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【初心者・産業医向け】長時間労働者の面接指導の流れと書面についてわかりやすく解説

医師が長時間労働者の面接指導を行う方法について、どのように進めれば良いのでしょうか?
今回は、初心者の産業医向けに記事を書きましたので、以下にその内容をまとめました。

長時間労働者の面接指導の医師の意見の書き方についてわかりやすく解説

 長時間労働者の面接指導で必要なこと

今回は、長時間労働者の面接指導についてお話いたします。
実は、以下の厚生労働省のマニュアルをよく読めばできます。

長時間労働者、高ストレス者の面接指導に関する報告書・意見書作成マニュアル(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000055195_00013.html

まず、長時間労働者の面談において最終的に必要なのは、医師の意見です。
具体的には、労働安全衛生法の第66条の8に基づいて医師の意見を事業者へ述べることが求められます。

労働安全衛生法(面接指導等)
第六十六条の八 事業者は、その労働時間の状況その他の事項が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当する労働者(次条第一項に規定する者及び第六十六条の八の四第一項に規定する者を除く。以下この条において同じ。)に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導(問診その他の方法により心身の状況を把握し、これに応じて面接により必要な指導を行うことをいう。以下同じ。)を行わなければならない。
2 労働者は、前項の規定により事業者が行う面接指導を受けなければならない。ただし、事業者の指定した医師が行う面接指導を受けることを希望しない場合において、他の医師の行う同項の規定による面接指導に相当する面接指導を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない。
3 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、第一項及び前項ただし書の規定による面接指導の結果を記録しておかなければならない。
4 事業者は、第一項又は第二項ただし書の規定による面接指導の結果に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、厚生労働省令で定めるところにより、医師の意見を聴かなければならない。
5 事業者は、前項の規定による医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずるほか、当該医師の意見の衛生委員会若しくは安全衛生委員会又は労働時間等設定改善委員会への報告その他の適切な措置を講じなければならない。

第六十六条の八の二 事業者は、その労働時間が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める時間を超える労働者(労働基準法第三十六条第十一項に規定する業務に従事する者(同法第四十一条各号に掲げる者及び第六十六条の八の四第一項に規定する者を除く。)に限る。)に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導を行わなければならない。
2 前条第二項から第五項までの規定は、前項の事業者及び労働者について準用する。この場合において、同条第五項中「作業の転換」とあるのは、「職務内容の変更、有給休暇(労働基準法第三十九条の規定による有給休暇を除く。)の付与」と読み替えるものとする。

第六十六条の八の三 事業者は、第六十六条の八第一項又は前条第一項の規定による面接指導を実施するため、厚生労働省令で定める方法により、労働者(次条第一項に規定する者を除く。)の労働時間の状況を把握しなければならない。

第六十六条の八の四 事業者は、労働基準法第四十一条の二第一項の規定により労働する労働者であつて、その健康管理時間(同項第三号に規定する健康管理時間をいう。)が当該労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める時間を超えるものに対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導を行わなければならない。
2 第六十六条の八第二項から第五項までの規定は、前項の事業者及び労働者について準用する。この場合において、同条第五項中「就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等」とあるのは、「職務内容の変更、有給休暇(労働基準法第三十九条の規定による有給休暇を除く。)の付与、健康管理時間(第六十六条の八の四第一項に規定する健康管理時間をいう。)が短縮されるための配慮等」と読み替えるものとする。

e-Gov 労働安全衛生法

事業者は医師の意見を聴かなければならないと書いてありますね。その医師の意見を決定するために必要なのが面談なのです。
面談があくまで手段で、医師の意見を述べることが目的ですね。

そして、上記「長時間労働者、高ストレス者の面接指導に関する報告書・意見書作成マニュアル」によりますと以下の流れになります。
長時間労働者から面接指導の申し出があった場合の実際の面接指導の流れにそって説明します。
ただし、これらは指針であり、必ずこの通りに実施しなければならないわけではありません。
あくまで例としてですが、指針の書式を利用することで漏れなく情報を収集できる利点があります。
実際の面接指導においては、すべてのチェックリストを記載する必要はありません。必要な項目のみ記入してください。
医師の意見に関連する部分は特に記録しておくことが重要です。

