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【産業医・人事労務向け】運転に影響を及ぼす服薬と車の運転を伴う業務について(薬の影響と業務)

何らかの病気で治療をされている方は、多くの場合、お薬を飲んでいます。では、その服薬でお仕事に影響はあるでしょうか。
はい、よく問題になるのは、車の運転です。
今回は、車の運転について、どのような病気や服薬が問題となるかについて解説したいと思います。

法令上、車の運転が問題となる場合について

まず、車の運転に関しては、道路交通法に記載があります。見てみましょう。免許を拒否する条件としては道路交通法90条に、免許の取消し停止については道路交通法103条に記載があります。長いのですが、緑と青のハイライト部分で病気等に関与する部分があります。

道路交通法
(免許の拒否等)
第九十条 公安委員会は、前条第一項の運転免許試験に合格した者(当該運転免許試験に係る適性試験を受けた日から起算して、第一種免許又は第二種免許にあつては一年を、仮免許にあつては三月を経過していない者に限る。)に対し、免許を与えなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する者については、政令で定める基準に従い、免許(仮免許を除く。以下この項から第十二項までにおいて同じ。)を与えず、又は六月を超えない範囲内において免許を保留することができる。
一 次に掲げる病気にかかつている者
イ 幻覚の症状を伴う精神病であつて政令で定めるもの
ロ 発作により意識障害又は運動障害をもたらす病気であつて政令で定めるもの
ハ イ又はロに掲げるもののほか、自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるもの
一の二 介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第五条の二第一項に規定する認知症(第百二条第一項及び第百三条第一項第一号の二において単に「認知症」という。)である者
二 アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚醒剤の中毒者
三 第八項の規定による命令に違反した者
四 自動車等の運転に関しこの法律若しくはこの法律に基づく命令の規定又はこの法律の規定に基づく処分に違反する行為(次項第一号から第四号までに規定する行為を除く。)をした者
五 自動車等の運転者を唆してこの法律の規定に違反する行為で重大なものとして政令で定めるもの(以下この号において「重大違反」という。)をさせ、又は自動車等の運転者が重大違反をした場合において当該重大違反を助ける行為(以下「重大違反唆し等」という。)をした者
六 道路以外の場所において自動車等をその本来の用い方に従つて用いることにより人を死傷させる行為(以下「道路外致死傷」という。)で次項第五号に規定する行為以外のものをした者
七 第百二条第一項から第四項までの規定による命令を受け、又は同条第六項の規定による通知を受けた者
2 前項本文の規定にかかわらず、公安委員会は、次の各号のいずれかに該当する者については、政令で定める基準に従い、免許を与えないことができる。
一 自動車等の運転により人を死傷させ、又は建造物を損壊させる行為で故意によるものをした者
二 自動車等の運転に関し自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(平成二十五年法律第八十六号)第二条から第四条までの罪に当たる行為をした者
三 自動車等の運転に関し第百十七条の二第一項第一号、第三号又は第四号の違反行為をした者(前二号のいずれかに該当する者を除く。)
四 自動車等の運転に関し第百十七条第一項又は第二項の違反行為をした者
