2023/06/23 2023/06/23
【プロ向け・安全衛生】もう一つの化学物質によるがんへの対策、安衛法28条3項の「がん原性指針」について
化学物質の自律的管理において、がん原性物質への対応が厳しくなりました。しかし、がん原性指針という規定は平成24年から存在しています。今回は、「がん原性指針」と化学物質の自律的管理との関係についてお話しします。
もう一つのがん対策、安衛法28条3項の「がん原性指針」について
労働安全衛生法28条3項と「がん原性指針」について解説
まず、労働安全衛生法28条3項において、厚生労働大臣が「化学物質による労働者の健康障害を防止するための指針」(以下のピンクハイライト部分)を公表することが定められました。
労働安全衛生法28条3項にある、「第五十七条の四第四項の規定による勧告又は第五十七条の五第一項の規定」(緑ハイライト部分)については、以下の労働安全衛生法第57条の4と57条の5にて青色ハイライト部分にしています。
簡単にまとめると以下のようになります。
①第五十七条の四第四項の規定による勧告→労働者の健康障害を防止するため必要があると認めるときの勧告
②第五十七条の五第一項の規定→がんその他の重度の健康障害を労働者に生ずるおそれのあるものについて結果を報告すべきことの指示
この①又は②がなされた化学物質と、それ以外で、「がんその他の重度の健康障害を労働者に生ずるおそれのある」化学物質に対する、労働者の健康障害を防止するための指針を厚生労働大臣は定めなければなりません。
(技術上の指針等の公表等)
第二十八条 厚生労働大臣は、第二十条から第二十五条まで及び第二十五条の二第一項の規定により事業者が講ずべき措置の適切かつ有効な実施を図るため必要な業種又は作業ごとの技術上の指針を公表するものとする。
2 厚生労働大臣は、前項の技術上の指針を定めるに当たつては、中高年齢者に関して、特に配慮するものとする。
3 厚生労働大臣は、次の化学物質で厚生労働大臣が定めるものを製造し、又は取り扱う事業者が当該化学物質による労働者の健康障害を防止するための指針を公表するものとする。
一 第五十七条の四第四項の規定による勧告又は第五十七条の五第一項の規定による指示に係る化学物質
二 前号に掲げる化学物質以外の化学物質で、がんその他の重度の健康障害を労働者に生ずるおそれのあるもの
4 厚生労働大臣は、第一項又は前項の規定により、技術上の指針又は労働者の健康障害を防止するための指針を公表した場合において必要があると認めるときは、事業者又はその団体に対し、当該技術上の指針又は労働者の健康障害を防止するための指針に関し必要な指導等を行うことができる。
労働安全衛生法
(化学物質の有害性の調査)
第五十七条の四 化学物質による労働者の健康障害を防止するため、既存の化学物質として政令で定める化学物質(第三項の規定によりその名称が公表された化学物質を含む。)以外の化学物質(以下この条において「新規化学物質」という。)を製造し、又は輸入しようとする事業者は、あらかじめ、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣の定める基準に従つて有害性の調査(当該新規化学物質が労働者の健康に与える影響についての調査をいう。以下この条において同じ。)を行い、当該新規化学物質の名称、有害性の調査の結果その他の事項を厚生労働大臣に届け出なければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときその他政令で定める場合は、この限りでない。
一 当該新規化学物質に関し、厚生労働省令で定めるところにより、当該新規化学物質について予定されている製造又は取扱いの方法等からみて労働者が当該新規化学物質にさらされるおそれがない旨の厚生労働大臣の確認を受けたとき。
二 当該新規化学物質に関し、厚生労働省令で定めるところにより、既に得られている知見等に基づき厚生労働省令で定める有害性がない旨の厚生労働大臣の確認を受けたとき。
三 当該新規化学物質を試験研究のため製造し、又は輸入しようとするとき。
四 当該新規化学物質が主として一般消費者の生活の用に供される製品(当該新規化学物質を含有する製品を含む。)として輸入される場合で、厚生労働省令で定めるとき。
2 有害性の調査を行つた事業者は、その結果に基づいて、当該新規化学物質による労働者の健康障害を防止するため必要な措置を速やかに講じなければならない。
3 厚生労働大臣は、第一項の規定による届出があつた場合(同項第二号の規定による確認をした場合を含む。)には、厚生労働省令で定めるところにより、当該新規化学物質の名称を公表するものとする。
