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【医師向け】特化物健診の一次健診、二次健診、配転後健診と医師の診察項目をわかりやすく解説

健康診断において、特殊健診を苦手とされる医師の先生方は結構おられます。

① 特定化学物質障害予防規則(以下、特化則)の特殊健診について教えてもらおうにも、教えてくれる人がいないので、何を診察していいかからない。
② 特化物はマニアックすぎて、難しい。
③ 研修医の時に、特殊健診なんてだれも教えてくれなかった。

医師が健康診断のアルバイトを行う際、一般健診のみを想定して勤務地に赴いたところ、現場で初めて特殊な健診を行う必要があることを知らされ、戸惑うこともあるようです。

今回は、特化物の特殊健康の診察項目について詳しく理解できる記事を作成することを目指しました。

特化物の特殊健診について

特化物健診と有機溶剤健診 

化学物質の特殊健診と言えば、メジャーなものとして、特化物健診と、有機溶剤健診があります。では、特化物健診ですが、有機溶剤健診と比べてみましょう。
有機溶剤健診は、有機の溶剤という化学物質のグループで、これらにより発生する健康障害は概ね似た特徴を持っていますが、中には独自の個性を持つ有機溶剤も存在します。そこで、その個性をきちんと勉強しましょうということでした。

それに対して、特化物は健康障害をおこしそうな物質、健康障害をひき起こし社会的に問題となった物質等がどんどん新規に追加されています。そのため、追加される物質は、基本的にそれぞれが独自の特性を持っています。偶然、似たような性質を持つ物質が追加されることもありますが、基本的にはそれぞれが異なる物質として扱われます。

実は、この視点が重要なのです。
特化物は、物質ごとみんな別物で性格が全く違うということです。
覚えておきましょう。

特化物健診の条文 (特化則39条)

特化物の健康診断については、特化則39条に記載があります。まず、特化則39条1項を見てみましょう。
特化則39条1項は特化物の雇入時健診と定期健診についての記載になります。

特化則(健康診断の実施)

第三十九条 事業者は、令第二十二条第一項第三号の業務(石綿等の取扱い若しくは試験研究のための製造又は石綿分析用試料等(石綿則第二条第四項に規定する石綿分析用試料等をいう。)の製造に伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務及び別表第一第三十七号に掲げる物を製造し、又は取り扱う業務を除く。)に常時従事する労働者に対し、別表第三の上欄に掲げる業務の区分に応じ、雇入れ又は当該業務への配置替えの際及びその後同表の中欄に掲げる期間以内ごとに一回、定期に、同表の下欄に掲げる項目について医師による健康診断を行わなければならない。

e-Gov 特定化学物質障害予防規則

そして、物質ごとみんな別物で性格が全く違うため、健康診断項目は1物質につき1式あります。

特化物健診は、一次健診と配転後健診、そして二次健診に分かれます。
特化物の一次健康診断につき、健診項目が記載されているのが、
「特化則 別表第3(第39条関連)」です。以下に示します。

引用:特定化学物質障害予防規則別表3


この表を見ていただきますと、種類によって、健康診断の項目が違いますよね。有機溶剤のように健康障害が似ているわけではないので、一種類ずつの別物になります。健康診断を行う医師は、どの物質でどのようなことを問診・診察しなければならないのか知っておかなければなりません。

もし、健康診断の業務に従事するドクターが、特定の健康診断項目が記載されていない受診票を使用していることを知った場合、健康診断前にこの別表3を読み、どのような項目を診察する必要があるかをチェックしておくことが重要です。

特化物健診における一次健診の内容について

では、具体的にどのような健診内容なのか一例を見てみましょう。一例として、一次健診に関する別表第3のマンガンを見ましょう。

さらに抜き出して、個別に解説いたします。

特化則 別表3(第39条関連)
59 マンガン又はその化合物(これらの物をその重量の一パーセントを超えて含有する製剤その他の物を含む。)を製造し、又は取り扱う業務
一 業務の経歴の調査
二 作業条件の簡易な調査
三 マンガン又はその化合物によるせき、たん、仮面様顔貌、膏こう顔、流涎えん、発汗異常、手指の振戦、書字拙劣、歩行障害、不随意性運動障害、発語異常等のパーキンソン症候群様症状の既往歴の有無の検査
四 せき、たん、仮面様顔貌、膏こう顔、流涎えん、発汗異常、手指の振戦、書字拙劣、歩行障害、不随意性運動障害、発語異常等のパーキンソン症候群様症状の有無の検査
五 握力の測定