五 道路外致死傷で故意によるもの又は自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第二条から第四条までの罪に当たるものをした者
3 第一項ただし書の規定は、同項第四号に該当する者が第百二条の二(第百七条の四の二において準用する場合を含む。第百八条の二第一項及び第百八条の三の二において同じ。)の規定の適用を受ける者であるときは、その者が第百二条の二に規定する講習を受けないで同条の期間を経過した後でなければ、適用しない。
4 公安委員会は、第一項ただし書の規定により免許を拒否し、若しくは保留しようとするとき又は第二項の規定により免許を拒否しようとするときは、当該運転免許試験に合格した者に対し、あらかじめ、弁明をなすべき日時、場所及び当該処分をしようとする理由を通知して、当該事案について弁明及び有利な証拠の提出の機会を与えなければならない。
5 公安委員会は、免許を与えた後において、当該免許を受けた者が当該免許を受ける前に第一項第四号から第六号までのいずれかに該当していたことが判明したときは、政令で定める基準に従い、その者の免許を取り消し、又は六月を超えない範囲内で期間を定めて免許の効力を停止することができる。
6 公安委員会は、免許を与えた後において、当該免許を受けた者が当該免許を受ける前に第二項各号のいずれかに該当していたことが判明したときは、その者の免許を取り消すことができる。
7 第三項の規定は第五項の規定による処分について、第四項の規定は前二項の規定による処分について、それぞれ準用する。この場合において、第三項中「第一項ただし書」とあるのは「第五項」と、「同項第四号」とあるのは「第一項第四号」と、第四項中「第一項ただし書」とあるのは「次項」と、「第二項」とあるのは「第六項」と読み替えるものとする。
8 公安委員会は、第一項第一号から第三号までのいずれかに該当することを理由として同項ただし書の規定により免許を保留する場合において、必要があると認めるときは、当該処分の際に、その者に対し、公安委員会が指定する期日及び場所において適性検査を受け、又は公安委員会が指定する期限までに内閣府令で定める要件を満たす医師の診断書を提出すべき旨を命ずることができる。
9 公安委員会は、第一項ただし書の規定により免許の拒否(同項第三号又は第七号に該当することを理由とするものを除く。)をし、又は第五項の規定により免許を取り消したときは、政令で定める基準に従い、五年を超えない範囲内で当該処分を受けた者が免許を受けることができない期間を指定するものとする。
10 公安委員会は、第二項の規定により免許の拒否をし、又は第六項の規定により免許を取り消したときは、政令で定める基準に従い、十年を超えない範囲内で当該処分を受けた者が免許を受けることができない期間を指定するものとする。
11 第五項の規定により免許を取り消され、若しくは免許の効力の停止を受けた時又は第六項の規定により免許を取り消された時におけるその者の住所が当該処分をした公安委員会以外の公安委員会の管轄区域内にあるときは、当該処分をした公安委員会は、速やかに当該処分をした旨をその者の住所地を管轄する公安委員会に通知しなければならない。
12 公安委員会は、第一項ただし書の規定により免許の保留(同項第四号から第六号までのいずれかに該当することを理由とするものに限る。)をされ、又は第五項の規定により免許の効力の停止を受けた者が第百八条の二第一項第三号に掲げる講習を終了したときは、政令で定める範囲内で、その者の免許の保留の期間又は効力の停止の期間を短縮することができる。
13 公安委員会は、仮免許の運転免許試験に合格した者が第一項第一号から第二号までのいずれかに該当するときは、同項本文の規定にかかわらず、政令で定める基準に従い、仮免許を与えないことができる。
14 第四項の規定は、前項の規定により仮免許を拒否しようとする場合について準用する。この場合において、第四項中「第一項ただし書」とあるのは、「第十三項」と読み替えるものとする。


