2025/09/06 2023/05/06
【初心者・人事労務担当者向け】公衆衛生における予防医学の一次予防、二次予防、三次予防について
公衆衛生における予防医学の概念についてお話します。
皆様は予防医学について、どんなイメージをお持ちでしょうか?
多くの方が、予防医学は病気にならないようにすることだと考えているかもしれません。
しかし、予防医学の概念は、病気にならないようにすることから、病気になった後のリハビリまで、すべての過程を含むものなのです。
予防医学とは
公衆衛生においては、予防医学という概念があります。この予防医学は、以下の一次予防から三次予防の3つの段階に分けられています。
このように、一般の方がイメージしている予防医学である、病気にならないようにしようという一次予防だけでなく、リハビリまで含んで説明されるのです。
これを非常に簡単にまとめると以下の通りです。
一次予防 → 病気にならないように予防する
二次予防 → 病気を早期に発見して早く治療する
三次予防 → 再発を防止し、リハビリを行う
詳しい内容につきましては以下になります。。
- 一次予防
疾病予防や健康増進を行うことで、健康診断など(二次予防)と異なり、原因の排除やリスクの低減を図ることをいいます。具体的には、生活習慣の改善や生活環境の改善、健康教育による疾病予防や健康増進を図ったり、予防接種等による疾病の発生予防、事故防止による傷害の発生を予防することです。過重労働対策としては、時間外労働の短縮や年次有給休暇の取得促進が一次予防となります。 - 二次予防
すでに健康異常が出現している段階で、早期発見、早期治療を行うことで、疾病や障害の重症化を予防することです。たとえば発生した疾病や障害を検診などにより早期に発見し、早期に治療や早期に保健指導などの対策を行うことにより疾病が重症化することを予防します。具体的には、健康診断による有所見者への事後措置、面接指導により必要とされた者に対する事後措置、これらにより疾病が見出された者への早期治療などがあります。 - 三次予防
すでに疾病が発病し、疾病として完成した後に、リハビリテーションや再発防止をすることで、社会復帰できる機能を回復させ、またそれを維持することをいいます。
引用:厚生労働省 「こころの耳」
一次予防
一次予防は、病気にならないように予防することであり、予防医学の中で最も重要な部分です。そして、健康診断やストレスチェック制度はよく誤解されますが、一次予防ではなく、二次予防に該当します。
ただし、ストレスチェックに関しては従業員全員が実施し、自分にストレスがあると気づくことで一次予防となるという説もあります。
これらの内容は医師国家試験や看護師国家試験のレベルの話題となります。
さて、一次予防の実際についてですが、予防接種のワクチンなどは病気にならないようにするための典型的な対策であり、一次予防に該当します。
一方、生活習慣の改善や禁煙は、健康増進の一次予防とされることがありますが、実際には状況次第で判断が難しいこともあります。
例えば、メタボ健診(特定健診)において、メタボリックシンドロームに関する保健指導(特定保健指導)を行う場合、生活習慣病の一次予防のように見えますが、実際にはメタボ健診でメタボリックシンドロームの人を早く見つけて、保健指導を行うことにより早く直していると言えますので二次予防になります。同様に、健康診断で喫煙者だと判明した方に禁煙支援を行う場合も、煙草を吸っている人を見つけて支援することで、その時点で二次予防となります。
つまり、病気や改善が必要な事項を見つけるためのスクリーニングを行うと、それが実施された時点で二次予防となってしまうのです。
逆に言うと、スクリーニングをかけない場合、例えば、社員全員に対して網羅的にメタボリックシンドローム教育を行うことは一次予防に該当します。また、社員全員に対して禁煙に向けた支援パッケージを準備していつでも使えるようにするのも一次予防です。
このように、一次予防を行う場合、通常はマスアプローチの形になります。これは対象を限定せず、多数のターゲットに向けて網羅的かつ一律なアプローチを行うことを指します。
二次予防
健康診断は、疾病の早期発見および早期治療を目的とした重要な健康管理措置であり、労働者の健康保持・増進につながります。
