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【心理学・人事労務担当者向け】集団における集団極化(リスキーシフトとコーシャスシフト)

集団を観察する際に知っておくべき重要な理論があります。それが「集団極化現象」です。集団極化現象は、個々の判断や意見が、討論や集団経験を通じてさらに強まるという傾向を指します。今回は、集団極化現象についてお話しします。

集団における集団極化(リスキーシフトとコーシャスシフト)

 集団極化とその種類

集団極化とは、個々の判断や意見の支配的傾向が、討論などの集団経験を経てさらに強まる現象です。この現象には、リスキー・シフト(risky shift)とコーシャス・シフト(cautious shift)という内容が含まれます。

英語の意味ですが
risky(リスキー)→危険な、危うい
cautious(コーシャス)→ 注意深い
ですよね。

簡単に言えば、集団での決定は個人の判断と比べてリスクを高める可能性があります。つまり、集団に属する個人が、普段は注意深い意思決定をする場合でも、集団の意思決定の場面ではよりリスキーな判断をすることがあるということです。逆に、個人がリスキーな判断をする場合でも、集団ではより注意深い判断をすることがあります。

この点、注意深い判断を行えばよいのでは?と思われる方もおられるかと思いますが、その結果はローリスクを選ぶことと同じ意味合いになります。
ローリスクを選択することで最終的には不利な状況に陥る可能性もあることを忘れてはなりません。

リスキーシフトまたはコーシャスシフトに偏ることは、判断を誤る可能性もあります。
また、同調理論を考慮すると、集団での決定には懐疑的な態度を持つこともあるでしょう。

具体例を示します。

リスキーシフト
①ある会社が新規事業に参入すべきかどうかを検討する際、ある個人はデータを見て参入しない方が良いと考えていました。しかし、意思決定の会議で多くの意見が参入すべきとなり、その個人も結果的に参入することに投票しました。

コーシャスシフト
②ある会社で新規事業に参入するかどうかを議論する経営者会議が開かれました。社長は「そこまで積極的に参入する必要はないのではないか」と述べました。多くの役員は現状維持を選択するとじり貧になる可能性があると考えましたが、各自が自分の在任期間中だけじり貧にならないならば問題ないと思いました。最終的に会議では何の決定も行われず、結果的に現状維持が続くことになりました。

どちらもありがちな光景ではないでしょうか。
これを心理学的に説明すると、リスキーシフトと、コーシャスシフトが起きている可能性があるのです。
では、これらを避けるためにはどうすればいいでしょうか?

 

集団極化現象はいい影響も、悪い影響もある。

集団極化現象により、個人では困難な行動を集団で行い、成功する事例も存在します。
しかし、場合によっては好ましくない結果となることもあります。集団極化現象の悪影響を回避するためには、以下の点に注意する必要があります。

①集団極化現象を知る

まず、集団極化現象が発生する可能性を認識することが重要です。意思決定の結果が極化現象によるものである可能性を考慮することができます。それにより、リスキーシフトの再評価が可能になります。
この現象を知るという方法は、他のバイアスや、ヒューリスティックによる害悪を避けるためにも有効です。

②多様な意見を尊重する。

集団極化現象を助長する同調を避けるためにも、異なった意見を自由に表明できるようにし、意見を尊重することが重要です。
このような意味で、組織では同じ方向性の人だけではなく、多様な意見を持つことが重要であり、多様性が求められます。

また、集団での意思決定には責任の所在が明確でない場合があります。自分が責任を負わないのであれば、リスキーな選択であっても慎重な選択であっても構わないと思う個人がいるかもしれません。

③バイアスを避けましょう

集団での決定や意思決定において、批判的思考を持つことが重要です。情報や意見を客観的に評価し、バイアスや偏見に左右されずに判断する能力を養いましょう。

④集団極化とシステムズアプローチ

組織内で集団極化が発生し、その結果、IP(患者とみなされた者)が発生している場合もあります。
システムズアプローチを適用する場合には、対応方法はケースバイケースになります。
また、カウンセラー自身も集団極化に巻き込まれないようにすることが重要です。カウンセラーはさまざまなタイプの方が存在しますが、思い込みを排除するトレーニングをしっかりと受けている方もいます。

まとめ

集団極化現象についてお話ししました。集団内ではリスキー・シフト(risky shift)やコーシャス・シフト(cautious shift)が起こることがあります。集団極化は良い影響を与えることもあれば、悪い影響を与えることもあります。私たちは集団極化現象が存在し、私たち自身に影響を及ぼす可能性を認識する必要があります。

システムズアプローチでは、組織内で集団極化が発生することがあるため、それに対処する必要がある場面があります。

このような知識を持って、メンタルヘルス不調の発生を予防できれば良いですね。

 

 

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この記事を書いた人

清水 宏泰

1975年生まれ。公衆衛生分野の専門家。現在はさまざまな組織の健康問題を予防するためにLAOにて行政書士・社労士・労働衛生コンサルタントとして活動しています。主に健康、心理系、産業保健の情報について発信していきます。

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