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【安全衛生・人事労務担当者向け】診療情報提供書(診断書・意見書)発行の費用と就業規則の規定について

会社が、従業員へ診断書を求める場合の診療情報提供依頼書(診断書・意見書を含む、以下、診療情報提供書等と呼びます)発行にかかる費用ですが、皆様はどうされているでしょうか?
通常、診療情報提供書等の発行には数千円かかることが多いです。何度も診断書を発行してもらって、費用をすべて従業員が支払うというのも酷ですよね。また、会社が依頼していない診断書を従業員が提出し、その費用を会社が支払うのも適切ではないかと思われます。
今回は、そんな診療情報提供書等の発行代金のお話です。


診断書の費用は従業員と会社、どちらが負担すべき?

診療情報提供依頼書を主治医に送り、診療情報提供書等を依頼した場合、情報を主治医から受け取ることができることはお分かりかと思います。しかし、その際の費用は従業員と会社のどちらが負担すべきでしょうか?

はい、これは就業規則、労働契約等の定めによります。

私としては、できれば会社が特別に診断書を要求した場合には費用を負担するのが適切だと考えます。
産業医としては主治医に診断書を発行してもらうのに、何度もやりとりすることがあります。
このような場合、会社が費用を負担することで従業員の負担を軽減でき、従業員の方にお願いしやすいのです。
また、休業中でお金に困っているかもしれない状況で、何度も診療情報提供書等の費用を従業員に支払ってもらうよう求めるのも酷かと思われます。

また、傷病による休職が始まり、初日からの欠勤が7日を超える場合などに診断書(診療情報提供書等)の提出が求められる場合には、別途規定を設けて費用は従業員負担とすることもあります。

 会社は費用を負担する場合には、限度について設定しておいた方が良いです

もう一つの問題として、費用の上限についてお話しします。診断書の上限は、各医療機関が設定することができます。
一般的には数千円から1万円程度が一般的ですが、理論的には10万円と設定することも可能です。

以下の通達では、保健医療機関にて保険診療を行う場合の患者側からその費用の徴収について記載されております。
しかし、「産業医が主治医に依頼する職場復帰等に関する意見書」については、公的保険給付とは関係のない文書の発行にかかる費用となっております。

(2)公的保険給付とは関係のない文書の発行に係る費用ア証明書代(例)産業医が主治医に依頼する職場復帰等に関する意見書、生命保険等に必要な診断書等の作成代等イ診療録の開示手数料(閲覧、写しの交付等に係る手数料)ウ外国人患者が自国の保険請求等に必要な診断書等の翻訳料等

療養の給付と直接関係ないサービス等の取扱いについて(平成17年9月1日保医発第0901002号、最終改正;平成20年9月30日保医発第0930007号)

クライエント企業様とのご相談の上ですが、私が就業規則を作成・変更する場合に、会社が求めた場合の診療情報提供書等の費用は会社が負担することとし、上限も併せて決めておくことはよくあります。

主治医へ診療情報提供依頼書を送るときの送り状に「〇〇円まで会社が負担する制度となっています」と記載することもあります。
これにより、あまりに法外な文書発行料金については、従業員からの相談で知ることができるかと思われます。

就業規則の例です)
(診断書及び意見書)
第〇条 会社は、従業員の健康管理等に関し必要があると考えた場合には主治医の診断書、及び意見書等を求めることができる。
2 前項の場合、診断書発行に係る費用は会社が支給するものとする。但し、支給する金額の上限は5,000円までとする。

 

診断書以外で、病院を受診していることが分かる方法があります。

ここまでのお話は、診断書を求める場合の話です。なぜ、診断書が必要なのでしょうか。
病気でお休みしているかどうか知りたいからかもしれません。


この場合、短期間のお休みであれば、会社としては診断書までいらなくても、病院へ行っていることがわかればいいというかもしれません。
例えば、5日ほど、風邪で休む場合を考えてみましょう。

この場合、①診療費の明細書、または②傷病手当金支給申請書を確認する方法があります。

①診療費の明細書、薬剤説明書、お薬手帳を見せてもらう

診療費の明細書、薬剤説明書、お薬手帳などがあれば、従業員が病院に受診したかどうかわかります。
ただ、傷病名が分かリません。しかし、どこの病院を何らかの病気で受診したかということは分かります。
さらに処方があれば、薬局でもらう薬剤説明書か、お薬手帳を確認すれば、治療がなされているかわかります。

この場合、診断書費用はかかりませんが、診断書以上の情報が記載されているかもしれないので、本人の意思に反して見せてもらうことは避けたほうがいいでしょう。
例えば、就業規則上、診断書費用を従業員の負担とする場合に、会社がもし、「薬剤説明書かお薬手帳を見せてもらえれば、診断書はいらないよ」といった場合はどうでしょうか。
従業員からとしては診断書の費用負担がいらないので、こちらの方がよいと思うかもしれません。

このようにするためにも、就業規則には「会社は・・・診断書の提出を命じることができる」としておけば対応できますね。


②傷病手当金支給申請書の確認

傷病手当金の書類は通常、主治医は無償で記載してくれます。
その中に傷病名を記載する欄がありますので、これで会社は傷病名を知ることができます。
長期間のお休みでしたら、職場復帰支援も必要ですし、いつまで休めるかを知る必要があり、正式な診断書を求めるかと思いますが、例えばインフルエンザや、新型コロナで7日くらい休む場合では、傷病手当金申請書を参照することで対応してもよいかもしれません。

 まとめ

産業医が従業員のメンタルヘルス不調からの復職や、以前の主治医から発行された診療情報提供書に関する不明な点を再度問い合わせることはよくあります。

このような場合、診療情報提供書等のやり取りが複数回になることがありますが、会社が特別に診断書(意見書、診療情報提供依頼書)を求めた場合には費用を会社が負担することにはメリットもあります。

診療情報提供書の費用については、事前に就業規則や労働契約などで明記しておくことを強くおすすめします。
一定の場合に会社が費用を負担することは、不利益変更ではないため、導入しやすいかと思います。

また、短期間の休業で診断書を求める場合には、会社としては正式な診断書でなくても、病院を受診していることが分かればよいというかもしれません。
その場合は、診療費の明細書、薬剤説明書、お薬手帳を見せてもらうことや、傷病手当金支給申請書を確認することで目的を達することができるかもしれません。
しかし、これらの提出についても、あくまで任意のお願いの範囲内としましょう。

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この記事を書いた人

清水 宏泰

1975年生まれ。公衆衛生分野の専門家。現在はさまざまな組織の健康問題を予防するためにLAOにて行政書士・社労士・労働衛生コンサルタントとして活動しています。主に健康、心理系、産業保健の情報について発信していきます。

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