2023/11/23 2023/11/23
【心理師】主治の医師の指示を受けるために、公認心理師の発行する書面について
公認心理師は医療属性になります。公認心理師の方が医師と連携するためにどうやり取りをすればいいのかと質問を受けることがありますのでまとめました。
公認心理師と情報提供
公認心理師は関係者との連携を保たなければならないと公認心理師法で定められています。
公認心理師は、その業務を行うに当たっては、公認心理師法42条1項で、さまざまな関係者等との連携を保たなくてはならないと法令で規定されています。また、公認心理師法42条2項においては、「主治の医師があるときは、その指示を受けなければならない」と明記されています。「指示を受けなければならない」とありますので、義務規定となっています。
公認心理師法(連携等)
第四十二条 公認心理師は、その業務を行うに当たっては、その担当する者に対し、保健医療、福祉、教育等が密接な連携の下で総合的かつ適切に提供されるよう、これらを提供する者その他の関係者等との連携を保たなければならない。
2 公認心理師は、その業務を行うに当たって心理に関する支援を要する者に当該支援に係る主治の医師があるときは、その指示を受けなければならない。
今回は、この主治の医師との連携についてお話いたします。以下、この「主治の医師」を主治医と呼びます。
主治の医師との連携方法については、以下の通達があります。もし、公認心理師が主治の医師と同一の医療機関であれば、公認心理師は通常、主治医の近くにいることになり、主治医の指示を受けることは難しくないと思われます。問題は、いわゆるカウンセリングルーム等を開設としてカウンセリングを業として行う場合でしょう。この場合、以下の通達に、「公認心理師は要支援者の安全を確保する観点から、当該要支援者の状況に関する情報等を当該主治の医師に提供する等、当該主治の医師と密接な連携を保ち、その指示を受けるものとする」とあります。また、当該主治の医師による診療の情報や必要な支援の内容についての指示を文書で提供してもらうよう依頼することが望ましいとあります。
(2) 主治の医師からの指示を受ける方法
公認心理師と主治の医師が、同一の医療機関において業務を行っている場合、主治の医師の治療方針と公認心理師の支援行為とが一体となって対応することが必要である。このため、公認心理師は、当該医療機関における連携方法により、主治の医師の指示を受け、支援行為を行うものとする。
公認心理師と主治の医師の勤務先が同一の医療機関ではない場合であって、要支援者に主治の医師があることが確認できた場合は、公認心理師は要支援者の安全を確保する観点から、当該要支援者の状況に関する情報等を当該主治の医師に提供する等、当該主治の医師と密接な連携を保ち、その指示を受けるものとする。
その際、公認心理師は、要支援者に対し、当該主治の医師による診療の情報や必要な支援の内容についての指示を文書で提供してもらうよう依頼することが望ましい。
また、公認心理師が、主治の医師に直接連絡を取る際は、要支援者本人(要支援者が未成年等の場合はその家族等)の同意を得た上で行うものとする。
e-gov 公認心理師法第42条第2項に係る主治の医師の指示に関する運用基準について (平成30年1月31日) (29文科初第1391号/障発0131第3号/)
さらには、主治医の連携については、日本心理臨床学会、日本臨床心理学会、日本公認心理師協会の通達もあります。こちらでも、上記法令、通達と同様の記載があります。
4. 主冶の医師からの指示への対応に関する事項
一般社団法人日本心理臨床学会 一般社団法人日本臨床心理士会 一般社団法人日本公認心理師協会
(1) 主冶の医師からの指示の趣旨 公認心理師は、合理的な理由がある場合を除き、主治の医師の指示を尊重するものとする。
(2) 主冶の医師からの指示を受ける方法 当該要支援者の状況に関する情報等を当該主治の医師に提供する等、当該主治の医師と密接な連携を保ち、その指示を受けるものとする。その際、公認心理師は、要支援者に対し、当該主治の医師による診療の情報や必要な支援の内容についての指示を文書で提供してもらうよう依頼することが望ましい。また、公認心理師が、主治の医師に直接連絡を取る際は、要支援者本人(要支援者が未成年等の場合はその家族等)の同意を得た上で行うものとする。
