2025/08/02 2023/05/02
【医師・初心者向け】労働衛生コンサルタントの開業の登録申請までの準備について
今回の記事は、産業医の先生方に向けたもので、労働衛生コンサルタント(保健衛生)の資格を取得しようとしている方や、取得した後の情報を知りたい方を対象としています。
また、この記事は現在勤務医をされている方を想定しており、新たに個人事業主として労働衛生コンサルタント事業所を開業したいと考えている方を想定しています。
既に法人を設立されている場合には、ここで説明する内容は不要かもしれません。
労働衛生コンサルタント試験に合格した後、登録申請を行い、労働衛生コンサルタントとしての活動を開始すると、すぐに仕事が入ることもあります。
産業医の先生方が労働衛生コンサルタント事務所を開設するために、労働衛生コンサルタントの登録に向けた準備についてお話しします。
労働衛生コンサルタントの開業
労働衛生コンサルタントとして独立・開業を検討されている方の多くは、「株式会社」を設立して事業を行うケースが多いかと思います。
この点、厚生労働省は労働衛生コンサルタントを“士業”として位置付けています。しかしながら、弁護士、社会保険労務士、行政書士などの他の士業と異なり、法人化に対する法的制限が明確に定められていません。
そのため、労働衛生コンサルタントは現行制度上、株式会社などの法人格を用いた開業が認められており、実務上も多くの方がそのような形で活動しています。
ただ、法人(株式会社)にする場合と、個人事業主で開業する場合には、メリット・デメリットがありますので、無理に株式会社にする必要はないかもしれません。
では、開業形態を決めたら、厚生労働省名簿に登録を行わなければなりません。
労働衛生コンサルタントの登録申請
労働衛生コンサルタントの登録申請
今回は、労働衛生コンサルタントの登録に必要な事項についてお話しいたします。
まず、労働衛生コンサルタント試験に合格した方は、産業医となる要件を満たしています。そして、労働衛生コンサルタント試験に合格していればよいだけなので、労働衛生コンサルタント事務所の開設は産業医となる資格のために必須ではありません。
したがって、産業医の要件を満たすためだけに労働衛生コンサルタント試験に合格された方は、事務所を登録する必要はありません。
実務としては、労働衛生コンサルタントの合格証のコピーを産業医選任の届出時に労働基準監督署に提出すればいいのです。
しかし、実際に労働衛生コンサルタントと名乗って活躍したいという先生方は登録が必要です。
登録については、公益財団法人、安全衛生技術試験協会のHPに記載があります。
申請について、特に難しいことはないと思います。医師免許の申請と同じような感じかと思います。
『コンサルタント登録申請書(様式第3号)』をダウンロードして、その記載内容を見ておきましょう。
労働安全・労働衛生コンサルタントの登録申請
公益財団法人、安全衛生技術試験協
労働衛生コンサルタント登録における事務所の注意点
労働衛生コンサルタント登録における「事務所の所在地」選定の注意点
『労働衛生コンサルタント登録申請書(様式第3号)』には、登録する事務所の「名称」と「所在地」を明記する必要がありますが、実はこの「事務所の選定」が重要な問題となることがあります。
多くの先生方は、「自宅で十分では?」とお考えになるかもしれません。もちろん、自宅を事務所として登録することは可能ですが、以下のような注意点があります。
自宅を事務所とする場合の注意点
もし、自宅が賃貸物件(借りているマンション等)の場合、 賃貸契約書において「事業用利用」が許可されているか確認する必要があります。
マンション・アパートの場合: 管理規約に「事務所利用不可」とされているケースは多く、管理組合や所有者の許可が必要となることがあります。
登記や郵便物の受取に支障がないか、近隣とのトラブルにならないかも考慮が必要です。
レンタルオフィスの活用について
レンタルオフィス(シェアオフィス)を利用して所在地を登録することも可能です。実際に法人登記を行っている方もいます。
注意点としては、利用契約書に明記された使用目的、利用期間、登記の可否などの内容を必ず確認しましょう。レンタルオフィスの事務局にしっかりお話をしましょう。
郵便物や電話の取り次ぎなどの事業継続性に関わる対応が整っているかどうかも重要です。
特に、産業医面談や商談を行う可能性があるため、その場合にミーティングが可能な会議室についても考慮しましょう。
労働衛生コンサルタント業界の印象としては、2025年時点では、レンタルオフィスの利用は少数派かなと思います。
また、登録の住所を見たら、レンタルオフィスかどうかすぐにわかります。
士業あるあるなのですが、一般的に自宅開業やレンタルオフィスでの開業は、信用度がやや劣る可能性があることも知っておきましょう。
労働衛生コンサルタント事務所は複数登録できます。
登録申請を行う際の様式、『コンサルタント登録申請書(様式第3号)』の備考をよく見ると、「従たる事務所がある場合には、その名称及び所在地を併記すること」とあります。
安全衛生技術試験協会にも確認したところ、事務所の複数登録は可能だということでした。
では、この部分について詳しく開設したいと思います。
労働衛生コンサルタントは複数の事務所を登録できる ― 実務・経費・税務上の留意点
