2023/04/11 2023/04/18
【安全衛生・プロ向け】金属アーク溶接等作業を、屋内と屋外で行う場合の違いについて解説
金属アーク溶接などを行う場合に個人ばく露測定が必要であることは、別の記事で解説しています。
しかし、屋内で金属アーク溶接等の作業を行う場合と、屋外で同様の作業を行う場合では、対応方法が異なります。今回は、この違いについて詳しくお話ししたいと思います。
金属アーク溶接等を行う場合は、じん肺法と、特化則(労働安全衛生法)の両方の対応が必要になります
金属アーク溶接等を行う場合は、じん肺法と、特化則(労働安全衛生法)の両方の対応が必要になります。
まずじん肺法と金属アーク溶接の関係について解説したいと思います。
金属アーク溶接等作業とじん肺法
まず、金属アーク溶接はじん肺法施行規則別表20号の2において、粉じん作業とされています。
じん肺法施行規則別表(第2条関係)
(抜粋)
20号の2 金属をアーク溶接する作業
ここでは、「金属アーク溶接作業」とのみ記述されているため、屋内外を問わず、粉じん作業に該当することになります。以前は、屋内、坑内、タンク、船舶、管、車両などの内部での作業のみが粉じん作業とされていましたが、現在では屋外での作業も粉じん作業に含まれるように規定が変更されています。これは、屋外で金属アーク溶接を行う場合も、粉じん作業となり、じん肺法に基づく対策が必要であることを意味します。ただし、アーク溶接は特定粉じん作業には該当しないため、特定粉じん作業に必要な作業環境測定は不要です。
金属アーク溶接等作業と特化則
そして、金属アーク溶接は、特化物である「溶接ヒューム」を発生させますので、特化物の対策が必要となります。
前述の別記事で解説していますが、アーク溶接で発生する特化物である溶接ヒュームの作業環境測定についての規定はありません。通常、特化物であれば労働安全衛生法65条による作業環境測定が6か月毎に必要なのですが、特化物である溶接ヒュームに関する環境測定は、労働安全衛生法の65条では必要ありません。代わりに、個人ばく露測定という特殊な環境測定が必要です。
その根拠として、特化則38条の21第2項を見てみましょう。
「厚生労働大臣が定めるところにより、当該金属アーク溶接等作業に従事する労働者の身体に装着する試料採取機器等を用いて行う測定」という記述があります。これが個人ばく露測定に該当します。
特化則38条の21第2項
事業者は、金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場において、新たな金属アーク溶接等作業の方法を採用しようとするとき、又は当該作業の方法を変更しようとするときは、あらかじめ、厚生労働大臣の定めるところにより、当該金属アーク溶接等作業に従事する労働者の身体に装着する試料採取機器等を用いて行う測定により、当該作業場について、空気中の溶接ヒュームの濃度を測定しなければならない。
ここで、「金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場」と記載されています。「継続して行う屋内作業場」で溶接ヒュームの個人暴露測定が必要となります。この「継続して行う屋内作業場」の定義はどのようになっているのでしょうか。
継続して行う屋内作業場の定義
この「屋内作業場」とは、以下のいずれかに該当する作業場を指します。
・作業場の建屋の側面の半分以上にわたって壁、羽目板その他のしゃへい物が設けられている場所
・ガス、蒸気またはその粉じんがその内部に滞留するおそれがある場所
さらに、「継続して行う屋内作業場」は、建築中の建物内部等で金属アーク溶接等の作業を同じ場所で繰り返し行う場合に限定されます。
以上より、屋外は「継続して行う屋内作業場」には含まれず、個人ばく露測定は必要ありません。
なお、屋内で個人暴露測定を行った場合の措置については以下のような流れになります。
引用)リーフレット「金属アーク溶接等作業について健康障害防止措置が義務付けられます。」(厚生労働省)
つまり、溶接ヒュームの濃度を測定し、結果が悪ければ換気装置にて対策を行い、溶接ヒュームの濃度を再度測定します。その結果に応じて、労働者に呼吸用保護具を使用してもらいます。さらに、フィットテストも実施します。
まとめ
屋外で金属アーク溶接を行う場合の環境測定について解説しました。
金属アーク溶接は粉じん作業に該当しますが、屋外・屋内を問わず、特定粉じん作業には含まれないため、特定粉じん作業で必要とされる作業環境測定は不要です。
金属アーク溶接作業では特有の「溶接ヒューム」が発生しますが、この「溶接ヒューム」に関しては、労働安全衛生法第65条に基づく作業環境測定の対象ではありません。代わりに、個人ばく露測定という特別な環境測定が必要になります。
ただし、屋内での金属アーク溶接作業には個人ばく露測定が必要です。一方で、屋外での金属アーク溶接は、原則として「継続して行う屋内作業場」に該当しないため、個人ばく露測定の必要はありません。
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