4 厚生労働大臣は、第一項の規定による届出があつた場合には、厚生労働省令で定めるところにより、有害性の調査の結果について学識経験者の意見を聴き、当該届出に係る化学物質による労働者の健康障害を防止するため必要があると認めるときは、届出をした事業者に対し、施設又は設備の設置又は整備、保護具の備付けその他の措置を講ずべきことを勧告することができる。
5 前項の規定により有害性の調査の結果について意見を求められた学識経験者は、当該有害性の調査の結果に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。ただし、労働者の健康障害を防止するためやむを得ないときは、この限りでない。
第五十七条の五 厚生労働大臣は、化学物質で、がんその他の重度の健康障害を労働者に生ずるおそれのあるものについて、当該化学物質による労働者の健康障害を防止するため必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該化学物質を製造し、輸入し、又は使用している事業者その他厚生労働省令で定める事業者に対し、政令で定める有害性の調査(当該化学物質が労働者の健康障害に及ぼす影響についての調査をいう。)を行い、その結果を報告すべきことを指示することができる。
2 前項の規定による指示は、化学物質についての有害性の調査に関する技術水準、調査を実施する機関の整備状況、当該事業者の調査の能力等を総合的に考慮し、厚生労働大臣の定める基準に従つて行うものとする。
3 厚生労働大臣は、第一項の規定による指示を行おうとするときは、あらかじめ、厚生労働省令で定めるところにより、学識経験者の意見を聴かなければならない。
4 第一項の規定による有害性の調査を行つた事業者は、その結果に基づいて、当該化学物質による労働者の健康障害を防止するため必要な措置を速やかに講じなければならない。
5 第三項の規定により第一項の規定による指示について意見を求められた学識経験者は、当該指示に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。ただし、労働者の健康障害を防止するためやむを得ないときは、この限りでない。
安衛法28条3項による「化学物質による労働者の健康障害を防止するための指針」
上記のように、安衛法28条3項により、厚生労働大臣が指針を定めることが必要ですが。
実は、平成24年10月10日、「労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づき厚生労働大臣が定める化学物質 による健康障害を防止するための指針 」が公表されました。その後も改正が重ねられています。
これが、「がん原性指針」と呼ばれるものです。
この呼び名、「がん原性指針」は、厚生労働省HPにも公式に記載があり、公式ですのでこの記載を「がん原性指針」と呼びます。
不思議な状況ですが、「がん原性指針」は労働安全衛生法28条3項を根拠としていて、労働全衛生規則577条2項の「がん原性物質」とは関係ないのです。
労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づき厚生労働大臣が定める化学物質 による健康障害を防止するための指針
引用:厚生労働省HP https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_07948.html
「がん原性指針」と化学物質の自律的管理の規定について
さて、「がん原性指針」と化学物質の自律的管理の規定の関係ですが、別規定になります。
先に結論を申し上げますと、二つの関係は以下のようになります。
①労働安全衛生法28条3項の「がん原性指針」は、「対象物質」をターゲットにしており
②化学物質の自律的管理における、安衛法577条の2の規定は「がん原性物質」をターゲットにしている。
この二つの規定が別であることと、ターゲットとしている物質を混同しないようにしましょう。
化学物質の自律的管理の規定ができてからも、「がん原性指針」が廃止されたわけではないので、両方の規定が適用されることになります。
両方の規定で同じ内容の部分は、2回行う必要がないので、化学物質の自律的管理において行うべきことをしっかり行った上で、がん原性指針にのみ記載のある部分を足してゆくことでよいかと思います。
では、自律的管理の規制が主になっていますので、化学物質の自律的管理にかぶらない部分のがん原性指針の内容に触れていきたいと思います。
「がん原性指針」の解説と、「対象物質」について
「対象物質等」について
