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化学物質の管理を解説

2023/04/19 2023/04/19

【心理学・カウンセリング】マーシャの同一性地位の理論についてわかりやすく説明

今回は、マーシャの同一性地位についてお話します。
発達段階に関する非常に重要な理論だと思います。

マーシャの同一性地位の理論についてわかりやすく説明

 エリクソンの自我同一性とマーシャの同一性地位

皆様には以下のような事例の人物につき、経験則上どんな人物が想像できるでしょうか?

①子供のころに大病をわずらい、長い入院生活と手術を繰り返し、大人になって医師となったもの
③親が医師で、生まれた時から医師となるように言われて、迷いなく、医師となったもの

まず、自我同一性という言葉はご存じでしょうか。
エリクソンが提唱した概念で、アイデンティティとも呼ばれるものです。
これは、個人が自分が何者であるかを認識し、自分を理解し、自分の役割や使命感を確立することです。
エリクソンは幼児期から高齢期に至るまで、8つの発達段階を提唱しており、各段階においてアイデンティティ形成が重要なテーマとなっています。

マーシャは、エリクソンの理論について更に掘り下げ、主に思春期の発達に焦点を当てました。
そして、誕生したのが、マーシャの同一性地位という理論です。

実は、マーシャの理論においては、日本語訳が複数あり、文献などによって、言葉が一定しなかったり、この日本語訳でいいのか?という場合もあります。
以下は、日本語に直訳すると、話がかえってややこしくなる部分があるので、あえて英語のままにしている部分があります。

 

“Identiity option”に対して”Exploration”して、”Comittment”へ至る(マーシャの同一性地位)

マーシャの同一性地位について解説します。
マーシャは思春期におけるアイデンティティ形成は、イデオロギーや職業(宗教、政治、キャリア、人間関係、ジェンダーの役割など)に関する”exploration”を行った上で、”comittment”する度合いによって成り立っていると主張しました。
この”exploration”の対象となるイデオロギーや職業を”identiity option”と呼びます。アイデンティティの形成において、探究とコミットメントが行われる対象や領域を指します。

この”identity option”がたくさんあると、その中から自分に合ったものを選ぶことができます。逆に少ないと、アイデンティティを確立することが難しくなると言われています。

さて、あえて、英語のままにしている、”exploration”と”comittment”ですが
このブログでは、”exploration”を危機と、”comittment”を関与と呼びますね。
英語の直訳では、危機と関与にならないので注意してください。

”exploration”は、日本語で探索という意味がありますが、心理学的には「危機」と呼ばれています。
どちらかというと、私は「探索」の方がしっくりする気がするのですが、日本では「危機」が一般的ですね。

これは、アイデンティティを形成する上で、”identity option” にある職業、宗教、人間関係などにおいて、自分がどのような役割を担うか、どのような価値観を持つかなどについて検討することを指します。

”comittment”という英語は日本語で「献身」ということになりますが、「コミットメント」「傾倒」、「積極的関与」、または単に「関与」ともいわれます。

このマーシャの同一性地位における、”exploration”と”comittment”について、日本では呼び方さまざまありますので、日本の文献を読むときには注意が必要です。

”comittment”(関与)は、職業、宗教、人間関係などにおいて、自分がどのような役割を担い、どのような価値観を持つかといったアイデンティティに関する意思決定の過程において、最終的に選択されたアイデンティティに対して、自発的に積極的にかかわってゆくことを指します。

これは、危機があって関与に至るようにも思えますが
危機がなくて関与のみの場合も存在するのです。

マーシャは、自我同一性を獲得する上で
これらの危機と関与という二つの基準を用いて、4つの状態に分けました。

 マーシャは4つのアイデンティティの状態について説明しています。

普通は、危機を経験し、関与へ至る
つまり、自分が何者なのかをidentity optionをもとに悩み、そして目標を決定して努力しそうなものですが、危機がなくて関与のみある場合もあるのです。
以下で説明しますね。

危機とは、”exploration”、関与とは、”comittment”です。

では、この4つの組み合わせについて解説します。

①同一性達成(Identity Achievement)

危機もあり、積極的関与もある状態です。
十分に考え抜いたうえ、目標を見出し、積極的に努力している状態です。
自分や他人のアイデンティティについて深く考え、自己の選択や目標に向けて自信を持って進んでいくことができる状態です。

②早期完了(Foreclosure)

