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化学物質の管理を解説

2023/08/16 2023/08/17

【石綿】石綿に関わる業務を行う場合の健康診断について解説

今回は、石綿に関わる業務を行う場合の健康診断について解説いたします。
あえて石綿健診とは言いません。

石綿に関わる業務を行う場合の健康診断の種類について解説

 石綿に関わる業務を行う場合には、3つの健康診断が関わります

 石綿に関わる業務を行う場合には、3つの健康診断が関わります。これがその3つです。

① 石綿健診
② じん肺健診
③ 一般健診

この3つの関わりを解説いたします。

石綿健診について

石綿健診の対象者

石綿健診ですが、条文を見てみましょう。石綿障害予防規則40条に石綿健診について記載があります。

石綿障害予防規則(健康診断の実施)
第四十条 事業者は、令第二十二条第一項第三号の業務(石綿等の取扱い若しくは試験研究のための製造又は石綿分析用試料等の製造に伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務に限る。)に常時従事する労働者に対し、雇入れ又は当該業務への配置替えの際及びその後六月以内ごとに一回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。
一 業務の経歴の調査
二 石綿によるせき、たん、息切れ、胸痛等の他覚症状又は自覚症状の既往歴の有無の検査
三 せき、たん、息切れ、胸痛等の他覚症状又は自覚症状の有無の検査
四 胸部のエックス線直接撮影による検査
2 事業者は、令第二十二条第二項の業務(石綿等の製造又は取扱いに伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務に限る。)に常時従事させたことのある労働者で、現に使用しているものに対し、六月以内ごとに一回、定期に、前項各号に掲げる項目について医師による健康診断を行わなければならない。
3 事業者は、前二項の健康診断の結果、他覚症状が認められる者、自覚症状を訴える者その他異常の疑いがある者で、医師が必要と認めるものについては、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。
一 作業条件の調査
二 胸部のエックス線直接撮影による検査の結果、異常な陰影(石綿肺による線維増殖性の変化によるものを除く。)がある場合で、医師が必要と認めるときは、特殊なエックス線撮影による検査、喀痰かくたんの細胞診又は気管支鏡検査

e-Gov 石綿障害予防規則

まず、対象者ですが、上記、石綿障害予防規則40条に、事業者は、令第二十二条第一項第三号の業務に常時従事する労働者に対して、健康診断を行わなければならないと記載されています。

そして、労働安全衛生法施行令22条1項3号にあるように「石綿等の取扱い若しくは試験研究のための製造若しくは石綿分析用試料等の製造に伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務」になります。

労働安全衛生法施行令
第二十二条 法第六十六条第二項前段の政令で定める有害な業務は、次のとおりとする。
(中略)
三 別表第三第一号若しくは第二号に掲げる特定化学物質(同号5及び31の2に掲げる物並びに同号37に掲げる物で同号5又は31の2に係るものを除く。)を製造し、若しくは取り扱う業務(同号8若しくは32に掲げる物又は同号37に掲げる物で同号8若しくは32に係るものを製造する事業場以外の事業場においてこれらの物を取り扱う業務及び同号3の3、11の2、13の2、15、15の2、18の2から18の4まで、19の2から19の4まで、22の2から22の5まで、23の2、33の2若しくは34の3に掲げる物又は同号37に掲げる物で同号3の3、11の2、13の2、15、15の2、18の2から18の4まで、19の2から19の4まで、22の2から22の5まで、23の2、33の2若しくは34の3に係るものを製造し、又は取り扱う業務で厚生労働省令で定めるものを除く。)、第十六条第一項各号に掲げる物(同項第四号に掲げる物及び同項第九号に掲げる物で同項第四号に係るものを除く。)を試験研究のため製造し、若しくは使用する業務又は石綿等の取扱い若しくは試験研究のための製造若しくは石綿分析用試料等の製造に伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務

e-Gov 労働安全衛生法施行令

ここで、「石綿等の取扱い若しくは試験研究のための製造若しくは石綿分析用試料等の製造に伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務」と書いてありますが、この前半の「石綿等の取扱い若しくは試験研究のための製造」のことを、直接業務と言います。この直接業務という名前は、石綿の健康管理手帳の要件に関して、こう呼ばれています。

また、この後半の部分、「石綿分析用試料等の製造に伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務」については、別の条文、石綿障害予防規則35条に似たような文言があり「周辺業務」という定義があります。

石綿障害予防規則(作業の記録)
第三十五条 事業者は、石綿等の取扱い若しくは試験研究のための製造又は石綿分析用試料等の製造に伴い石綿等の粉じんを発散する場所において常時作業に従事する労働者について、一月を超えない期間ごとに次の事項を記録し、これを当該労働者が当該事業場において常時当該作業に従事しないこととなった日から四十年間保存するものとする。
一 労働者の氏名
二 石綿等を取り扱い、若しくは試験研究のため製造する作業又は石綿分析用試料等を製造する作業に従事した労働者にあっては、従事した作業の概要、当該作業に従事した期間、当該作業(石綿使用建築物等解体等作業に限る。)に係る事前調査(分析調査を行った場合においては事前調査及び分析調査)の結果の概要並びに次条第一項の記録の概要
三 石綿等の取扱い若しくは試験研究のための製造又は石綿分析用試料等の製造に伴い石綿等の粉じんを発散する場所における作業(前号の作業を除く。以下この号及び次条第一項第二号において「周辺作業」という。)に従事した労働者(以下この号及び次条第一項第二号において「周辺作業従事者」という。)にあっては、当該場所において他の労働者が従事した石綿等を取り扱い、若しくは試験研究のため製造する作業又は石綿分析用試料等を製造する作業の概要、当該周辺作業従事者が周辺作業に従事した期間、当該場所において他の労働者が従事した石綿等を取り扱う作業(石綿使用建築物等解体等作業に限る。)に係る事前調査及び分析調査の結果の概要、次条第一項の記録の概要並びに保護具等の使用状況
四 石綿等の粉じんにより著しく汚染される事態が生じたときは、その概要及び事業者が講じた応急の措置の概要