「がん原性指針」においては、「対象物質」がターゲットでした。こちらについては、がん原性指針に対象物質としてCAS登録番号と一緒に記載されています。CAS番号があると調べやすいですよね。
1 趣旨
労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づき厚生労働大臣が定める化学物質 による健康障害を防止するための指針
この指針は、労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づき厚生労働大臣が定める化学物質(以下「対象物質」という。)又は対象物質を含有する物(対象物質の含有量が重量の1パーセント以下のものを除く。以下「対象物質等」という。)を製造し、又は取り扱う業務に関し、対象物質による労働者の健康障害の防止に資するため、その製造、取扱い等に際し、事業者が講ずべき措置について定めたものである。
厚生労働省 令和2年2月7日付け健康障害を防止するための指針公示第27号
この「対象物質」と呼ぶものの定義は知っておきましょう(以下の緑ハイライトです)
対象物質が化学物質の呼び名であり、この対象物質を重量の1%超含有する物を「対象物質等」と呼びます。
このように、濃度、重量パーセントについて、「対象物質の含有量が重量の1パーセント以下のものを除く」と記載されています。
この対象物質の中にはすでに個別規制されている特化物や、有機溶剤が含まれていることは知っておきましょう。
対象物質については、古いリーフレットではありますが、以下のように、対象物質は、長期毒性試験の結果、ほ乳動物にがんを生じさせることが判明したもの、または国際機関などで発がんのおそれがあるとされているものと明記しています。
<指針の対象物質> 2ページの表にある34物質とこれらを重量の1%を超えて含有するものをあわせたもの(「対象物質等」という)が指針の対象です。 これらの物質は、長期毒性試験の結果、ほ乳動物にがんを生じさせることが判明したもの、または国際機関などで発がんのおそれがあるとされているものです。労働者がこれらの物質に長期間ばく露した場合、がんを生じる可能性が否定できないことから、「化学物質による健康障害を防止するための指針」の対象としています。
しつこいですが、再度まとめます。
労働安全衛生法28条3項の「がん原性指針」→ターゲットは「対象物質」
安衛則577条の2の規定→化学物質の自律的な管理→ターゲットは「がん原性物質」
でしたよね。
調べてみたのですが、「安衛則577条の2のがん原性物質」≠「対象物質」≠「リスクアセスメント対象物」のようです。
近いうちにまとめて、このブログで公表します。
「がん原性指針」における対象物質へのばく露を低減するための措置について
こちらの「ばく露を低減」については、リスクアセスメントというより、労働衛生の3管理をベースにどのように行うかが記載されています。化学物質の自律的な管理においても、リスクアセスメントを主な対策にするとはいえ、労働衛生の3管理を無視することはできないので、労働安全衛生規則577条の2において、ばく露低減措置を行う際に、この「がん原性指針」の内容を参考にするとよいと思われます。
労働安全衛生規則(ばく露の程度の低減等)
第五百七十七条の二 事業者は、リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う事業場において、リスクアセスメントの結果等に基づき、労働者の健康障害を防止するため、代替物の使用、発散源を密閉する設備、局所排気装置又は全体換気装置の設置及び稼働、作業の方法の改善、有効な呼吸用保護具を使用させること等必要な措置を講ずることにより、リスクアセスメント対象物に労働者がばく露される程度を最小限度にしなければならない。
2 事業者は、前項の規定により講じた措置について、関係労働者の意見を聴くための機会を設けなければならない。
3 事業者は、次に掲げる事項(第三号については、がん原性がある物として厚生労働大臣が定めるもの(以下「がん原性物質」という。)を製造し、又は取り扱う業務に従事する労働者に限る。)について、一年を超えない期間ごとに一回、定期に、記録を作成し、当該記録を三年間(第二号(リスクアセスメント対象物ががん原性物質である場合に限る。)及び第三号については、三十年間)保存するとともに、第一号及び第四号の事項について、リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う業務に従事する労働者に周知させなければならない。
一 第一項の規定により講じた措置の状況
