2025/04/04 2025/04/05
【安全衛生担当者向け】化学物質の濃度測定における従来法と個人サンプラーの違いについて

産業現場で用いられる有害物質の環境濃度の測定と評価については、以下の3種類があります。
1.従来の作業環境測定(A測定とB測定)
2.個人サンプリング法(C測定、D測定)
3.個人ばく露測定
なお、
1.従来法である A測定およびB測定、及び2.個人サンプリング法による C測定およびD測定が、労働安全衛生法第65条に基づく作業環境測定であることについては、別の記事でご説明しております。
また、個人サンプラーを使用するのは、2.個人サンプリング法(C測定、D測定)と、3.個人ばく露測定になります。
今回は、作業環境測定である、従来の作業環境測定(従来法:A測定とB測定)と個人サンプラーを利用する測定(C測定、D測定、個人ばく露測定)について、実測でどのくらいの差があるのかについてです。
従来法と個人サンプラーを利用する場合の違い
言うまでもありませんが、従来法では、作業場内の定点を定めて、一定の高さにおける空気中の化学物質濃度をサンプリングします。一方、個人サンプラーは、労働者が実際に吸い込む空気中の化学物質の濃度を把握することができます。
また、統計処理を行うのは、個人サンプリング法(C・D測定)であり、個人ばく露測定は、主に濃度が高いか低いかの判定に用いられます。
ただし、個人ばく露測定と同様の測定値を用いて、C・D測定における管理区分を算出することになるため、個人ばく露測定とC・D測定の結果には、同様の傾向が見られると言えるでしょう。
原則として、どちらの方法でより高い濃度が測定されたかによって、その手法がより実態に近い、正確な把握ができたと判断できます。
なお、個人ばく露測定と従来の作業環境測定との間で、どの程度の違いが見られるかについては、中央労働災害防止協会(中災防)の報告資料に詳しく示されています。
引用:作業環境における個人ばく露測定に関する実証的検証事業(平成22年度~平成25年度)中央労働災害防止協会労働衛生調査分析センター
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11201000-Roudoukijunkyoku-Soumuka/0000183601.pdf
上記より引用しました。
縦軸は「個人のばく露濃度」、横軸は「作業環境の濃度」を表しており、それぞれの目盛りの幅は同じです。
そのため、個人ばく露濃度と作業環境濃度が等しい場合は、45度の直線上に点が並ぶことになります。
また、一つ一つのマス目は正方形になっています。
上記について解説いたします。この図に示されている黄色の太線よりも上側に位置する場合、個人サンプリング法の方が従来法よりも高い測定結果を示しています。一方で、下側に位置する場合は、従来法の方が個人サンプリング法よりも高い測定結果を示しています。
図中の結果からは、仕上げ研磨、吹き付け塗装、アーク溶接といった作業において、個人サンプリング法の方がばく露の実態をより正確に把握できることが分かります。特に、溶接ヒュームの個人ばく露測定においては、個人サンプラーの使用が合理的であると言えるでしょう。
これらの点を踏まえ、実際の作業現場においては、作業の特性やばく露状況に応じた適切な環境測定法を選択する必要があります。
まとめ
産業現場での有害物質の濃度測定には、従来法(A・B測定)、個人サンプリング法(C・D測定)、個人ばく露測定という3つの方法があります。
このうち、個人サンプラーを使用するのはC・D測定および個人ばく露測定であり、従来法に比べて、作業者が実際に吸入する濃度を把握しやすいという特徴があります。
今回ご紹介した図表や実測データからは、仕上げ研磨、吹き付け塗装、アーク溶接などの作業において、個人サンプリング法の方が実態に即した測定ができる傾向が見られました。特に溶接ヒュームのようなばく露リスクが高い作業では、個人ばく露測定の活用が合理的であり、特化則にも個人ばく露測定を利用することが定められています。
最終的には、「より高く測定された方が実態を正確に捉えている」と考え、作業の内容や環境の特性に応じて、適切な測定手法を選択することが重要です。
個人ばく露測定と従来の作業環境測定との違いやその傾向については、中央労働災害防止協会(中災防)の報告資料に詳しくまとめられています。ぜひ参考にしてください。
労働衛生コンサルタント事務所LAOは、化学物質の自律的管理について、コンサルティング業務を行っております。
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化学物質の個別的な規制についても得意としています。
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