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【心理学】状況を無視して「あの人はそういう人だから」と思ってしまう対応バイアスについて

対応バイアスという言葉はご存じでしょうか。
非常に簡単に言うと「あの人はそういう人だから・・・」と思ったときに発生しているかもしれないバイアスになります。
これは知っておきましょう。

「あの人はそういう人だから」と思ってしまう対応バイアスについて

対応バイアス(correspondence bias)とは

対応バイアス(correspondence bias)とは個人を取り巻く状況を無視して、人の内的な特性、性格などに原因を求める心理的傾向のことであり、他人の行動を説明しようとする際に生じる一種のバイアスです。
以下、例になります。

  • 猛スピードの車が追い抜いていった場合に、乱暴なドライバー、人であることを連想する。
    →普段、温厚な人で、単にトイレに大急ぎで行きたいだけかもしれません。
  • 優先座席に若い女性が座っている、マナーが悪い人だ。
    →本人の体調不良かもしれません。ひょっとしたら妊娠中かもしれません。
  • 会社で、今までの自分の専門性と違った部署に配属された、社長は私にいやがらせをしているのだ。
    →社長が、本人の能力を他の部署で発揮することが組織改編に必要だと思っているのかもしれません。

対応バイアスによれば、他人の特定の行動が状況的な要因に影響を受けている場合でも、その人の性格を責めがちになりがちです。言い換えれば、他人の行動が外部的な要因の影響を受けている場合でも、私たちはその行動をその人の性格に関連付ける傾向があります。
このようなバイアスは、意思決定の際に誤った判断につながる可能性があります。

引用元:The Correspondence Bias – Daniel Gilbert

 

対応バイアスはなぜ生じるのか?

対応バイアスはなぜ生じるのでしょうか、対応バイアスを生み出す要素4つのメカニズム(認識の欠如、非現実的な期待、過大な分類、不完全な修正)について説明します。

we suggest that there are, in fact, four distinct causes of correspondence bias: (a) lack of awareness, (b) unrealistic expectations, (c) inflated categorizations, and (d) incomplete corrections.

引用:The Correspondence Bias – Daniel Gilbert

認識の欠如

対応バイアスの一つの原因は、状況の情報不足です。状況を認識していないと、特定の人がなぜそのような行動を取るのかの因果関係を理解することができません。

また、常に、まだ認識できていない状況によってその行動が生じているのではないかという可能性を考慮しましょう。
もちろん、認識できない状況の方が多いことは知っておく必要があります。

非現実的な期待

ある人が思っていたのと違う行動をとると、対応バイアスが生じることがあります。
以下の例はいかがでしょうか。

  • 私の友人は本当に大金持ちだ。きっと高級車を所有しているに違いないと思っていた。
    しかし、実際には、一般的な大衆車に乗っていた。きっと、節約家、ケチなのだろう。
    (友人が大衆車に乗っているのに特に理由はありませんでした。)

    →大金持ちならば高級車にのるという推論の妥当性はどうでしょうか?
    →この例では、大金持ちであるという状況、一般的な大衆車に乗っているという状況を完全に把握しており、認識の欠如がありません。

上記のように観察者の期待や推論が行為者の行動によって覆されると、性格に関する推論が始まります。
このようなケースでは、対応バイアスが生じた人が最初に持っていた考え自体の妥当性が問題となります。
たとえ、行為者を取り巻く状況を完全に把握していても、その状況が行為者の行動にどのように影響するかについて、人は誤った推測をしてしまう場合があり、対応バイアスの原因となります。

過大な分類

観察者が行為者の行動を特定のカテゴリーに過剰に分類する傾向を指します。つまり、行為者の行動をより一貫性のある特性や性格の表れと見なし、その行動が特定の性格・信念を表していると考えてしまいます。
この状況を避けるためには、カテゴリーに分類していいのか、分類するのは妥当かと常に考えなければなりません。

  • 例えば、 ある政治家が特定の政策に賛成した場合、それを見た人はその政治家を特定のイデオロギーの主張者と過大に分類することがあります。
    →これだけでは、特定のイデオロギーの主張者かどうかわかりませんよね。
  • ある県警で不祥事が起きた時、その県警に属する人すべてが不祥事に手を染めているのではと考えてしまう。
    →実際は一部の者により不祥事が引き起こされています。



 不完全な修正

非常に簡単に言うと、最初の推論をなかなか修正できないということです。

  • 私は、困っている時、ある人に親切にしてもらいました。いい人だと思いました。しかし、後で知ったのですが、その人は評判が悪く、周囲の人は関わらない方がいいとアドバイスしてくれます。どうも、本当に反社会的な人のようですが、私は、その人が決して悪い人ではないと思うのです。
    →一度、親切にしてもらっていい人と推論して、状況を把握したのち修正するも、完全に修正できない。
    →周囲の人の過大な分類のバイアスがないかの検討も必要ですね。

観察者が最初に行った推論は、その後に状況や情報が提示されても、適切に修正できず、初期の推論に固執してしまうことがあります。
つまり、「不完全な修正」においては、追加の情報に基づいて最初の推論を一部修正するものの、修正しきれずバイアスが残ってしまうということです。

産業保健現場における対応バイアス

先ほどの例ですが、「会社で、今までの自分の専門性とは違う部署に配属され、社長が私にいやがらせをしているようなのです。」と言った場合、社長の考え方についての「認識の欠如」が原因かもしれません。また、一度社長の行動を嫌がらせと決めつけると、「不完全な修正」により、最初の推論を修正できないがあります。実際には、以前から社長との間に何らかの軋轢があったのかもしれませんが、「非現実的な期待」により社長に対する思い込みが発生している可能背もあります。

実際の状況はわかりませんが、クライエントが対応バイアスによって誤った意思判断を行うことは望ましくありません。対応バイアスを考慮し、客観的な状況分析を行い、クライエント自身が自己決定できるように支援しましょう。

例えば、新入社員が上司の期待に応えられず、上司が悩んでいる場面があったとします。その上司は、「令和の新入社員は、これだから困る」と言っています。しかし、すべての新入社員を「令和」だからと一括りにすることは「過大な分類」かもしれません。対応バイアスによって、新入社員を「令和」とカテゴライズしてしまうと、全ての新入社員に当てはまらない場合に軋轢が生じ、円環的因果律が発生する可能性があります。ひょっとしたら、このような場合には、上司自身に問題があるのかもしれませんが、気付きを促す、又は認知の多様性を促すのは一つの方法です。

 まとめ

対応バイアス(correspondence bias)とは個人を取り巻く状況を無視して、人の内的な特性、性格などに原因を求める心理的傾向のことであり、他人の行動を説明しようとする際に生じる一種のバイアスです。
どのように対応バイアスが起こるか、4つの原因について簡単に解説しました。
対応バイアスは、誤った意思決定につながる可能性があります。
人事労務系担当者・産業医も知っておきましょう。

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この記事を書いた人

清水 宏泰

1975年生まれ。公衆衛生分野の専門家。現在はさまざまな組織の健康問題を予防するためにLAOにて行政書士・社労士・労働衛生コンサルタントとして活動しています。主に健康、心理系、産業保健の情報について発信していきます。

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