e-Gov 石綿障害予防規則

念のため、並べてみましょう。「若しくは」、「又は」、「石綿」、「石綿等」など違いがありますがほぼ同じですね。

「石綿等の取扱い若しくは試験研究のための製造若しくは石綿分析用試料等の製造に伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務」
「石綿等の取扱い若しくは試験研究のための製造又は石綿分析用試料等の製造に伴い石綿等の粉じんを発散する場所における作業(前号の作業を除く。以下この号及び次条第一項第二号において「周辺作業」という。)

まとめますと、石綿の健康診断を行う者は、石綿に関する直接業務と周辺業務を行う者となります。
「石綿等の粉じんを発散する場所」ということで、関係者以外の立ち入り禁止措置を講じるように規定された作業場内で石綿を取り扱わない作業に従事する者が含まれることに注意してください。

 石綿健診の内容

石綿健診の一次健診の内容については、条文通り、以下になります。事後措置も他の特殊健診と同じになります。
健康診断の内容としては、一般的なものですので、診察は医師であれば難しくないと思われます。

石綿の一次健診の内容

一 業務の経歴の調査
二 石綿によるせき、たん、息切れ、胸痛等の他覚症状又は自覚症状の既往歴の有無の検査
三 せき、たん、息切れ、胸痛等の他覚症状又は自覚症状の有無の検査
四 胸部のエックス線直接撮影による検査


事業者は、一次健診の結果、他覚症状が認められる者、自覚症状を訴える者その他異常の疑いがある者で、医師が必要と認めるものについては、次の項目について医師による健康診断を行わなければなりません。これは、二次健診になります。
二次健診は、喀痰細胞診、気管支鏡まで含まれます。特殊なエックス線撮影による検査ということで、胸部CTも通常は含まれます。

石綿の二次健診の内容

一 作業条件の調査
二 胸部のエックス線直接撮影による検査の結果、異常な陰影(石綿肺による線維増殖性の変化によるものを除く。)がある場合で、医師が必要と認めるときは、特殊なエックス線撮影による検査喀痰かくたんの細胞診又は気管支鏡検査

また、その他、配転後健診があります。配転後健診の条文は先ほどの石綿則40条です。

石綿障害予防規則40条2項
事業者は、令第二十二条第二項の業務(石綿等の製造又は取扱いに伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務に限る。)に常時従事させたことのある労働者で、現に使用しているものに対し、六月以内ごとに一回、定期に、前項各号に掲げる項目について医師による健康診断を行わなければならない。

e-Gov 石綿障害予防規則

「常時従事させたことのある労働者で、現に使用しているものに対し」とあり、かつて石綿健診を行っていた場合はその会社を退職するまで、石綿健診を行わなければなりません。

なお、石綿健診の頻度は「六月以内ごとに一回」となっています。

石綿に関わる業務を行う場合のじん肺健診について

 石綿でじん肺健診を行う対象者

石綿健診を行う方の多くは、建築物の解体や改修等に関わる方が多いかと思いますが、じん肺法施行規則別表24号にて、石綿に関する作業が粉じん作業として記載されています。石綿の「切断」があれば、じん肺健診を行わなければなりません。

じん肺法施行規則別表(第二条関係)
(中略)
二十四 石綿を解きほぐし、合剤し、紡績し、紡織し、吹き付けし、積み込み、若しくは積み卸し、又は石綿製品を積層し、縫い合わせ、切断し、研磨し、仕上げし、若しくは包装する場所における作業

e-Gov じん肺法施行規則

このじん肺健診においても、配転後健診があります。じん肺の配転後健診は、すべての在籍労働者ではなく、管理2または管理3に該当する労働者に対して行います。

よって、多くの場合、石綿健診のある方は、じん肺健診を行うことになるでしょう。
また、じん肺の管理区分が管理2又は管理3であれば、健康管理手帳の対象にもなります。


 一般健診の役割

じん肺健診は所見がなければ3年に一度で、その間2年間は一般健診がフォローする形になります。
しかし、石綿健診をしていれば、6か月以内毎にしっかり胸部エックス線写真をチェックされるので問題ないとは思います。

 まとめ

石綿に関わる業務を行う場合の健康診断について解説しました。多くの場合、石綿健診、じん肺健診を行うことになるでしょう。一般健診は、じん肺健診の間の2年のフォローのために行われますので、全く石綿と関係ないわけではありません。

石綿健診は場所における業務ということで、対象者に周辺業務が含まれることに注意しましょう。
配転後健診、健康管理手帳も対応しましょう。

なお、事後措置は、他の特殊健康診断の事後措置と同様です。

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この記事を書いた人

清水 宏泰

1975年生まれ。公衆衛生分野の専門家。現在はさまざまな組織の健康問題を予防するためにLAOにて行政書士・社労士・労働衛生コンサルタントとして活動しています。主に健康、心理系、産業保健の情報について発信していきます。

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