複数拠点のメリット
他の士業、たとえば弁護士、公認会計士、社会保険労務士などは、原則として「1か所のみ」しか事務所を登録できないのが一般的です。
これは、登録された事務所において本人が直接業務を行っていることを原則として求めているのです。
似たような制度で、医師が開設する診療所においても、1つの診療所につき1名の医師が設置者として管理するという制約があり、医療法上も1人の医師が同時に複数の診療所を開設することは、原則として認められていません。
そして、労働衛生コンサルタントについては、登録された事務所に常時コンサルタント本人が駐在する義務はないため、拠点の柔軟な運用が可能です。
新型コロナ流行後、オンライン面談が一般的となったことも相まって、以下のようなメリットがあると考えます。
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地方企業・全国拠点への対応が可能となり、支店があるため信用も得やすく、顧客層の拡大や活動の広域化につながる
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主な事務所のリソースを活用できるため、必要最小限の設備投資で事務所を展開でき、開業・運営コストの削減が図れる
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オンライン対応の普及により、移動や常駐の必要性が少なくなり、拠点が複数あることでコンサルタント本人の働き方の柔軟性が高まる
税務上の留意点と利点
複数の事務所を登録・運用する場合、それぞれの事務所に係る家賃・光熱費・通信費などを経費として処理できます。これは、株式会社でも個人事業主でも同様です。
もちろん、従たる事務所が実質的に使用されていない場合の経費性などについは税務上のリスクが発生する可能性がありますので、税理士に相談しましょう。
複数事務所の登録が可能な柔軟性を活かすには、事業計画や業務展開との整合性、そして会計処理・税務対応の準備が欠かせません。
事務所の設置や経費に関して不安がある方は、開業前に信頼できる税理士と相談し、適切な形で運営を行うことが望ましいといえるでしょう。
また、労働衛生コンサルタントは名誉失墜行為が禁止されているため、コンプライアンス違反には十分注意する必要があります。
指定登録機関 公益財団法人 安全衛生技術試験協会 殿
備考
1 厚生労働大臣が登録事務を行う場合には厚生労働大臣に提出すること。この場合にあっては、手数料に相当する額の収入印紙を収入印紙欄に貼り付けること。
2 指定登録機関が登録事務を行う場合には当該指定登録機関に提出すること。この場合にあっては、当該指定登録機関の登録事務規程に定めるところにより手数料を納付し、収入印紙は貼らないこと。
3 「氏名」の欄は、旧姓を使用した氏名又は通称の併記の希望の有無を〇で囲むこと。併記を希望する場合には、併記を希望する氏名又は通称を記入すること。
4 ④欄は、従たる事務所がある場合には、その名称及び所在地を併記すること。
5 ⑥欄は、合格証の年月日を記入すること。
6 申請書には、合格証の写しを添付すること。コンサルタント登録申請書(様式第3号)
有名な名誉失墜行為の条文です。
労働安全衛生法(義務)
第八十六条 コンサルタントは、コンサルタントの信用を傷つけ、又はコンサルタント全体の不名誉となるような行為をしてはならない。
2 コンサルタントは、その業務に関して知り得た秘密を漏らし、又は盗用してはならない。コンサルタントでなくなつた後においても、同様とする。
事務所開設に当たり、必要な物品について
では、事務所を開設するにあたり、必要な物品について、ご紹介します。
PC、タブレット等
まず、デスクトップPCは必須です。
産業医などで多くの顧問先がある場合、外出しなければならないことが多く、移動中にオンライン面談を行う必要がある場合には、ノートPCは必須です。
クライアントの前で相談しながら書類を作成することもありますし、訪問先での面談後に意見書の作成や診療情報提供書(依頼書)の作成が必要になることもあります。
また、外出時に対応しなければならない事案があったり、産業医の移動時間に仕事をする必要があったりするため、外出中のWiFi接続契約も必要です。
もちろん、ノートPCやタブレットは、万が一の紛失時に備えて遠隔ロックをかけられるようにしておきましょう。
現在の時代では、オンラインで面談を行うことが多いため、PCを用意する場合は、オンライン面談ができることを前提にしてください。
また、PCの設置場所も重要です。オンライン面談中に背景に変なものが映らないようにしたり、雑音やペットの邪魔を受けないようにすることも大切です。
クラウドストレージを利用する場合は、有料のサービスを契約しましょう。また、二段階認証の機能があるところが望ましいです。

税理士契約
税理士には開業届の提出や報酬等の源泉徴収税の支払いなど、税務手続きに関する相談ができますので最初から税理士に相談することをお勧めします。
産業医事務所は軌道にのれば早めに収益を上げることができますので、収益が上がってから税理士に相談しようではなく、最初から相談することをお勧めいたします。
個人事業主の場合は、開業届の提出と青色申告承認申請書の提出が必要ですが、これらの手続きも税理士にお願いすることができます。