二 リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う業務に従事する労働者のリスクアセスメント対象物のばく露の状況
三 労働者の氏名、従事した作業の概要及び当該作業に従事した期間並びにがん原性物質により著しく汚染される事態が生じたときはその概要及び事業者が講じた応急の措置の概要
四 前項の規定による関係労働者の意見の聴取状況
4 前項の規定による周知は、次に掲げるいずれかの方法により行うものとする。
一 当該リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う各作業場の見やすい場所に常時掲示し、又は備え付けること。
二 書面を、当該リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う業務に従事する労働者に交付すること。
三 磁気ディスク、光ディスクその他の記録媒体に記録し、かつ、当該リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う各作業場に、当該リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う業務に従事する労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。
作業環境測定について
がん原性指針では、物質ごとに作業環境測定の実施方法について説明されています。また、作業環境測定の結果及び結果の評価の記録を30年間保存するよう努めることとされています。
一方、以前の厚生労働省のリーフレットでは、個別の規制が存在する場合はその規制が優先されることが明記されています。
対象物質等のうち、有機溶剤中毒予防規則(有機則)、特定化学物質障害予防規則(特化則)が適用 されるものは、有機則、特化則の規定が優先されます。 ただし、作業環境測定の結果の記録、評価の記録の保存は、有機則、特化則で3年間のものについて、 指針では30年間の保存を求めています。また、有機則、特化則に基づく測定は、作業環境測定士が 実施してください。
厚生労働省リーフレット 化学物質による健康障害防止指針 (がん原性指針)を改正しました ~対象物質の追加と適用範囲の改正~
つまり、特化則や有機則で個別の規制がある場合は、そちらが優先されるということになります。
「対象物質」には、特化物も含まれますが、特化物の特別管理物質は作業環境測定の結果の30年間保存が義務になります。
(抜粋)
4作業環境測定について (1)N,N-ジメチルホルムアミド等有機溶剤業務については有機則に定めるところにより、パラ-ニトロクロルベンゼン製造・取扱い業務については特化則に定めるところにより、作業環境測定及び測定の結果の評価を行うこととするほか、作業環境測定の結果及び結果の評価の記録を30年間保存するよう努めること。
労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づき厚生労働大臣が定める化学物質 による健康障害を防止するための指針
厚生労働省 令和2年2月7日付け健康障害を防止するための指針公示第27号
また、労働安全衛生規則577条の2第3項2号の記録、「労働者のリスクアセスメント対象物のばく露の状況」については、以下の通達があり、作業環境測定等により確認した労働者のばく露の程度について、記録を30年間保存しなければなりませんので、結局、労衛則577条の2のがん原性物質の作業環境測定の記録は30年間保存しなければいけないようです。
ウ 「労働者のリスクアセスメント対象物のばく露の状況」については、実際にばく露の程度を測定した結果の記録等の他、マニュアル等を作成した場合であって、その作成過程において、実際に当該マニュアル等のとおり措置を講じた場合の労働者のばく露の程度をあらかじめ作業環境測定等により確認している場合は、当該マニュアル等に従い作業を行っている限りにおいては、当該マニュアル等の作成時に確認されたばく露の程度を記録することでも差し支えないこと。
以上より、このがん原性指針の「対象物質」が、特化物の特別管理物質、または労衛則577条の2のがん原性物質に該当するなら、30年保存は義務となります。
「特別管理物質」及び「がん原性物質」にあたらず「対象物質」にのみ該当する場合は、30年保存は努力義務となります。
労働衛生教育について
がん原性指針については、教育についても記載があります。教育の時間は4.5時間以上としましょう。
(抜粋)
ア 対象物質の性状及び有害性
イ 対象物質等を使用する業務
