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化学物質の管理を解説

2023/04/13 2023/04/13

【安全衛生・人事労務担当者向け】第三種有機溶剤を「タンク等の内部」で使用する場合について

第3種有機溶剤については、第1種有機溶剤や第2種有機溶剤と比べて、個別の規制が少ないことは多くの方がご存じだと思います。
しかし、第3種有機溶剤の業務においても、「タンク等の内部」での作業には特殊な対応が必要な場合があります。
今回はそんなお話をします。

第三種有機溶剤と「タンク等の内部」の場合、第三種有機溶剤を取り扱う場合には換気装置の対応と健康診断の義務が生じます。

第3種有機溶剤の作業環境測定と健康診断、換気装置

第三種有機溶剤の業務は、作業環境測定が必要ないことは別記事でお話しております。


しかし、「タンク等」の場合は、健康診断(有機則第29条第1項)と換気装置(有機則第6条)の対応が必要です。

有機溶剤中毒予防規則における「タンク等の内部」とは?

では、「タンク等」とはどんなところでしょう。こちらは、有機則2条(適用の除外)に記載があります。

有機則(適用の除外)
第二条 第二章、第三章、第四章中第十九条、第十九条の二及び第二十四条から第二十六条まで、第七章並びに第九章の規定は、事業者が前条第一項第六号ハからルまでのいずれかに掲げる業務に労働者を従事させる場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、当該業務については、適用しない。
一 屋内作業場等(屋内作業場又は前条第二項各号に掲げる場所をいう。以下同じ。)のうちタンク等の内部(地下室の内部その他通風が不十分な屋内作業場、船倉の内部その他通風が不十分な船舶の内部、保冷貨車の内部その他通風が不十分な車両の内部又は前条第二項第三号から第十一号までに掲げる場所をいう。以下同じ。)以外の場所において当該業務に労働者を従事させる場合で、作業時間一時間に消費する有機溶剤等の量が、次の表の上欄に掲げる区分に応じて、それぞれ同表の下欄に掲げる式により計算した量(以下「有機溶剤等の許容消費量」という。)を超えないとき。

e-Gov 有機溶剤中毒防止規則

以上より、まとめますと

①屋内作業場のうち
②地下室の内部その他通風が不十分な屋内作業場、船倉の内部その他通風が不十分な船舶の内部、保冷貨車の内部その他通風が不十分な車両の内部又は前条第二項第三号から第十一号までに掲げる場所をいう。

とのことです。
まず、屋外は「タンク等の内部」に当たらないということになりますね。
屋内作業場であることを前提として以下になります。

「タンク等の内部」の内容
  1. 地下室の内部その他通風が不十分な屋内作業場
  2. 船倉の内部その他通風が不十分な船舶の内部
  3. 保冷貨車の内部その他通風が不十分な車両の内部
  4. 前条第二項第三号から第十一号までに掲げる場所

 

「前条第二項第三号から第十一号までに掲げる場所」について


では、「前条第二項第三号から第十一号までに掲げる場所」は2条の前条なので1条第二項第三号から第十一号までに掲げる場所ということなり、該当するのは黄色ハイライト太字の部分になります。

有機則1条2項
 
令第六条第二十二号及び第二十二条第一項第六号の厚生労働省令で定める場所は、次のとおりとする。
一 船舶の内部
二 車両の内部
三 タンクの内部
四 ピツトの内部
五 坑の内部
六 ずい道の内部
七 暗きよ又はマンホールの内部
八 箱げた
の内部
九 ダクトの内部
十 水管の内部
十一 屋内作業場及び前各号に掲げる場所のほか、通風が不十分な場所

e-Gov 有機溶剤中毒防止規則

 

第3種有機溶剤をタンク等の内部で取り扱う際の規定

さて、このようなタンクなどの内部の場合、第三種有機溶剤等に係る有機溶剤業務に労働者を従事させる際には、特別な規定が存在します。以下に説明します。

①換気装置の対応

有機溶剤中毒防止規則の第6条では、第三種有機溶剤等に係る有機溶剤業務に労働者が従事する場合、換気装置を設置することが義務付けられています(緑ハイライト部分)

「当該有機溶剤業務を行う作業場所に、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置、プッシュプル型換気装置又は全体換気装置を設けなければならない。」

②健康診断の義務

また、有機則29条においては健康診断の義務については第三種有機溶剤等にあつては、タンク等の内部に限る。」と記載があります。

つまり、原則として、第三種有機溶剤に関しては有機溶剤健診は必要ありません。ただし、タンク等の内部で行われる第三種有機溶剤等に係る有機溶剤業務については、健康診断が必要です。