(免許の取消し、停止等)
第百三条 免許(仮免許を除く。以下第百六条までにおいて同じ。)を受けた者が次の各号のいずれかに該当することとなつたときは、その者が当該各号のいずれかに該当することとなつた時におけるその者の住所地を管轄する公安委員会は、政令で定める基準に従い、その者の免許を取り消し、又は六月を超えない範囲内で期間を定めて免許の効力を停止することができる。ただし、第五号に該当する者が第百二条の二の規定の適用を受ける者であるときは、当該処分は、その者が同条に規定する講習を受けないで同条の期間を経過した後でなければ、することができない。
一 次に掲げる病気にかかつている者であることが判明したとき。
イ 幻覚の症状を伴う精神病であつて政令で定めるもの
ロ 発作により意識障害又は運動障害をもたらす病気であつて政令で定めるもの
ハ イ及びロに掲げるもののほか、自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるもの
一の二 認知症であることが判明したとき。
二 目が見えないことその他自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある身体の障害として政令で定めるものが生じている者であることが判明したとき。
三 アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚醒剤の中毒者であることが判明したとき。
四 第六項の規定による命令に違反したとき。
五 自動車等の運転に関しこの法律若しくはこの法律に基づく命令の規定又はこの法律の規定に基づく処分に違反したとき(次項第一号から第四号までのいずれかに該当する場合を除く。)。
六 重大違反唆し等をしたとき。
七 道路外致死傷をしたとき(次項第五号に該当する場合を除く。)。
八 前各号に掲げるもののほか、免許を受けた者が自動車等を運転することが著しく道路における交通の危険を生じさせるおそれがあるとき。
2 免許を受けた者が次の各号のいずれかに該当することとなつたときは、その者が当該各号のいずれかに該当することとなつた時におけるその者の住所地を管轄する公安委員会は、その者の免許を取り消すことができる。
一 自動車等の運転により人を死傷させ、又は建造物を損壊させる行為で故意によるものをしたとき。
二 自動車等の運転に関し自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第二条から第四条までの罪に当たる行為をしたとき。
三 自動車等の運転に関し第百十七条の二第一項第一号、第三号又は第四号の違反行為をしたとき(前二号のいずれかに該当する場合を除く。)。
四 自動車等の運転に関し第百十七条第一項又は第二項の違反行為をしたとき。
五 道路外致死傷で故意によるもの又は自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第二条から第四条までの罪に当たるものをしたとき。
3 公安委員会は、第一項の規定により免許を取り消し、若しくは免許の効力を九十日(公安委員会が九十日を超えない範囲内で期間を定めたときは、その期間)以上停止しようとする場合又は前項の規定により免許を取り消そうとする場合において、当該処分に係る者がその住所を他の公安委員会の管轄区域内に変更していたときは、当該処分に係る事案に関する第百四条第一項の意見の聴取又は聴聞を終了している場合を除き、速やかに現にその者の住所地を管轄する公安委員会に内閣府令で定める処分移送通知書を送付しなければならない。
4 前項の処分移送通知書が当該公安委員会に送付されたときは、当該公安委員会は、その者が第一項各号のいずれかに該当する場合(同項第五号に該当する者が第百二条の二の規定の適用を受ける者であるときは、その者が同条に規定する講習を受けないで同条の期間を経過した後に限る。)には、同項の政令で定める基準に従い、その者の免許を取り消し、又は六月を超えない範囲内において期間を定めて免許の効力を停止することができるものとし、その者が第二項各号のいずれかに該当する場合には、その者の免許を取り消すことができるものとし、処分移送通知書を送付した公安委員会は、第一項又は第二項の規定にかかわらず、当該事案について、その者の免許を取り消し、又は免許の効力を停止することができないものとする。
5 第三項の規定は、公安委員会が前項の規定により免許を取り消し、又は免許の効力を停止しようとする場合について準用する。
6 公安委員会は、第一項第一号から第四号までのいずれかに該当することを理由として同項又は第四項の規定により免許の効力を停止する場合において、必要があると認めるときは、当該処分の際に、その者に対し、公安委員会が指定する期日及び場所において適性検査を受け、又は公安委員会が指定する期限までに内閣府令で定める要件を満たす医師の診断書を提出すべき旨を命ずることができる。
7 公安委員会は、第一項各号(第四号を除く。)のいずれかに該当することを理由として同項又は第四項の規定により免許を取り消したときは、政令で定める基準に従い、一年以上五年を超えない範囲内で当該処分を受けた者が免許を受けることができない期間を指定するものとする。
8 公安委員会は、第二項各号のいずれかに該当することを理由として同項又は第四項の規定により免許を取り消したときは、政令で定める基準に従い、三年以上十年を超えない範囲内で当該処分を受けた者が免許を受けることができない期間を指定するものとする。
9 第一項、第二項又は第四項の規定により免許を取り消され、又は免許の効力の停止を受けた時におけるその者の住所が当該処分をした公安委員会以外の公安委員会の管轄区域内にあるときは、当該処分をした公安委員会は、速やかに当該処分をした旨をその者の住所地を管轄する公安委員会に通知しなければならない。
10 公安委員会は、第一項又は第四項の規定による免許の効力の停止(第一項第一号から第四号までのいずれかに該当することを理由とするものを除く。)を受けた者が第百八条の二第一項第三号に掲げる講習を終了したときは、政令で定める範囲内で、その者の免許の効力の停止の期間を短縮することができる。