(1)「一 業務の経歴の調査」について
こちらについては、業務の経歴なのでどのような業務に就いていたのかを記録することになります。

(2)「二 作業条件の簡易な調査」
こちらについては有機溶剤健診を行うときの「作業条件の簡易な調査」と同じです。

(3)「三 マンガン又はその化合物によるせき・・・の既往歴の有無の検査」について
ここは既往歴の有無を調べるのですが、重要なのは、健康診断の項目で「マンガン又はその化合物による 」という文言があることです。
ですので、例えば、「せき」、「たん」の既往歴がある方でも、「マンガン又はその化合物による」と考えられない場合については既往歴があったとする必要がないということになります。
医師は、この点につき、聞き取りを行い、健康診断の診察項目に対応することとなります。

(4)「四 せき、たん・・・・のパーキンソン症候群様症状の有無の検査」
こちらについては症状があれば記載するということになります。

以上が、マンガンの一次健診に特化物健診になります。診察時にこれらの項目をチェックしていきます。

特化物の配転後健診

特化則39条1項は特化物の雇入時健診と定期健診についての記載でしたが、次に、特化則39条2項を確認しましょう。こちらは配転後健診の規定になります。
配転後健診は一部の特化物に対してのみ行うことになります。
配転後健診という言葉は法令上ありませんが、一般的に配転後健診と呼ばれています。では、見ていきましょう。

特化則39条2項
 事業者は、令第二十二条第二項の業務(石綿等の製造又は取扱いに伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務を除く。)常時従事させたことのある労働者で、現に使用しているものに対し、別表第三の上欄に掲げる業務のうち労働者が常時従事した同項の業務の区分に応じ、同表の中欄に掲げる期間以内ごとに一回、定期に、同表の下欄に掲げる項目について医師による健康診断を行わなければならない。

引用元:引用元のURL

配転後健診は、特定の特化物の業務に従事していた労働者に対して行われるべき健康診断です。つまり、業務の変更等により特化物を扱わなくなった場合でも、当該労働者が退職するまで健康診断を継続する必要があります。

労働安全衛生法施行令22条2項の部分を黄色ハイライトで以下に示します。

(健康診断を行うべき有害な業務)
第二十二条 法第六十六条第二項前段の政令で定める有害な業務は、次のとおりとする。
一 第六条第一号に掲げる作業に係る業務及び第二十条第九号に掲げる業務
二 別表第二に掲げる放射線業務
三 別表第三第一号若しくは第二号に掲げる特定化学物質(同号5及び31の2に掲げる物並びに同号37に掲げる物で同号5又は31の2に係るものを除く。)を製造し、若しくは取り扱う業務(同号8若しくは32に掲げる物又は同号37に掲げる物で同号8若しくは32に係るものを製造する事業場以外の事業場においてこれらの物を取り扱う業務及び同号3の3、11の2、13の2、15、15の2、18の2から18の4まで、19の2から19の4まで、22の2から22の5まで、23の2、33の2若しくは34の3に掲げる物又は同号37に掲げる物で同号3の3、11の2、13の2、15、15の2、18の2から18の4まで、19の2から19の4まで、22の2から22の5まで、23の2、33の2若しくは34の3に係るものを製造し、又は取り扱う業務で厚生労働省令で定めるものを除く。)、第十六条第一項各号に掲げる物(同項第四号に掲げる物及び同項第九号に掲げる物で同項第四号に係るものを除く。)を試験研究のため製造し、若しくは使用する業務又は石綿等の取扱い若しくは試験研究のための製造若しくは石綿分析用試料等の製造に伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務
四 別表第四に掲げる鉛業務(遠隔操作によつて行う隔離室におけるものを除く。)
五 別表第五に掲げる四アルキル鉛等業務(遠隔操作によつて行う隔離室におけるものを除く。)
六 屋内作業場又はタンク、船倉若しくは坑の内部その他の厚生労働省令で定める場所において別表第六の二に掲げる有機溶剤を製造し、又は取り扱う業務で、厚生労働省令で定めるもの

