2023/05/29 2023/05/29
【産業医・人事労務担当者向け】バンデューラの自己効力感と産業保健での応用について
皆様は自己効力感という言葉をご存じでしょうか?
聞いたことがあるという方は多いのではないでしょうか。
自己肯定感なら聞いたことがあるという方もおられますでしょうか。
今回は、自己効力感について初心者向けに、わかりやすく基本的な部分を解説します。
簡単に言いますと、人の「自信」を科学的に解説します。
自己効力感とはなにか?
自己効力感といえばバンディーラの理論
バンディーラ(Bandura)は、行動変容の過程を包括的に説明するために、人がある問題に対処する際、その問題をどの程度効果的に処理できると考えているかという認知を重視し、これを自己効力感と呼びました。
厚生労働省のHPでは、セルフ・エフィカシーと呼んでいます。
これは、簡単に言いますと、物事がうまくいくであろう期待であり、自信のようなものです。
自己効力感の程度は、行動に影響を及ぼします。
自己効力感は、「高い」とうまくいきそうに思っていることを示し、「低下している」、「低下」は、うまくいかないと考えていることを示します。
では、自己効力感を高めるにはどうしたら良いでしょうか?
バンデューラは自己効力感を高める4つの要因を挙げています。これが上記の図の1から4になります。
この4つについては非常に重要なので必ず覚えておきましょう。
1.直接の成功体験
2.代理体験
3.言葉による説得
4.情緒的な喚起
では、それぞれ解説してゆきます。
自己効力感を高める4つの要素につき解説
1.直接の成功体験
自己効力感を高める最も影響力のある要素は、自身の以前のパフォーマンスや成功体験です。
成功体験とは、新たな挑戦に取り組み、それを成功させた際に得られる経験のことをいいます。
また、自己効力感がしっかりと確立される前に失敗が起こると、自己効力感が損なわれる可能性が高いと言われています。
したがって、新人教育の際には、自己効力感が確立する前に過度に否定的なフィードバックを与えることは好ましくありません。
このように、自分が課題を達成できる能力を持っていると信じることは非常に重要です。
2.代理体験
自己効力感の第二の重要な情報源は、社会的モデルによる代理体験です。これはモデリングとも呼ばれます。
バンデューラは、自分と似たような人々が努力によって成功する姿を見ることで、観察者は自分自身も同じように成功できる能力を持っているという信念を持つと述べています。
「その人ができるなら、私にもできるかもしれない」と思うことは十分にありますよね。
3.言葉による説得
頑張っている途中に「あなたならできる!」などとポジティブな応援を受けると、その人は自分が成功するスキルと能力を持っていると信じるようになります。
自己効力感は、パフォーマンスや能力に関する励ましによって影響を受けます。この言葉による説得はどの年齢でも機能しますが、早期に行われるほど自己効力感の構築を促しやすいと言われています。子供に対しても、「あなたならできる!」という応援を積極的に行いましょう。
ただし、マーシャの同一性地位(マーシャのアイデンティティ理論に基づく概念)には注意が必要です。
危機がなく、関与だけという状況を作り出すことは好ましくないでしょう。
人が自己効力感を構築する際には、適切な挑戦と周囲の支援が重要です。個人の能力や限界を無視して過度なプレッシャーや期待をかけると、逆に自己効力感を低下させる可能性があるため、バランスを保つことが大切です。
4.情緒的な喚起
個人の感情的、身体的、心理的な健康状態は、自己効力感に影響を与えることがあります。
例えば、うつ病の症状がある場合は、通常の状態よりも自己効力感が低下しやすいです。
同様に、不安な状態にあると自己効力感が低下します。
始めてカウンセリングに来られるクライエントは二重の不安を抱えていると言われています。
不安な状態が最初からあるかもしれない、つまり、自己効力感が低下しているクライエントが多いということにつながります。
キャリアコンサルティングにおいては、自己効力感をいかに高めるかは重要な課題になります。
しかし、達成が不安な状況に直面した場合、自分の不安を管理し、気分を高める方法を学ぶことで、自己効力感を高めることができます。
産業現場、会社での応用について
カウンセリングでの応用
カウンセリングにおいては、支援を求める状態にある場合が多いことは予想できるでしょう。
自己効力感の低下した方の過去のお話を聞いていく中で、成功体験のお話をお聞きできるかもしれません。
自己効力感の低下した方は、うまくいきそうな期待感がありませんが、過去にこんなにうまくいったんだ!!と直接の成功体験を思い出し、気づき、自己効力感が高まっていく場合があります。
また、将来の課題にチャレンジし、自分の力で克服することができれば、「やればできる」という自信につながり、次回以降の課題に対してうまくいきそうな期待を抱くことができ、自己効力感が高まった状態になれます。
代理体験は頑張っている人を知ってもらいましょう。
代理体験については、会社において頑張っている人の表彰なども有効です。また、ロールモデルの提示も効果的です。ただし、「すごい能力の人がこれだけできました!!」というよりは、「普通の能力を持つ人が努力すればこんなこともできるのですよ」というメッセージを伝えることが重要です。自分にも可能性があると感じ、自己効力感が高まるでしょう。
管理職等への助言として
管理職や部下を持つ上司は、部下への指導の際にはダメだしをすることがあります。
しかし、そのようなアプローチのみでは部下の自己効力感が低下してしまいます。
代わりに、「言葉による説得」を通じて、部下ができることを具体的に踏まえながら褒めることが重要です。
こちらに関しては、シェイピングという概念もあります。
シェイピングについては別記事で記載します。
気分を高めると、うまくいきそうな気になる
「情緒的な喚起」の場面についてです。
前述のように、達成できるか不安な状況に直面した際に、自分の不安を管理し、気分を高める方法を学ぶことで、自己効力感を向上させることができます。
また、お気に入りの曲が流れると、頑張ろうと思ったり、うまくいく気がすることはありませんか?
例えば、運動会の徒競走ではよく同じ曲が使われますよね。その曲を聴くと、今日は速く走れそうな気がしませんか?ただし、産業現場での応用は難しいかもしれません。
社歌を流してみましょうか・・・
まとめ
人の自信を科学的に論じたのがバンデューラの自己効力感の理論です。
バンデューラは自己効力感を高める4つの要因を提示しています。
この4つについては理解して、具体的に実行できるようになりましょう。
すみません、自己効力感については、とてつもなく研究されていて、とてもじゃないですが、このブログでは書ききれないです。
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