e-Gov 道路交通法

そして、上記の病気に関する部分については、さらに政令があります。できるだけ対応する部分については同じ色にしようと思いましたが複雑なので無理でした。

道路交通法施行令
(免許の拒否又は保留の事由となる病気等)
第三十三条の二の三 法第九十条第一項第一号イの政令で定める精神病は、統合失調症(自動車等の安全な運転に必要な認知、予測、判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなるおそれがある症状を呈しないものを除く。)とする。
2 法第九十条第一項第一号ロの政令で定める病気は、次に掲げるとおりとする。
一 てんかん(発作が再発するおそれがないもの、発作が再発しても意識障害及び運動障害がもたらされないもの並びに発作が睡眠中に限り再発するものを除く。)
二 再発性の失神(脳全体の虚血により一過性の意識障害をもたらす病気であつて、発作が再発するおそれがあるものをいう。)
三 無自覚性の低血糖症(人為的に血糖を調節することができるものを除く。)
3 法第九十条第一項第一号ハの政令で定める病気は、次に掲げるとおりとする。
一 そう鬱病(そう病及び鬱病を含み、自動車等の安全な運転に必要な認知、予測、判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなるおそれがある症状を呈しないものを除く。)
二 重度の眠気の症状を呈する睡眠障害
三 前二号に掲げるもののほか、自動車等の安全な運転に必要な認知、予測、判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなるおそれがある症状を呈する病気
4 法第九十条第一項第五号の政令で定める行為は、次に掲げるとおりとする。
一 法第百十七条の二第一項第一号、第三号又は第四号の罪に当たる行為(自動車等の運転に関し行われたものに限る。)
二 法第百十七条第一項又は第二項の罪に当たる行為(自動車等の運転に関し行われたものに限る。)
三 別表第二の一の表に定める点数が六点以上である一般違反行為

(免許の取消し又は停止の事由となる病気等)
第三十八条の二 法第百三条第一項第一号イの政令で定める精神病は、第三十三条の二の三第一項に規定するものとする。
2 法第百三条第一項第一号ロの政令で定める病気は、第三十三条の二の三第二項各号に掲げるものとする。
3 法第百三条第一項第一号ハの政令で定める病気は、第三十三条の二の三第三項各号に掲げるものとする。
4 法第百三条第一項第二号の政令で定める身体の障害は、次に掲げるとおりとする。
一 体幹の機能に障害があつて腰をかけていることができないもの
二 四肢の全部を失つたもの又は四肢の用を全廃したもの
三 前二号に掲げるもののほか、自動車等の安全な運転に必要な認知又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなるもの(法第九十一条の規定により条件を付し、又はこれを変更することにより、その能力が回復することが明らかであるものを除く。)



e-Gov 道路交通法施行令

このように、様々な病気で免許の拒否等や免許の取消し、停止等がなされます。めぼしいものを列挙してみましょう。産業医は、道路交通法でどのような病気が運転に影響を及ぼす疾病と考えられているかは知っておきましょう。

  • 幻覚の症状を伴う精神病
  • 発作により意識障害又は運動障害をもたらす病気であつて政令で定めるもの
  • 上記に掲げるもののほか、自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるもの
  • 認知症であることが判明したとき。
  • 目が見えないことその他自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある身体の障害が生じている者であることが判明したとき
  • アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚醒剤の中毒者であることが判明したとき。
  • 統合失調症(自動車等の安全な運転に必要な認知、予測、判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなるおそれがある症状を呈しないものを除く。)
  • てんかん(発作が再発するおそれがないもの、発作が再発しても意識障害及び運動障害がもたらされないもの並びに発作が睡眠中に限り再発するものを除く。)
  • 再発性の失神(脳全体の虚血により一過性の意識障害をもたらす病気であつて、発作が再発するおそれがあるものをいう。)
  • 無自覚性の低血糖症(人為的に血糖を調節することができるものを除く。)
  • そう鬱病(そう病及び鬱病を含み、自動車等の安全な運転に必要な認知、予測、判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなるおそれがある症状を呈しないものを除く。)
  • 重度の眠気の症状を呈する睡眠障害
  • 自動車等の安全な運転に必要な認知、予測、判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなるおそれがある症状を呈する病気

運転禁止薬と車の運転を伴う業務について(薬の影響と業務)

服薬とその業務への影響について

薬を服用している間に、現在の職務を遂行することができなくなる可能性があります。たとえば、眠気、めまい等があらわれることがあるので運転中の服用を十分注意すべき薬を服薬している場合、医師の指示により、運転禁止となり、要休業となる可能性もあります。では、このような薬の影響をどのように判断すればよいのでしょうか。

一番確実なのは、(医療用)医薬品の添付文書です。

医療用医薬品の添付文書は、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に定められています。
実務では、「医薬品添付文書」「医薬品の添付文書」「医療用医薬品の添付文書」など呼びますが、どれも同じものを指します。
医療用医薬品の添付文書は,医薬品医療機器法の規定に基づき,医薬品の適用を受ける患者の安全を確保し適正使用を図るために,医師,歯科医師,薬剤師等の医薬関係者に対して必要な情報を提供する目的で,当該医薬品の製造販売業者が作成するものです(厚生労働省)。

