事務所LAO – 行政書士・社会保険労務士・労働衛生コンサルタント・海事代理士

【初心者向け】診療情報提供依頼書における業務内容の詳細の書き方について解説

今回は、診療情報提供依頼書に関する基本的な内容についてお話しします。
具体的には、診療情報提供書に従業員の業務内容をどのように記載するかについて解説します。診療情報提供依頼書については、以下の参考記事をご覧ください。



診療情報提供依頼書や両立支援のために主治医に診療情報の提供を求める場合、当該労働者の業務内容を記載することが多いかと思います。
この際のポイントは、誰が見ても理解できるような明確な記載をすることが重要です。

診療情報提供依頼書の業務内容の詳細の書き方について

診療情報提供依頼書には従業員の業務内容を記載する。

産業医が発行する診療情報提供依頼書には、従業員の業務内容を記載します。

この点、「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」(厚生労働省)に主治医への情報提供について記載があります。
この指針中の「勤務情報を主治医に提供する際の様式例」にあるように「職務内容」、「勤務形態」などを会社から主治医に提供します。

引用:「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」(厚生労働省)

「勤務情報を主治医に提供する際の様式例」をよく見ると、一番下の名義人が「(会社名)」になっています。
つまり、このひな形は人事労務系担当者の非医療職が記載することを前提としています。

しかし、これは指針ですので、必ずしもこの指針の内容を使わなくてはならないというわけではありません。内容は多そうにはみえるのですが、ほとんどがチェック項目です。
必要ない部分はチェックしなくていいのですが、そうするとその部分のスペースはもったいないですよね。こちらは会社(非医療職)が主治医に情報提供するために汎用できる書式として、内容が網羅的になっているのではと思います。誰でも、これを埋めれば基本的な情報がわかるということです。そういう意味で、大変よくできていると思います。

私は、自分のオリジナルバージョンを使っており、職場復帰支援でも、両立支援の場面でも同じ書式を使っています。


その理由として、従業員本人と面談し、疾病や障害の情報を得ることで、ピンポイントで主治医への情報提供を依頼する内容が決まりますので、白紙から作るので全く問題ないからです。

そもそも、上記のひな形様式に記載されている、二交代勤務、三交代勤務についても、主治医(医師)には、その勤務時間の意味が分からないのでは?と思います。
傷病手当金の%?についても、この数字に対して何を情報提供すればいいのか主治医はよくわからないと思います。

紙に記載されている情報量が多いと、主治医へ聞きたいことの論点がボケることも非常に大きな問題です。
オープンクエスチョンと、クローズドクエスチョンを意識して質問しましょう。

診療情報提供依頼書には、主治医が業務内容をイメージできるように書きましょう。

では、業務内容を記載する方法について解説します。
極端な例を挙げますが、例えば産業医が本人の業務内容を主治医に伝える際に以下のように記載するとどうでしょうか?
もし皆様が主治医だった場合、どのように感じますか?

下記1の者の業務は、営業企画課であり、ときおり、業務相談室で仕事を行います。

このように記載した場合は、主治医が受診者がどんな業務をしているのかわかりませんよね。
産業医が詳しくヒアリングを行い、以下のように業務内容を説明しました。

下記1の者の業務は、9:00-18:00の所定労働時間であり、営業企画課という部署で事務員として勤務しております。
残業は月10時間程度です。営業企画室では、原則デスクワークを行っており、週に1回ほど、車で大阪府内の営業先を訪問します。
月に4回ほど、業務相談室というところで勤務もいたしますが、外部顧客からの電話を受けるコールセンターになり、そちらで1日4時間ほど、電話を受けることになります。

このように書くと、どのような業務を行っているかイメージできますよね。
会社と全く関係のない素人さんが、当該従業員がどんなお仕事をしているかイメージできるような書き方を心がけることが重要です。

多くの場合、産業医が人事労務関連の方からヒアリングを行うと思われますが、罹患している病気が業務にどのような影響を及ぼすかを推測するためには想像力と創造力が求められます。
この文書から、おそらく主治医が推測するべき情報は以下のようなものです。

「9:00-18:00」→夜勤がない。休憩は1時間
「残業は月10時間程度」→残業制限をするべきか?あんまりなさそうである。
「原則デスクワーク」→業務の具体的な内容
「車で大阪府内の営業先を訪問」→車の運転の可否の判断が必要、範囲は大阪府内ということで、基本日帰り可能かと
「外部顧客からの電話を受けるコールセンター」→対外的に電話が可能か?

