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【傷病手当金】傷病手当金の支給に係る産業医の意見の書き方について

傷病手当金支給申請のための「産業医の意見」による証明について以前記事にしていました。では、実際にどのように記載するのか、私の例をご紹介しましょう。

傷病手当金の支給に係る産業医の意見の書き方

まず、おさらいなのですが、以下の記事を読んでいただきたいと思います。


ここで、産業医が傷病手当金についての意見を述べる場合には、2パターンあることがわかります。

① 主治医が傷病手当金支給申請書の証明を拒否した場合
② 主治医が就労可能であると意見を述べたうえ、産業医が就業不可であると意見を述べている場合

今回は①について解説します。この場合で、傷病手当金申請のため、産業医が提出する書類ですが、以下の通達により、「産業医が任意に作成した書類」「規則第84条に規定する医師等の意見書」とあることより、「産業医意見書」とします。「任意の書類」というのがポイントですね。

 また、被保険者が、診療を受けている医師等から労務不能であることについての意見が得られなかった場合、当該医師等とは別の産業医に対し、労働者としての立場で就業についての意見を求め、意見を求められた当該産業医が任意に作成した書類を保険者に提出することは差し支えない。この場合、規則第84条に規定する医師等の意見書には、労務不能と認められない疾病又は負傷に係る意見の記載を求めることとされたい。

また、このような場合、保険者が、被保険者本人の同意を得た上で、当該産業医の意見を聴くことも差し支えない。

保険者においては、これらの書類の提出を受けた場合等には、双方の意見を参酌し、適切な判断をされたい。

○傷病手当金の支給に係る産業医の意見の取扱いについて (平成26年9月1日)

では、一例をあげます。ポイントを解説します。これはあくまで一例であり、休職の状況等により、バリエーションが多数あります。これは主治医がある日以降の証明を拒否した場合になります。もちろん、架空の事例です。なお、事例中のAさんは、全国健康保険協会(協会けんぽ)の被保険者であることとします。

 産業医意見書の住所は産業医先の会社の住所とします

こちらは、いつも、産業医先の住所としています。産業医として選任されている会社名と住所が必要でしょう。診療所や自分の株式会社でもよいかもしれませんが、必ず、産業医先の事業所名は記載しましょう。通達上は、「産業医」が任意に意見を述べれるのであって、「医師」が意見を述べれるのではありません。産業医であることを明示しましょう。

 通達名、「傷病手当金の支給に係る産業医の意見の取扱いについて」は記載しておきましょう

「傷病手当金の支給に係る産業医の意見の取扱いについて」はマニアックな通達ですので、受け取った担当事務の方がご存じないかもしれません。健康保険組合等が確認できるように、通達名を記載しておきましょう。

産業医面談はしておきましょう

この通達からは産業医の意見としか記載されていません。しかし、以下は、協会けんぽの傷病手当金の支給申請書ですが、「労務不能と認めた機関に診療した日がありましたか」と聞かれているので、これに相当する部分として、面談を実施して、実施した旨を意見書に記載すべきと考えています。

これは私見ですが、全く面談をしていない従業員について産業医意見書を作成するのは避けるべきと考えます。 

病状の記載内容は伝聞の部分が多いです

多くの場合、主治医と産業医が密に連絡を取り合うということは少ないと思います。ましてや、証明を拒否している主治医にいろいろお聞きしても嫌がられるかもしれません。また、実際の検査所見等の医療情報は産業医が容易にアクセスできません。そのため、本人からの話の内容を記載することが一般的です。そのため、あくまで従業員、本人から聞いた旨を記載しておいた方がいいでしょう。

もちろん、事業所内で起きた明らかな事実は記載してもいいでしょう。例えば、産業医の復職面談を設定したが、当日に体調不良で面談を施行できなかったなどの事実です。

なお、傷病手当金申請者は、健康保険組合等の被保険者であるため、健康保険組合等は当該従業員の療養(治療・受診)についてのレセプトは把握しています。

 労務不能と認めた理由を詳細に記載しましょう

ここは非常に重要なのですが、当該従業員が労務不能であると判断した理由については、詳細に記載しましょう。例えば、うつ病の休職から復職した場合に、事務作業は可能であるが、車の運転はできないかもしれません。このような場合に、当該従業員の従事する業務の内容が、車の運転が必須な業務だけである旨を説明することは有効でしょう。必要に応じて、労働条件通知書等を添付してもいいでしょう。

なお、通達には、以下のように、主治医との連携について記載があり。診療情報提供依頼書のやり取りはあったほうが良いでしょう。

なお、「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(平成16年10月、改訂平成21年3月)においては、主治医と産業医の連携が重要とされ、「主治医による職場復帰可能の判断」に当たっては、産業医をはじめとする産業保健スタッフが、あらかじめ主治医に対して職場で必要とされる業務遂行能力に関する情報の提供を行うことが望ましいとされていることに留意されたい。

○傷病手当金の支給に係る産業医の意見の取扱いについて (平成26年9月1日)

産業医意見書に 印鑑は必要です

この書類については、労働基準監督署等への書類のように押印が必要ないというものではありませんので、必ず押印をして提出しましょう。2枚以上の用紙にわたる場合には、契印を押しましょう。

添付書類

従業員本人の同意も必要ですが、主治医の診断書や、労働条件通知書等を添付するのも方法です。労務提供不能であることが客観的に明らかになるかもしれません。

 その他

この意見書を提出したのちに、健康保険組合等からお尋ねがくる場合があります。あるいは、産業医への傷病手当金支給申請書の書式への記入依頼がある場合もあります。産業医として対応しましょう。

 

まとめ

傷病手当金支給申請のための「産業医の意見」による証明について、産業医意見書のサンプルを提示しました。任意に作成する書面であり、特に形式などは指針等で指定されていません。労務不能である状況は様々なため、自分で内容を考えて意見書を作成する必要がありますが、傷病手当金の要件や、傷病手当金支給申請書の内容を勘案して必要な事項を記載しましょう。

今回の記載の内容については、産業医意見書による傷病手当金支給の要件が明らかでない点も多く、私見が入っていることにはご注意ください。

労働衛生コンサルタント事務所LAOでは、産業医・顧問医の受託をお受けしております。労務管理と一体になった産業保健業務を多職種連携で行います。

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この記事を書いた人

清水 宏泰

1975年生まれ。公衆衛生分野の専門家。現在はさまざまな組織の健康問題を予防するためにLAOにて行政書士・社労士・労働衛生コンサルタントとして活動しています。主に健康、心理系、産業保健の情報について発信していきます。

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