「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(容器等への符号等の記載)
(容器等への符号等の記載)
第五十二条 医薬品(次項に規定する医薬品を除く。)は、その容器又は被包に、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて厚生労働省令で定めるものにより、第六十八条の二第一項の規定により公表された同条第二項に規定する注意事項等情報を入手するために必要な番号、記号その他の符号が記載されていなければならない。ただし、厚生労働省令で別段の定めをしたときは、この限りでない。
2 要指導医薬品、一般用医薬品その他の厚生労働省令で定める医薬品は、これに添付する文書又はその容器若しくは被包に、当該医薬品に関する最新の論文その他により得られた知見に基づき、次に掲げる事項が記載されていなければならない。ただし、厚生労働省令で別段の定めをしたときは、この限りでない。
一 用法、用量その他使用及び取扱い上の必要な注意
二 日本薬局方に収められている医薬品にあつては、日本薬局方において当該医薬品の品質、有効性及び安全性に関連する事項として記載するように定められた事項
三 第四十一条第三項の規定によりその基準が定められた体外診断用医薬品にあつては、その基準において当該体外診断用医薬品の品質、有効性及び安全性に関連する事項として記載するように定められた事項
四 第四十二条第一項の規定によりその基準が定められた医薬品にあつては、その基準において当該医薬品の品質、有効性及び安全性に関連する事項として記載するように定められた事項
五 前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項

e-Gov 薬機法

インターネットで服薬中の薬の名前と「添付文書」の二つのキーワードで検索すると、通常は多くの場合、関連する添付文書をダウンロードできます。
この時、製薬会社のウェブサイトなど、信頼性の高い情報源を選ぶことが重要です。医療関係者しかダウンロードできない場合もあります。
このダウンロードした添付文書で、薬の使用上の注意事項や副作用、特に運転や機械操作への影響に関する情報を探しましょう。
すると以下のような文言が見つかるかもしれません。

「めまい・ふらつきがあらわれることがあるので、本剤投与中の患者(特に投与初期や増量時)には、自動車の運転等危険を伴う機械の作業をしないように注意させること。 」

「眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないように注意すること。 」

このような記載のある薬剤を服用している場合、自動車の運転や他の危険を伴う機械作業を避ける必要があります。

危険を伴う機械作業には、様々なものがありますので、状況によります。例えば、フォークリフトの操作も危険な作業になりますし、高所作業も危険です。薬の影響や副作用によって、判断能力や反応速度が低下する可能性があるため、安全を最優先に考えるべきです。

このような薬剤を服薬中に、車の運転について、本人や会社、さらに主治医が問題ないと言っていても、服薬中に通勤中などで第三者を巻き込んでしまう可能性も考えられます。
医師や産業医は、服薬中の医薬品の影響と、労働者が従事している業務の内容を考慮し、医師の意見を聞き、適切な就業上の対策を実施していくことになります。


総務省の医薬品等の普及・安全に関する報告について

少し古いですが、総務省からの「医薬品等の普及・安全に関する行政評価・監視<調査結果に基づく勧告>」(平成25年3月22日)があります。
こちらに「自動車運転の禁止」又は「自動車運転等の際は注意が必要」と記載されている薬剤につき調査結果が報告されています。
以下、長いですが抜粋しておきます。
青色ハイライト部分が、運転禁止薬と運転注意薬の話になります。

ウ 添付文書の使用上の注意の記載状況等
医薬品の副作用は、皮膚障害、神経系障害、肝胆道系障害等服用者に直接被害をもたらすものであり、場合によっては重篤な症状を引き起こすものもある。このような副作用のうち、神経系障害等の中には、意識レベルの低下、意識消失、意識変容状態、失神、突発的睡眠(以下これらを総称して「意識障害等」という。)が報告されている。当該医薬品を服用することにより、自動車の運転、機械の操作、高所作業等危険を伴う作業(以下「自動車運転等」という。)に従事している最中に意識障害等が発現し事故が発生した場合は、第三者へ危害を及ぼす危険性があることから、このような医薬品の使用に当たっては、特段の注意が必要であると考えられる。