有機溶剤中毒予防規則
(第三種有機溶剤等に係る設備)
第六条 事業者は、タンク等の内部において、第三種有機溶剤等に係る有機溶剤業務(第一条第一項第六号ヲに掲げる業務及び吹付けによる有機溶剤業務を除く。)に労働者を従事させるときは、当該有機溶剤業務を行う作業場所に、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置、プッシュプル型換気装置又は全体換気装置を設けなければならない。
2 事業者は、タンク等の内部において、吹付けによる第三種有機溶剤等に係る有機溶剤業務に労働者を従事させるときは、当該有機溶剤業務を行う作業場所に、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けなければならない。

(健康診断)
第二十九条 令第二十二条第一項第六号の厚生労働省令で定める業務は、屋内作業場等(第三種有機溶剤等にあつては、タンク等の内部に限る。)における有機溶剤業務のうち、第三条第一項の場合における同項の業務以外の業務とする。
2 事業者は、前項の業務に常時従事する労働者に対し、雇入れの際、当該業務への配置替えの際及びその後六月以内ごとに一回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。
一 業務の経歴の調査
二 作業条件の簡易な調査
三 有機溶剤による健康障害の既往歴並びに自覚症状及び他覚症状の既往歴の有無の検査、別表の下欄に掲げる項目(尿中の有機溶剤の代謝物の量の検査に限る。)についての既往の検査結果の調査並びに別表の下欄(尿中の有機溶剤の代謝物の量の検査を除く。)及び第五項第二号から第五号までに掲げる項目についての既往の異常所見の有無の調査
四 有機溶剤による自覚症状又は他覚症状と通常認められる症状の有無の検査
3 事業者は、前項に規定するもののほか、第一項の業務で別表の上欄に掲げる有機溶剤等に係るものに常時従事する労働者に対し、雇入れの際、当該業務への配置替えの際及びその後六月以内ごとに一回、定期に、別表の上欄に掲げる有機溶剤等の区分に応じ、同表の下欄に掲げる項目について医師による健康診断を行わなければならない。
4 前項の健康診断(定期のものに限る。)は、前回の健康診断において別表の下欄に掲げる項目(尿中の有機溶剤の代謝物の量の検査に限る。)について健康診断を受けた者については、医師が必要でないと認めるときは、同項の規定にかかわらず、当該項目を省略することができる。
5 事業者は、第二項の労働者で医師が必要と認めるものについては、第二項及び第三項の規定により健康診断を行わなければならない項目のほか、次の項目の全部又は一部について医師による健康診断を行わなければならない。
一 作業条件の調査
二 貧血検査
三 肝機能検査
四 腎じん機能検査
五 神経学的検査

e-Gov 有機溶剤中毒防止規則

 

まとめ

「タンク等の内部」とは
①屋内作業場であって
②以下の場所になります。

「タンク等の内部」とは、屋内作業場であって、以下の場所になります。
  1. 地下室の内部その他通風が不十分な屋内作業場
  2. 船倉の内部その他通風が不十分な船舶の内部
  3. 保冷貨車の内部その他通風が不十分な車両の内部
  4. タンクの内部
  5. ピツトの内部
  6. 坑の内部
  7. ずい道の内部
  8. 暗きよ又はマンホールの内部
  9. げたの内部
  10. ダクトの内部
  11. 水管の内部
  12. 屋内作業場及び前各号に掲げる場所のほか、通風が不十分な場所

また
事業者は、タンク等の内部において、第三種有機溶剤等に係る有機溶剤業務(第一条第一項第六号ヲに掲げる業務及び吹付けによる有機溶剤業務を除く。)に労働者を従事させるときは、当該有機溶剤業務を行う作業場所に、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置、プッシュプル型換気装置又は全体換気装置を設けなければなりません。

つまり、原則として、第三種有機溶剤に関しては有機溶剤健診は必要ありません。ただし、タンク等の内部で行われる第三種有機溶剤等に係る有機溶剤業務については、健康診断が必要です。

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この記事を書いた人

清水 宏泰

1975年生まれ。公衆衛生分野の専門家。現在はさまざまな組織の健康問題を予防するためにLAOにて行政書士・社労士・労働衛生コンサルタントとして活動しています。主に健康、心理系、産業保健の情報について発信していきます。

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