事務所LAO – 行政書士・社会保険労務士・労働衛生コンサルタント・海事代理士

【資格・産業医向け】労働衛生コンサルタントは開業を前提とした資格であり、登録後の注意事項を説明

今回は、労働衛生コンサルタントがどのような資格かということと、士業としての労働衛生コンサルタントのお話をしたいと思います。
かなりマニアックなお話になります。

労働衛生コンサルタントについて

労働衛生コンサルタントはどのような資格?

2022年だったような・・・・厚生労働省のホームページに見慣れない文言を見つけました。

労働安全コンサルタント・労働衛生コンサルタント  
 労働安全コンサルタント・労働衛生コンサルタントは、厚生労働大臣が認めた労働安全・労働衛生のスペシャリストとして、労働者の安全衛生水準の向上のため、事業場の診断・指導を行う国家資格(士業)です。
  厚生労働大臣が指定したコンサルタント試験機関である(公財)安全衛生技術試験協会が実施する労働安全コンサルタント試験・労働衛生コンサルタント試験に合格し、厚生労働大臣が指定した登録機関である同協会に登録することで、労働安全コンサルタント・労働衛生コンサルタントとして活動することができます。

厚生労働省ホームページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/anzen/newpage_04164.html

「労働安全コンサルタント・労働衛生コンサルタントは、厚・・・国家資格(士業)です。 」
と記載されていますね。
そう、「士業」と明記されているのですよ。

厚生労働省に、「労働衛生コンサルタントが士業になったのですか?非労働衛生コンサルタントとの連携とか、事務所要件とかどうなるのですか?」
と電話でお聞きしたのですが
専門性があるという意味で「士業」と書いていますとのことでした。

というわけで今までと同じですね。
でも、もし、労働衛生コンサルタントが「士業」ということになると、どのようなことに気を付けなければならないのでしょうか。
実はすでに、労働衛生コンサルタントは士業ではと思われる規定もあります。

士業についてお話しする前になりますが、士業とは専門的な知識・スキルを持ち、それを職業とする専門家のことを指します。士業には会計士、税理士、公認会計士、弁護士、司法書士、社会保険労務士、行政書士などが含まれます。各士業はそれぞれ独自の法令や規則に従い、独自のルールを遵守しなければなりません。

このブログの名前は「士業系産業医」と名付けていますが、これは士業事務所を開業しているという意味や、労働衛生コンサルタント事務所が、厚生労働省によって公表された通り、士業であるという意味を込めて名付けられています。

労働衛生コンサルタントは開業でなければならない

 労働衛生コンサルタントの業務に関する条文

実は、労働衛生コンサルタントは、開業が基本となります。
開業以外で存在してはいけないのです。その根拠を説明いたします。

まず、労働衛生コンサルタントとは、何をする人でしょうか。
これは、労働安全衛生法81条に規定があります。

労働安全衛生法

第二節 労働安全コンサルタント及び労働衛生コンサルタント
(業務)
第八十一条 労働安全コンサルタントは、労働安全コンサルタントの名称を用いて、他人の求めに応じ報酬を得て、労働者の安全の水準の向上を図るため、事業場の安全についての診断及びこれに基づく指導を行なうことを業とする。
2 労働衛生コンサルタントは、労働衛生コンサルタントの名称を用いて、他人の求めに応じ報酬を得て、労働者の衛生の水準の向上を図るため、事業場の衛生についての診断及びこれに基づく指導を行なうことを業とする。
 

この、他人の求めに応じ報酬を得て、労働者の安全の水準の向上を図るため・・・・・・を行なうことを業とする」者が労働衛生コンサルタントです。
この他人の求めに応じ報酬を得てとはどのような意味を持つのでしょう。
実は、ここがポイントです。

 社会保険労務士の開業に関する条文

他人の求めに応じ報酬を得てについては、社会保険労務士の規定に同様の言い回しがあります。

社会保険労務士の開業の規定を見てみましょう。
これは、社会保険労務士法に14条の2第2項に規定があります。
ここに、「他人の求めに応じ報酬を得て、第二条に規定する事務を業として行おうとする」とありますよね。
「他人の求めに応じ報酬を得て」という文言がでましたね、労働衛生コンサルタントと同じです。
なお、「第二条 」というのは、社会保険労務士の業務が記載されている部分になります。

そして、社会保険労務士名簿に、前項に規定する事項のほか、事務所の名称、所在地その他厚生労働省令で定める事項の登録を受けなければならない。 」とも記載されています。
社会保険労務士は登録が必要なのです。

