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【産業医・人事労務担当者・カウンセラー向け】キャリア系と心理系カウンセラーの違いについて

皆様はカウンセラーというと、どのような場面でどのようなカウンセリングを想像いたしますか?
カウンセラーですが、実は、大きく分けてキャリア系のカウンセラーと、心理系のカウンセラーがあると思います。

キャリア系カウンセラーと、心理系カウンセラーという言葉は公式には存在せず、このブログの中での言葉ですので、一般的に使われていないことにご注意ください。

今回は、キャリア系と心理系のカウンセラーの違いについてのお話です

キャリア系カウンセラーと心理系カウンセラー

前述のようにカウンセラーですが、私は大きく分けてキャリア系のカウンセラーと、心理系のカウンセラーがあると考えています。(繰り返しますが、キャリア系・心理系はこのブログが勝手に分類しているだけです。)

現在、国家資格としては、キャリアコンサルタント(いわゆる国キャリ)と、公認心理師があります。
その他、キャリアコンサルタントに関しては、「国家検定キャリアコンサルティング技能検定」、その他技能検定があります。

キャリアカウンセリングとキャリアコンサルタント

キャリアコンサルタントは「コンサルタント」であり、カウンセラーではないのではと思われる方もいるかもしれませんが、キャリアコンサルティングの背景となっている、「キャリアカウンセリングとガイダンス」の理論や実践手法は共通しています。
以下の参考文献にキャリアカウンセリングとキャリアコンサルティングの違いの詳細が記載されています。

 2000 年代に入って,技術革新の進展,産業・職業構造の変化,労働者意識の多様化,正規・非正規労働者の分離,労働移動の増加,職業能力のミスマッチの拡大などが急速に進展した。 そのため平成13年「労働者の職業能力に即した自発的な職業能力開発(キャリア形成)と,これに資する職業能力評価制度の整備」のために,「雇用対策法」「職業能力開発促進法」が改正された。働く個人,それを雇用する組織,関係機関,社会が行うべき支援,が開始された。その中核となる「カウンセリングとガイダンス」が「キャリア・コンサルティング」である。

引用:日本労働研究雑誌 2015年4月号 独立行政法人 労働政策研究・研修気候
キャリア・カウンセリングとキャリアコンサルティング (木村周 JILPTリサーチアドバイザー )

また、キャリアコンサルタント養成講座認定申請を行う際のキャリアコンサルタントを行うために必要な技能に「カウンセリングの技能」が明記されています。

キャリコンの養成講座を受けられた方は、養成講座のカリキュラムの中で来談者中心療法についてよく勉強されたかと思います。

キャリアコンサルタント養成講習認定申請等要領 平成29年10月厚生労働省



心理系カウンセラーについて

公認心理師は、試験範囲に少しだけキャリアに関する部分がありましたが、基本的にはキャリアは扱わず、心理学に特化してる心理系のカウンセリング資格です。
心理系という根拠は公認心理士法2条に公認心理士の業務について規定があるのですが、「心理に関する支援」というのがキーワードになっているからです。

公認心理師法
(定義)
第二条 この法律において「公認心理師」とは、第二十八条の登録を受け、公認心理師の名称を用いて、保健医療、福祉、教育その他の分野において、心理学に関する専門的知識及び技術をもって、次に掲げる行為を行うことを業とする者をいう。
一 心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し、その結果を分析すること。
二 心理に関する支援を要する者に対し、その心理に関する相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。
三 心理に関する支援を要する者の関係者に対し、その相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。
四 心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供を行うこと。

e-Gov 公認心理師法

公認心理師は、医療職の一種ですね。医師の指示についても規定されています。一方、キャリアコンサルタントに関しては、医師の指示について記載がありません。

公認心理士法(連携等)
第四十二条 公認心理師は、その業務を行うに当たっては、その担当する者に対し、保健医療、福祉、教育等が密接な連携の下で総合的かつ適切に提供されるよう、これらを提供する者その他の関係者等との連携を保たなければならない。
2 公認心理師は、その業務を行うに当たって心理に関する支援を要する者に当該支援に係る主治の医師があるときは、その指示を受けなければならない。

e-Gov 公認心理士法

公認心理師の法律である公認心理師法が施行されたのは2017年であり、公認心理師が国家資格化したのはそれからということになります。
ちなみに、キャリアコンサルタントは、2016年から国家資格化されました。

私が公認心理師試験を受験したのは2019年です。
ざっくり私の主観ですが、公認心理師の筆記試験においてキャリコンの学科試験のため勉強した部分は1割程度しか出題されなかったと思います。臨床系、精神疾患系の範囲で1割くらいは医師国家試験に近い内容だったかなと思います。