つまり、産業医が疾病と業務の間に配慮すべきことがないかを考え、主治医にわかりやすく投げかけるのです。

診療情報提供依頼書に記載する依頼事項

従業員の業務情報を診療情報提供依頼書に記載する際、主治医に聞きたい情報を明記する必要があります。以下は内容の例で、必要な情報を箇条書きでわかりやすく記載しましょう。
以下は内容の例です。

初診からの経過、服薬の状況、復職の可否、復職不可の場合の復職の見込み時期、夜勤の可否、車の運転の可否、残業制限の時間について、障害上考慮すべき業務上の配慮、その他

他にもいろいろありますね。
主治医に診療情報の提供を求める理由(復職・障害・治療と仕事の両立支援のためか等)により聞く内容が違いますので、診療情報提供依頼書を作成する医師のセンスが必要です。
コツとしては、「その他」はあったほうがいいですね。

 労働条件は考慮すべきである。

診療情報提供依頼書を作成する際には、当該従業員の労働条件にも配慮することが重要です。
例えば、配転を考慮している場合、従業員の労働契約内で可能な範囲での配転に関する意見を求めることができます。
さらに、現在の主治医よりの情報と併せて、配転先の業務内容について関連情報を得ることで、再度意見書依頼書を発行する二度手間を避けることができます。

また、当該従業員に関係のない業務内容についての情報は不要です。
個人情報である医療情報の取得は最小限に抑える必要がありますので、この点は非常に重要です。

その他、診療情報提供依頼書を作成する場面で注意すべきことについて

本人の同意の欄

本人の同意の欄は、本人の署名または記名押印を求めましょう。
通常、本人に署名をしてもらい、本人自身が主治医の元に提出することが多いですが、本人に署名をしてもらってから会社が主治医へ直接送付する場合もあります。
この件に関しては、別の記事で詳しく説明します。

 主治医からの診療情報をもらったら、産業医(会社の医師)の意見書を会社に発行しましょう。

主治医から書面で提供された診療情報に対して、産業医(会社の医師)は会社に従業上の措置としての意見書を書面で提出しましょう。
この書面は重要であり、後に紛争が生じた際に争点となる可能性がありますので、必ず書面で提出するようにしましょう。


診療情報提供依頼書の作成者

こちらについては、産業医(医師)本人か、当該従業員が属する会社自身が作成するのが原則になります。
産業保健活動では多くの書類を作らなければなりませんが、事業者自身が書類を作る、又は産業医自身が書類をつくる場合以外では、社会保険労務士法違反、行政書士法違反となる可能性がありますのでご注意ください。

 まとめ

私は、診療情報提供依頼書の作成は産業医業務の肝だと考えています。職場復帰支援、治療(障害)と仕事の両立支援についても必須です。
これからの時代は、この診療情報提供依頼書による主治医とのやり取りがきちんとできないと産業医として生きていくのは厳しいのではないかと思います。

診療情報提供依頼書や両立支援のために主治医に診療情報の提供を求める場合、当該労働者の業務内容を記載することがほとんどかと思います。
この際のポイントは、業務内容につき、誰が見ても理解できるような明確な記載をすることが重要です。
紙に記載されている情報量が多いと、主治医へ聞きたいことの論点がボケるかもしれませんので注意しましょう。
従業員の業務情報を診療情報提供依頼書に記載する際、必要な情報を箇条書きでわかりやすく記載しましょう。

この診療情報提供依頼書のお返事によっては、従業員がお仕事ができないという事態も生じますので、労働条件をきちんと理解して、最小限の情報を入手することが必要になります。

労働衛生コンサルタント事務所LAOでは、産業医・顧問医の受託をお受けしております。労務管理と一体になった産業保健業務を多職種連携で行います。

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この記事を書いた人

清水 宏泰

1975年生まれ。公衆衛生分野の専門家。現在はさまざまな組織の健康問題を予防するためにLAOにて行政書士・社労士・労働衛生コンサルタントとして活動しています。主に健康、心理系、産業保健の情報について発信していきます。

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