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化学物質の管理を解説

2023/07/26 2023/07/27

【安全衛生】じん肺健康診断の種類とその対象者について解説

じん肺健診には、就業時健診と定期健診などがありますが、これらの詳細について、どのような場面で、どのようなじん肺健診を行う必要があるかについて解説します。

じん肺健康診断の種類とその対象者について解説

じん肺健診には、就業時健康診断、定期健康診断、定期外健康診断、離職時健康診断があります。それぞれの健康診断のじん肺法の条文は以下の通りです。

じん肺法
第一節 じん肺健康診断の実施
(就業時健康診断)
第七条 事業者は、新たに常時粉じん作業に従事することとなつた労働者(当該作業に従事することとなつた日前一年以内にじん肺健康診断を受けて、じん肺管理区分が管理二又は管理三イと決定された労働者その他厚生労働省令で定める労働者を除く。)に対して、その就業の際、じん肺健康診断を行わなければならない。この場合において、当該じん肺健康診断は、厚生労働省令で定めるところにより、その一部を省略することができる。
(定期健康診断)
第八条 事業者は、次の各号に掲げる労働者に対して、それぞれ当該各号に掲げる期間以内ごとに一回、定期的に、じん肺健康診断を行わなければならない。
一 常時粉じん作業に従事する労働者(次号に掲げる者を除く。) 三年
二 常時粉じん作業に従事する労働者でじん肺管理区分が管理二又は管理三であるもの 一年
三 常時粉じん作業に従事させたことのある労働者で、現に粉じん作業以外の作業に常時従事しているもののうち、じん肺管理区分が管理二である労働者(厚生労働省令で定める労働者を除く。) 三年
四 常時粉じん作業に従事させたことのある労働者で、現に粉じん作業以外の作業に常時従事しているもののうち、じん肺管理区分が管理三である労働者(厚生労働省令で定める労働者を除く。) 一年
2 前条後段の規定は、前項の規定によるじん肺健康診断を行う場合に準用する。
(定期外健康診断)
第九条 事業者は、次の各号の場合には、当該労働者に対して、遅滞なく、じん肺健康診断を行わなければならない。
一 常時粉じん作業に従事する労働者(じん肺管理区分が管理二、管理三又は管理四と決定された労働者を除く。)が、労働安全衛生法第六十六条第一項又は第二項の健康診断において、じん肺の所見があり、又はじん肺にかかつている疑いがあると診断されたとき。
二 合併症により一年を超えて療養のため休業した労働者が、医師により療養のため休業を要しなくなつたと診断されたとき。
三 前二号に掲げる場合のほか、厚生労働省令で定めるとき。
2 第七条後段の規定は、前項の規定によるじん肺健康診断を行う場合に準用する。
(離職時健康診断)
第九条の二 事業者は、次の各号に掲げる労働者で、離職の日まで引き続き厚生労働省令で定める期間を超えて使用していたものが、当該離職の際にじん肺健康診断を行うように求めたときは、当該労働者に対して、じん肺健康診断を行わなければならない。ただし、当該労働者が直前にじん肺健康診断を受けた日から当該離職の日までの期間が、次の各号に掲げる労働者ごとに、それぞれ当該各号に掲げる期間に満たないときは、この限りでない。
一 常時粉じん作業に従事する労働者(次号に掲げる者を除く。) 一年六月
二 常時粉じん作業に従事する労働者でじん肺管理区分が管理二又は管理三であるもの 六月
三 常時粉じん作業に従事させたことのある労働者で、現に粉じん作業以外の作業に常時従事しているもののうち、じん肺管理区分が管理二又は管理三である労働者(厚生労働省令で定める労働者を除く。) 六月
2 第七条後段の規定は、前項の規定によるじん肺健康診断を行う場合に準用する。

e-Gov じん肺法

では、それぞれの健診の詳細について解説します。

就業時健康診断について

新たに常時粉じん作業に従事することとなった労働者に対して、その就業の際、じん肺健康診断を実施しなければなりません。

(就業時健康診断)
第七条 事業者は、新たに常時粉じん作業に従事することとなつた労働者(当該作業に従事することとなつた日前一年以内にじん肺健康診断を受けて、じん肺管理区分が管理二又は管理三イと決定された労働者その他厚生労働省令で定める労働者を除く。)に対して、その就業の際、じん肺健康診断を行わなければならない。この場合において、当該じん肺健康診断は、厚生労働省令で定めるところにより、その一部を省略することができる。
e-Gov じん肺法