危機がなくて、積極的関与があるだけの状態
単語”Foreclosure”の意味は、日本語に直訳すると「差し押さえ」ですね。
しかし、多くの教科書には「早期完了」と訳されることがほとんどです。
自己のアイデンティティについての探求を経験せず、親や他者が選んだアイデンティティを無批判に受け入れた状態などが該当しますが、直訳での「差し押さえ」という単語と意味は興味深いですね。
Foreclosureの個人は、親や権威的な人物の影響を受けて特定のアイデンティティを受け入れているともいわれますね。

例として、小さいころから親から医師になれと言われて、なんの違和感もなく、積極的に努力して、医師になった場合とかでしょうか。
ただ、違和感があった場合でも選択肢がこれしかなかったという場合や、同調圧力で自己主張ができない場合にも当てはまります。

このタイプの人は、自分自身で選択する選択(自己決定)に欠けていると言われています。
また、自分たちのアイデンティティに関連する価値観や信念を主張するために、攻撃的・自己中心的となる場合があると言われています。

どうでしょうか?小さいころから医師になれと言われて危機がなく関与のみで医師になった方は周囲におりますでしょうか?
当たっているでしょうか?

③モラトリアム(Moratorium)

危機はあるものの、関与がない状態です。
モラトリアムとは日本語に直訳すると、「一時停止」、「支払い猶予」とかの意味があります。
この状態は、危機はあるので、自分自身が何者かについて、”identity option”の中から模索しているのですが、まだ関与がない状態です。
悩む時期ですよね。
しかし、この時期を乗り越え、関与があれば、同一性達成へ至ります。

④同一性拡散(Identity Diffusion)

危機も関与もない状態を指します。
危機も関与もなければまずいのでは?と思われるかもしれません。
しかし、まず、子供は自分が何者であり、何を望んでいるのかといったアイデンティティに関する考えがほとんどなく、目的や方向性が不明瞭である状態であり、この状態から始まるのが当たり前です。思春期になると、人はロールモデル(お手本となる人)に可能性を見出したり、経験にふれ、この同一性拡散状態から脱出します。

しかし、結局、思春期を過ぎても危機も関与もなく、同一性拡散の状態であると、自分の人生の目的や方向性を見失い、周囲の人々とのつながりも弱くなりがちであると言われています。

 若年者のキャリアコンサルティング

マーシャの同一性地位の理論は、キャリア形成において重要なことはわかったかと思います。
キャリアコンサルティングの技法に関しては、以下の報告書を読んで勉強しておきましょう。

平成29年度 厚生労働省委託 労働者等のキャリア形成における課題に応じたキャリアコンサルティング技法の開発に関する調査・研究事業 報告書 平成30年3月 特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会

 

まとめ

マーシャ(Marcia)の同一性地位の理論は、キャリアに関する発達段階の理論で非常に重要です。
危機と関与をともに経験していれば、自分や他人のアイデンティティについて深く考え、自己の選択や目標に向けて自信を持って進んでいくことができます。

さて、最初に戻りましょう。

①子供のころに大病をわずらい、長い入院生活と手術を繰り返した後、大人になって医師となったもの
ひょっとしたら、子供のころにそばにいてくれた医師がロールモデルになり、親の支援などのOptionを勘案した結果
十分に考え抜いいた結果、危機を経験し、関与があり、目標に向かって積極的に努力できたのかもしれないですね。

③親が医師で、生まれた時から医師となるように言われて、迷いなく、医師となったもの
こちらは、早期完了の可能性がありますよね。
はい、親に言われて医師になりましたという方は非常に多いです。
この場合、問題は医師になってからの自分自身の選択(自己決定)をどうするかが問題ですよね。

このような視点があると、キャリアに関する面談も変わってくるのではないでしょうか。

労働衛生コンサルタント事務所LAOは、化学物質の自律的管理について、コンサルティング業務を行っております。

産業医として化学物質の自律的管理に対応可能な医師はあまりいないと思われますが、継続的なフォローも必要なため、産業医又は顧問医としての契約として、お受けしております。

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この記事を書いた人

清水 宏泰

1975年生まれ。公衆衛生分野の専門家。現在はさまざまな組織の健康問題を予防するためにLAOにて行政書士・社労士・労働衛生コンサルタントとして活動しています。主に健康、心理系、産業保健の情報について発信していきます。

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