事務所LAO – 行政書士・社会保険労務士・労働衛生コンサルタント・海事代理士

【重要】産業保健スタッフが知っておくべきオンライン診療に関する事項

新型コロナウイルス感染症の流行により医療機関を受診することが困難となった患者や、宿泊療養施設の患者への医療提供手段としてオンライン診療が利用されたことを契機として、オンライン診療の解禁がなされました。産業保健に携わる皆様はオンライン診療についてよくご存じでしょうか。

今回は、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に基づいて、オンライン上で行える診療等の種類について説明いたします。
産業医はもちろん、医師以外の産業保健スタッフが何を、どこまで行っていいのかについてご説明いたします。

今回の記事では、産業保健分野に焦点を当て、産業医や産業保健スタッフのオンライン上での活動について解説します。一般的な医療機関の医師とは異なり、産業医は原則として疾病の診断や治療を行いませんので、オンライン診療における視点の違いにご注意ください。

オンライン診療について医師以外のスタッフが知っておくべき事項について

 オンライン診療に関する指針と、直接診療の原則(医師法20条)について

まず、オンライン診療について解説する前に、医師法の第20条には「直接診療の原則」という条文がありますので確認しておきましょう。

第二十条 医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方を交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。但し、診療中の患者が受診後二十四時間以内に死亡した場合に交付する死亡診断書については、この限りでない。
e-Gov 医師法

簡単に説明しますと、医師法は医師が自ら診察しないで医療行為を行うことを禁止しています。かつては、この「自ら診察」という部分が対面での診察を意味すると解釈されていました。
したがって、以前はオンライン診療は医師法の第20条に違反するとされていました。しかし、新型コロナウイルス感染症を契機として、オンライン診療は原則的に解禁されました。

そして、オンライン診療に関する指針が策定されました。この指針は非常に重要です。指針では、オンライン診療に関連する「最低限遵守すべき事項」や「推奨される事項」などが明確に定められています。
この、「最低限遵守する事項」に従いオンライン診療を行う場合には、医師法第20条に抵触するものではないことが明確化されました。
なお、「推奨される事項」はあくまで推奨で努力義務の範囲内です。

その中でも重要なのは、オンライン診療に関する定義です。

オンライン診療の適切な実施に関する指針 平成30年3月(令和5年3月一部改訂))労働省指針
https://www.mhlw.go.jp/content/000889114.pdf

(以下、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を本指針と呼びます。)
本指針に用いられる用語の定義によりますと遠隔医療とオンライン診療について、以下の定義があります。

  • 遠隔医療
    情報通信機器を活用した健康増進、医療に関する行為。
  • オンライン診療
    遠隔医療のうち、医師-患者間において、情報通信機器を通して、患者の診察及び診断を行い診断結果の伝達や処方等の診療行為を、リアルタイムにより行う行為

つまり、遠隔医療の中にオンライン診療が含まれるということです。
オンライン診療は、医師と患者の間で行われる診察、診断、処方等という範囲に限定されており、医師以外は行うことができません。
医師以外の産業保健スタッフはオンライン診療はできないということになります。

産業保健において、多職種が活動する機会も多いですが、保健師やカウンセラー、その他の産業保健スタッフの皆様は、オンライン上でどのような活動が可能でしょうか。
実は、本指針にはオンライン診療以外にもさまざまなオンライン上の活動が定義されており、医師以外の産業保健スタッフが行える活動と行えない活動が含まれています。
以下にそれらを列挙します。

① オンライン受診勧奨
② 遠隔医療相談(医師による)
③ 遠隔医療相談(医師以外による)
④ オンライン診療支援者

これらは微妙に異なるので、注意が必要です。

なお、これらの定義には本指針が適用されるものと、適用されないものがあります。
「本指針の適用」ということは、この指針に従わなければならないことを意味しますので、厳格に順守する必要があります。
前述しましたが、「本指針の適用」となる場合、「最低限遵守すべき事項」を遵守せずオンライン診療を行えば、医師法第20条に抵触する可能性があります。

「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(本指針)における、診療などの定義について

①オンライン診療

先ほど触れましたが、オンライン診療の定義です。

 オンライン診療
遠隔医療のうち、医師-患者間において、情報通信機器を通して、患者の診察及び診断を行い診断結果の伝達や処方等の診療行為を、リアルタイムにより行う行為。

具体的な診断名を伝える、一般的な医薬品の具体的な使用方法を伝える、処方を行うなどは、医療行為に該当し、オンライン診療に分類されます。なお、本指針は保険診療に限らず、自由診療におけるオンライン診療にも適用されます。おそらく、皆様が一般的に想像されている「オンライン診療」と同様の範疇化と思います。

②オンライン受診勧奨

実は、「オンライン診療」とは別に「オンライン受診勧奨」という概念が存在します。これは重要な定義です。
言葉としてはオンラインの受診勧奨ということで、医師以外ができそうなのですが、実は、医師以外ができるのは遠隔健康医療相談というものになります。
そして、オンライン受診勧奨の定義は、本指針によれば以下の通りです。

