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化学物質の管理を解説

2025/11/27 2023/05/27

【初心者向け・安全衛生】石綿とはなにか、石綿障害予防規則よりわかりやすく解説

今回は、石綿のお話をいたします。
石綿は、非常に危険な化学物質であることはご存じの方も多いかと思います。
今回は法令に基づく解説を行います。

石綿とはなにか、石綿障害予防規則よりわかりやすく解説

 石綿の定義について

まず、石綿については、定義があります。
石綿障害予防規則2条1項に、労働安全衛生施行令6条23号に規定されている石綿ということになります。

石綿障害予防規則
(定義)
第二条 この省令において「石綿等」とは、労働安全衛生法施行令(以下「令」という。)第六条第二十三号に規定する石綿等をいう。
2 この省令において「所轄労働基準監督署長」とは、事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長をいう。
3 この省令において「切断等」とは、切断、破砕、穿せん孔、研磨等をいう。
4 この省令において「石綿分析用試料等」とは、令第六条第二十三号に規定する石綿分析用試料等をいう。

e-Gov 石綿障害予防規則


労働安全衛生法施行令
(作業主任者を選任すべき作業)
第六条 法第十四条の政令で定める作業は、次のとおりとする。
(中略)
二十三 石綿若しくは石綿をその重量の〇・一パーセントを超えて含有する製剤その他の物(以下「石綿等」という。)を取り扱う作業(試験研究のため取り扱う作業を除く。)又は石綿等を試験研究のため製造する作業若しくは第十六条第一項第四号イからハまでに掲げる石綿で同号の厚生労働省令で定めるもの若しくはこれらの石綿をその重量の〇・一パーセントを超えて含有する製剤その他の物(以下「石綿分析用試料等」という。)を製造する作業
e-Gov 労働安全衛生法施行令

ここで、労働安全衛生法施行令第23条に基づき、石綿(アスベスト)の規制内容について整理します。

労働安全衛生法施行令においては、「重量の0.1%を超えて石綿を含有する物」が対象とされており、これは石綿ばく露による健康障害防止を目的とした規定です。
歴史的には、昭和30年代には、吹き付け石綿材として、重量比で約70%程度の高濃度石綿が使用されていたことが確認されています。これらは主に断熱材や耐火材として建築物等に使用されていました。

その後、石綿の健康被害(石綿肺、中皮腫、肺がん等)が社会的に問題となり、業界団体による自主規制や、法令による段階的な規制強化が行われてきました。
特に、2006年(平成18年)9月1日には石綿含有率0.1%超の物の製造・使用が原則禁止とされ、以降、解体工事や廃棄物処理時のばく露防止措置も厳格に求められています。

まとめ
石綿とは、石綿若しくは石綿をその重量の0.1%を超えて含有する製剤その他の物を言います。

では、そもそも石綿とは何でしょう。
まず、石綿について、労働安全衛生法施行令16条は、製造などが禁止される有害物を列挙していますが、その令16条1項4号に「石綿」が記載されています。
では、令16条の石綿ですが、通達によると、アクチノライト、アモサイト、アンソフィライト、クリソタイル、クロシドライト及びトレモライトの6種類が記載されており、これらをまとめて、「クリソタイル等」といいます。
「クリソタイル等」ということで、クリソタイルが主役のようですが、実際に現在存在する石綿の9割以上がクリソタイルと言われています。

石綿は6種類
クリソタイル
アクチノライト
アモサイト
アンソフィライト
クロシドライト
トレモライト
げん9割がクリソタイルであり、まとめて、「クリソタイル等」と呼ぶ

この6種類については、石綿に関与する産業保健職はすべて覚えておきましょう。

 実際の建築物の石綿の存在について

前述のとおり、石綿(アスベスト)に関する規制は、業界の自主規制や法令改正を通じて段階的に強化され、含有率の規制値も徐々に引き下げられてきました。
1975年(昭和50年)には、石綿含有率が5%を超える建材の吹付け作業が規制され、原則禁止となりました。
1995年(平成7年)には、石綿含有率が1%を超える石綿含有建材の製造・輸入・使用等が禁止されました。
2004年9月には、法令上の全面禁止前であるにもかかわらず、業界の自主規制により、石綿含有建材の使用はほぼ行われなくなったとされています。