話を戻しますが、キャリアコンサルタントの国家資格化が2016年からということで、2016年より前まではカウンセラーは民間資格のみだったのです。

最も有名な民間資格は臨床心理士ですが、こちらは歴史のある心理系のカウンセリング資格になり、日本臨床心理士資格認定協会の資格試験に合格することが必要になります。

しかし、これら民間資格もなんとなくキャリア系と心理系に分かれてはいましたが、得意分野がややちがうカウンセラーという取り扱いでした。

しかし、キャリア系と心理系が厚生労働省的に明らかに分けていると実感した時がありました。

キャリア系と心理系カウンセラーの業務の違い

その実感した時というのは、すでに経過措置期間は終了いたしましたが、公認心理師の実務経験による受験資格、いわゆるGルートの要件が決定した時です。

Gルートの資格では公認心理師の実務経験として、公認心理師法2条の業に従事していたことが求められました。
前述した、公認心理師の業務について記載された条文です(公認心理士法2条1項各号)。
再掲します。

公認心理師法
(定義)
第二条 この法律において「公認心理師」とは、第二十八条の登録を受け、公認心理師の名称を用いて、保健医療、福祉、教育その他の分野において、心理学に関する専門的知識及び技術をもって、次に掲げる行為を行うことを業とする者をいう。
一 心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し、その結果を分析すること。
二 心理に関する支援を要する者に対し、その心理に関する相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。
三 心理に関する支援を要する者の関係者に対し、その相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。
四 心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供を行うこと。

e-Gov 公認心理師法

なお、キャリアコンサルタントの業務は職業能力開発促進法13条の3に「キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルタントの名称を用いて、キャリアコンサルティングを行うことを業とする。」と定義されています。
なお、この職業能力開発促進法には、「医師」や「心理」については言及されていません。
(※ 試験委員の条件についてのみ「心理」という言葉が出ています。)

職業能力開発促進法
(業務)
第三十条の三 キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルタントの名称を用いて、キャリアコンサルティングを行うことを業とする。

e-Gov 職業能力開発促進法

そして、「キャリア」と「キャリアコンサルティング」については、以下のように厚生労働省に定義されています。

「キャリア」とは、過去から将来の長期にわたる職務経験やこれに伴う計画的な能力開発の連鎖を指すものです。「職業生涯」や「職務経歴」などと訳されます。(厚生労働省)

「キャリアコンサルティング」とは、労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力の開発及び向上に関する相談に応じ、助言及び指導を行うことをいいます。(厚生労働省)

厚生労働省:キャリアコンサルティング・キャリアコンサルタント

ここで、「キャリアコンサルティング」は、公認心理師法2条1項各号に該当しないとされたようなのです。

国家資格である公認心理師とキャリアコンサルタントの所轄は、両者とも厚生労働省であり、実際に多くの長年キャリアコンサルタントをされていた方々が公認心理師受験資格のGルートに該当するのではと厚生労働省に問い合わせ、受験申請をいたしましたが受験不可となる場合が多かったようです。

私も実務で面談を行う際には、「これはキャリアの案件かな」、「いや、心理系カウンセラーの案件だ」、「いや、医療の案件で精神科に紹介状を書いてしまおう」など、どんどん役割と立場を切り替えてゆきます。

 まとめ

キャリア系と心理系カウンセラーの違いについてはあくまでこのブログ内での分類ですのでご注意ください。しかし、実際に、キャリアコンサルタントと公認心理師の両方の資格をお持ちの方は、実務上、やっていることがかなり違うのはご存じかと思います。

産業・企業分野でカウンセリングを行う方は両方取得しておくと幅が広がっていいかもしれませんね。
また、産業医も、連携して動くカウンセラーの立ち位置、得意分野をきちんと理解して、カウンセラーの実力を発揮できるようにすることが必要かと思います。
今後のカウンセリング業界がどのようになってゆくのか興味深いところです。

労働衛生コンサルタント事務所LAOでは、メンタルヘルスに関する、コンサルティング業務を行っております。

メンタルヘルス不調に関する難しい案件にも対応いたします。社労士ですので、就業規則や社会保障も含めた労務管理を考慮した対応を行い、また、主治医との診療情報提供依頼書のやり取りを通じて、従業員の復職支援、両立支援を行うことを得意としています。

行政書士事務所として、休職発令の書面や、休職期間満了通知書、お知らせ等の書面の作成も行います。

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この記事を書いた人

清水 宏泰

1975年生まれ。公衆衛生分野の専門家。現在はさまざまな組織の健康問題を予防するためにLAOにて行政書士・社労士・労働衛生コンサルタントとして活動しています。主に健康、心理系、産業保健の情報について発信していきます。

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