2023/05/06 2023/05/06
【初心者・人事労務担当者向け】公衆衛生における予防医学の一次予防、二次予防、三次予防について
公衆衛生における予防医学の概念についてお話します。
皆様は予防医学について、どんなイメージをお持ちでしょうか?
多くの方が、予防医学は病気にならないようにすることだと考えているかもしれません。
しかし、予防医学の概念は、病気にならないようにすることから、病気になった後のリハビリまで、すべての過程を含むものなのです。
予防医学とは
公衆衛生においては、予防医学という概念があります。この予防医学は、以下の一次予防から三次予防の3つの段階に分けられています。
このように、一般の方がイメージしている予防医学である、病気にならないようにしようという一次予防だけでなく、リハビリまで含んで説明されるのです。
これを非常に簡単にまとめると以下の通りです。
一次予防 → 病気にならないように予防する
二次予防 → 病気を早期に発見して早く治療する
三次予防 → 再発を防止し、リハビリを行う
詳しい内容につきましては以下になります。。
- 一次予防
疾病予防や健康増進を行うことで、健康診断など(二次予防)と異なり、原因の排除やリスクの低減を図ることをいいます。具体的には、生活習慣の改善や生活環境の改善、健康教育による疾病予防や健康増進を図ったり、予防接種等による疾病の発生予防、事故防止による傷害の発生を予防することです。過重労働対策としては、時間外労働の短縮や年次有給休暇の取得促進が一次予防となります。 - 二次予防
すでに健康異常が出現している段階で、早期発見、早期治療を行うことで、疾病や障害の重症化を予防することです。たとえば発生した疾病や障害を検診などにより早期に発見し、早期に治療や早期に保健指導などの対策を行うことにより疾病が重症化することを予防します。具体的には、健康診断による有所見者への事後措置、面接指導により必要とされた者に対する事後措置、これらにより疾病が見出された者への早期治療などがあります。 - 三次予防
すでに疾病が発病し、疾病として完成した後に、リハビリテーションや再発防止をすることで、社会復帰できる機能を回復させ、またそれを維持することをいいます。
引用:厚生労働省 「こころの耳」
一次予防
一次予防は、病気にならないように予防することであり、予防医学の中で最も重要な部分です。そして、健康診断やストレスチェック制度はよく誤解されますが、一次予防ではなく、二次予防に該当します。
ただし、ストレスチェックに関しては従業員全員が実施し、自分にストレスがあると気づくことで一次予防となるという説もあります。
これらの内容は医師国家試験や看護師国家試験のレベルの話題となります。
さて、一次予防の実際についてですが、予防接種のワクチンなどは病気にならないようにするための典型的な対策であり、一次予防に該当します。
一方、生活習慣の改善や禁煙は、健康増進の一次予防とされることがありますが、実際には状況次第で判断が難しいこともあります。
例えば、メタボ健診(特定健診)において、メタボリックシンドロームに関する保健指導(特定保健指導)を行う場合、生活習慣病の一次予防のように見えますが、実際にはメタボ健診でメタボリックシンドロームの人を早く見つけて、保健指導を行うことにより早く直していると言えますので二次予防になります。同様に、健康診断で喫煙者だと判明した方に禁煙支援を行う場合も、煙草を吸っている人を見つけて支援することで、その時点で二次予防となります。
つまり、病気や改善が必要な事項を見つけるためのスクリーニングを行うと、それが実施された時点で二次予防となってしまうのです。
逆に言うと、スクリーニングをかけない場合、例えば、社員全員に対して網羅的にメタボリックシンドローム教育を行うことは一次予防に該当します。また、社員全員に対して禁煙に向けた支援パッケージを準備していつでも使えるようにするのも一次予防です。
このように、一次予防を行う場合、通常はマスアプローチの形になります。これは対象を限定せず、多数のターゲットに向けて網羅的かつ一律なアプローチを行うことを指します。
二次予防
健康診断は、早期発見と早期治療を目的としている取り組みです。健康診断では、スクリーニングを行い、高血圧、糖尿病、がんなどの生活習慣病にならないように治療したり、生活習慣の改善を開始することが含まれます。
健康診断によって得られた結果は、労働安全衛生法の医師による就業上の措置だけでなく、健康増進のための保健指導(労働安全衛生法66条の7)や、いわゆるメタボ保健指導(高齢者医療確保法による特定保健指導)にも利用されることがあります。
三次予防
病気に対しては、治療を行い病気の進行や症状を抑え、リハビリを通じて社会復帰や機能改善、再発防止を図ります。産業医としては、職場復帰支援を行いますが、これは三次予防の一例となります。
まとめ
公衆衛生の予防医学には一次予防、二次予防、三次予防があります。一次予防と二次予防の違いはスクリーニングを行っているかどうかが一つの基準になります。
一次予防はやはり重要ですが、実務では軽視されることがあります。一次予防を行う段階では、多くの場合、本人が困っていない状況であり、一次予防の重要性が見過ごされることもあるかもしれません。
産業保健では一時要望に一生懸命取り組んでも、あまり感謝されないこともありますが、それでもできるだけ一次予防に心掛け、淡々と取り組んでいきましょう。
労働衛生コンサルタント事務所LAOでは、産業医・顧問医の受託をお受けしております。労務管理と一体になった産業保健業務を多職種連携で行います。