事務所LAO – 行政書士・社会保険労務士・労働衛生コンサルタント・海事代理士

【 人事労務向け】休職中の従業員へのアプローチと必要な手続きについて

私がよく受ける質問の一つは、病気による休職中の従業員とどのように関われば良いかというものです。ここでは、休職が開始された従業員へのアプローチ方法や必要な手続きについて解説します。

休職の開始

まず、今回の話の前提は、病気による欠勤が続いたのち、休職発令がなされた従業員についてのお話になります。休職発令が始まるまでについては、以下の記事を参照にしてください。

休職期間については正確に把握しましょう

まず、休職が開始される際に、①いつから休職が開始されるのか、②休職可能期間はいつまでか、③現時点の休職期間満了日はいつかを確認しましょう。

①いつから休職が開始されるのか

いつから休職が開始されたのかは重要な問題です。従業員が休み始めた日ではないか?と思われるかもしれませんが、実はそうではない場合があります。

例えば、有給休暇が残っている場合には、その有給休暇を勘案しなければなりません。有給休暇を使った後に休職期間が開始されるかもしれません。さらに、休職期間中に有給休暇が発生するかもしれません。

また、就業規則上は、欠勤が開始されて、〇日後に休職期間が開始されると規定されている場合があります。この場合、欠勤開始後〇日後からが休職期間の開始となります。

このように、休職期間の開始日は、様々な要素により決定する場合があるので注意しましょう。休職開始日がきちんと定まらないと、後の対応において、混乱するかもしれません。

閉所LAOでは、産業医は、これらの状況を人労系担当者と相談しながら状況把握を行い、産業保健を進めていく能力が必要だと考えています。

②休職可能期間はいつまでか

こちらについては、ほとんどの場合、就業規則等に規定がありますので確認しましょう。そもそも、10人未満の会社なので就業規則がないという場合もあるかしれません。いつまで休職できるのかは重大な問題となります。

③現時点の休職期間満了日はいつか

休職満了日は、最後の出勤日として、いわゆる退職日になります。この日までに復職できるかどうかは、従業員が退職するかどうかに直結しますので非常に重要なのは言うまでもありません。

この退職日ですが、「現時点の休職満了日」とのことで、特に「現時点の」というのは重要です。就業規則の規定において、いわゆるリセット期間というものが設定されている場合があります。これは、休職より復職し、その後、一定の期間までに同類の疾病で休職した場合に、休職期間が通算される制度になります。例えば2023年3月31日が休職期間満了でしたが、途中で10日復職して再度休職した場合には、2023年4月10日が休職期間満了日となりずれていきます。

このように、休職期間満了日は移動する可能性がありますので、細心の注意を払いましょう。もし、休職満了日前に休職期間満了とした場合、後に、休職満了日前には職場復帰できていたと従業員が主張するかもしれません。

事業所(会社)が休職中の従業員について注意すべきこと

休職中の従業員への接触について

産業医をしていると、「病気休職中の従業員に会って、話をしていいでしょうか?」と聞かれることがよくあります。私の考えですが、原則として、病気休職中の従業員には接触しないほうがよいと考えています。その理由としては、休職中であるので、お仕事ができないからです。従業員にお話をしたいので、どこどこに来てほしいということを従業員に強制すると、業務命令ともとらえられかねないので行うべきではないでしょう。もし、お話するのであれば、あくまで任意の範囲で、従業員の同意を得ながらお会いするのがいいでしょう。

この点、前述のように、診断書記載の休職期限満了前に確認したり、傷病手当金の手続きで定期的にやり取りすることもあるでしょうし、この時に、体調などを任意の範囲でお聞きするといいでしょう。

傷病手当金や障害年金の社会保障について

休職の原因が私傷病であれば、傷病手当金の申請を行うと思います。傷病手当金については、様々な論点があります。傷病手当金の消滅時効は2年ですので、急がず、後にまとめて申請することもできますが、多くの場合は1カ月程度毎に申請することが多いかと思います。


また、傷病手当金の支給期限を超える休職であれば、障害厚生年金の裁定請求を考慮しましょう。

もし、休職期間の満了日が近づいてきている場合には、休職期間が満了して、退職となるかもしれません。その場合、傷病手当金の継続給付により退職後も傷病手当金が支払われるかは重要な問題となりますので、退職する場合に継続給付が支給されるかについて確認しておきましょう。