青色申告課税では、複式簿記が必須となりますが、こちらも税理士にお願いできます。
また、法人であれば、税理士との契約が必須となるかと思います。
PCソフト
まず、文書作成ソフトとしてはMicrosoftのOfficeが必要です。
診療情報提供依頼書を作成するために、クライアント企業とのファイル交換が必要になることがあるため、ソフトウェアが異なるとトラブルの原因となります。
本当は私もLinuxを使いたいと思っていますが・・・。
産業医講話の資料作りも必要な場合であり、パワーポイントも必要です。
Microsoft 365のサブスクリプションがお勧めです。
もし、自分で会計記帳を行う場合は、会計ソフトが必要になります。
士業の中では、マネーフォワードかFreeeがよく使われているようです。
繰り返しますが、最初から適切な税理士と関わることができれば、今後の業務が非常にスムーズに進むと思います。
名刺
これも重要ですね。名刺のデザインだけでなく、ロゴも作らなければなりません。
最近は個人で個人に依頼できるサイトがあるようで、コンペティションでデザインを依頼する士業さんが多いようです。
私はデザイナーさんにお願いしました。
ホームページ
レンタルサーバーの契約が必要です。
ホームページ作成は安く済ますことは可能ですが、きちんとプロにお願いした方がよいかと思います。
通信関係・プリンター
もし、ネット回線がない場合は、回線工事が必要ですね。携帯できるWi-Fiでも対応できるでしょうが、やはり安定したネット回線がないと不便ですね。
電話機はあった方が良いですが、産業医で出張が多い場合は携帯でも問題ありません。
産業医業務において、FAXを使用する場面はほとんどありません。そのため、FAX機能がなくても業務上は特に支障はないと考えられます。
ただし、複合機を導入しておりFAX機能が付属している場合には、FAX受信データをクラウドストレージへ自動保存するように設定しておくと、文書管理が効率的になります。
なお、数少ないFAXの使用例としては、大規模病院の受診予約や診療情報提供書の送付などで、FAXでのやり取りを求められる場合があるため、必要に応じて準備しておくと安心です。
また、自動ドキュメントフィーダー(ADF)を備えたスキャナーがあると便利です。
実際、業務量が増えるにつれ必要になる場面が増えます。
自分の印鑑を押して作成した文書をスキャンし、記録として保存することができます。ADFが両面スキャンに対応しているとさらに便利です。
労働衛生コンサルタントの業務であれば、プリンターの印刷サイズはA4があれば十分です。私はA3を印刷できるものを使っていますが、労働衛生コンサルタントと産業医の業務では基本的にA3は必要ないかと思います。
以上より、ADF機能付きでA4を印刷できるカラーの複合機があれば、基本的な業務には対応できると思います。
ゴム印
こちらは非常に重要です。
健康診断の判定に使う「医師 〇〇〇〇」(○○は名前)、「通常勤務」というシャチハタは必須です。
いつも持ち歩いておき、クライエント企業にお伺いした時に健康診断結果の就業判定で押印するのに便利です。
現在は、健康診断の結果に医師の意見を述べた医師の押印は必要なく、記名だけでいいので、黒色の上記シャチハタで要件を満たせます。
事務所名と住所のゴム印も業務に必要です。
領収書や郵便物の記載に使えます。
労働衛生コンサルタント用の通帳とクレジットカード
税理士にお願いするなら、会計は税理士にご相談されてください。
ひょっとしたら、自分で全部やりたいという個人事業主の方のために特に、専用の通帳とクレジットカードは準備しておきましょう。会計がすごく楽になります。
特に、クラウド会計ソフトはネットバンキングと連携できるので、ほぼ自動で記録されていきます。
職印
行政書士や海事代理士の場合は、印鑑を行政書士会等に登録しなければならず、その印鑑を使用しなければなりません。
しかし、労働衛生コンサルタントには、職印の制度がなく、職印を作るのは、趣味の領域と言えるでしょう。
実務上はなくても特に問題はありませんが、やはり見た目にこだわるとかっこいいですし、プロっぽく見えるのもいいです。
職印の作り方については以下を参照してください。
まとめ
この記事では、特に現在勤務医等としてご活躍中で、今後、労働衛生コンサルタントとして開業を目指す方に向けて、登録申請から事務所選定、開業時に必要な備品や手続きのポイント、さらには法人化や経費処理の実務までを幅広くご紹介しました。
労働衛生コンサルタントは、他の士業と比べても開業の自由度が高く、複数事務所の登録が可能である点など、働き方の柔軟性や全国規模での展開にも対応しやすい制度となっています。その一方で、登録の際には所在地や名義、設備環境などの法的・実務的な要件をきちんと確認する必要があります。
また、法人設立か個人事業主かの選択、必要なIT機器やプリンター、会計管理の仕組み、名刺やホームページといったブランディング要素まで、様々なことを考えなければなりません。
なかでも、税理士への相談は強くお勧めいたします。
独立は大変ですが、楽しいですよ。
労働衛生コンサルタント事務所LAOでは、産業医・顧問医の受託をお受けしております。労務管理と一体になった産業保健業務を多職種連携で行います。