PMDAに対する意識障害等及び事故関連の副作用報告(以下「意識障害等の副作用報告」という。)について、平成15年11月から24年6月までの状況をみたところ、一般用医薬品37成分を含む751成分において計6,205件報告されている。また、意識障害等の副作用報告が多かった上位50成分のうち、販売中止となったものや過量投与等による意識障害等を除いた46成分中21成分で計110件の医薬品服用による自動車事故が報告されている。

当省において、当該46成分の添付文書についてみたところ、24成分については、使用上の注意に意識障害等の副作用が発現する旨の記載があり、かつ、発現状況に応じ自動車運転等の禁止又は自動車運転等の際は注意が必要とする旨(以下「自動車運転等の禁止等」という。)が記載されている。なお、当該24成分中17成分で計102件の自動車事故が報告されており、残りの7成分については、報告されていない。

しかし、その他の22成分の添付文書については、使用上の注意に意識障害等の副作用が発現する旨の記載があるものの、自動車運転等の禁止等が記載されておらず、また、当該22成分中4成分で計8件の自動車事故が報告されている状況がみられた。

これに対しPMDAでは、意識障害等の副作用が報告されている医薬品については、当該医薬品によって同副作用が発現する状況が異なるため、一律に自動車運転等を制限することは社会的影響も大きく適切ではないが、医薬品ごとの発現状況に応じた自動車運転等の禁止等の記載の必要性は認識しており、医薬品の服用と自動車運転等による事故との因果関係が明確な場合は、自動車運転等の禁止等を記載するが、前述の4成分における計8件の自動車事故については、明確に因果関係があるとはいえないため、添付文書に自動車運転等の禁止等の記載は不要としている。

しかし、因果関係が明確でないため添付文書に自動車運転等の禁止等が記載されていない医薬品であっても、明らかに因果関係が認められない場合は別として、医薬品の服用との因果関係が明確でない場合であっても、自動車運転等による事故を未然に防ぐため、添付文書に意識障害等の副作用が記載されているものについては、意識障害等の発現状況に応じた注意喚起は必要であると考えられる。現に、使用上の注意に意識障害等の副作用が発現する旨の記載があり、自動車運転等の禁止等が記載されている医薬品の中には、自動車運転等による事故が報告されていないものもある。

さらに、前述の46成分のうち1成分において、使用上の注意に自動車運転等の禁止等を記載した添付文書に改訂されたものの、改訂後も10件の自動車事故が発生しており、うち1件の発生例の場合について、PMDAでは、医師又は薬剤師から患者に対し、医薬品の服用に際し自動車運転等の禁止等の説明がなされていないと考えられるとしている。

総務省ホームーページ 「医薬品等の普及・安全に関する行政評価・監視<調査結果に基づく勧告>」(平成25年3月22日) 

ここでは、自動車運転等の禁止又は自動車運転等の際は注意が必要とする旨について、つまり運転禁止と運転注意については「自動車運転等の禁止等」とまとめられています。
意識障害等の副作用報告が多かった上位50成分のうち、販売中止となったものや過量投与等による意識障害等を除いた46成分中21成分で計110件の医薬品服用による自動車事故が報告されているとのことで、やはり、医薬品服薬による自動車事故は発生しています。この報告は、あくまで意識障害等の副作用が多かった上位50位についての話です。

上記内容をまとめますと以下のようになります。

① 意識障害等の副作用報告が多かった上位50成分のうち46成分中21成分で計110件の医薬品服用による自動車事故が報告されている(緑ハイライト部分)

② 46成分の添付文書についてみたところ、24成分については、意識障害等の副作用が発現する旨の記載があり、かつ、発現状況に応じ自動車運転等の禁止又は自動車運転等の際は注意が必要とする旨(以下「自動車運転等の禁止等」という。)が記載されている。24成分中17成分で計102件の自動車事故が報告されており、残りの7成分については、報告されていない。

③ ②の24成分以外の、22成分の添付文書については、使用上の注意に意識障害等の副作用が発現する旨の記載があるものの、自動車運転等の禁止等が記載されておらず、また、当該22成分中4成分で計8件の自動車事故が報告されている状況がみられた。

④自動車運転等の禁止等が記載されていない医薬品であっても、自動車運転等による事故を未然に防ぐため、添付文書に意識障害等の副作用が記載されているものについては、意識障害等の発現状況に応じた注意喚起は必要であると考えられる。

