2023/04/18 2023/04/18
【労務担当者向け】システムズアプローチと円環的因果律の重層化、組織の脆弱性について
今回のお話は、システムズアプローチの実践に関するお話です。システムズアプローチについては、関連記事を参照されてください。
産業保健に携わる方であれば、メンタルヘルス不調の方が1人発生した後、同じ部署で複数の人が連続して発生する経験をされたことがあるかもしれません。
また、システムズアプローチや家族療法の理論を知ることによって、これまで見えなかった円環的因果関係が見えてきた方もおられるかと思います。
今日は、実践で問題になる円環的因果関係の重層化についてお話しします。
システムズアプローチと円環的因果律の重層化
円環的因果律の重層化の実例
IPが発生し、システム(会社)に問題がある可能性がある場合、状況を把握すると、円環的因果関係が重層化していることがよくあります。
以下の図では、3つの円環的因果関係が存在していますが、部長は二重の円環的因果関係に巻き込まれています。このような場合、部長は大変そうですね。部長が「患者とみなされた者(IP)」にならないようにするためには、適切なフォローアップが必要です。
そして、部長へのフォローだけでは十分ではありません。部長の周囲のスタッフへのフォローアップも重要です。
時に、組織内の悪意のある人物が介入し、混乱を引き起こすことがあります。そのような場合にシステム(組織)を注意深く見ると、元々円環的因果関係が生じやすい部分に介入し、それによって円環的因果関係を引き起こしている場合があります。
以下の図は架空の例ですが、部長への悪意のある人物が、もともと円環的因果関係が発生しそうな部分を認識し、介入して円環的因果関係を引き起こし、重層化させることで部長を追い詰めるというケースです。
例えば、仕事の業務量が既に限界ギリギリで対応している状況で、さらに業務量を増やすといった介入が行われると、円環的因果関係が現れ始めます。
また、影響力のある人物が広範囲にわたって周囲に影響を及ぼすことで、複数の円環的因果関係が重層的に現れ、その中にはまり込んでしまった従業員がIPとなってしまう場合もあります。
円環的因果律が発現しそうな状況を防ぐ
上記のように、悪意がある場合だけでなく、一人の病気やケガの影響によっても、業務量が増え、円環的因果関係が生じ始めることがあります。
例えば、適切な手続きを経て産休や育児休暇を取得している場合でも、同僚の業務がスムーズに進まなくなり、それによって円環的因果関係が現れ始めることがあります。組織のマネージメントとしては、このような部分に注意する必要があります。
また、上記の図では、従業員Aの家族における円環的因果関係が現れ、従業員Aがメンタルヘルスの問題を抱える可能性があります。その結果、会社の業務バランスが崩れ、会社内で課長を含む他の円環的因果関係が生じる可能性もあります。このように、円環的因果律の発生防止は、会社の内部だけの問題ですむ話ではないのです。
しかし、これらの円環的因果関係が発生しそうな部分を事前に把握し、脆弱な箇所を排除していくことは効果的です。
従業員に対してカウンセリングを行い、情報を集約することで、この状況を把握する可能性が高まります。
その組織の状況を正確かつ客観的に把握し、適切な対応策を進めていきます。
この際、思い込みは避けるべきですね。
まとめ
システム(会社)の状況を把握すると、円環的因果関係が重層化することがよくあります。
また、時折、悪意のある人物が円環的因果関係が発生しそうな箇所に介入し、円環的因果関係を引き起こす場合もあります。
一人の病気やケガの影響によっても円環的因果関係が生じ始めます。
適切な手続きを経た産休や育児休暇でも、同僚の業務がうまく回らなくなり、円環的因果関係が発生し始めることがあります。
円環的因果関係が発生しそうな箇所を事前に把握し、脆弱な円環的因果関係が発生しそうな部分に介入することは有効です。
最初に提示された例である、「メンタルヘルス不調の方が1名発生したら、続けて何人も同じ部署で発生する」という状況は、単に休んだ人の業務を他の人が補完しており、ノルマが増えたというだけではなく、円環的因果関係が発生している可能性があります。
そこで、円環的因果関係がうまく回り、消滅していくためにはどのような対策が必要かを考えてみることが重要です。
その視点で状況を見直し、円環的因果関係が減退していくための対策を考えてみましょう。
労働衛生コンサルタント事務所LAOでは、メンタルヘルスに関する、コンサルティング業務を行っております。
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