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【重要】障害と仕事の両立支援に必要な障害の定義である国際生活機能分類(ICF)について解説

治療と仕事の両立支援のご相談は産業医をしていると頻繁にあります。


実際にお話をお聴きすると、障害も問題となることも多いです。あるいは、治療は必要なく、障害との両立支援だけが必要となる場合もあります。
今回は、障害と仕事の両立支援に関する重要な理論についてお話しいたします。

治療・障害の両立支援と障害の定義についてわかりやすく解説

国際生活機能分類(ICF)は生活機能と障害に関する状況を記述することを目的につくられた。

人口構成の少子化と高齢化、そして定年や雇用継続制度の変化により、高齢者の従業員が働き続けるということは間違いなく今後ますます増えてくるでしょう。

その中で、病気や障害を抱える従業員が仕事を継続できるように支援することが必要です。治療と仕事の両立支援に関してはガイドラインが存在しますが、同様の手法を用いて障害のある従業員にも支援を行うことができます。

少々乱暴ですが、このブログは何も知識がない初心者のために、最初に非常に簡単に言い換えます。
障害とは、変調又は病気により、本人がどれだけ困っているかの程度のことであると考えてください。
この言葉を念頭に置くと、以下の話がすっと分かると思います。

学術的でないですね。
はい、今からきちんと障害について説明します。
実は、障害には定義があります。

それが、ICF(International Classification of Functioning, Disability and Health, 国際生活機能分類)です。(以下、ICFと表記します。)
こちらは2001年5月にWHO総会で採択されました。
実は、ICF の前には、 ICIDH(国際障害分類、1980)が「疾病の帰結(結果)に 関する分類」というのがあったのですが、様々な問題もあり、ICF は「健康の構成要素に関する分類」を提唱しました。
国際生活機能分類(ICF)は生活機能と障害に関する状況を記述することを目的につくられました。

以下がICFの図です。

「国際生活機能分類-国際障害分類改訂版-」(日本語版)の厚生労働省ホームページ掲載について

このICFは、生活機能と障害として「心身機能・身体構造」、「活動」、「参加」の3つに、さらに、背景因子として「環境」、「個人」の二つに分類しています。
さらにこれらが双方向の矢印でつながっているのがポイントです。
これらの分類は、約1500項目ほど示されています。

まずは、生活機能と障害の分類である「心身機能・身体構造」、「活動」、「参加」をお話します。

心身機能・身体構造
定義:心身機能とは,身体系の生理的機能(心理的機能を含む)である。身体構造とは,器官・肢体とその構成部分などの,身体の解剖学的部分である。
機能障害(構造障害を含む)とは,著しい変異や喪失などといった,心身機能または身体構造上の問題である。

活動
活動とは,課題や行為の個人による遂行のことである。
活動制限とは,個人が活動を行うときに生じる難しさのことである。

参加
参加とは,生活・人生場面への関わりのことである。
参加制約とは,個人が何らかの生活・人生場面に関わるときに経験する難しさのことである。

となりますが、これら3つは、相互に影響を及ぼします。
矢印が双方向になっているの相互の影響を表しています。
これらの影響の仕方にはマイナスの影響もあればプラスの影響もあります。

例えば、病気により身体機能が低下したため、会社を辞めた場合(参加)、外出の頻度が減り(活動)、結果として、身体機能の低下(身体機能)が進むかもしれません。

逆にいえば、会社で就業を続けられれば(参加)、外出の頻度が増え(活動)、身体機能の低下(身体機能)を抑えられるかもしれません。

厚生労働省は以下のように解説しています。

この図式では,ある特定の領域における個人の生活機能は健康状態と背景因子(すなわち,環境因子と個人因子)との間の,相互作用あるいは複合的な関係とみなされる。これらの各要素の間にはダイナミックな相互関係が存在するため,1つの要素に介入するとその他の1つまたは複数の要素を変化させる可能性がある。これらの相互関係は特定のものであり,必ずしも常に予測可能な一対一の関係ではない。相互作用は双方向性である。すなわち障害の結果により,健康状態それ自体が変化することすらある。機能障害から能力の制限を推定したり,活動制限から参加の制約を推定することは,しばしば理にかなったことと思われるかもしれない。しかし,これらの構成要素に関するデータを別々に収集し,その後にそれらの間の関連や因果関係について研究することが重要である。健康に関する状況をすべて記載するのであれば,すべての構成要素が有用である。例えば,

・ 機能障害(構造障害を含む)があるが,能力の制限はない場合(例:ハンセン病で外観を損じても,個人の能力にはなんらの影響を及ぼさない場合)。
・ 実行状況上の問題や能力の制限があるが,明らかな機能障害(構造障害を含む)がない場合(例:いろいろな病気の場合にみられる日常生活の実行状況の減少)。
・ 実行状況上の問題をもつが,機能障害も,能力の制限もない場合(例:HIV陽性の人,精神障害回復者の,対人関係や職場での偏見や差別への直面)。
・ 介助なしでは能力の制限があるが,現在の環境のもとでは実行状況上の問題はない場合(例:移動の制限のある人が移動のための福祉用具を社会から提供されている場合)。
・ 逆方向の影響がある程度ある場合(例:手足を使わないことが筋萎縮の原因となる場合,施設入所が社会生活技能の喪失につながる場合)。

「国際生活機能分類-国際障害分類改訂版-」(日本語版)の厚生労働省ホームページ掲載について 平成14年8月5日 社会・援護局障害保健福祉部企画課

 