オンライン受診勧奨
 遠隔医療のうち、医師-患者間において、情報通信機器を通して患者の診察を行い、医療機関への受診勧奨をリアルタイムにより行う行為であり、患者からの症状の訴えや、問診などの心身の状態の情報収集に基づき、疑われる疾患等を判断して、疾患名を列挙し受診すべき適切な診療科を選択するなど、患者個人の心身の状態に応じた必要な最低限の医学的判断を伴う受診勧奨一般用医薬品を用いた自宅療養を含む経過観察や非受診の勧奨も可能である。
 具体的な疾患名を挙げて、これにり患している旨や医学的判断に基づく疾患の治療方針を伝達すること、一般用医薬品の具体的な使用を指示すること、処方等を行うことなどはオンライン診療に分類されるため、これらの行為はオンライン受診勧奨により行ってはならない。
 なお、社会通念上明らかに医療機関を受診するほどではない症状の者に対して経過観察や非受診の指示を行うような場合や、患者の個別的な状態に応じた医学的な判断を伴わない一般的な受診勧奨については遠隔健康医療相談として実施することができる。

オンライン診療の適切な実施に関する指針 平成(令和厚4年生301年3月月一部改訂)労働省指針

このように、オンライン受診勧奨については、「医師と患者の間で」と記載されています。
一般的に、看護師・保健師やカウンセラー等は何らかの疾患の発症を疑ったとき、必要に応じて医師へのリファーを行う場合があります。
しかし、上記の青ハイライト部分については、上記「オンライン受診勧奨」に該当し医師しかできないということになります。
再掲します。

「疑われる疾患等を判断して、疾患名を列挙し受診すべき適切な診療科を選択するなど、患者個人の心身の状態に応じた必要な最低限の医学的判断を伴う受診勧奨」

そして、この「オンライン受診勧奨」は一定の医学的な判断の伝達を伴うものであり、誤った情報を患者に伝えることによりリスクが発生するものであるので、原則本指針の対象とされています。
したがって、オンライン受診勧奨については、本指針の対象となりますので、様々な制約があります。

また、指針によれば、「例えば、発疹の問診を行い、『このような発疹の形状や色から判断すると、蕁麻疹が疑われますので、皮膚科を受診してください』と勧奨する」といったケースがオンライン受診勧奨に該当します。この勧奨には、疾患名(蕁麻疹)が列挙され、受診すべき適切な診療科が選択(皮膚科を受診してください)されていますね。

重要なポイントは、医師と患者の関係にあります。産業医としてオンライン面談を行い、診断名を挙げて特定の科への受診勧奨をする場合は、オンライン受診勧奨に該当する可能性が高いです。
一方、保健師やカウンセラーが受診勧奨を行う場合は、オンラインでの受診勧奨はできず、遠隔医療相談(医師以外)を行うべきです。

なお、医師が疾患名を列挙せず、適切な診療科を選択しない場合には、遠隔医療相談(医師)に該当します。医師は、オンラインでの受診勧奨と遠隔健康医療相談の両方を行うことができることになります。

③遠隔健康医療相談(医師)

遠隔健康医療相談(医師)は、遠隔医療のうち、医師-相談者間において情報通信機器を活用して得られた情報のやりとりを行い、患者個人の心身の状態に応じた必要な医学的助言を行う行為。相談者の個別的な状態を踏まえた診断など具体的判断は伴わないものとなっています。

遠隔健康医療相談(医師)
遠隔医療のうち、医師-相談者間において、情報通信機器を活用して得られた情報のやりとりを行い、患者個人の心身の状態に応じた必要な医学的助言を行う行為。相談者の個別的な状態を踏まえた診断など具体的判断は伴わないもの。

オンライン診療の適切な実施に関する指針 平成(令和厚4年生301年3月月一部改訂)労働省指針

これは「オンライン受診勧奨」とは異なるものですので、注意が必要です。

この形態では、一般的な情報やアドバイスを提供することが主であり、患者の個別的な状態を考慮した診断は行われません。
したがって、本指針の対象外となります。

また、指針には、「労働安全衛生法に基づき産業医が行う業務(面接指導、保健指導、健康相談など)」については、遠隔健康医療相談として本指針は適用されないと明記されています。つまり、このような業務は指針の規制の対象外となります。

しかし、実際には、産業医が従業員との面談の結果、必要と判断した場合、診断名を挙げて特定の科への受診勧奨をするケースがほとんどだと思われます。微妙な場合は、オンライン受診勧奨として対応する方が適切です。

また、リアルタイム性は要求されず、チャットなどの手段でも遠隔健康医療相談が可能です。

④遠隔健康医療相談(医師以外)