(3) 指示への対応について 公認心理師が、心理に関する知識を踏まえた専門性に基づき、主治の医師の治療方針とは異なる支援行為を行った場合、合理的な理由がある場合は、直ちに法第42条第2項に違反となるものではない。ただし、この場合においても、当該主治の医師と十分な連携を保ち、要支援者の状態が悪化することのないよう配慮することとする。
(4) 主冶の医師からの指示を受けなくてもよい場合 ・ 心理に関する支援とは異なる相談、助言、指導その他の援助を行う場合 ・ 心の健康についての一般的な知識の提供を行う場合 また、直ちに主治の医師との連絡を行うことができない状況下においては、必ずしも指示を受けることを優先する必要はないが、後日、適切な情報共有等を行うことが望ましい。
(5) 要支援者が主冶の医師の関与を望まない場合 公認心理師は、要支援者の心情に配慮しつつ、主治の医師からの指示の必要性等について丁寧に説明を行うものとする。
つまり、支援に関する情報提供書を発行しなさいということになります。主治医からの指示も文書で提供してもらうことが望ましいようです。
ここまでをまとめます。
- 公認心理師法により、公認心理師は、主治の医師があるときは、その指示を受けなければなりません。
- 通達により、公認心理師は要支援者の安全を確保する観点から、当該要支援者の状況に関する情報等を当該主治の医師に提供する等、当該主治の医師と密接な連携を保ち、その指示を受けるものとする。
- 通達により、公認心理師は、要支援者に対し、当該主治の医師による診療の情報や必要な支援の内容についての指示を文書で提供してもらうよう依頼することが望ましい。
このように指示を受けなければならないという義務規定がありますので、公認心理師は主事の医師と連携して指示を受けましょう。その際に、「要支援者の状況に関する情報等を当該主治の医師に提供」しましょう。そして、その指示については文書でもらいましょう。
しかし、公認心理師には、公認心理師法41条により、守秘義務があります。また、守秘義務違反については、1年以下の懲役または30万円以下の罰金となります。なお、この罰則は「告訴がなければ公訴を提起することができない」とあり、親告罪となっています。
(秘密保持義務)
第四十一条 公認心理師は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。公認心理師でなくなった後においても、同様とする。第四十六条 第四十一条の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
この点、本人(支援を要する者)の同意なしに主治医に直接連絡を取ることは、公認心理師法や通達のみならず、個人情報保護法にも違反し、刑事事件となるだけでなく、本人からの債務不履行に基づく損害賠償請求を受けるかもしれません。
よって、原則として本人の同意がない場合には、主治医への直接コンタクトはできません。例外として、例えば自傷他害の蓋然性がある場合など、人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるような場合には、公認心理士法41条の「正当な理由」にも該当するかと思われますが、最終的には司法の場で判断されます。個人情報保護法も引用しておきます。
公認心理師法第42条第2項に係る主治の医師の指示に関する運用基準について
(抜粋)
また、公認心理師が、主治の医師に直接連絡を取る際は、要支援者本人(要支援者が未成年等の場合はその家族等)の同意を得た上で行うものとする。
(抜粋)(5) 要支援者が主治の医師の関与を望まない場合
要支援者が主治の医師の関与を望まない場合、公認心理師は、要支援者の心情に配慮しつつ、主治の医師からの指示の必要性等について丁寧に説明を行うものとする。e-gov 公認心理師法第42条第2項に係る主治の医師の指示に関する運用基準について (平成30年1月31日) (29文科初第1391号/障発0131第3号/)
個人情報保護法
(利用目的による制限)
第十八条 個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで、前条の規定により特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはならない。
2 個人情報取扱事業者は、合併その他の事由により他の個人情報取扱事業者から事業を承継することに伴って個人情報を取得した場合は、あらかじめ本人の同意を得ないで、承継前における当該個人情報の利用目的の達成に必要な範囲を超えて、当該個人情報を取り扱ってはならない。