診断書の期限が切れそうなときは、期間を更新する診断書を提出してもらいましょう

前述のブログに記載されていますが、病気による休職発令がなされた場合、その休職期間は、主治医の診断書か、産業医の意見書により休職が必要である旨の内容が明らかにされていると思います。関連するブログ記事を再掲します。


この休職の期間については、期限が記載されていることがほとんどです。期限が記載されていない場合には、休職している従業員に主治医と相談してもらって、期限のある診断書を再提出してもらうか、産業医から主治医に意見書依頼書を用いて確認などして、期限を確認しましょう。

主治医の診断書記載の内容と産業医の職場復帰に関する意見に相違がある場合ですが、こちらについては、別記事を記載したいと思います。

そして、私の場合ですが、診断書の休職期限の2週間くらい前に休職中の従業員に期限後復職できるか、あるいは休職を続行するかを確認してもらいます。2週間前というのは、診断書の発行に時間がかかる場合があるからです。復職が可能そうであれば、職場復帰支援の手続きにのせていきますが、こちらは別記事にて解説させていただきます。

休職期間の満了が近づいてきたら

主治医からの診断書や、産業医の意見書に記載されている休職期限が近づくたびに復職可能の見込みがあるかを確認し、復職見込みがないとして、休職期間満了に近づく場合があります。休職期間が満了すると、多くの企業の就業規則では、自然退職となることが多いかと思います。以下に、例として厚生労働省のモデル就業規則を掲載します。

(退職)
第52条
前条に定めるもののほか、労働者が次のいずれかに該当するときは、退職とする。
① 退職を願い出て会社が承認したとき、又は退職願を提出して 日を経過したとき
② 期間を定めて雇用されている場合、その期間を満了したとき
③ 第9条に定める休職期間が満了し、なお休職事由が消滅しないとき
④ 死亡したとき

2 労働者が退職し、又は解雇された場合、その請求に基づき、使用期間、業務の種類、地位、賃金又は退職の事由を記載した証明書を遅滞なく交付する。 

モデル就業規則 令和5年7月版 厚生労働省労働基準局監督課

「休職期間が満了し、なお休職事由が消滅しないとき」とあります。この退職ですが、解雇ではありません。いわゆる、自然退職又は当然退職と呼ばれるものになります。解雇は、使用者からの申し出による一方的な労働契約の終了を言います。

休職期間の満了による退職は、解雇でないため、解雇予告は必要ありません。しかし、私は、後のトラブルを避けるため、1カ月前までに休職期間の満了を確認する書類を作成して、休職期間満了日を経過したら自然退職となる旨の書類を作成し、従業員と会社で共有するようにしています。

まとめ

今回の記事は、病気による休職中の従業員とどのように関われば良いかについて、休職が開始された従業員へのアプローチ方法や必要な手続きについて解説します。

まず、休職が開始される前に、①いつから休職が開始されるのか、②休職可能期間はいつまでか、③現時点の休職期間満了日はいつかを確認しましょう。

私は原則として、病気休職中の従業員には接触しないほうがよいと考えています。この点、診断書の休職期限前に確認したり、傷病手当金の手続きで定期的にやり取りすることもあるでしょうし、この時に、体調などを任意の範囲でお聞きするといいでしょう。

傷病手当金や障害年金の社会保障については重要ですので、適度なタイミングで行いましょう。申請者は従業員ですので、あらかじめどのくらいの期間ごとに申請するか相談しておくとよいでしょう。

そして、主治医からの診断書や、産業医の意見書に記載されている休職期限が近づくたびに復職可能の見込みがあるかを確認し、復職見込みがないとして、休職を繰り返した結果、休職期間満了に近づく場合があります。私は、後のトラブルを避けるため、休職期間満了日の1カ月前までに休職期間の満了を確認する書類を作成して、休職期間満了日を経過したら自然退職となる旨の書類を作成し、従業員と会社で共有するようにしています。

この文章は事実関係に関する書面や、権利義務関係に関する書類にあたる可能性があるため、事業者(会社)か行政書士でないと作れないことに注意して下さい。通常、産業医は作成すると、行政書士法違反となる可能性があります。

 

労働衛生コンサルタント事務所LAOでは、産業医・顧問医の受託をお受けしております。労務管理と一体になった産業保健業務を多職種連携で行います。

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この記事を書いた人

清水 宏泰

1975年生まれ。公衆衛生分野の専門家。現在はさまざまな組織の健康問題を予防するためにLAOにて行政書士・社労士・労働衛生コンサルタントとして活動しています。主に健康、心理系、産業保健の情報について発信していきます。

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