ただし、「当該作業に従事することとなった日前一年以内にじん肺健康診断を受けて、じん肺管理区分が2と決定された労働者、その他厚生労働省令で定める労働者を除く」となっています。これは、直近の1年間で労働局により、管理二または管理三と判断された者には就業時健診は必要がないということです。この就業時健康診断の実施は事業者を守るためにも重要であり、就業前にすでにじん肺がある可能性もありますので、労働者の就業前の健康状態を確認するために必要です。

定期健康診断について

こちらは、定期に行われるじん肺健診になります。じん肺法8条を見ると、頻度についてが主な規定です。この頻度は重要で、常時粉じん作業に従事する労働者は3年に一度、じん肺管理区分が管理二または管理三である常時粉じん作業に従事する労働者は毎年健診を受ける必要があります。

(定期健康診断)
第八条 事業者は、次の各号に掲げる労働者に対して、それぞれ当該各号に掲げる期間以内ごとに一回、定期的に、じん肺健康診断を行わなければならない。
一 常時粉じん作業に従事する労働者(次号に掲げる者を除く。) 三年
二 常時粉じん作業に従事する労働者でじん肺管理区分が管理二又は管理三であるもの 一年
三 常時粉じん作業に従事させたことのある労働者で、現に粉じん作業以外の作業に常時従事しているもののうち、じん肺管理区分が管理二である労働者(厚生労働省令で定める労働者を除く。) 三年
四 常時粉じん作業に従事させたことのある労働者で、現に粉じん作業以外の作業に常時従事しているもののうち、じん肺管理区分が管理三である労働者(厚生労働省令で定める労働者を除く。) 一年
2 前条後段の規定は、前項の規定によるじん肺健康診断を行う場合に準用する。
e-Gov じん肺法

票にまとめると、以下のようになります。

ここで3年に一度の健康診断で、じん肺に対応できるのか?と思われるかもしれませんが、間の2年は何もしないわけではありません。間の2年間については、労働安全衛生法66条1項の一般定期健診がありますので、そちらで何らかの異常が発見されれば、後述の定期外健康診断を行うこととなっています。

定期外健康診断について

この定期外健康診断は、定期の健康診断以外に特定の場合に行うべき健康診断になります。条文を順に見ていきましょう。すこし複雑です。

(定期外健康診断)
第九条 事業者は、次の各号の場合には、当該労働者に対して、遅滞なく、じん肺健康診断を行わなければならない。
一 常時粉じん作業に従事する労働者(じん肺管理区分が管理二、管理三又は管理四と決定された労働者を除く。)が、労働安全衛生法第六十六条第一項又は第二項の健康診断において、じん肺の所見があり、又はじん肺にかかつている疑いがあると診断されたとき。
二 合併症により一年を超えて療養のため休業した労働者が、医師により療養のため休業を要しなくなつたと診断されたとき。
三 前二号に掲げる場合のほか、厚生労働省令で定めるとき。
e-Gov じん肺法

このように、1号から3号に該当する場合には、事業者は、遅滞なく定期外じん肺を行わねければなりません。
では、各号につき、解説していきます。

じん肺法9条1項1号
じん肺法9条1項1号において、「労働安全衛生法第六十六条第一項又は第二項の健康診断において、じん肺の所見があり、又はじん肺にかかつている疑いがあると診断されたとき」に定期外じん肺健診を行わなければならないとあります。この規定により、3年に一度のじん肺健診の定期健康診断が行われない、間2年を、労働安全衛生法上の一般健診でフォローするのです。
以下に、労働安全衛生法の健康診断の条文、66条を引用しておきます。