また、18条については、ばっちり「他人の求めに応じ報酬を得て、第二条に規定する事務を業として行う社会保険労務士(社会保険労務士法人の社員を除く。以下「開業社会保険労務士」という。)」と、開業社会保険労務士について記載されています。ここでのキーワードは「他人の求めに応じ報酬を得て」ですね。

実は、「他人の求めに応じ報酬を得て」という文言が開業社労士の規定であり、開業の意味だと言われています。
つまり、労働衛生コンサルタントにおける規定の「他人の求めに応じ報酬を得て」も同じ開業の意味をもつということになります。

社会保険労務士法
(登録)
第十四条の二 社会保険労務士となる資格を有する者が社会保険労務士となるには、社会保険労務士名簿に、氏名、生年月日、住所その他厚生労働省令で定める事項の登録を受けなければならない。
2 他人の求めに応じ報酬を得て、第二条に規定する事務を業として行おうとする社会保険労務士(社会保険労務士法人の社員となろうとする者を含む。)は、事務所(社会保険労務士法人の社員となろうとする者にあつては、当該社会保険労務士法人の事務所)を定めて、あらかじめ、社会保険労務士名簿に、前項に規定する事項のほか、事務所の名称、所在地その他厚生労働省令で定める事項の登録を受けなければならない。
3 事業所(社会保険労務士又は社会保険労務士法人の事務所を含む。以下同じ。)に勤務し、第二条に規定する事務に従事する社会保険労務士(以下「勤務社会保険労務士」という。)は、社会保険労務士名簿に、第一項に規定する事項のほか、当該事業所の名称、所在地その他厚生労働省令で定める事項の登録を受けなければならない。

(事務所)
第十八条 他人の求めに応じ報酬を得て、第二条に規定する事務を業として行う社会保険労務士(社会保険労務士法人の社員を除く。以下「開業社会保険労務士」という。)は、その業務を行うための事務所を二以上設けてはならない。ただし、特に必要がある場合において厚生労働大臣の許可を受けたときは、この限りでない。

2 社会保険労務士法人の社員は、第二条に規定する事務を業として行うための事務所を設けてはならない。

e-Gov 社会保険労務士法




労働衛生コンサルタントの登録について

では、労働衛生コンサルタントの登録はどうなっているのでしょうか。社会保険労務士については、社会保険労務士名簿に、前項に規定する事項のほか、事務所の名称、所在地その他厚生労働省令で定める事項の登録を受けなければならない。 」と、社会保険労務士名簿への登録が必要でした。
こちらは、労働安全衛生法84条と、労働安全コンサルタント及び労働衛生コンサルタント規則(通称、コンサル則)16条に記載があります。

こちらが労働安全衛生法です。

労働安全衛生法
(登録)
第八十四条 労働安全コンサルタント試験又は労働衛生コンサルタント試験に合格した者は、厚生労働省に備える労働安全コンサルタント名簿又は労働衛生コンサルタント名簿に、氏名、事務所の所在地その他厚生労働省令で定める事項の登録を受けて、労働安全コンサルタント又は労働衛生コンサルタントとなることができる。
2 次の各号のいずれかに該当する者は、前項の登録を受けることができない。
一 心身の故障により労働安全コンサルタント又は労働衛生コンサルタントの業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
二 この法律又はこれに基づく命令の規定に違反して、罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して二年を経過しない者
三 この法律及びこれに基づく命令以外の法令の規定に違反して、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して二年を経過しない者
四 次条第二項の規定により登録を取り消され、その取消しの日から起算して二年を経過しない者

こちらは、コンサル則です。

労働安全コンサルタント及び労働衛生コンサルタント規則
(登録事項)
第十六条 法第八十四条第一項の厚生労働省令で定める事項は、次のとおりとする。
一 旧姓を使用した氏名又は通称の併記を希望する場合にあつては、その氏名又は通称
二 生年月日
三 合格した労働安全コンサルタント試験又は労働衛生コンサルタント試験の区分及び合格した年月日
四 事務所の名称

労働安全コンサルタント及び労働衛生コンサルタント規則


これによると、厚生労働省に備える労働安全コンサルタント名簿又は労働衛生コンサルタント名簿に、コンサル則16条の事項を登録しなければならないということになっています。

ここで、事務所の名称等の登録が必要となりますが
例えば登録先が自分の勤務場所であれば

①病院の雇われ勤務医が職場の病院の所在地内に「〇〇労働衛生コンサルタント事務所」の看板を勝手に掲げる。
②株式会社の産業医が、自分の職場内に勝手に「〇〇労働衛生コンサルタント事務所」を開業している
③大学の教員が、自分所属する教室に「〇〇労働衛生コンサルタント事務所」を開業している

