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化学物質の管理を解説

2023/04/17 2023/04/17

【安全衛生】リスクアセスメント クリエイト・シンプルの使いかたをわかりやすく解説

化学物質の自律的な管理において、化学物質のリスクアセスメントを行う必要があることが分かりました。このリスクアセスメントに利用できるソフトウェア(Excelファイル)である「クリエイトシンプル」の使用方法について説明します。

 リスクアセスメント用エクセルファイル、クリエイト・シンプルを使うべきかを検討しましょう。

クリエイト・シンプルを使う前に

今回は、初めてクリエイト・シンプル(CREATE-SIMPLE)を試してみたい方向けに、非常に簡単な使い方をまとめました。

はっきりいって、非常にマニュアルがよくできているので、マニュアルを見ればできます。
クリエイト・シンプルのマニュアル
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/kag/pdf/CREATE-SIMPLE_manual_v2.4.2.pdf

マニュアルを参照することでCREATE-SIMPLEの使用方法を理解できますが、本当の初心者の方向けにも詳しく説明いたします。マニュアルは上記のリンクからダウンロード可能です。CREATE-SIMPLEを使用する前には、マニュアルを必ず熟読してください。

CREATE-SIMPLE自体は、以下のリンク先の厚生労働省のサイトからダウンロードすることができます。

引用リンク:職場のあんぜんサイト
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/kag/ankgc07_3.htm

CREATE-SIMPLEを使うべき場合かどうかを検討するフロー

まず、CREATE-SIMPLEを使用するべき状況についての選択肢を考慮しましょう。CREATE-SIMPLEのマニュアルには、その利用を検討するためのフローが記載されています。CREATE-SIMPLEの使用を検討した上で、それを利用することをお勧めします。

引用:CREATESIMPLEを用いた化学物質のリスクアセスメントマニュアル(ver2.4対応)

解説しましょう。

実測による方法について

まず、特化則、有機則、鉛則などのように、個別の規制が存在する場合、それに沿った具体的な措置を確認する方法がある場合は、その方法に基づいて対応を行います。もし、そのような具体的な対応がない場合には、リスクアセスメントには実測に基づく方法と実測に基づかない方法の両方が存在します。

まず、特化則、有機則、鉛則などのように、個別の規制が存在する場合、それに沿った具体的な措置を確認する方法がある場合は、その方法に基づいて対応を行います。もし、そのような具体的な対応がない場合には、リスクアセスメントには実測に基づく方法と実測に基づかない方法の両方が存在します。

実測に基づく方法では、物質の濃度を直接測定してリスクを評価します。この実測には、化学物質の種類に応じて、検知管法のほかにリアルタイム測定器や個人サンプラーを使用する方法があります。ただし、検知管法には混合物質を分離して測定できない場合や他の化学物質の影響を受けやすいというデメリットがあるため、これらの点も考慮して検知管法を選択することが重要です。

クリエイトシンプルは、実測によらない方法になります。実測によらないので、特殊な設備や装置が必要ないという利点があります。

また、この実測によらない方法は、経皮ばく露や刺激性・感作性を推定できますので、経皮ばく露や刺激性・感作性による化学物質の有害性が想定される場合には、実測に寄らない方法をとるべきでしょう。なお、他の実測によらない方法としては、コントロール・バンディング、ECETOC-TRA、数理モデルなどがあります。

 

厚生労働省のサイトからCREATE-SIMPLEのエクセルファイルをダウンロードするには、以下の手順に従います:

1.厚生労働省のサイトにアクセスします。
2.サイトの下部にある「ツールへのリンク」の部分を探します。
3.CREATE-SIMPLEのエクセルファイルが見つかるはずです。
4.このファイルをダウンロードします。

引用リンク:職場のあんぜんサイト
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/kag/ankgc07_3.htm