ICFにおける背景因子、環境因子と個人因子について

そして、ICFで非常に重要なのは、背景因子として、環境因子と個人因子が導入されたことです。
まず、背景因子とは何かですが以下のような定義となります。

 背景因子(contextual factors)は,個人の人生と生活に関する背景全体を表す。それは環境因子と個人因子の2つの構成要素からなり,ある健康状態にある個人やその人の健康状況や健康関連状況に影響を及ぼしうるものである。

さらに、環境因子と個人因子について以下に述べます。

環境因子(Environmental Factors)
「環境因子」というと、建物・道路・交通機関・自然環境のような物的な環境のみを考えがちであるが、ICFはそれだけでなく、人的な環境(家族、友人、仕事上の仲間など)、態度や社会意識としての環境(社会が生活機能の低下のある人をどうみるか、どう扱うか、など)、そして制度的な環境(医療、保健、福祉、介護、教育などのサービス・制度・政策)と、ひろく環境を捉える。


個人因子(Personal Factors)
個性の尊重 その人固有の特徴をいう。 これは非常に多様であり、分類は将来の課題とされて、年齢、性別、民族、生活歴(職業歴、学歴、家族歴、等々)、価値観、ライフスタイル、コーピング・ストラテジー(困難に対処し解決する方法)、等々の例が挙げられている。 この「個人因子」は「個性」というものに非常に近いものであり、医療でも福祉でも、職業、教育、その他でも、患者、利用者、生徒などの個性を尊重しなければいけないということが強調されている現在、重要なものである。

引用:厚生労働省資料「第1回社会保障審議会統計分科会 生活機能分類専門委員会参考資料3」

非常に簡単に言いますと。
ある人の障害の程度は、「環境因子」と「背景因子」の影響を受けるということになります。
ここで先ほど、障害とは、変調又は病気により、本人がどれだけ困っているかの程度のことであると述べました。
つまり、障害で本人がどれだけ困るかは、「環境因子」、「背景因子」の影響を受けるということになります。

当たり前ではないかと思われるかと思います。

  • 例えば
    歩行が困難になった従業員に、会社がテレワークを認めることで、お仕事が継続できるようになるかもしれません。テレワークが認められなければ、従業員は自力で会社まで移動する必要があり、非常に困難を伴うかもしれません。
    また、会社まで行く場合でも、職場が1階にあるか、エレベーターがあるかによって、従業員にとっての負担は異なるでしょう。
    出勤においても、家族が車で送迎してくれるか、自宅から駅までの距離が近いかなど、環境的な要因は従業員の出勤の容易さに大きく関わります。
  • 例えば
    PCでの文書入力が主な業務の従業員が、ある日右腕の機能を失った場合、その従業員は左手だけでPCを扱わなければなりません。しかし、本人が頑張り屋で、リハビリを一生懸命行って、左手でも問題なくPC入力ができるようになった場合、困難に直面することは少なくなるかもしれません。
    一方、当該従業員が自己否定的になり、学習性無力症に陥りやすい傾向にある個人因子があるかもしれません。さらに、環境因子として、PCの音声入力技術が進歩し実装されることで、右腕の機能とは無関係にPC入力ができるかもしれません。
  • 例えば
    近年、障害者雇用促進法により、一定数以上の従業員を抱える事業主には、従業員の一定割合以上を身体障害者・知的障害者・精神障害者にすることが「法定雇用率」として義務付けられています(障害者雇用促進法43条第1項)。この法律により、障害者の雇用が促進され、身体障害者手帳を持っている方の雇用が容易になるかもしれません。これは、障害者にとって雇用がより容易になり、障碍者が抱える問題が軽減される環境的な要因によるものと言えます。

このように、環境因子と個人因子を考えてその部分にアプローチすることは重要です。
環境因子として会社においては、労働条件である就業規則・労働契約等は大きな要因と言えるでしょう。
社会保険労務士、人事労務担当者、キャリアコンサルタント、そして産業医も就業規則変更にからまなければ難しいと思います。

 個人因子へのアプローチ

個人因子へのアプローチとして、本人のモチベーション向上が重要なポイントとなります。失敗体験を繰り返すと、学習性無力感を引き起こす可能性があります。
また、以前はできていたことが病気のためにできなくなると、自己効力感が低下してしまいます。自己効力感を高め、困難を克服することが重要です。
さらに、重病にかかることはうつ病などの原因の一つともなり得ますので、メンタル不調へのフォローも必要です。
これらのアプローチにより、個人因子への支援を行いましょう。

 まとめ

今回は、治療と障害の両立支援、および障害の定義について解説しました。
国際生活機能分類(ICF)の定義をしっかり読んで理解すれば、科学的に障害を理解することができるかもしれません。
そして、障害を有する従業員のICFの要素について分析し、どうアプローチするかを考える必要があります。

また、環境因子については、会社の規定や就業規則なども重要な要素です。
社会保険労務士、人事労務担当者、キャリアコンサルタント、そして産業医がこれらのICFの要素を理解し、多職種連携で対応してゆくことが大切です。

労働衛生コンサルタント事務所LAOでは、産業医・顧問医の受託をお受けしております。労務管理と一体になった産業保健業務を多職種連携で行います。

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この記事を書いた人

清水 宏泰

1975年生まれ。公衆衛生分野の専門家。現在はさまざまな組織の健康問題を予防するためにLAOにて行政書士・社労士・労働衛生コンサルタントとして活動しています。主に健康、心理系、産業保健の情報について発信していきます。

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