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化学物質の管理を解説

2023/08/15 2023/08/15

【初心者向け・石綿】建築物石綿含有建材調査と、石綿含有建材調査者について解説

今回は、建築物石綿含有建材調査者についてお話したいと思います。

建築物石綿含有建材調査と、石綿含有建材調査者について解説

建築物石綿含有建材調査の目的

石綿は、現在製造禁止物質ですので、石綿の製品が新たに作られることはありません。
しかし、過去に石綿を使用して建築された建物の中に、石綿が存在しています。

そこで
①建物の解体・改修工事を行う際には、石綿障害予防規則に基づく事前調査
②石綿含有建材を使用している建物の維持管理を行うための調査
③石綿を含む建物の解体等においては、多大な費用が掛かるため、その資産除去債務を見積もるための調査

これらの3つの目的の調査を行わなければなりません。
なお、教科書によっては、解体と改修を分けて、4つの目的の調査を行わなければならないとする場合もあります。

建物の改修や維持管理の調査を行う場合は、建物内に人がたくさんいるかもしれませんね。それらの方々が石綿にばく露しないようにしましょう。
資産除去債務については、非常に簡単に言うと、建物を将来的に撤去する場合に石綿が存在する建物については費用が多大になるため、その費用を見積もって資産に計上しておきましょうというものです。

事前調査を行うべき場合

事前調査の対象は、建築物、工作物又は船舶(鋼製の船舶に限る。)の解体又は改修(封じ込め又は囲い込みを含む。)の作業(以下「解体等の作業」という。)を行うときは、石綿による労働者の健康障害を防止するため、あらかじめ、当該建築物、工作物又は船舶(それぞれ解体等の作業に係る部分に限る。以下「解体等対象建築物等」という。)について、石綿等の使用の有無を調査しなければならないと定められている石綿障害予防規則3条が根拠となります。
この事前調査については、規模の大小は関係なく、義務となります。
そして、この調査を行うのが、建築物石綿含有建材調査者になります。
(※日本アスベスト調査診断協会に登録した者も要件が合えば調査できます。)

