事務所LAO – 行政書士・社会保険労務士・労働衛生コンサルタント・海事代理士

【働く方向け】診療情報提供書・診断書のもらい方について

会社で働く従業員の方が、会社より診断書をもらってきてほしいと依頼されることはよくあります。
今回は、従業員の方がこのような診断書の依頼があった場合に、当該従業員が具体的にどのように通院中の医療機関にお願いすればいいかを解説いたします。
今回は、会社が従業員へ診断書の提出を求めた場合のお話に絞ります。

 会社から診断書の提出をお願いされたら

診断書の提出義務と任意の診断書提出のお願い

まず、会社から従業員の皆様へ診断書の提出をお願いする場合には、それなりの理由があることがほとんどです。
しかし、会社が従業員に対して受診命令や診断書提出命令を指示する場合は、就業規則等にその内容を明記する必要があります。もし、就業規則等に規定がなければ、あくまで会社の任意のお願いということになります。


しかし、もし、会社の任意のお願いに従業員の方がお願いに応じる場合や、就業規則等に規定が明記されており診断書提出命令が会社からある場合には、会社へ診断書を提出することになります。

なお、会社が直接主治医に診断書発行を依頼することは原則できません。もし、お願いしても個人情報の観点からできないと言われるだけです。しかし、例外として、本人の同意があれば可能です。この場合、同意書を本人に記載してもらい、主治医に提示することが必要です。

今回は、従業員の方が、診断書を提出しようとする場合に、従業員の方がどのように診断書を入手すればいいかについて解説します。

 医師は診断書の交付義務があります

実は医師法19条は、医師に診断書の交付義務を定めています。したがって、医師は診断書の交付を拒むことができません。
つまり、診断書が欲しい場合は、主治医に診断書を発行してくださいとお願いすればいいのです。

但し、「診察」、「検案」、「出産」に立ち会った医師に義務が課せられるので、当然ながら、これらに関わっていない医師は診断書を交付する義務はありません。また、正当の事由があれば診断書の発行を断ることができます。

まあ、自分が関わっていない診療については、書きようがないですからね。そして「検案」は死亡時の話なので産業現場における場合は、関係ないことがほとんどでしょう。

また、主治医が休業するための診断書を発行してくれないことがあります。この場合、発行してもらえない理由を尋ねてみましょう。

欠勤について主治医が診断書を発行してくれない理由は、欠勤が必要ないと考えたからかもしれません。この場合、主治医には「欠勤が必要ない」旨の診断書を発行する義務がありますが、従業員の診断書をもって休業するという目的は達成できないうえ、診断書料金は発生するので悩むところです。

医師法
第十九条 診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。
2 診察若しくは検案をし、又は出産に立ち会つた医師は、診断書若しくは検案書又は出生証明書若しくは死産証書の交付の求があつた場合には、正当の事由がなければ、これを拒んではならない。

e-Gov 医師法

診断書の中には、傷病手当金の申請書や、出産一時金の申請書のように様式が決まっている場合があります。このような場合には、これらの様式をもって、あるいは指定して医師へお願いしましょう。

なお、様式が指定されている診断書の例として、障害厚生年金の診断書の書式を示します。

さて、問題なのは様式がない場合です。様式がない場合には、主治医はどのような目的で、どのような内容が必要なのかがわかりません。そのため、診断書を求める従業員の方は、主治医にどのような目的の診断書で、何を書いてほしいのかを伝えましょう。

診断書の発行を依頼するときに、いきなり通院していた病院へ行って診断書をくださいというのも問題はありませんが、できれば、あらかじめ電話等で診断書発行してほしい旨をお伝えして、費用等についても問い合わせておいた方がスムーズに手続きが進むかもしれません。

 診断書の項目は法令上規定がありませんので主治医に伝えましょう

診断書の項目については、社会保険諸法令等の法令により定められている場合を除き、法令上規定はありません。通常、単にしかし、「診断書をください」と詳細を伝えず主治医に依頼すると、記載されている基本的な項目は、おおむね以下のような内容になるでしょう。