労働安全衛生法(健康診断)
第六十六条 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第六十六条の十第一項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならない。
2 事業者は、有害な業務で、政令で定めるものに従事する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による特別の項目についての健康診断を行なわなければならない。有害な業務で、政令で定めるものに従事させたことのある労働者で、現に使用しているものについても、同様とする。
3 事業者は、有害な業務で、政令で定めるものに従事する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、歯科医師による健康診断を行なわなければならない。
4 都道府県労働局長は、労働者の健康を保持するため必要があると認めるときは、労働衛生指導医の意見に基づき、厚生労働省令で定めるところにより、事業者に対し、臨時の健康診断の実施その他必要な事項を指示することができる。
5 労働者は、前各項の規定により事業者が行なう健康診断を受けなければならない。ただし、事業者の指定した医師又は歯科医師が行なう健康診断を受けることを希望しない場合において、他の医師又は歯科医師の行なうこれらの規定による健康診断に相当する健康診断を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない。

e-Gov 労働安全衛生法

じん肺法9条1項2号じん肺法9条1項3号についてはセットで解説しなければなりません。
じん肺法9条1項2号

じん肺法9条1項2号においては、「合併症により一年を超えて療養のため休業した労働者が、医師により療養のため休業を要しなくなつたと診断されたとき」に定期外健康診断を行うこととされていますが、これは療養から復職する段階の状態を確定するための健診になります。

じん肺法9条1項3号
じん肺法9条1項3号の「厚生労働省令で定めるとき」ですが、以下のじん肺法施行規則11条の内容になります。

(定期外健康診断の実施)
第十一条 法第九条第一項第三号の厚生労働省令で定めるときは、次に掲げるときとする。
一 合併症により一年を超えて療養した労働者が、医師により療養を要しなくなつたと診断されたとき(法第九条第一項第二号に該当する場合を除く。)。
二 常時粉じん作業に従事させたことのある労働者で、現に粉じん作業以外の作業に常時従事しているもののうち、じん肺管理区分が管理二である労働者が、労働安全衛生規則(昭和四十七年労働省令第三十二号)第四十四条又は第四十五条の健康診断(同令第四十四条第一項第四号に掲げる項目に係るものに限る。)において、肺がんにかかつている疑いがないと診断されたとき以外のとき。

e-Gov じん肺法施行規則

ここで、「法第九条第一項第二号に該当する場合を除く」とあります。これについて解説します。
「合併症により一年を超えて療養した労働者が、医師により療養を要しなくなつたと診断されたとき」(じん肺法施行規則11条1項1号)と、「合併症により一年を超えて療養のため休業した労働者が、医師により療養のため休業を要しなくなつたと診断されたとき」(じん肺法第九条第一項第二号)の文言をならべてみましょう。

じん肺法施行規則11条1項1号
合併症により一年を超えて療養した労働者が、医師により療養を要しなくなつたと診断されたとき

じん肺法第九条第一項第二号
合併症により一年を超えて療養のため休業した労働者が、医師により療養のため休業を要しなくなつたと診断されたとき

このように、「休業」という言葉の有無が違います。
例を挙げます。
管理三の従業員が、合併症に罹患して、休業します。そののち、治療により回復して復職するときに、じん肺法第九条第一項第二号により定期外健康診断が必要です。
その後、当該従業員は、復職してお仕事をしているものの、病院にて療養を継続していました。
さらにそれから数か月後、主治医から、「今日で治療は終わりです」と告げられました、つまり、療養を要しなくなりました。この時に、定期外健康診断を再度行わなければならないということになります。
図にすると、以下のようになります。
このように、休業からの復職後と、仕事に戻った後の療養後の2回の定期外健診を行わなければならないということになります。


離職時健康診断について

離職時健康診断は、労働者が事業者に離職の際にじん肺健診を求めた場合に、じん肺健診を実施しなければならないという規定です。ただし、この規定は前にじん肺健診をいつ行ったかによって義務の有無が変わります。
簡単に言いますと、じん肺定期健康診断の期間は1年又は3年でしたが、前回のじん肺定期健康診断からこの期間の半分を超えている場合には、事業者は離職時健診を実施する義務があるということになります。