石綿障害予防規則(事前調査及び分析調査)
第三条 事業者は、建築物、工作物又は船舶(鋼製の船舶に限る。以下同じ。)の解体又は改修(封じ込め又は囲い込みを含む。)の作業(以下「解体等の作業」という。)を行うときは、石綿による労働者の健康障害を防止するため、あらかじめ、当該建築物、工作物又は船舶(それぞれ解体等の作業に係る部分に限る。以下「解体等対象建築物等」という。)について、石綿等の使用の有無を調査しなければならない。
2 前項の規定による調査(以下「事前調査」という。)は、解体等対象建築物等の全ての材料について次に掲げる方法により行わなければならない。
一 設計図書等の文書(電磁的記録を含む。以下同じ。)を確認する方法。ただし、設計図書等の文書が存在しないときは、この限りでない。
二 目視により確認する方法。ただし、解体等対象建築物等の構造上目視により確認することが困難な材料については、この限りでない。
3 前項の規定にかかわらず、解体等対象建築物等が次の各号のいずれかに該当する場合は、事前調査は、それぞれ当該各号に定める方法によることができる。
一 既に前項各号に掲げる方法による調査に相当する調査が行われている解体等対象建築物等 当該解体等対象建築物等に係る当該相当する調査の結果の記録を確認する方法
二 船舶の再資源化解体の適正な実施に関する法律(平成三十年法律第六十一号)第四条第一項の有害物質一覧表確認証書(同条第二項の有効期間が満了する日前のものに限る。)又は同法第八条の有害物質一覧表確認証書に相当する証書(同法附則第五条第二項に規定する相当証書を含む。)の交付を受けている船舶 当該船舶に係る同法第二条第六項の有害物質一覧表を確認する方法
三 建築物若しくは工作物の新築工事若しくは船舶(日本国内で製造されたものに限る。)の製造工事の着工日又は船舶が輸入された日(第五項第四号において「着工日等」という。)が平成十八年九月一日以降である解体等対象建築物等(次号から第八号までに該当するものを除く。) 当該着工日等を設計図書等の文書で確認する方法
四 平成十八年九月一日以降に新築工事が開始された非鉄金属製造業の用に供する施設の設備(配管を含む。以下この項において同じ。)であって、平成十九年十月一日以降にその接合部分にガスケットが設置されたもの 当該新築工事の着工日及び当該ガスケットの設置日を設計図書等の文書で確認する方法
五 平成十八年九月一日以降に新築工事が開始された鉄鋼業の用に供する施設の設備であって、平成二十一年四月一日以降にその接合部分にガスケット又はグランドパッキンが設置されたもの 当該新築工事の着工日及び当該ガスケット又はグランドパッキンの設置日を設計図書等の文書で確認する方法
六 平成十八年九月一日以降に製造工事が開始された潜水艦であって、平成二十一年四月一日以降にガスケット又はグランドパッキンが設置されたもの 当該製造工事の着工日及び当該ガスケット又はグランドパッキンの設置日を設計図書等の文書で確認する方法
七 平成十八年九月一日以降に新築工事が開始された化学工業の用に供する施設(次号において「化学工業施設」という。)の設備であって、平成二十三年三月一日以降にその接合部分にグランドパッキンが設置されたもの 当該新築工事の着工日及び当該グランドパッキンの設置日を設計図書等の文書で確認する方法
八 平成十八年九月一日以降に新築工事が開始された化学工業施設の設備であって、平成二十四年三月一日以降にその接合部分にガスケットが設置されたもの 当該新築工事の着工日及び当該ガスケットの設置日を設計図書等の文書で確認する方法
4 事業者は、事前調査を行ったにもかかわらず、当該解体等対象建築物等について石綿等の使用の有無が明らかとならなかったときは、石綿等の使用の有無について、分析による調査(以下「分析調査」という。)を行わなければならない。ただし、事業者が、当該解体等対象建築物等について石綿等が使用されているものとみなして労働安全衛生法(以下「法」という。)及びこれに基づく命令に規定する措置を講ずるときは、この限りでない。
5 事業者は、事前調査又は分析調査(以下「事前調査等」という。)を行ったときは、当該事前調査等の結果に基づき、次に掲げる事項(第三項第三号から第八号までの場合においては、第一号から第四号までに掲げる事項に限る。)の記録を作成し、これを事前調査を終了した日(分析調査を行った場合にあっては、解体等の作業に係る全ての事前調査を終了した日又は分析調査を終了した日のうちいずれか遅い日)(第三号及び次項第一号において「調査終了日」という。)から三年間保存するものとする。
一 事業者の名称、住所及び電話番号
二 解体等の作業を行う作業場所の住所並びに工事の名称及び概要
三 調査終了日
四 着工日等(第三項第四号から第八号までに規定する方法により事前調査を行った場合にあっては、設計図書等の文書で確認した着工日及び設置日)
五 事前調査を行った建築物、工作物又は船舶の構造
六 事前調査を行った部分(分析調査を行った場合にあっては、分析のための試料を採取した場所を含む。)
七 事前調査の方法(分析調査を行った場合にあっては、分析調査の方法を含む。)
八 第六号の部分における材料ごとの石綿等の使用の有無(前項ただし書の規定により石綿等が使用されているものとみなした場合は、その旨を含む。)及び石綿等が使用されていないと判断した材料にあっては、その判断の根拠
九 第二項第二号ただし書に規定する材料の有無及び場所
6 事業者は、解体等の作業を行う作業場には、次の事項を、見やすい箇所に掲示するとともに、次条第一項の作業を行う作業場には、前項の規定による記録の写しを備え付けなければならない。
一 調査終了日
二 前項第六号及び第八号に規定する事項の概要
7 第二項第二号ただし書に規定する材料については、目視により確認することが可能となったときに、事前調査を行わなければならない。

e-Gov 石綿障害予防規則

また、大気汚染防止法においても、調査を行わなければならないことが定められています(第十八条の十五)。
この条文における特定粉じんですが、大気汚染防止法2条8号により、「この法律において「特定粉じん」とは、粉じんのうち、石綿その他の人の健康に係る被害を生ずるおそれがある物質で政令で定めるものをいい、「一般粉じん」とは、特定粉じん以外の粉じんをいう。」と定められています。

