングバイアスと呼びます。

セルフサービングバイアスとは、ある個人において、うまくいったことは内的帰属とし、悪かったことは外的帰属とする傾向です。
セルフサービングバイアスは、よく研究されている一般的な認知バイアスです。

具体的な例で言いますと、ある個人が国家資格を受験した場合に、試験に合格した場合は自分の能力や努力のおかげと考えますが、不合格になった場合は他人の責任である、環境が悪かった、運が悪かったなどと考える場合です。

このようなセルフサービングバイアスの存在は人生に影響します。
なぜなら、それは私たちが失敗から学び、意思決定プロセスに影響を与えるからです。
ライフプランを実現させるための重要な要素は、失敗し、その失敗から学び、それを改善することなのは言うまでもないかと思います。
当たり前ですが、もし個人が自身の失敗を自身のミスと関連付けられない場合、改善は困難です。

自分自身の失敗を自身のミス(内的帰属)と関連付けない場合、私たちは失敗から学ぶことをせず、将来的に同じミスを犯してしまうでしょう。

先ほど、お話しましたが、時間をかけて、十分な対策を行うことは重要です。
内的帰属でなければ、この時間をかけて十分対応することを怠ってしまう可能性があります。

内的要因が不安定な場合の原因は「努力」になりますが、努力ということは、時間をかけて準備すれば対応が可能なのです。

ちなみに、私の座右の銘は「準備が9割」と「暴飲暴食」です。
「準備が9割」というのはこの、「時間をかけて準備すれば対応が可能」という部分から来ています。
「暴飲暴食」の意味も理論に基づくのですが、そのうちお話したいと思います。

セルフサービングバイアスは組織間にも存在します。
組織で物事がうまくいかないときに、他の組織の責任であり外的帰属とするか、自分自身の責任であり内的帰属とするかの問題です。

例えば、新しいITシステムを会社に導入しようとして、ベンダーの会社に委託して導入した結果、導入がうまくいかず、できなかった。
この点、導入しようとした会社はベンダーの責任だといい、ベンダーの会社は情報を提供してもらえず、協力を得られなかったと主張する。
さて、実際はどうでしょうか・・・

この、セルフサービングバイアスは、私たちの人生の多くの重要な側面に影響を与えることがあります。
セルフサービングバイアスが存在することを理解し、それが私たちの人生にどのように影響するのかを知りましょう。
セルフサービングバイアスを避けてより良い選択と決断をする方法を知ることは、私たち自身と、とりまく状況を改善し続けるために不可欠です。

このような、セルフサービングバイアスの習慣は、後々の人生に重要な影響を与える可能性があるので、できるだけ早く気付いた方が有利です。カウンセラーって、自分の行動を科学的に解釈できるのです。
皆様もセルフサービングバイアスに偏らないように気を付けましょう。

 まとめ

原因帰属理論については、よく研究されていますので、知っておきましょう。
内的帰属、外的帰属という概念を初めて知った方もいるかもしれません。
この理論はカウンセラーだけなく、人事労務担当者や経営者のマネジメントにも応用できます。

内的要因が不安定な場合の原因は「努力」になりますが、努力ということは時間をかけて準備すれば対応が可能です。
外的要因で安定している、つまり困難な課題の場合には、外的要因が安定しているからこそ、十分に検討した対策を実行することが可能です。

皆さま自身が生きてゆく中で、うまくいかないことは山ほどあります。
その中で、自身が内的帰属、外的帰属に偏っていないかどうか考えてみましょう。

セルフサービングバイアスが存在することを理解し、それが私たちの人生にどのように影響するのかを知りましょう。
セルフサービングバイアスを避けてより良い選択と決断をする方法を知ることは、私たち自身と状況を改善し続けるために不可欠です。


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この記事を書いた人

清水 宏泰

1975年生まれ。公衆衛生分野の専門家。現在はさまざまな組織の健康問題を予防するためにLAOにて行政書士・社労士・労働衛生コンサルタントとして活動しています。主に健康、心理系、産業保健の情報について発信していきます。

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