しかし、この2004年以前に着工された建築物については、一般住宅を含め、レベル3建材が使用されている可能性が十分にあります。つまり、アスベストは身近な存在であり、過去の建物においては依然としてリスクが残っています。

なお、石綿含有率が0.1%を超えるすべての石綿含有製品の製造・使用が禁止されたのは、2006年9月1日のことです。したがって、「石綿が含まれていない」と明確に断言できるのは、2006年9月1日以降に着工された建築物のみとなります。

そのため、建物の解体・改修等を行う際には、着工時期を確認し、2006年9月1日以前に着工された建物である場合は、石綿含有建材の有無について事前調査(石綿事前調査義務)を確実に実施する。調査結果に基づき、必要なばく露防止措置や法定の届出・掲示・保護具使用等を講じることが、労働者や周辺住民の健康を守るうえで不可欠です。

石綿規制では繊維状の石綿が飛散するかが重要性

石綿に関しては、「繊維状を呈しているかどうか」「粉砕等により繊維状が発生するかどうか」が、規制の適用において極めて重要な判断基準となります。
たとえば、モルタル等の中に石綿が混和されており、固形化されている状態では、見た目にも石綿が飛散することはなく、一見すると規制対象外とならないかという問題が生じます。

しかし、これに関しては、厚生労働省の通達「基発第0811002号」(平成18年8月11日)において、次のように明確な指針が示されています。

労働安全衛生法施行令(製造等が禁止される有害物等)
第十六条 法第五十五条の政令で定める物は、次のとおりとする。
一 黄りんマツチ
二 ベンジジン及びその塩
三 四―アミノジフエニル及びその塩
四 石綿(次に掲げる物で厚生労働省令で定めるものを除く。)
イ 石綿の分析のための試料の用に供される石綿
ロ 石綿の使用状況の調査に関する知識又は技能の習得のための教育の用に供される石綿
ハ イ又はロに掲げる物の原料又は材料として使用される石綿
五 四―ニトロジフエニル及びその塩
六 ビス(クロロメチル)エーテル
七 ベータ―ナフチルアミン及びその塩
八 ベンゼンを含有するゴムのりで、その含有するベンゼンの容量が当該ゴムのりの溶剤(希釈剤を含む。)の五パーセントを超えるもの
九 第二号、第三号若しくは第五号から第七号までに掲げる物をその重量の一パーセントを超えて含有し、又は第四号に掲げる物をその重量の〇・一パーセントを超えて含有する製剤その他の物
2 法第五十五条ただし書の政令で定める要件は、次のとおりとする。
一 製造、輸入又は使用について、厚生労働省令で定めるところにより、あらかじめ、都道府県労働局長の許可を受けること。この場合において、輸入貿易管理令(昭和二十四年政令第四百十四号)第九条第一項の規定による輸入割当てを受けるべき物の輸入については、同項の輸入割当てを受けたことを証する書面を提出しなければならない。
二 厚生労働大臣が定める基準に従つて製造し、又は使用すること。

e-Gov 労働安全衛生法施行令


労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令及び石綿障害予防規則等の一部を改正する省令の施行等について 基発第0811002号
平成18年8月11日 
(抜粋)
第 3 細部事項
1  労働安全衛生法施行令関係
(1 )第6条関係
ア  石綿等について、試験研究のために製造する作業以外の製造の作業が禁止されることに伴い、当該製造の作業を作業主任者を選任すべき作業から削除したものであること。
イ  規制の対象となる物の石綿の含有率を1%から0.1%に改めるとともに、これを政令で規定することとしたこと。
(2 )第16条関係
ア  第4号の「石綿」とは、繊維状を呈しているアクチノライト、アモサイト、アンソフィライト、クリソタイル、クロシドライト及びトレモライト(以下「クリソタイル等」という。)をいうこと。
イ  第9号の「第4号に掲げる物(石綿)をその重量の0.1%を超えて含有する製剤その他の物」とは、石綿をその重量の0.1%を超えて含有する物のことをいい、塊状の岩石であって、これに含まれるクリソタイル等が繊維状を呈していない物は含まないこと。
 ただし、塊状の岩石であっても、例えば蛇紋岩系左官用モルタル混和材のように、これを微細に粉砕することにより繊維状を呈するクリソタイル等が発生し、その含有率が微細に粉砕された岩石の重量の0.1%を超えた場合は、製造等の禁止の対象となること。