(離職時健康診断)
第九条の二 事業者は、次の各号に掲げる労働者で、離職の日まで引き続き厚生労働省令で定める期間を超えて使用していたものが、当該離職の際にじん肺健康診断を行うように求めたときは、当該労働者に対して、じん肺健康診断を行わなければならない。ただし、当該労働者が直前にじん肺健康診断を受けた日から当該離職の日までの期間が、次の各号に掲げる労働者ごとに、それぞれ当該各号に掲げる期間に満たないときは、この限りでない。
一 常時粉じん作業に従事する労働者(次号に掲げる者を除く。) 一年六月
二 常時粉じん作業に従事する労働者でじん肺管理区分が管理二又は管理三であるもの 六月
三 常時粉じん作業に従事させたことのある労働者で、現に粉じん作業以外の作業に常時従事しているもののうち、じん肺管理区分が管理二又は管理三である労働者(厚生労働省令で定める労働者を除く。) 六月
2 第七条後段の規定は、前項の規定によるじん肺健康診断を行う場合に準用する。
e-Gov じん肺法施行規則

まとめますと、以下のようになります。

なお、じん肺法9条2項において、「第七条後段の規定は、前項の規定によるじん肺健康診断を行う場合に準用する」と規定されていますが、これは離職時健診において、じん肺健診の一部を省略することができる規定になります。

第10次粉じん障害防止総合対策の推進について 

第10次粉じん障害防止総合対策が2023年4月から更新されていますが、こちらの中の健康診断の規定を見てみましょう。
「じん肺健康診断の着実な実施」が重点事項とされており、行政指導の強化が記載されています。

(抜粋)
3 じん肺健康診断の着実な実施
事業者は、じん肺法に基づき、じん肺健康診断を実施し、毎年じん肺健康管理実施状況報告を提出すること。また、労働者のじん肺健康診断に関する記録の作成に当たっては、粉じん作業職歴を可能な限り記載し、作成した記録の保存を確実に行うこと。

(抜粋)
(2) 集団指導、個別指導、監督指導等の実施 集団指導、個別指導、監督指導等の各種行政手法を効率的に組み合わせ、「講ずべき措置」をはじめとして、粉じんの有害性や、粉じん則及びじん肺法の各規定に定める措置の必要な事項について、効果的に周知徹底を図る。特に、重点事項である「呼吸用保護具の適正な選択及び使用の徹底」及び「じん肺健康診断の着実な実施」について重点的に指導を行い、じん肺健康管理実施状況報告が未提出の事業場に対しては提出するよう指導する。 また、監督指導の結果、重大・悪質な法令違反が認められた場合は、司法処分として送検することを含め、厳正な措置を講じる。 さらに、事業者に対して健康管理手帳制度を周知すること等により、離職するじん肺有所見労働者に対する健康管理対策の推進を図るとともに、健康管理手帳交付対象者に対して当該手帳交付時に、健康管理に係る留意事項等を十分指導する。

第10次粉じん障害防止総合対策の推進について 基発0330第3号 令和5年3月30日 

第10次粉じん障害防止総合対策については目を通しておきましょう。

まとめ

じん肺健診ですが、就業時健康診断、定期健康診断、定期外健康診断、離職時健康診断があります。
就業時健康診断の実施は事業者を守るためにも重要であり、労働者の就業前の健康状態を確認するために必要です。
就業前にすでにじん肺がある可能性もあります。
定期外健康診断は、定期の健康診断以外に特定の場合に行うべき健康診断になります。この特定の場合については複雑なので注意しましょう。
合併症による休業の場合、休業からの復職後と、仕事に復職した後の療養終了後の2回の定期外健康診断が必要となります。

離職時健康診断は、労働者が事業者に離職の際にじん肺健診を求めた場合に、じん肺健診を実施しなければならないという規定です。ただし、この規定は前にじん肺健診をいつ行ったかによって義務の有無が変わります。
簡単に言いますと、じん肺定期健康診断の期間は1年又は3年でしたが、前回のじん肺定期健康診断からこの期間の半分を超えている場合には、事業者は離職時健診を実施する義務があるということになります。

第10次粉じん障害防止総合対策にも、「じん肺健康診断の着実な実施」が重点事項とされております。目を通しておきましょう。

これらのじん肺健診はしっかり行いましょう。




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この記事を書いた人

清水 宏泰

1975年生まれ。公衆衛生分野の専門家。現在はさまざまな組織の健康問題を予防するためにLAOにて行政書士・社労士・労働衛生コンサルタントとして活動しています。主に健康、心理系、産業保健の情報について発信していきます。

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