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化学物質の管理を解説

2023/09/05 2023/09/06

【安全衛生】じん肺健診で利用される有名な問診表の元ネタと使い方について解説

この記事を読もうとされている方は、おそらくじん肺の健康診断に関わっている方だと思います。
じん肺の健康診断では、問診表がついてくると思います。
その問診票はどこの医療機関でも同じ場合が多いかと思います。皆さまはこの問診表の元ネタや使い方はご存じでしょうか。

皆様の委託されている健康診断機関はきちんと、この問診表の内容を理解して、活用されているでしょうか。
今回は、じん肺健診の有名な問診表について解説します。

じん肺健診の有名な問診表について解説

もし、皆様がじん肺健診を受診していれば、以下のような問診表を見たことがあるかと思います。

今回は、この問診表がどのようなものかと、どのように使えばいいのかを解説します。

 元ネタは、「じん肺審査ハンドブック」です。

実は、この問診表は、労働省安全衛生部労働衛生課編の「じん肺審査ハンドブック」に記載されているものなります。
厚生労働省のサイトでダウンロードすることができます。
この、じん肺審査ハンドブックの改定は、昭和54年6月となっていますので、現在の医学水準にそのまま適応すべきではないと考えられる記述部分もあります。

労働省安全衛生部労働衛生課編「じん肺審査ハンドブック」

じん肺審査ハンドブックの「Ⅱ じん肺健康診断の方法と判定」の章に、この問診表があります。
では、各質問項目について解説します。
以下は、少々見にくいですが、上記、「じん肺審査ハンドブック」の原文を切り取ってそのまま持ってきます。

問診票の各項目につき解説

1.既往歴の聴取

こちらが問診票になります。氏名、性別、生年月日は基本ですね。この既往歴の問診に関しては、じん肺審査ハンドブックに注意すべき点の記載がありますので見ておきましょう。


以下のじん肺法施行規則1条はじん肺合併症を列挙しています。この合併症は事後措置等でも重要なので、当然聴取すべきでしょう。

なお、比べてみると、「気管支喘息」、「肺気腫」、「心臓の病気」、「その他の胸部の病気」はじん肺の合併症ではありませんが、聴取することとなっています。

じん肺審査ハンドブックより

「気管支喘息」に関しては、「喘息、ことに感染性喘息はやがて慢性肺気腫を招来しやすいから、じん肺の予後、治療に影響を及ぼすところが大であり」と記載されています。
「肺気腫」については、「肺気腫はじん肺の肺機能障害に及ぼす影響が大きく、かつ、その変化が不可逆的なものである」、「肺気腫の有無はこのような意味でじん肺の肺機能障害を判断する際にきわめて重要である」と記載されています。
心臓疾患については、「じん肺と心疾患いずれが主体であるか決め難いことが少なくない」と記載されています。

この記載については、現代の医学水準から妥当でない部分もあるかと思いますが、引用しておきます。
なお、以下が、現行のじん肺法施行規則の合併症になります。

じん肺法施行規則

(合併症)
第一条 じん肺法(以下「法」という。)第二条第一項第二号の合併症は、じん肺管理区分が管理二又は管理三と決定された者に係るじん肺と合併した次に掲げる疾病とする。
一 肺結核
二 結核性胸膜炎
三 続発性気管支炎
四 続発性気管支拡張症
五 続発性気胸
六 原発性肺がん

e-Gov じん肺法施行規則 

 

2.呼吸困難に関する問診

こちらが呼吸困難に関する問診になります。


こちらは、呼吸困難の分類である、Hugh-Jonesの分類によります。
なんせ、じん肺健康診断結果証明書(様式第3号)には、Hugh-Jonesの分類で記載することになっていますので、使わざるを得ないですよね。

Hugh-Jones分類については以下のような分類になります。医療関係者には説明はいりませんよね。
ⅠからⅤまで、数字が大きくなるにつれて、呼吸困難が重度になります。

さて、この問診票ですが、実は、このHugh-Jones分類に対応しています。
この問診票のチェックを上から順に確認し、該当するところでHugh-Jones分類がわかります。
健康診断では、時間がないので、この問診票であとでHugh-Jones分類のどこに当たるのか確認できますね。

この問診票の使いかたを知らない医師、健診機関は結構ありますので、受診される方や、企業様は注意しましょう。

3.せきとたんについての問診

せきとたんについては、以下の問診票があります。

この点、じん肺審査ハンドブックには、以下のように記載されています。

慢性的なせき、たんの症状をは握するための調査方法として現在最もよく用いられている方法は、BMRC(British Medical Research Council)の呼吸器症状についての問診表を用いた方法である。この方法では、せき又はたんの有症者を「1年のうち3か月以上毎日のようにせき又はたんがあり、2冬以上にわたるもの」としている。じん肺における気道の慢性炎症性変化のは握のためには、上記の定義を勘案して「1年のうち3か月以上毎日のようにせきとたんがある」ことを最低限は握する必要がある。

労働省安全衛生部労働衛生課編「じん肺審査ハンドブック」

よって、じん肺審査ハンドブックによると、以下の部分にチェックがある場合には、必ずせきとたんがアリということになります。

しかし、健康診断を行っている医師としては、上記の部分にチェックがなくても、じん肺が疑われる場合で、せき、たんをありとすべきだと考えた場合には、有所見としましょう。

4.心悸亢進

この問診票には、「どうき」についての質問があります。

そして、じん肺審査ハンドブックには以下の記述があります。

肺機能の低下に伴って特に体動時に心悸亢進を訴えることがあるが、心悸亢進をしばしば呼吸困難とあやまって表現することがあるため、両者を区別して聴取する必要がある

労働省安全衛生部労働衛生課編「じん肺審査ハンドブック」

「はい」であれば、じん肺健康診断結果証明書(様式第3号)の胸部に関する臨床検査の欄の「心悸亢進」を「+」にチェックを記載しておきましょう。


6.喫煙

こちらは喫煙に関する質問になります。

喫煙については、以下のじん肺健康診断結果証明書(様式第3号)の喫煙歴の欄を埋めることができれば何でもいいでしょう。

喫煙歴は、一般健診でも問診していると思われますので、そちらの記載を引用してもいいですね。
なお、昭和54年にはありませんでしたが、現在は高齢者医療確保法に基づく特定健診において、喫煙習慣を問診することは必須となっています。

じん肺審査ハンドブックは昭和54年のものです。

じん肺審査ハンドブックは、昭和54年6月のものですが、ここに記載されている問診票は一般的に使用され、また、じん肺健康診断結果証明書(様式第3号)の記載も、この問診票に合致するように作られています。しかし、現在の医学水準と合わない記述もあるため、じん肺健診で定められた枠内で、健康診断を行う医師が柔軟に対応する必要もあるかと思います。

まとめ

じん肺健診において、非常に有名で汎用される問診表があります。
じん肺審査ハンドブックは、昭和54年6月のものですが、法令の書式もあり、この問診票を使わざるを得ない場合もあるでしょう。
皆様がもし、じん肺健診を受けられているのであれば、受診している医療機関はこの問診表をきちんと活用されていますでしょうか。

今回の記事が、じん肺健康診断を行う医師の皆様のお役に立てればと思います。

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この記事を書いた人

清水 宏泰

1975年生まれ。公衆衛生分野の専門家。現在はさまざまな組織の健康問題を予防するためにLAOにて行政書士・社労士・労働衛生コンサルタントとして活動しています。主に健康、心理系、産業保健の情報について発信していきます。

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