2 法第六十六条第二項後段の政令で定める有害な業務は、次の物を製造し、若しくは取り扱う業務(第十一号若しくは第二十二号に掲げる物又は第二十四号に掲げる物で第十一号若しくは第二十二号に係るものを製造する事業場以外の事業場においてこれらの物を取り扱う業務、第十二号若しくは第十六号に掲げる物又は第二十四号に掲げる物で第十二号若しくは第十六号に係るものを鉱石から製造する事業場以外の事業場においてこれらの物を取り扱う業務及び第九号の二、第十三号の二、第十四号の二、第十四号の三、第十五号の二から第十五号の四まで、第十六号の二若しくは第二十二号の二に掲げる物又は第二十四号に掲げる物で第九号の二、第十三号の二、第十四号の二、第十四号の三、第十五号の二から第十五号の四まで、第十六号の二若しくは第二十二号の二に係るものを製造し、又は取り扱う業務で厚生労働省令で定めるものを除く。)又は石綿等の製造若しくは取扱いに伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務とする。
一 ベンジジン及びその塩
一の二 ビス(クロロメチル)エーテル
二 ベータ―ナフチルアミン及びその塩
三 ジクロルベンジジン及びその塩
四 アルフア―ナフチルアミン及びその塩
五 オルト―トリジン及びその塩
六 ジアニシジン及びその塩
七 ベリリウム及びその化合物
八 ベンゾトリクロリド
九 インジウム化合物
九の二 エチルベンゼン
九の三 エチレンイミン
十 塩化ビニル
十一 オーラミン
十一の二 オルト―トルイジン
十二 クロム酸及びその塩
十三 クロロメチルメチルエーテル
十三の二 コバルト及びその無機化合物
十四 コールタール
十四の二 酸化プロピレン
十四の三 三酸化二アンチモン
十五 三・三′―ジクロロ―四・四′―ジアミノジフェニルメタン
十五の二 一・二―ジクロロプロパン
十五の三 ジクロロメタン(別名二塩化メチレン)
十五の四 ジメチル―二・二―ジクロロビニルホスフェイト(別名DDVP)
十五の五 一・一―ジメチルヒドラジン
十六 重クロム酸及びその塩
十六の二 ナフタレン
十七 ニツケル化合物(次号に掲げる物を除き、粉状の物に限る。)
十八 ニツケルカルボニル
十九 パラ―ジメチルアミノアゾベンゼン
十九の二 砒ひ素及びその化合物(アルシン及び砒ひ化ガリウムを除く。)
二十 ベータ―プロピオラクトン
二十一 ベンゼン
二十二 マゼンタ
二十二の二 リフラクトリーセラミックファイバー
二十三 第一号から第七号までに掲げる物をその重量の一パーセントを超えて含有し、又は第八号に掲げる物をその重量の〇・五パーセントを超えて含有する製剤その他の物(合金にあつては、ベリリウムをその重量の三パーセントを超えて含有するものに限る。)
二十四 第九号から第二十二号の二までに掲げる物を含有する製剤その他の物で、厚生労働省令で定めるもの

3 法第六十六条第三項の政令で定める有害な業務は、塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、弗ふつ化水素、黄りんその他歯又はその支持組織に有害な物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務とする。

e-Gov 労働安全衛生法施行令

これらの物質については、配転後健診が必要ですので注意しましょう。

特化物による健康障害は、時間が経ってから発生する場合もあります。そのため、特化物を取り扱わなくなったからといって健康診断を中止してしまうと、時間が経ってから生じた、これらの健康障害を見逃す可能性があります。