労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令及び石綿障害予防規則等の一部を改正する省令の施行等について 基発第0811002号

まとめると以下のようになります。

①塊状の岩石であって、これに含まれるクリソタイル等が繊維状を呈していない物は含まないこと。
②ただし、塊状の岩石であっても、例えば蛇紋岩系左官用モルタル混和材のように、これを微細に粉砕することにより繊維状を呈するクリソタイル等が発生し、その含有率が微細に粉砕された岩石の重量の0.1%を超えた場合は、製造等の禁止の対象となること。

以上のように、石綿(アスベスト)に関する規制は「含有率が重量の0.1%を超えるかどうか」を基準としていますが、最終的には、粉砕等により飛散性のある繊維状の石綿が出現するかどうかが、規制の実務的判断における重要なポイントとなります。

つまり、たとえ塊状の岩石であっても、それを破砕・加工することでクリソタイルなどの繊維状の石綿が出現する場合には、製造・使用・譲渡等が禁止の対象となります。

 石綿の鉱物学的分類と現場での取り扱い

石綿については、以下の石綿の分類の図のように、クリソタイルのみが「蛇紋石族」に属し、それ以外の5種類は「角閃石族」に分類されます。
実際の現場においては、蛇紋石系か角閃石系かの分類の違いが法令上の規制の適用に直接影響する場面は少なく、どちらも「石綿」として同等に規制対象となります。
したがって、現場では「石綿が含まれている可能性があるかどうか」「繊維状の飛散があるかどうか」を重視して対応することが重要です。

 



 石綿の他の物質

石綿(アスベスト)に関連する作業、特に建築物の解体・改修・封じ込め等の工事を行う場合には、法令に基づき事前に石綿含有の有無を調査することが定められています(石綿障害予防規則、大気汚染防止法その他)。

この事前調査の際には、「石綿」以外の類似鉱物との識別が重要となります。以下のような鉱物が代表的なものです。

バーミキュライト :
一般には石綿ではないが、特にゾノライト(アメリカ産)等は石綿を含有していた事例があり、吹付け材として使用された場合は石綿含有建材と見なされることがある。厚生労働省より通達あり。

タルク(滑石):
滑らかな鉱物で石綿とは異なるが、産出地によってはトレモライト等の石綿が混入している可能性があり注意を要する。

ブルーサイト:
石綿ではないが、外観が類似することがあり識別に注意。

このように、石綿に関する安全衛生管理は、石綿単体の知識だけでなく、関連鉱物や代替鉱物との識別知識も不可欠です。調査を適正に行うためには、鉱物学的知識と法令解釈の双方を備えた専門家による対応が推奨されます。

バーミキュライトが吹き付けられた建築物等の解体等の作業に当たっての留意事項について
基安化発1228第1号 平成 21年12月28日 (一部改正 平成26年3月31日)

引用元:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11300000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu/0000043006.pdf

 

まとめ

今回は石綿についてお話いたしました。
かなりマニアックな話になります。
石綿に関する産業保健現場における健康管理については特殊なのであまり自信をもってできる医師は少ないかと思います。
これからも石綿の健康管理は重要になると思われますので、産業医の先生方もぜひ得意な分野にしましょう。

石綿について
①石綿とはアクチノライト、アモサイト、アンソフィライト、クリソタイル、クロシドライト及びトレモライトのことで、これらを「クリソタイル等」と呼び
②石綿をその重量の0.1%を超えて含有する物のことをいい、塊状の岩石であって、これに含まれるクリソタイル等が繊維状を呈していない物は含まないこと。ただし、塊状の岩石であっても、これを微細に粉砕することにより繊維状を呈するクリソタイル等が発生し、その含有率が微細に粉砕された岩石の重量の0.1%を超えた場合は、製造等の禁止の対象となること。

これをしっかり覚えておきましょう。

労働衛生コンサルタント事務所LAOは、化学物質の自律的管理について、コンサルティング業務を行っております。

産業医として化学物質の自律的管理に対応可能な医師はあまりいないと思われますが、継続的なフォローも必要なため、産業医又は顧問医としての契約として、お受けしております。

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この記事を書いた人

清水 宏泰

1975年生まれ。公衆衛生分野の専門家。現在はさまざまな組織の健康問題を予防するためにLAOにて行政書士・社労士・労働衛生コンサルタントとして活動しています。主に健康、心理系、産業保健の情報について発信していきます。

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