クリエイト・シンプルは、数理モデルではありません

よく、クリエイト・シンプルは数理モデルであると言われますが、正しくありません。

以下に、クリエイト・シンプルの設計基準を引用しますが、英国HSE COSHH essentialsに基づくコントロール・バンディング手法の考え方を踏まえ、ばく露限界値(またはGHS区分情報に基づく管理目標濃度)と化学物質の性状や取扱い条件等から推定したばく露濃度を比較し、リスクを見積もる方法を採用しています。

経費ばく露についてもリスクアセスメントが可能ですが、本式に行うのであれば、EcetocTRAをお勧めいたします。

1. 概要

CREATE-SIMPLE ver.1.0及び1.1は、吸入ばく露による健康リスクについて、主に数Lから数mL(数kgから数mg)の化学物質を取り扱う事業者に向けた簡易リスクアセスメント手法1でであったが、CREATE-SIMPLE ver.2.0では、経皮ばく露による健康リスクと取扱う化学物質が潜在的に保有する危険性リスクの見積もりを可能とした。併せて、多量(数kL、数ton)の化学物質を取扱う場合も対象とした。

・吸入ばく露による健康リスク 英国HSE COSHH essentialsに基づくコントロール・バンディング手法の考え方を踏まえ、ばく露限界値(またはGHS区分情報に基づく管理目標濃度)と化学物質の性状や取扱い条件等から推定したばく露濃度を比較し、リスクを見積もる方法を採用しています。

・経皮ばく露による健康リスク 米国NIOSHの「A Strategy for Assigning New NIOSH Skin Notations」に基づく、経皮吸収のモデルを踏まえた、経皮吸収量と経皮ばく露限界値の比較し、リスクを見積もる方法を採用しています。

・危険性リスク 化学物質のGHS区分情報と取扱状況(取扱量、換気状況、着火源の有無など)を踏まえてリスクレベルを推定する方法を採用しています。取扱物質そのものが潜在的に有している危険性をユーザーが「知ること」、「気付くこと」を目的としています。

また、現在公開されている厚生労働版コントロール・バンディング同様に、GHS区分情報(皮膚腐食性/刺激性、皮膚感作性、眼損傷製/刺激性)などを用いて皮膚腐食性や眼刺激性など局所的な影響が見られる物質は、別途リスクレベル「S」を設定する考え方も採用しています。

CREATE-SIMPLEの設計基準

 具体的なクリエイト・シンプルの始め方・使い方について

 クリエイト・シンプルのファイルをダウンロードし、セキュリティを解除し使えるようにする。

これで、クリエイト・シンプルのエクセルファイルをダウンロードできましたね。
どこかに保存しましょう。←ここ重要です。
そしてエクセルファイルを開きましょう。
開いたら、このような警告がでますね。

「セキュリティの警告」というのが出ますので、「コンテンツの有効化」をクリックして、マクロを有効にしましょう。
その後、以下のような、「セキュリティリスク」という表示が出るかもしれません。
この場合の解除の方法は以下のようにすれば大丈夫です。


クリエイト・シンプルのファイルを保存してある、フォルダにいき、ファイルを右クリックします。
そして、「プロパティ」を開きます。
ちなみに、Windowsの種類によって表示が違うようですが、とにかく「プロパティ」を開いてください。


すると、以下のような画面が出ます。

「セキュリティ」と書かれた部分がありますが、ここの
 □許可する
をクリックしましょう。
ファイルへのアクセスが許可されました。

これで、警告が出なくなると思います。
そして、再度、クリエイト・シンプルのエクセルファイルを開きましょう。

 SDSとCAS番号の入力

そして、リスクアセスメントをしたい物質のSDSを見ましょう。
今回は「シアン化カドミウム」だったとしましょう。

SDSはJIS規格で何番に何が書いてあるか決まってましたよね。
シアン化カドミウムのSDSの「3.組成及び成分情報」を見ます。

引用:「職場のあんぜんサイト GHSモデル SDS情報」

ここで「CAS番号」とありますね。
今回は542-83-6です。
クリエイト・シンプルの上の部分、STEP1を見ます。

【STEP 1】では、CAS番号を入力しましょう。CAS番号が何であるか分からない場合は、以下の記事を参照してください。


そして、「CAS番号から入力」をクリックすると、以下のように、物質名やGHS区分が表示されます。

クリック一つで入力されるので便利ですよね。
性状は使用する状態を記載しましょう。
そして、次は【STEP3】に移ります。


 