したがって、「現に使用しているものに対し」ということで、その事業所で働いている労働者に対して退職するまで、健康診断が行われる場合があります。

ここで、退職するまで配転後健診を行ったのち、退職後の労働者についてどうなるかは以下の記事を参照してください。
多くの場合は健康管理手帳で対応することになります。


健康診断の内容は「別表3」に記載されています。別表3では、定期健診と配転後健診の内容が異なる場合がありますので、注意が必要です(例:1,2-ジクロロプロパンなど)。

配転後健診について詳しく解説した記事は、以下のリンク先でご覧いただけます。

 特化物健診の二次健診

そして、二次健診ですが、39条3項にこのような記載があります。

特化則39条3項 事業者は、前二項の健康診断(シアン化カリウム(これをその重量の五パーセントを超えて含有する製剤その他の物を含む。)、シアン化水素(これをその重量の一パーセントを超えて含有する製剤その他の物を含む。)及びシアン化ナトリウム(これをその重量の五パーセントを超えて含有する製剤その他の物を含む。)を製造し、又は取り扱う業務に従事する労働者に対し行われた第一項の健康診断を除く。)の結果、他覚症状が認められる者、自覚症状を訴える者その他異常の疑いがある者で、医師が必要と認めるものについては、別表第四の上欄に掲げる業務の区分に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる項目について医師による健康診断を行わなければならない。

引用元:引用元のURL

ここで「前二項の健康診断」というのがありますが、これは39条1項と39条2項の健康診断を指しています。39条1項は雇用時の健康診断と定期的な健康診断を指します。39条2項は、配転後健康診断を指します。

これらの健康診断で異常が疑われる場合、医師が必要と認めるものについては二次健診を実施する必要があります。

つまり、医師が必要と認めなかった場合は二次健診は必要ありません。
また、二次健診は一次健診とは異なる項目であり、特化則別表4に記載されています。

それでは、別表第4のマンガンに目を通してみましょう。
別表3よりも詳細な検査が求められています。

特化則 別表4(第39条関連)
48 マンガン又はその化合物(これらの物をその重量の一パーセントを超えて含有する製剤その他の物を含む。)を製造し、又は取り扱う業務
一 作業条件の調査
二 呼吸器に係る他覚症状又は自覚症状がある場合は、胸部理学的検査及び胸部のエツクス線直接撮影による検査
三 パーキンソン症候群様症状に関する神経学的検査
四 医師が必要と認める場合は、尿中又は血液中のマンガンの量の測定

こちらで本当に特定物質による障害が発生しているかを診断していくことになります。
特定健診で特定物質による障害であることが確認された場合には、労災の対応が必要であることを知っておきましょう。
もちろん、この二次健診では特定物質による障害かを完全に確定することはできない可能性があります。
その場合は、医療機関を受診し、確定していく必要があります。

 まとめ

まとめますと

特化則39条1項は特化物の雇入時健診と定期健診についての記載
特化則39条2項は特化物の配転後健診についての記載
特化則39条3項は特化物の二次健診についての記載

となります。
これらは、特化則、別表3と別表4に特化物ごとに健診項目が定められています。
健診を行う医師は、これらの健診項目についてきちんと知っておかなければなりません。
医師の診察については、健康診断では多くの場合、受診表にチェック項目が記載されていると思いますが、もし白紙であれば、これらの項目が医師が覚えておく必要があります。
しかし、各項目については医師にとっては特殊な診察でないので項目を知っておけば対応可能かと思います。
結局、医師はこの特化物健診の条文上のシステム(一時健診、二次健診、配転後健診)と、別表3、別表4を知っておけば特化物の特殊健診は難しくありません。

健康診断を行うクリニックは、これらの項目をもれなく確認できるような健診システムの構築を行いましょう。

健康診断を受けられる事業所は、健診医に、医師がこれらの項目を知っているか、受診票にチェック項目があるかを確認することで、健診の精度を確認できるかもしれません。

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この記事を書いた人

清水 宏泰

1975年生まれ。公衆衛生分野の専門家。現在はさまざまな組織の健康問題を予防するためにLAOにて行政書士・社労士・労働衛生コンサルタントとして活動しています。主に健康、心理系、産業保健の情報について発信していきます。

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