事務所LAO – 行政書士・社会保険労務士・労働衛生コンサルタント・海事代理士

【医師・健診機関向け】検査項目と基準値の基本を解説(正規分布と標準偏差)

今回はやや専門的な話題についてお話しします。健康診断における検査項目の基準値についてです。
基準値は、健診項目がある値以上または以下になった場合に問題があるかどうかを判定するための基準ですね。

しかし、あまりに難しいと、大変なので、非常に簡略化して説明いたします。
プロからは「実際にはこんなにうまくいかない!!」という声もあるでしょうが、ごめんなさい。

検査項目と基準値の基本をわかりやすく説明(正規分布と標準偏差)

 ヒストグラムと正規分布

ある健康な人が10000人います。
その人がある血液検査Aを行いました。

その血液検査Aは数値で結果が出ます。
数値を区分して、その区分に人数が何人いるかをカウントします。
横軸にデーターの数値を、縦軸に人数のグラフを作成します。

これをヒストグラムと言います。
すると、このような釣り鐘型のグラフになりました。

きれいな釣り鐘型になりましたよね。
これを正規分布と言います。

はい、すみません。本当は、いきなりこんなにきれいな正規分布にはなりません。
実際は集団を解析するのにすごく、とてつもなく苦労します。
公衆衛生・疫学の先生に怒られそうですが、今回は説明のため、便宜上ばっちりあったことにいたします。

正規分布の特徴としては
平均値、中央値、最頻値が一致するということです。
平均はわかりますよね。数値をすべて足して、人数で割ったものです。
中央値は、今回10000人だと、5000人(5001人)目のデーターになります。
最頻値は一番多い値ということで、人数ピークの値ですよね。

 正規分布と標準偏差

正規分布では、標準偏差というものを計算できます。
このグラフを中央から、標準偏差で区切ってみましょう。
1SDというのが1標準偏差の数値になります。
 
 
 


これは、
プラスマイナス1標準偏差で68%が
プラスマイナス2標準偏差で95%が
プラスマイナス3標準偏差で99%が 含まれる。
ということを意味します。

そして、この2標準偏差の範囲を基準値とすることが一般的です。
つまり、下側2.5%超(以上)、上側2.5%未満(以下)の検査値が基準範囲外だということになります。

例えば、今回、平均値が200で、標準偏差が15であった場合、2標準偏差の幅は30となり。
200から2標準偏差をプラスマイナスした170~230を基準値とすることで、100人の健康な人が95人当てはまる範囲を設定できたということになります。
つまり、健康な人でも5%は基準値外となってしまうのです。

ここで重要なのは、このグラフは「健康な人」ばかりを集めているということです。
この中に病気の人が入ってくると、このグラフは変わってきますよね。

これが基準値設定の基本です。

 基準値と判定基準は違う

しかし、この標準偏差から計算した基準値を使って、必ずしも基準値内を正常とし、基準値外を異常とする必要はありません。

例えば、血液検査のヘモグロビンの基準値が上記方法により、
男性:13.6~18.3、女性:11.2~15.2g/dLと計算されました
上限は、基準値の上限が男性:18.3、女性:15.2g/dLなので、男性:18.4、女性:15.3g/dL以上を異常といたします。

下限ですが、基準値を貧血のスクリーニングに用いるための基準として用いたいと考えます。
すると、貧血はヘモグロビンが減っている状態であり、貧血の基準を下2.5%に該当する。
男性13.5 g/dL 以下
女性11.1 g/dL 以下
としてもいいでしょう。

しかし、例えば、当医療機関としてはWHOの基準を利用するとして
WHOが定義している絶対値
男性:13.0 g/dL 以下、女性:12.0 g/dL以下
とすることも可能です。

基準値を設定するためには、きちんとした根拠があることが大事なのです。
まずは、ここまでを理解していただければと思います。

まとめ

数値の検査データと人数からヒストグラムを作成し、正規分布となった場合
標準偏差を計算できます。
平均±2×標準偏差の範囲を基準値とすることができます。
しかし、これは一つの基準値の決め方であり、きちんとした根拠があれば、その値を採用できます。

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この記事を書いた人

清水 宏泰

1975年生まれ。公衆衛生分野の専門家。現在はさまざまな組織の健康問題を予防するためにLAOにて行政書士・社労士・労働衛生コンサルタントとして活動しています。主に健康、心理系、産業保健の情報について発信していきます。

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