ということになり、問題になると思いませんか。
ちなみに、労働衛生コンサルタント登録申請書(様式第3号)には「事務所の名称及び所在地」を記載しなければなりません。

労働安全・労働衛生コンサルタントの登録申請 (はじめて申請される方)
労働衛生コンサルタント登録申請書(様式第3号)

例えば、どこかの株式会社のプロフィールに「労働衛生コンサルタント」と記載することは、厳密には、登録していない2か所目以上の労働衛生コンサルタント事務所を他の法人内に開設しているということになってしまいます。

ちなみに、私は、他の会社で労働衛生コンサルタントの属性を記載するときは
「労働衛生コンサルタント事務所LAO 労働衛生コンサルタント 清水宏泰」
と記載します。事務所が別だときちんと明言しているわけです。

ですので、本来、株式会社のプロフィール、病院のスタッフ紹介、大学教員のプロフィール等に「労働衛生コンサルタント」と書くのは本来はまずいということになります。

ちなみに、社会保険労務士や行政書士の場合、株式会社の中で個人開業というのは不可能です。
個人開業医だと、院長兼労働衛生コンサルタントだということで可能になるかと思います。

また、自宅を登録する場合も、賃貸の場合は契約で事業用として使用できない場合が多いと思われますので、多くの場合、登録できないかと思います。

 労働衛生コンサルタント事務所の複数登録について

実は、労働衛生コンサルタント事務所は複数登録できます。
登録申請を行う際の様式、『コンサルタント登録申請書(様式第3号)』の備考をよく見ると、「従たる事務所がある場合には、その名称及び所在地を併記すること」とあります。
安全衛生技術試験協会に確認したところ、事務所の複数登録は可能だということでした。
他の士業が、1か所しか登録できないのに比べると、複数登録ができるのは意外ですね。

複数事業所の経費も事業所得の中で処理できるかもしれません。
こちらについては、税理士に相談しましょう。

指定登録機関 公益財団法人 安全衛生技術試験協会 殿
備考
1 厚生労働大臣が登録事務を行う場合には厚生労働大臣に提出すること。この場合にあっては、手数料に相当する額の収入印紙を収入印紙欄に貼り付けること。
2 指定登録機関が登録事務を行う場合には当該指定登録機関に提出すること。この場合にあっては、当該指定登録機関の登録事務規程に定めるところにより手数料を納付し、収入印紙は貼らないこと。
3 「氏名」の欄は、旧姓を使用した氏名又は通称の併記の希望の有無を〇で囲むこと。併記を希望する場合には、併記を希望する氏名又は通称を記入すること。
4 ④欄は、従たる事務所がある場合には、その名称及び所在地を併記すること。
5 ⑥欄は、合格証の年月日を記入すること。
6 申請書には、合格証の写しを添付すること。

コンサルタント登録申請書(様式第3号)



まとめ

(登録について)
労働衛生コンサルタントは労働衛生コンサルタント名簿に登録が必要であり、社会保険労務士は社会保険労務士名簿に登録が必要

(業として)
労働衛生コンサルタントは、「他人の求めに応じ報酬を得て、労働者の安全の水準の向上を図るための助言や指導を行うことを業とする」と定義されています。
一方、開業社労士は「他人の求めに応じ報酬を得て、社会保険労務士の職務に規定された業務を行おうとする」専門家です。
「他人の求めに応じ報酬を得て」という点が開業の要点となります。労働衛生コンサルタントは、開業を前提とした資格であることを意味します。

(おまけ:労働衛生コンサルタント試験において)
労働衛生コンサルタントの試験では、「コンサルタントになったら、どのような活動をしたいですか」という質問が出題される可能性が高いです。
開業を前提とする場合、この質問に対する回答が重要になるでしょう。意外にもこの部分が試験のポイントであり、合否を分ける要素となるのでは?と私は考えています。

大学教員 〇〇 資格:労働衛生コンサルタント
となると、どこかの大学の中で労働衛生コンサルタント事務所を開いていることになってはおかしいですよね。


労働衛生コンサルタント事務所LAOでは、産業医・顧問医の受託をお受けしております。労務管理と一体になった産業保健業務を多職種連携で行います。

お問い合わせはこちらからお願いいたします。

この記事を書いた人

清水 宏泰

1975年生まれ。公衆衛生分野の専門家。現在はさまざまな組織の健康問題を予防するためにLAOにて行政書士・社労士・労働衛生コンサルタントとして活動しています。主に健康、心理系、産業保健の情報について発信していきます。

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