大気汚染防止法
第二条 この法律において「ばい煙」とは、次の各号に掲げる物質をいう。
一 燃料その他の物の燃焼に伴い発生するいおう酸化物
(中略)
8 この法律において「特定粉じん」とは、粉じんのうち、石綿その他の人の健康に係る被害を生ずるおそれがある物質で政令で定めるものをいい、「一般粉じん」とは、特定粉じん以外の粉じんをいう。
(以下略)

(解体等工事に係る調査及び説明等)
第十八条の十五 建築物等を解体し、改造し、又は補修する作業を伴う建設工事(以下「解体等工事」という。)の元請業者(発注者(解体等工事の注文者で、他の者から請け負つた解体等工事の注文者以外のものをいう。以下同じ。)から直接解体等工事を請け負つた者をいう。以下同じ。)は、当該解体等工事が特定工事に該当するか否かについて、設計図書その他の書面による調査、特定建築材料の有無の目視による調査その他の環境省令で定める方法による調査を行うとともに、環境省令で定めるところにより、当該解体等工事の発注者に対し、次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面を交付して説明しなければならない。
一 当該調査の結果
二 当該解体等工事が特定工事に該当するとき(次号に該当するときを除く。)は、当該特定工事に係る次に掲げる事項
イ 特定粉じん排出等作業の対象となる建築物等の部分における特定建築材料の種類並びにその使用箇所及び使用面積
ロ 特定粉じん排出等作業の種類
ハ 特定粉じん排出等作業の実施の期間
ニ 特定粉じん排出等作業の方法
三 当該解体等工事が第十八条の十七第一項に規定する届出対象特定工事に該当するときは、当該届出対象特定工事に係る次に掲げる事項
イ 前号に掲げる事項
ロ 前号ニに掲げる特定粉じん排出等作業の方法が第十八条の十九各号に掲げる措置を当該各号に定める方法により行うものでないときは、その理由
四 前三号に掲げるもののほか、環境省令で定める事項
2 解体等工事の発注者は、当該解体等工事の元請業者が行う前項の規定による調査に要する費用を適正に負担することその他当該調査に関し必要な措置を講ずることにより、当該調査に協力しなければならない。
3 解体等工事の元請業者は、環境省令で定めるところにより、第一項の規定による調査に関する記録を作成し、当該記録及び同項に規定する書面の写しを保存しなければならない。
4 解体等工事の自主施工者(解体等工事を請負契約によらないで自ら施工する者をいう。以下同じ。)は、当該解体等工事が特定工事に該当するか否かについて、第一項の環境省令で定める方法による調査を行うとともに、前項の環境省令で定めるところにより、当該調査に関する記録を作成し、これを保存しなければならない。
5 解体等工事の元請業者又は自主施工者は、第一項又は前項の規定による調査に係る解体等工事を施工するときは、環境省令で定めるところにより、前二項に規定する記録の写しを当該解体等工事の現場に備え置き、かつ、当該調査の結果その他環境省令で定める事項を、当該解体等工事の現場において公衆に見やすいように掲示しなければならない。
6 解体等工事の元請業者又は自主施工者は、第一項又は第四項の規定による調査を行つたときは、遅滞なく、環境省令で定めるところにより、当該調査の結果を都道府県知事に報告しなければならない。

e-Gov 大気汚染防止法

 

建築物石綿含有建材調査の大まかな流れ

建築物石綿含有建材調査は、事前調査と呼ばれ大きく3つのプロセスに分かれます。
事前調査とは、工事前に建築物等に使用されている建材の石綿含有の有無を調査することをいう。調査は石綿含有無しの証明を行うことから始まり、その証明ができない場合は分析調査を行うか、石綿含有とみなすことが基本となります。以下の3つのプロセスに分かれます。

事前調査
  1. 書面調査
    書面調査は既存の情報からできる限りの情報を得るとともに、現地調査の計画を立てるために行います。石綿含有建材の建築図面を調査します。
  2. 目視調査
    現地調査とも呼ばれます。書面調査の結果を踏まえて目視での調査を行います。分析調査のサンプルの採取も行います。
  3. 分析調査
    目視調査で採取したサンプルを分析機関に依頼して分析を行います。石綿があるかどうか、あった場合に重量パーセントがいくらかまでを分析します。