定期健康診断等においては、高血圧、糖尿病、脂質異常症、がんなどの生活習慣病のリスクを把握するためのスクリーニングが実施され、その結果に基づいて、必要な治療の勧奨や生活習慣の改善に向けた保健指導が行われます。
健康診断の結果については、労働安全衛生法(第66条)に基づき、医師による就業上の措置(作業転換、労働時間の短縮等)に活用されるとともに、労働安全衛生法第66条の7に定められる努力義務の「保健指導」にも活用されることがあります。
さらに、一定の年齢以上の被保険者等に対しては、「高齢者の医療の確保に関する法律」に基づく特定健康診査および特定保健指導(いわゆるメタボ健診・メタボ指導)の対象となり、生活習慣病の重症化予防を目的とした健康支援が行われます。
三次予防
疾病に対しては、適切な治療により進行や症状の悪化を抑制し、リハビリテーションを通じて機能の回復・改善を図るとともに、社会復帰や再発防止を目指すことが重要です。
産業医の三時予防での役割としては、特に精神疾患等で休職した従業員の職場復帰支援が挙げられます。職場復帰支援では、主治医との連携、職場環境調整、勤務の段階的復帰などが求められます。
さらに、年金支給開始年齢の引き上げや高年齢者雇用安定法の改正等の動向を受けて、雇用継続の上限年齢が、将来的には65歳から70歳へ段階的に引き上げられる可能性があります。
これにより、今後は職場における高年齢労働者の割合が一層高まることが予想され、同時に、慢性疾患や加齢に伴う健康課題を抱える労働者が、いかに健康を維持しながら継続就労できるかが重要なテーマとなります。
このような状況において、企業側には、従業員の健康を保持しつつ、生産性を確保・向上させるための施策の充実が求められます。具体的には、健康管理体制の整備、職場の作業環境や業務内容の見直し、合理的配慮の実施、高年齢者に適した人事制度の構築等が挙げられます。
今後、高齢化社会に対応した産業保健活動の強化と、企業の持続的成長の両立を図る視点が、ますます重要になるといえるでしょう。
したがって、企業における年齢に応じた健康支援体制の構築、職場の合理的配慮、個別の就業管理など、今後はますます重要な施策として求められることになるでしょう。
一次、二次、三次予防に優劣はあるの?
このように、一次予防・二次予防・三次予防にはそれぞれ明確な役割があり、優劣をつけるべきものではなく、相互に補完し合いながら併存・実施されるべきものです。
結論としては、それぞれの予防段階に応じて対応できる範囲から取り組みを始めることが有効です。
ただし、一次予防(疾病の発生を未然に防ぐための生活習慣の改善、職場環境の整備など)は、「結果が発生していない段階での介入」であるため、目に見える成果が出にくく、従業員からの評価や感謝が得られにくいという特性があります。
私自身の現場経験からも、企業側や従業員の意識として、三次予防(治療後の職場復帰支援など)や二次予防(早期発見・早期治療)は比較的理解されやすい一方で、一次予防の取り組みはどうしても後回しになりがちであると感じています。
しかし、長期的には一次予防は組織全体の健康水準と生産性を底上げする重要な基盤であることから、産業保健活動の中での意識啓発や仕組みづくりが今後ますます求められます。
まとめ
予防医学は、病気を防ぐ一次予防だけでなく、早期発見・早期治療の二次予防、そして治療後のリハビリや再発防止の三次予防までを含む幅広い概念です。
この点、一次予防と二次予防の違いはスクリーニングを行っているかどうかが一つの基準になります。
それぞれの予防には役割があり、優劣をつけるものではなく、補完的に併存すべき取り組みです。現場ではどうしても一次予防が軽視されがちですが、長期的には一次予防が組織の健康と生産性を支える土台となります。
企業や産業保健の現場では、健康診断や保健指導による二次予防だけでなく、マスアプローチによる一次予防の推進、そして職場復帰支援などの三次予防にもバランスよく取り組むことが求められます。
今後は、「治療と仕事の両立支援」や「高齢者の継続雇用」などの社会的な課題への対応も含め、全体的・戦略的な予防活動の実践が一層重要となるでしょう。
労働衛生コンサルタント事務所LAOでは、産業医・顧問医の受託をお受けしております。労務管理と一体になった産業保健業務を多職種連携で行います。