 STEP3の部分の入力

STEP3の部分の入力を行います。
これは現場の人に聞かないとわからないと思います。
揮発性(沸点)は、SDSにも記載されていないかと思いますので、別途調べましょう。



例として、条件を入力してみました。
そして、「リスクの判定」をクリックすると、リスクアセスメントの結果が出てきます。

結果です。今回はⅣと出ましたね。ここで、推定ばく露濃度が提示されますが、こちらは重要な値になります。

リスクレベルはⅠ(リスクが小さい)からⅣ(リスクが大きい)までの4段階で評価されます。このケースでは、リスクレベルがⅣで非常に高いことになります。

次に、「実施レポートに出力」ボタンをクリックしましょう。これにより、自動的に別のシートに移動します。ここで、リスクレベルがⅠと評価されれば、リスクが小さいと判断できます

 対策の検討と入力

ここでは対策を検討します。検討した対策を入力した後、リスクを再評価しましょう。そうすると、対策を施した後のリスクレベルが表示されます。

今回のケースでは、リスクレベルがⅣ(非常に高いリスク)からⅠ(リスクが小さい)に改善されました。リスクレベルが大幅に低下したことを示しています。


 

皮膚、眼への有害性の対策

なお、「CREATE-SIMPLE の設計基準 – 厚生労働省」が公表されています。
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/kag/pdf/CREATE-SIMPLE_design_v2.0.pdf

これによると、皮膚、眼への有害性があれば、リスクレベルSとなり、労働安全衛生保護具の着用が必要ということになります。

2024年4月より、皮膚・眼刺激性、皮膚腐食性または皮膚から吸収され健康障害を引き起こしうる化学物質と当該物質を含有する製剤を製造し、または取り扱う業務に労働者を従事させる場合には、その物質の有害性に応じて、労働者に障害等防止用保護具を使用させなければなりません。健康障害を起こすおそれのあることが明らかな物質を製造し、または取り扱う業務に従事する労働者に対して、保護眼鏡、不浸透性の保護衣、保護手袋または履物等適切な保護具を使用することが義務となっています。

なお、リスクアセスメントに基づく措置として労働者に保護具を使用させる事業場は、2024年4月より、保護具着用管理責任者の義務化も必要です。

労働安全衛生法の新たな化学物質規制
https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/000987253.pdf

まとめ

クリエイト・シンプルの使い方について本当に簡単にまとめました。基本は、公式のマニュアルがよくできているので、そちらを見ていただければ問題ないかと思います。産業医・労働衛生コンサルタントは知っておきましょう。

まずは、クリエイト・シンプルが利用できるかを確認しましょう。個別規制がある場合や、「実測による方法」か「実測に寄らない方法」を選択すべきか等により、クリエイト・シンプルを選択すべきか考えましょう。

なお、化学物質の混合物をクリエイトシンプルをも用いてリスクアセスメントをどう行うかについては、以下の記事に記載しています。

 

 

 

労働衛生コンサルタント事務所LAOは、化学物質の自律的管理について、コンサルティング業務を行っております。

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この記事を書いた人

清水 宏泰

1975年生まれ。公衆衛生分野の専門家。現在はさまざまな組織の健康問題を予防するためにLAOにて行政書士・社労士・労働衛生コンサルタントとして活動しています。主に健康、心理系、産業保健の情報について発信していきます。

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