ウ 対象物質による健康障害、その予防方法及び応急措置
エ 局所排気装置その他の対象物質へのばく露を低減するための設備及びそれらの保守、点検の方法
オ 作業環境の状態の把握 カ 保護具の種類、性能、使用方法及び保守管理
キ 関係法令
(2)上記の事項に係る労働衛生教育の時間は総じて4.5時間以上とすること。労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づき厚生労働大臣が定める化学物質 による健康障害を防止するための指針
厚生労働省 令和2年2月7日付け健康障害を防止するための指針公示第27号
「がん原性指針における」の労働者の把握について
こちらも記録の保存について、記載はありますが、特化則38条の4の規定と記録する項目は同じで、記録の頻度も「1月を」超えない機関」であり、保存も「30年間保存」になります。
ただ、特化則の特別管理物質や、安衛則577条の2と違い、「がん原性指針」においては保存はは努力義務です。
もし、「がん原性物質」にあたらず「対象物質」にのみ該当する場合は、30年保存は努力義務となります。
このがん原性指針の通りに行うと、特化物の記録と同様の範囲でしか記録が残らないということになります。
6 労働者の把握について 対象物質等を製造し、又は取り扱う業務に常時従事する労働者について、1月を超えない期間ごとに次の事項を記録すること。
(1)労働者の氏名
(2)従事した業務の概要及び当該業務に従事した期間
(3)対象物質により著しく汚染される事態が生じたときは、その概要及び講じた応急措置の概要 なお、上記の事項の記録は、当該記録を行った日から30年間保存するよう努めること。
「労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づき厚生労働大臣が定める化学物質 による健康障害を防止するための指針 」
令和2年2月7日付け健康障害を防止するための指針公示第27号
参考までに特化則38条の4です。
特化則
(作業の記録)
第三十八条の四 事業者は、特別管理物質を製造し、又は取り扱う作業場において常時作業に従事する労働者について、一月を超えない期間ごとに次の事項を記録し、これを三十年間保存するものとする。
一 労働者の氏名
二 従事した作業の概要及び当該作業に従事した期間
三 特別管理物質により著しく汚染される事態が生じたときは、その概要及び事業者が講じた応急の措置の概要
e-Gov 特化則
こちらについては、特化物の特別管理物質に関する作業記録の例をエクセルで以下に掲載しておきます。
こちらは、特定化学物質・四アルキル鉛等作業主任者テキスト(中央労働災害防止協会編)に記載の例を参照にして作成しています。事案は架空の事案です。
つまり、がん原性指針の項目に追加して、今回、化学物質の自律的な感じで求められているリスクアセスメントの結果等に基づき講じた措置の状況や、ばく露の状況などの記録が求められているため、追加的な対応が必要になります。
危険有害性等の表示及び譲渡提供時の文書交付について
こちらに関してはSDS交付義務です。リスクアセスメント対象物のSDS対応をきちんと行えば問題ないかと思われます。
7 危険有害性等の表示及び譲渡提供時の文書交付について (1)対象物質等のうち、労働安全衛生法第57条及び第57条の2の規定の対象となるもの(以下「表示・通知対象物」という。)を譲渡し、又は提供する場合は、これらの規定に基づき、容器又は包装に名称等の表示を行うとともに、相手方に安全データシート(以下「SDS」という。)の交付等により名称等を通知すること。
「労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づき厚生労働大臣が定める化学物質 による健康障害を防止するための指針 」
令和2年2月7日付け健康障害を防止するための指針公示第27号
まとめ
化学物質の自律的管理においては、リスクアセスメントを主体とした化学物質の対応が求められています。そして、その中で、労働安全衛生規則577条の2において、がん原性物質について告示がなされています。
化学物質の自律的管理が始まる前から、がん原性指針という指針があり、対象物質等について、事業者が講ずべき措置が規定されていました。
この規定は別規定になります。両方に記載されていることを2回する必要はありませんが、化学物質の自律的管理にのみ記載されている規定と、がん原性指針にのみ記載されている規定があり、これらはそれぞれの規定により実施しなければなりません。
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