① 患者の氏名、生年月日、その他本人確認情報
② 診断書記載日
③ 病名(診断名)
④ 医療機関名と主治医の署名又は記名押印

⑤ 発症日と疾病の状況
⑥ 治療の見込み期間
⑦ 業務の制限があれば、その内容と期間
⑧ その他
など

①~④については最低限、書かれている項目かと思います。

しかし、特に主治医への指定がなければ診断書の内容に会社や産業医が知りたい情報が記載されていないかもしれません。このような場合、会社はあらかじめ患者である従業員に、必要な項目を示し、主治医に伝えたうえで診断書に記載してもらうようにお願いする方法があります。

また、確実に必要な診療情報を情報を入手する方法としては、産業医等が診療情報提供依頼書を主治医に送付し、依頼する方法があります。

従業員の方は、会社に診断書を求められた場合、主治医に診断書の内容を依頼するためにどのような内容が必要なのかを会社に確認するとよいでしょう。

 診断書の発行に要する時間

診断書はすぐにその場で主治医が記載してくれることもありますが、特に大きな病院等においては、発行手続きに時間がかかります。

私の経験上、シンプルな病名と休業期間を記載した診断書であれば、概ね2週間~3週間くらいが必要かと思いますが、時に1か月くらいかかることもあります。複雑な診断書であればもっと時間がかかるかもしれません。

さらに、主治医より送付してもらう、または患者本人に取りに行ってもらう時間を考えると、もう少し時間がかかるかと思います。復職等において、診療情報提供依頼書を主治医に送付し、診療情報提供書を入手する場合には、相当程度の時間がかかるかもしれませんので、診断書発行までの時間を考慮して診断書の発行依頼を行いましょう。

診断書の費用

診断書の費用については、診療所が自由に決定することになります。以下に記事をまとめています。


診断書の費用が、会社か従業員どちらが払うのかは重要な確認事項でしょう。診断書依頼前に会社に確認しましょう。

また、通常は想定できませんが、主治医が高額な診断書発行料を請求する可能性もあり、発行に関する料金についてはきちんと依頼時に確認しましょう。

 主治医が診断書の発行を拒んだ場合

主治医が診断書の発行を断る場合があります。前述のように、正当の事由があれば、診断書の発行を断ることができます。しかし、時に、主治医が正当な理由ないと思われるにもかかわらず、診断書の発行を断る場合もあります。この場合、まずは主治医になぜ診断書を発行できないのかの理由を確認してみましょう。正当な理由は数多くあり、診断書を発行しない理由があるかもしれません。

もし、正当な理由がなさそうであれば、主治医に診断書発行義務についてお話してみましょう。

また、傷病手当金についての証明が必要な場合は、もし、会社に産業医がいれば、産業医による証明をお願いできるかもしれません。

まとめ

会社で働く従業員の方が、会社より診断書をもらってきてほしいと依頼されることはよくあります。
医師法19条は、医師に診断書の交付義務を定めています。したがって、医師は診断書の交付を拒むことができません。
つまり、診断書が欲しい場合は、主治医に診断書を発行してくださいとお願いすればいいのです。

診断書の中には、傷病手当金の申請書や、出産一時金の申請書のように様式が決まっている場合があります。このような場合には、これらの様式をもって、あるいは指定して医師へお願いしましょう。

診断書の項目については、傷病手当金などの法令により定められている場合を除き、法令上規定はありません。
そのため、診断書の内容に会社や産業医が知りたい情報が記載されていないかもしれません。この場合、本人に必要な項目を主治医にお伝えして診断書を記載してもらうようにお願いするか、確実な方法としては産業医等が診療情報提供依頼書を送付する方法があります。

診断書はすぐにその場で主治医が記載してくれることもありますが、特に大きな病院等においては、発行手続きに時間がかかり、概ね2週間~3週間くらいかかるでしょう。診断書が必要な目的に照らして、計画的に診断書発行の依頼を主治医に行いましょう。

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この記事を書いた人

清水 宏泰

1975年生まれ。公衆衛生分野の専門家。現在はさまざまな組織の健康問題を予防するためにLAOにて行政書士・社労士・労働衛生コンサルタントとして活動しています。主に健康、心理系、産業保健の情報について発信していきます。

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