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【人事労務・産業医向け】雇用契約時に緊急連絡先の聞き取りはしておきましょう

産業医として働く中で、時々、クライエント企業の人事労務担当者から「従業員が無断で欠勤しており、本人の携帯電話に連絡しても応答がない状況です。どう対応すればよいでしょうか?」という相談を受けることがあります。このような場合、ラインやメールに連絡しても反応がないことが多いでしょう。

何も今回は、このような状況に役立つアドバイスをお話しします。

雇用契約時に緊急連絡先の聞き取りはしておきましょう

 無断欠勤があり、従業員本人に連絡が取れない場合のために、緊急連絡先は聞いておきましょう

通常、会社では無断欠勤が発生した際、電話(携帯)、メール、LINEなどの様々なコミュニケーション手段を用いて本人との連絡を試みます。しかし、これらの方法でも連絡が取れないことはしばしば発生します。これにより会社は業務の滞りや、従業員本人への連絡に手間がかかることがあります。また、無断欠勤している従業員は労働契約を履行していないことになり、これは民事上の義務違反となるため、本人にも不利な状況が生じます。さらに、連絡が1日程度で取れない場合はまだしも、何日も取れないケースについても懸念されます。

しかしながら、従業員が病気で自宅で倒れている、または事故に遭い意識不明の状態にある可能性も考慮しなければなりません。特にメンタルヘルス不調がある、メンタル疾患の既往がある場合や、一人暮らしで家族のサポートがない場合の懸念は大きいです。

このような状況に備えるため、本人の緊急連絡先だけでなく、安否を確認できる別の緊急時連絡先を知っておくことが重要です。

また、この連絡先は、事前に本人から入手しておく必要があります。従業員が連絡不可能な場合だけでなく、業務中の事故で意識不明になった場合にも、この緊急連絡先への連絡が可能です。

したがって、従業員を雇用する際には、本人以外の緊急連絡先を確認し、入手しておくことが望ましいです。緊急連絡先を入手する際は、個人情報にあたるため、その使用目的を明確に伝えることが重要です。

緊急連絡先の取り扱いについては、就業規則に記載することをお勧めします。

無断欠勤で連絡が取れないときの対応について 

 会社は、緊急時に産業医の意見を聴いて行動することも有効な手段です

また、従業員が自傷他害の危険性を持ち、緊急な対応が必要なケースも考慮する必要があります。例えば、従業員が一人暮らしで、従業員本人やその家族と連絡が取れず、会社や産業医が、その従業員が重度のメンタルヘルスの問題を抱えていることを知っている場合などが当たります。

このような状況では、産業医は労働者の健康を確保するために必要と判断した場合、事業者に対して労働者の健康管理に関する必要な勧告を行うことができます(労働安全衛生法 第13条 第5項)。そのため、事業者である会社は産業医の意見を聴き、その意見を参考にすることが考えられます。

状況によっては、会社は産業医と協議の上で従業員の自宅訪問を検討することもあるでしょう。

しかし、業務中でない、自宅にいる従業員に対して会社や産業医が直接介入することは難しい問題を含みます。しかし、クライアント企業先で重大な問題が発生した場合、特に「自殺」等が起きた場合の周囲の従業員へのサポートは重要な課題となりますので、放置すると後手に回ってしまうかもしれません。

労働安全衛生法
(産業医等)
第十三条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、医師のうちから産業医を選任し、その者に労働者の健康管理その他の厚生労働省令で定める事項(以下「労働者の健康管理等」という。)を行わせなければならない。
2 産業医は、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識について厚生労働省令で定める要件を備えた者でなければならない。
3 産業医は、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識に基づいて、誠実にその職務を行わなければならない。
4 産業医を選任した事業者は、産業医に対し、厚生労働省令で定めるところにより、労働者の労働時間に関する情報その他の産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要な情報として厚生労働省令で定めるものを提供しなければならない。
5 産業医は、労働者の健康を確保するため必要があると認めるときは、事業者に対し、労働者の健康管理等について必要な勧告をすることができる。この場合において、事業者は、当該勧告を尊重しなければならない。
6 事業者は、前項の勧告を受けたときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該勧告の内容その他の厚生労働省令で定める事項を衛生委員会又は安全衛生委員会に報告しなければならない。

e-Gov 労働安全衛生法

企業としては、このような緊急時に連絡を取ることができ、対応してもらえるかどうかは産業医を選定するための重要な基準とすべきでしょう。

緊急性がない場合には、特定記録やレターパック(赤)が有効な場合があります

このように、従業員に自傷や他害の疑いがあるという状況は起こりえるのですが、それほど頻度が高くないかと思います。一般的なのは、無断欠勤が連続しているが、すぐに危険があるとは思われない場合で本人の状況がわからない場合です。例えば、以下のような例はどうでしょうか。

集合住宅の社宅に居住している一人暮らしの従業員が無断欠勤して、もう3日間、連絡が取れなくなった。会社のみんなが心配しているが、同じ社宅に住んでいる従業員の方が、社宅の共用部ですれ違ったと言っているのでとりあえず、生きているようである。

このような状況では、従業員が体調不良かもしれないが、自宅に押しかけるのは適切ではないかもしれません。しかし、欠勤を放置すると労務管理上の問題が生じ、従業員本人にも不利な可能性があります。

このような場合、無断欠勤に関する通知書を赤レターパックで送付することがあります。

赤レターパック(レターパックプラス)は対面でのお届けとなり、受領印または署名をもらいます。赤レターパックの追跡によって、受領されていれば誰かが受け取ったことが確認できます。一人暮らしであれば、本人が受領したことになるはずです。

参考)郵便局ホームページ レターパック

緊急連絡先や、会社が得た個人情報についてはきちんと管理しましょう。

前述いたしましたが、緊急連絡先の管理については、その使用目的や、どこまで社内で共有できるのかの情報共有の範囲について慎重に検討し、規定にしておきましょう。きちんと就業規則に記載しておくことをお勧めいたします。

まとめ

会社では、雇用契約時に緊急連絡先を確認することが重要です。また、無断欠勤などの場合には緊急連絡先に連絡する可能性がある旨も説明しておくべきです。

緊急時は産業医への相談も発生する可能性があります。特に自殺等が発生した場合は、他の従業員へのサポートが必要となりますので、事前に対応することが望ましいです。

また、本人と連絡が取れない場合で、明らかな緊急対応の必要がない場合には、自宅へ赤レターパックを送付し、赤レターパックが受領されれば、本人宅ですくなくとも誰かが受け取ったことがわかります。

緊急連絡先の管理については、社内での情報共有の範囲に注意が必要です。そのために、就業規則に緊急連絡先の情報を収集することは記載し、手続きについての決めておきましょう。

労働衛生コンサルタント事務所LAOでは、産業医・顧問医の受託をお受けしております。労務管理と一体になった産業保健業務を多職種連携で行います。

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この記事を書いた人

清水 宏泰

1975年生まれ。公衆衛生分野の専門家。現在はさまざまな組織の健康問題を予防するためにLAOにて行政書士・社労士・労働衛生コンサルタントとして活動しています。主に健康、心理系、産業保健の情報について発信していきます。

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