キャリアコンサルタント・心理学について|化学物質の管理を解説
2025/04/17 2023/04/17
【健診機関・産業医向け】じん肺健診における「じん肺の所見あり」の意味について

じん肺健診において、事後措置を行う際に、「じん肺の所見あり」という表現が法令上しばしば用いられます。
では、「じん肺の所見あり」とは、具体的にどのような状態を指すのでしょうか。
今回は、この点について解説いたします。
じん肺健診における「じん肺の所見あり」の意味について
「じん肺の所見あり」と区分、12階尺度について
まず、じん肺健診における胸部エックス線写真の判定には、「じん肺の所見あり」と「じん肺の所見なし」という2つのカテゴリがあります。
「じん肺の所見あり」と判定された場合には、じん肺法第4条に基づき、第一型から第四型までのいずれかに分類されます。
この分類は、数字が大きくなるにつれてエックス線写真上のじん肺の状態がより進行している、すなわち悪化していることを意味します。
ここで重要な点は、「じん肺の所見がない」と判定された場合は、そもそも第一型にも該当しない、ということです。
つまり、「第一型以上であればじん肺の所見あり」、「第一型未満=所見なし」と理解することができます。
じん肺法4条1項
第四条 じん肺のエックス線写真の像は、次の表の下欄に掲げるところにより、第一型から第四型までに区分するものとする。(2項省略)
e-Gov じん肺法
じん肺法第4条に基づき、じん肺健診において「じん肺の所見あり」と判定された方の胸部エックス線写真は、第一型から第四型までに分類されます。
この分類に従えば、所見の重症度を4段階で評価することができます。
しかし実際のエックス線写真の所見は、さらに詳細な12段階の尺度(12階尺度)によって評価されます。
この12階尺度は、「じん肺審査ハンドブック」に詳しく記載されており、じん肺健診に関わるすべての医師・技師が熟読すべき基本的なマニュアルとされています。
ただし、この「じん肺審査ハンドブック」に基づく基準は、昭和54年に制定された以降、新しい版が発行されておらず、現在の医学的水準や作業環境とは一致しない点が多々あるのが実情です。
そして、「じん肺健康診断結果証明書(様式第3号)」をご覧いただくと、
「4. エックス線写真の像」という項目に、「像」「区分」「タイプ」「粒状影」などの記載があることがわかります。
この部分が、エックス線写真の読影結果を12階尺度で記載する欄に該当します。
イ. 小陰影の区分
小陰影の評価は、たとえば「0/0」や「0/1」といった表記で行われます。
このうち、「1/0」以上の区分がつくと、「じん肺の所見あり」と判定されます。
また、「p」「q」「r」といったタイプは、影の大きさを表しており、これも診断の一要素です。
ロ. 大陰影の区分
大陰影については、「A」「B」「C」のいずれかの区分が記載されると、それは「じん肺の所見あり」となります。
【参考条文】
じん肺法第12条に基づき、じん肺の所見があると診断された労働者については、当該エックス線写真およびじん肺健康診断の結果を証明する書面、その他厚生労働省令で定める書面を、都道府県労働局長に提出する必要があります。
この際に用いる書面として、様式第3号による「じん肺健康診断の結果を証明する書面」を使用することが規定されています。
じん肺法
(事業者によるエックス線写真等の提出)
第十二条 事業者は、第七条から第九条の二までの規定によりじん肺健康診断を行つたとき、又は前条ただし書の規定によりエックス線写真及びじん肺健康診断の結果を証明する書面その他の書面が提出されたときは、遅滞なく、厚生労働省令で定めるところにより、じん肺の所見があると診断された労働者について、当該エックス線写真及びじん肺健康診断の結果を証明する書面その他厚生労働省令で定める書面を都道府県労働局長に提出しなければならない。
e-Gov じん肺法
じん肺法施行規則13条
(事業者によるエックス線写真等の提出の手続)
第十三条 法第十二条の規定による提出をしようとする事業者は、様式第二号による提出書にエックス線写真及び様式第三号によるじん肺健康診断の結果を証明する書面を添えて、当該作業場の属する事業場の所在地を管轄する都道府県労働局長(以下「所轄都道府県労働局長」という。)に提出しなければならない。
じん肺健康診断結果証明書(様式第3号)(第13条、第20条、第22条関係)
e-Gov じん肺法施行規則
じん肺の健康管理
これは、前述の第1項で定められた「じん肺のエックス線写真の像を第一型から第四型までに分類する」規定に続く内容となります。
じん肺法4条2項
2 粉じん作業に従事する労働者及び粉じん作業に従事する労働者であつた者は、じん肺健康診断の結果に基づき、次の表の下欄に掲げるところにより、管理一から管理四までに区分して、この法律の規定により、健康管理を行うものとする。
「じん肺の所見あり」と判定された場合は、エックス線写真の像に基づき、第一型から第四型までのいずれかの区分に分類されます。
この分類については、12階尺度の所見が記載された「じん肺健康診断結果証明書(様式第3号)」が都道府県労働局に提出され、その情報をもとに労働局が正式に区分を行います。
その後、この区分に基づき、労働者に対して適切な健康管理が実施されることになります。
この「健康管理を行うものとする」という文言が、いわゆる事後措置の実施へとつながる重要なポイントとなります。
前述のとおり、じん肺健診においては、「じん肺の所見あり」、すなわちエックス線写真の所見によってその後の対応が大きく異なります。したがって、エックス線写真の読影は極めて重要な工程となります。
例えば、実際には「管理区分二」に該当する状態であっても、健診を担当した医師がエックス線写真の読影において「管理区分一」相当と誤って判定した場合、エックス線写真の提出は労働局に行われず、「管理区分一」として確定してしまいます。
このような判断ミスにより、適切な健康管理や事後措置が行われないリスクが生じるのです。
そのため、じん肺健診を実施する医療機関において、どのような医師が読影を担当しているのか、その専門性や経験は非常に重要な要素となります。
まあ、そもそも、前回の「じん肺健康診断結果証明書(様式第3号)」を、しっかり見ていればそんなことは起きないはずなのですが。
まとめ
じん肺健診におけるエックス線写真の判定は、まず「じん肺の所見あり」と「じん肺の所見がない」に大きく分かれます。
じん肺の所見がない場合には、そもそも第一型にも該当せず、健康管理上の特別な措置は必要ありません。
一方で、じん肺の所見ありと判定された場合には、じん肺法第4条に基づき、エックス線写真の像により「第一型」から「第四型」までに分類されます。
数字が大きくなるにつれて、エックス線所見上の状態は悪化していると判断されます。
この型分類は、その後の健康管理区分(例:管理一〜管理四)へとつながり、労働者への適切な事後措置の判断基準となります。
前述のとおり、健診結果の流れを大きく左右するのはエックス線写真の読影結果であるため、読影の精度は非常に重要です。
産業医や安全衛生担当者は、この基本的な流れと重要性をしっかりと把握しておくことが求められます。
なお、じん肺健診における事後措置についての詳細は、別記事にて解説いたします。
労働衛生コンサルタント事務所LAOは、化学物質の自律的管理について、コンサルティング業務を行っております。
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化学物質の個別的な規制についても得意としています。
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