原則として、書面調査→目視調査→分析調査の順番で調査を行っていきます。例外として、目視調査に関しては、解体等工事の対象建築物等が、書面調査により平成18年9月1日以降に工事に着工したものであることが明らかなときは不要です。

しかし、平成18年9月1日以降に着工した建物については、まだ新しいため解体の対象となっていないことも多く、現時点では多くの場合、改修、維持管理のための調査のための規定かと思われます。目視調査を行わない場合は石綿と疑われる建材のサンプルを採取しないので、分析調査は必然的に必要なくなります。

この、平成18年9月1日以降に着工した建物の事前調査ですが、平成18年9月1日以降に着工したことを証明する書類を添付の上、石綿含有建材調査報告書を作成しなければなりません。石綿含有建材調査報告書を作らなくていいわけではないので注意しましょう。

目視調査を行い、石綿と疑われるサンプルを採取した場合には、分析調査を行いますが、分析調査を行わず、石綿があるものとみなして、対応を行う方法もあります。
この場合、分析調査にかかる費用は不要ですが、石綿に対する安全衛生上の対策への費用が掛かります。どちらがメリットがあるか考えて対応することになります。

建築物石綿含有調査者になるには

事前調査を行うのが、建築物石綿含有建材調査者になると解説いたしましたが、条文は改正前なので施行された時点でアップすることとします。

建築物石綿含有調査者になるには、建築物石綿含有建材調査者講習を受講し、講習の最後の試験に合格すればなれます。建築物石綿含有建材調査者講習は「一般建築物石綿含有建材調査者講習」と「一戸建て等石綿含有建材調査者講習」にわかれます。一般建築物石綿含有建材調査者講習を修了すると、全ての建築物の調査を行う資格を得ます。一戸建て等石綿含有建材調査者講習を修了すると、一戸建て住宅および共同住宅の内部に限った調査(共有部分は除く)を行えます。様々な建築物を調査できる一般建築物石綿含有建材調査者講習を選択することをお勧めします。

講習については多くの機関で実施されていますので、インターネットで調べればすぐに見つかると思います。

建築物石綿含有建材調査者講習には受講資格がありますので、注意しましょう。特に、実務経験を必要とされる場合があり、年数等を満たしているかはきちんと確認しましょう。
もし、実務経験がない場合には、石綿作業主任者になれば、受講資格を得ることができます。

石綿に関する届出、報告について

石綿に関しては、一定の要件を満たす場合に、行政へ届出、報告が必要になります。
こちらについては別記事でご紹介いたします。


 まとめ

石綿は、現在製造禁止物質ですので、石綿の製品が新たに作られることはありません。しかし、過去に石綿を使用して建築された建物の中に、石綿が存在しています。

①建物の解体・改修工事を行う際には、石綿障害予防規則に基づく事前調査
②石綿含有建材を使用している建物の維持管理を行うための調査
③石綿を含む建物の解体等においては、多大な費用が掛かるため、その資産除去債務を見積もるための調査

これらの3つの目的のための事前調査を行わなければなりません。石綿の事前調査を行う根拠は、石綿障害予防規則と大気汚染防止法になります。
この事前調査を行うのが、建築物石綿含有調査者になります。
この事前調査については、規模の大小は関係なく、義務となります。

建築物石綿含有調査者になるためには、建築物石綿含有建材調査者講習を受講し、講習の最後の試験に合格すればなれます。

別記事で解説しますが、一定の規模等以上の要件を満たした場合、石綿事前調査結果報告システムにより、石綿則に基づいて労働基準監督署長へ報告、また、大気汚染防止法(大防法)により自治体に報告することが求められています。

 

 

 

 

 

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この記事を書いた人

清水 宏泰

1975年生まれ。公衆衛生分野の専門家。現在はさまざまな組織の健康問題を予防するためにLAOにて行政書士・社労士・労働衛生コンサルタントとして活動しています。主に健康、心理系、産業保健の情報について発信していきます。

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