つまり、46成分の医薬品服用による自動車事故報告につき、半分くらいの添付文書には「自動車運転の禁止等」が明記されている。しかし「自動車運転の禁止等」が明記されているものでも自動車事故が報告されていないものがある。「意識障害等」について記載があるが「自動車運転の禁止等」が記載されていない成分についても頻度が低いながらも自動車事故が報告されている。自動車運転等の禁止等が記載されていない医薬品でも意識障害等の副作用が記載されている場合は注意喚起が必要であると考えられる。

この、注意喚起や、業務を行うことができるかの意見については、産業医が行うべきでしょう。

 服薬が問題となる契機

このように、服薬の内容により、就業を考慮しなければいけないことが分かったと思います。
具体的に服薬による就業上の問題は、例として、以下のような契機により問題が発覚します。

  • 健康診断の結果の現病歴の部分に運転禁止薬の服用が予想される病名が記載されている。
  • 病気にて休職後、職場復帰のための産業医面談にて服薬が分かった。
  • 産業医面談を行っている中で、服薬について判明した。
  • 本人が、このお薬を飲んでいて、車の運転していいのですか?と聞きに来た。

どのような場面でも当該労働者の方としっかりお話しして対応していきましょう。

就業制限と就業規則

このような就業禁止が必要となる場面のために、就業規則に規定しておくのも一つの選択です。
例えば、お仕事で問題がなくても、車での通勤が危険である場合もあるかもしれません。
このような場合には、以下のような就業規則を盛り込むことも考慮します。

例)復職した者については、薬の服用などにより正常な運転に支障をきたす恐れがある場合は、車での通勤を避け、公共交通機関を利用するものとする。

服薬の内容を聞き取る際には、現在の病状に関する情報の収集と、服用している医薬品の特定が必要です。そのため、産業医や医師に関与してもらうことが望ましいと思われます。場合によっては、診療情報提供依頼書を使用して主治医に服薬内容の確認を依頼する必要があるかもしれません。ただし、この場合、主治医の意見書の提出命令を受け入れるかどうかという問題も生じますので、会社としては就業規則へ記載しておきましょう。

また、車の運転ができない場合は、労働に従事できるかどうかも問題になります。こちらについては、労働者がどのような業務に従事する労働契約になっているかをチェックする必要があります。

運転禁止薬については、添付文書を確認する必要がありますが、まとめて情報を提供しているウェブサイトも存在します。

参考)鳥取大学 自動車運転禁止薬リスト
https://www2.hosp.med.tottori-u.ac.jp/departments/establishment/pharmaceutical/renkei/22156.html

 就業上の措置は医師の意見を書面で発行するようにしましょう

最終的に、産業医等は、本人の服薬状況、業務の内容から医師の意見をまとめるわけですが、さまざまな論点があります。
後々、トラブル等になることもあるため、この医師の意見は文書で、押印して事業者へ提出しましょう。

もし、お仕事ができない場合には、治療と仕事の両立支援の対応を行うのは一つの方法です。



 まとめ

服薬中の薬剤のため、今の車の運転を伴うお仕事ができなくなるということがあります。
道路交通法では、様々な病気により、免許の拒否等、免許の取消し、停止等がなされうることを産業医は知っておきましょう。

服薬中のお薬が車の運転に影響するかどうかを判断するためには、服薬中の薬剤の添付文書を入手し、内容を確認しましょう。

運転禁止薬と運転注意薬については、総務省の報告書に記載があります。この報告書では、自動車運転等の禁止又は自動車運転等の際は注意が必要とする旨について、つまり運転禁止と運転注意については「自動車運転等の禁止等」とまとめられています。「自動車運転等の禁止等」が記載されていない場合でも、自動車事故が発生しているようです。
産業医はこれらの状況を把握しながら、産業医の意見を述べねばなりません。

医師・産業医は道路交通法や添付文書においてどのような副作用があるかを確認し、当該労働者が従事している業務の内容の詳細を聞き取りし、医師の意見として就業上の措置を行っていかねばなりません。

その際は、きちんと書面で医師の「意見書」を発行しましょう。

労働衛生コンサルタント事務所LAOでは、産業医・顧問医の受託をお受けしております。労務管理と一体になった産業保健業務を多職種連携で行います。

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この記事を書いた人

清水 宏泰

1975年生まれ。公衆衛生分野の専門家。現在はさまざまな組織の健康問題を予防するためにLAOにて行政書士・社労士・労働衛生コンサルタントとして活動しています。主に健康、心理系、産業保健の情報について発信していきます。

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