遠隔健康医療相談(医師以外)は遠隔医療のうちで「医師又は医師以外の者」、つまりすべての者が、一般的な医学的な情報の提供や、一般的な受診勧奨を行うものです。

遠隔健康医療相談(医師以外)
遠隔医療のうち、医師又は医師以外の者-相談者間において、情報通信機器を活用して得られた情報のやりとりを行うが、一般的な医学的な情報の提供や、一般的な受診勧奨に留まり、相談者の個別的な状態を踏まえた疾患のり患可能性の提示・診断等の医学的判断を伴わない行為。

オンライン診療の適切な実施に関する指針 平成(令和厚4年生301年3月月一部改訂)労働省指針

「医師以外」とあるように、こちらは、医師以外の方々、具体的には保健師、看護師、またはカウンセラーが担当することができます。定義上は、医師も行うことができます。
重要なのは、一般的な医学的情報の提供や一般的な受診勧奨に留まることです。
「一般的」という言葉がポイントとなりますね。

⑤オンライン診療支援者 

こちらについては、以下のように定義されます。情報機器の使用に不慣れな方をサポートする役割を担う方です。

オンライン診療支援者
医師-患者間のオンライン診療において、患者が情報通信機器の使用に慣れていない場合等に、その方法の説明など円滑なコミュニケーションを支援する者。家族であるか、看護師・介護福祉士等の医療・介護従事者であるかは問わない。

オンライン診療の適切な実施に関する指針 平成(令和厚4年生301年3月月一部改訂)労働省指針

 

オンライン診療、オンライン受診勧奨、遠隔健康医療相談の具体例について

なお、以下の表が指針に挙げられています。指針の適用と具体例です。
引用:オンライン診療の適切な実施に関する指針 (厚生労働省)

こちらは、土台の種類に応じて、指針の対象となる行為の例を示した関連図です。具体的には、皮疹に関するオンライン受診勧奨の例と、遠隔健康医療相談の例が示されています。
この違いを理解することは重要です。

発疹に対して問診を行い、「あなたはこの発疹の形状や色ですと蕁麻疹が疑われるので、皮膚科を受診してください」と勧奨する。
オンライン受診勧奨なので、医師しかできない。本指針の対象である。

発疹がある場合には皮膚科を受診してくださいと勧奨する。
遠隔健康医療相談にあたり、医師以外が行うことも可能です。

引用:オンライン診療の適切な実施に関する指針 (厚生労働省)

本指針の対象の範囲は、以下の図の太い四角で囲まれた部分になります。
医師以外の産業保健スタッフは、この、オンライン診療とオンライン受診勧奨に該当しないように、オンライン上で活動しましょう。

医師は、オンライン診療に責任を有する者として、研修を受講することが義務です

「オンライン診療の適切な実施に関する指針」において、医師は、オンライン診療に責任を有する者として、研修を受講することが義務とされています。
オンライン面談を行う医師は、この研修を受講しておきましょう。

ちなみに、学習効果の判定のためのテストがありますが、結構難しかったりします。

厚生労働省 オンライン診療研修・緊急避妊薬の処方に関する研修
https://telemed-training.jp/entry

3.その他オンライン診療に関連する事項
(1) 医師教育/患者教育 オンライン診療の実施に当たっては、医学的知識のみならず、情報通信機器の使用や情報セキュリティ等に関する知識が必要となる。このため、医師は、オンライン診療に責任を有する者として、厚生労働省が定める研修を受講することにより、オンライン診療を実施するために必須となる知識を習得しなければならない。 ※ 2020年4月以降、オンライン診療を実施する医師は厚生労働省が指定する研修を受講しなければならない。

オンライン診療の適切な実施に関する指針 平成30年3月 (令和5年3月一部改訂)

 

 まとめ

オンライン診療に関する指針である「オンライン診療の適切な実施に関する指針」では、オンラインでクライエントと面談する者は、医師を含む医師以外の関係者も内容を把握することが求められます。そのため、正確な定義をしっかりと理解しておく必要があります。

特に、オンライン診療、オンライン受診勧奨、遠隔健康医療相談は別々の概念であるため、注意が必要です。

遠隔健康医療相談については、「一般的な医学的な情報の提供や、一般的な受診勧奨に留まる」ことが重要です。一般的であることがポイントですね。

保健師や看護師、カウンセラーなど医師以外の関係者は、自身の役割やできることを把握しておく必要があります。遠隔健康医療相談は医師以外の関係者も行うことができますが、オンライン受診勧奨は医師に限られます。そのため、医師以外の関係者は、オンライン受診勧奨と遠隔健康医療相談の違いを理解し、自身が行える範囲を超えないように注意しましょう。

 

 

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この記事を書いた人

清水 宏泰

1975年生まれ。公衆衛生分野の専門家。現在はさまざまな組織の健康問題を予防するためにLAOにて行政書士・社労士・労働衛生コンサルタントとして活動しています。主に健康、心理系、産業保健の情報について発信していきます。

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