 どのように面接をすすめていくか。

勤務の状況(労働時間、労働時間以外の要因)の確認について

では、勤務の状況(労働時間、労働時間以外の要因)はどうやって確認すればいいでしょうか。
まず、あらかじめ事業者(人事・労務担当者)から情報をもらいましょう。
これは、「労働時間に関するチェックリスト」を利用するのがよいです。
特に、労働時間等、労働日数については、賃金台帳をチェックしての記載が必要です。
こちらを用いて情報をあらかた入手しておき、さらに問診で深堀していきます。

疲労の蓄積の状況の確認

長時間労働者の疲労の蓄積の状況の確認のためには、厚生労働省の「疲労度蓄積度のチェックリスト」を準備します。
注意が必要なのですが、こちらは2023年に改正されています。最新のものを使いましょう。
そして、こちらは面談前にあらかじめ本人に記入しておいてもらいましょう。

労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト(2023年改正版)

その他の心身の状況(心身の健康状況、生活状況等)の確認

その他の心身の状況(心身の健康状況、生活状況等)の確認については、以下のチェックリストがあります。
上記サイト(「長時間労働者、高ストレス者の面接指導に関する報告書・意見書作成マニュアル」)からダウンロードできます。
「心身の健康状況、生活状況の把握のためのチェックリスト(例)」
「抑うつ症状に関する質問(例)」
これらの2つですね、こちらを用いましょう。



こちらの使い方はそのままチェックするだけですね。
私は、厚生労働省のサイトから上記チェックリストをダウンロードして、まとめて一つのファイルにして使えるようにしています。

面接指導結果報告書の作成、就業上の措置に係る意見書の作成

そして、最終的に事業者に医師の意見を述べなければなりません。根拠条文は労働安全衛生法66条の8からの以下の条文です。
そして、労働安全衛生法66条の8第3項にありますように
当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、厚生労働省令で定めるところにより、医師の意見を聴かなければならない。」とのことで、医師の意見を述べないといけません。

その、医師の意見をどのように述べるかですが、この書式を使いましょう。
この書類を作成して、医師の意見として会社に提出するのです。
疲労の蓄積の状況は労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト(2023年改正版)の結果を参考にしましょう。
もし、受診が必要なら、その場で診療情報提供書を発行してしまうのも手ですね。


就業区分が一番大切なのですが

0.通常勤務 1.就業制限・配慮 2.要休業

と記載されていますよね。
ここの内容については、一般的に健康診断の事後措置に関する指針の就業と同様のものを使う場合が多いです。
これを参考にしましょう。
引用:健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針




記録の保存

事業者は、面接指導等の記録を作成し、5年間保存しなければなりません。
面接指導の結果の記録は、面接指導を実施した医師からの報告をそのまま保存することで足ります。
私は、事業者に面接指導結果報告書のみをお渡しして、そちらを保存してもらっています。

労働安全衛生法66条の8第3項
事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、第一項及び前項ただし書の規定による面接指導の結果を記録しておかなければならない。

労働安全衛生規則
(面接指導結果の記録の作成)
第五十二条の六 事業者は、法第六十六条の八の面接指導(法第六十六条の八第二項ただし書の場合において当該労働者が受けたものを含む。次条において同じ。)の結果に基づき、当該法第六十六条の八の面接指導の結果の記録を作成して、これを五年間保存しなければならない。
2 前項の記録は、前条各号に掲げる事項及び法第六十六条の八第四項の規定による医師の意見を記載したものでなければならない。

e-Gov労働安全衛生法
e-Gov 労働安全衛生規則

 

まとめ

長時間労働者の面接指導について流れをまとめました。
まず、厚生労働省のHPより、書式をダウンロードし、入手してマニュアルをよく読んでおきましょう。
そして
①あらかじめ、「労働時間に関するチェックリスト(例)」に必要な事項を事業者(会社)に記入してもらいましょう。
②本人に面談前に「疲労蓄積度のチェックリスト(例)」を記入しておいてもらいましょう。
③あとは、面談で医師が以下のチェックリストを用いて、面談を勧めればいいのです。
「心身の健康状況、生活状況の把握のためのチェックリスト(例)」
「抑うつ症状に関する質問(例)」
④最後に意見書を作成して、会社に提出しましょう。
面接指導結果報告書の保存は5年間です。

厚生労働省の各種チェックリストを一つのワードファイルにして一式準備しておくと便利です。

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この記事を書いた人

清水 宏泰

1975年生まれ。公衆衛生分野の専門家。現在はさまざまな組織の健康問題を予防するためにLAOにて行政書士・社労士・労働衛生コンサルタントとして活動しています。主に健康、心理系、産業保健の情報について発信していきます。

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