3 前二項の規定は、次に掲げる場合については、適用しない。
一 法令(条例を含む。以下この章において同じ。)に基づく場合
二 人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
三 公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
四 国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき。
五 当該個人情報取扱事業者が学術研究機関等である場合であって、当該個人情報を学術研究の用に供する目的(以下この章において「学術研究目的」という。)で取り扱う必要があるとき(当該個人情報を取り扱う目的の一部が学術研究目的である場合を含み、個人の権利利益を不当に侵害するおそれがある場合を除く。)。
六 学術研究機関等に個人データを提供する場合であって、当該学術研究機関等が当該個人データを学術研究目的で取り扱う必要があるとき(当該個人データを取り扱う目的の一部が学術研究目的である場合を含み、個人の権利利益を不当に侵害するおそれがある場合を除く。)。
主治医にコンタクトをとる場合には、本人の同意が明らかな形で主治医に情報提供を行ったほうがいいでしょう。例えば、本人が診療情報提供書の内容につき説明を受け、いつでも診療情報提供書を見れるような形で持参してもらったり、本人の主治医への情報提供の同意書を添付するなどです。
主治医指示依頼書を作ってみました
公認心理師より主治医への書面に、特に定型の書式等はありません
前述のように、この連携は、公認心理師と主治医の書面のやり取りになります。特に、どのような書面で公認心理師と主治医がやり取りをするかについては通達、ガイドライン等がありません。
私は行政書士であり、公認心理師だったらどのような書面をつくるかなと考えてみました。架空の案件で例を作ってみましょう。このブログでは、公認心理師が発行する書面を「主治医指示依頼書」と呼びます。主治医の指示は、「主治医指示書」など呼ばれるかと思いますが、この書式については、こちらでひな型準備して主治医にお送りしてもいいのですが、任意の書式でお返事をもらうのでもよいかと思います。このような医療情報の記載について、当たり前ですが最も大切なことは、わかりやすく記載することです。
以下は、架空のカウンセリングルームから、主治医あての書面として、例を作ってみました。
解説します。
このような内容ではいかがでしょうか。面談経過については、どこまで記載するかは難しいところです。
通達により、公認心理師は要支援者の安全を確保する観点から、当該要支援者の状況に関する情報等を当該主治の医師に提供する等、当該主治の医師と密接な連携を保ち、その指示を受けるものとするとされていますので、「面談経過」の部分に「当該要支援者の状況に関する情報等」を記載しましょう。なお、重要なことですが、この書面に書かれたことは、クライエントが読む前提で記載しましょう。
一応、載せておきますね。
主治医指示依頼書1123
この書式であれば、裏表に印刷すれば、表面とクライエントの同意欄が一体化するので問題ないのですが、もし片面印刷で2枚になるときには、契印を押しましょう。
まとめ
公認心理師は関係者との連携を保たなければならないと公認心理師法で定められています。公認心理師法42条2項においては、「主治の医師があるときは、その指示を受けなければならない」と明記されています。公認心理師より主治医への書面に、特に定型の書式等はありません主治医指示依頼書を作ってみました。
この書面はあくまで一例ですので、皆様も自分の定型文を作成してみましょう。
労働衛生コンサルタント事務所LAOでは、メンタルヘルスに関する、コンサルティング業務を行っております。
メンタルヘルス不調に関する難しい案件にも対応いたします。社労士ですので、就業規則や社会保障も含めた労務管理を考慮した対応を行い、また、主治医との診療情報提供依頼書のやり取りを通じて、従業員の復職支援、両立支援を行うことを得意としています。
行政書士事務所として、休職発令の書面や、休職期間満了通知書、お知らせ等の書面の作成も行います。
メンタルヘルスに関する、コンサルティング業務は、原則として、顧問医・産業医としての契約になります。
オンラインツールを用いて、日本全国の対応が可能ですのでメンタルヘルス不調でお困りの方はぜひお問い合わせください。