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【人事労務担当者・産業医向け】キャリアコンサルティングにライフプランの考慮は不可欠です

キャリアコンサルティング(キャリコン)を行う場合、つい仕事という意味でのキャリアに焦点が当てられがちですが、生き方やライフプランについて考慮することも不可欠です。
みなさまは、長期的なライフプランって考えたことがありますでしょうか。
今回は、キャリア、キャリアコンサルティングとライフプランについて話をしたいと思います。

 キャリアコンサルティングにおけるライフプランに関する理論

 キャリア理論において、様々なライフプランに関する理論があります

 キャリア理論において、様々なライフプランに関する理論があります。キャリアコンサルティングを行う際には、キャリアだけでなく、その人がどう生きたいのかというライフプランも考えることが必要です。
この記事では、スーパーの理論についても簡単に解説します。

スーパーの理論、ライフキャリアレインボー

心理学者であるドナルド・E・スーパーは、キャリア開発の中でのライフプランニングにつき、ライフキャリアラインボー(Super’s Life Career Rainbow)というものを提唱しました。

人々は様々な場面で異なる役割を果たします。例えば、会社での役割と家庭での役割は異なります。また、時間とともに人生のさまざまな発達段階(後述)を経験します。これらはキャリアにも大きな影響を与えます。異なる役割が衝突すると、ストレスの状況を引き起こすことがあります。例えば、最近ではキャリアを追求するか、子供を産んで育てるか、家庭を重視するかという問題が取り上げられています。

ライフキャリアレインボーでは、人々に人生のさまざまな時点で果たす異なる役割について考ていきます。

ライフキャリアレインボーの解説

スーパーは、人のキャリア形成は発達段階を経て進んで行くと考えました。この理論では、成長期(Growth)、探索期(Exploration)、確立期(Establishment)、維持期(Maintenance)、減退期(Disengagement)の5つの段階があると考えています。

①成長期(~14歳ごろまで)
②探索期(14~25 歳ごろまで)
③確立期(25~45 歳ごろまで)
④維持期(45~65歳ごろまで)
⑤減退期(65歳~)

以下の図は、「ライフ・キャリアの虹」という題目なのですが、著作権が問題にならない文部科学省のHPからとってきたライフキャリアレインボーです。


引用:文科学ホームページhttps://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2011/11/04/1312817_05.pdf

よく見ると、円形の外周に、「成長」、「確率」、「維持」、「衰退」と書かれていますね。
この図は、左下から、時計回りに年齢を重ね、それにつれて発達段階を移動してゆきます。
これが発達段階です。この図では一つ「探索期」の段階が足りませんが、まあいいでしょう。

円の中に役割を記載しています。
役割を以下にまとめました。8つの役割があります。

  • 子供
    保護され親と共に過ごし、成長するにしたがって少しずつこの役割から離れていきますが、最終的には両親の世話をするようになります

  • 学生
    学業に取り組む役割です。近年では、若いころだけでなく、リスキリングや、リカレント教育も話題になっています。

  • 余暇人
    享楽的なライフスタイルを持ち、趣味などを楽しんでいる役割です。

  • 市民
    これは、社会の一員としての役割です。地域におけるボランティア活動や近所、友人とのかかわりがある役割です。

  • 職業人
    働く人すべてを含み、雇われた仕事に責任を持つ役割です。


  • 子供を持つことで「親」の役割が生まれます。子供に対する養育の義務を有する役割です。

  • 配偶者
    これは一緒に生活を共有するパートナーに対する役割です。

  • 家庭人
    家族の一員としての役割のことです。これは必ずしも女性の役割だけではありません。家族に属するひとそれぞれが役割を担っています。

そして、具体的にこのライフキャリアレインボーを活用する方法ですが、がっちりやるなら以下のようになります。

まず、過去と現在の状況を評価します。8つのライフロールに基づいて、それぞれにどれくらいの時間(パーセント)を費やしてきたかを円の中に記入します。ここで、自分の過去から現在までの振り返りを行うことができ、気づきが生まれるかもしれません。自分の役割が年齢と共に変化することを再認識することもできます。
これで、現在までのライフキャリアレインボーができました。

さらに、将来の「役割」について考え、ライフキャリアレインボーを作成しましょう。この段階では、自分のライフプランの中長期的な視点を考える機会が生まれています。

この時点で、自分が様々な環境に属しながら生きていき、自分を取り巻く環境が発達段階で変化することに気づきが生まれます。これは、衰退期におけるサクセスフルエージングにもつながるものです。

関連記事:サクセスフルエージング

そして、自分が考える将来における理想的な「役割」についてもライフキャリアレインボーを作成します。このライフキャリアラインボーを比較することで、自分の過去から現在までの振り返りや将来への中長期的なライフキャリアプランについて考え、自分の理想と現実のギャップに気づくことができます。そして、それを元にライフプランやキャリアプランを構築していくことができます。

 キャリアプランはライフプランを踏まえて決定する。

また、2級キャリアコンサルティング技能検定試験の試験科目及びその範囲並びにその細目においても、「職業だけでなくどのような人生を送るのかという観点や、自身と家族の基本的生活設計の観点等のライフプランを踏まえ、相談者の中高年齢期をも展望した中長期的なキャリア・プランの作成を支援」とあり、やはり、ライフプランを踏まえることが重要なことがわかります。

次に掲げる事項を適切に実施するために、意思決定の支援について一般的な知識を有すること。 自己理解、仕事理解及び啓発的経験をもとに、職業だけでなくどのような人生を送るのかという観点や、自身と家族の基本的生活設計の観点等のライフプランを踏まえ、相談者の中高年齢期をも展望した中長期的なキャリア・プランの作成を支援すること。

引用元:2級キャリアコンサルティング技能検定試験の試験科目及びその範囲並びにその細目

 

 ライフプラン・キャリアプランを再度確認する必要があります

特に若年者において、ライフプランをイメージできないことがあります。なかなか十代の学生さんに、どのように生きたいかと言っても厳しいですよね。マーシャの同一性地位は重要な理論になります。

また、キャリアアンカーについても、30代に形成されると言われています。
キャリアアンカーについては以下の記事を参考にしてください。

治療と仕事の両立支援において見直しが必要な場合があります

労働者が大きな病気や障害を経験した場合、これまで思い描いていたライフプランが実現困難になる可能性があります。
そのような場合、ライフキャリアレインボーを再構築し、見直す必要が生じるかもしれません。
現場の産業医が業務時間内にライフキャリアレインボーを、従業員と一緒に作成することは難しいかもしれませんが、ライフキャリアレインボーを意識し、面談の中でライフプランや中長期的なキャリアプランに関するサポートを行うことができれば良いでしょう。

産業医が、キャリアコンサルタントと連携できるとこの問題は解決できるでしょう。

まとめ

今回は、スーパーの理論の解説が主な内容になってしまいましたが、キャリアについて考える際にはライフプランを考慮する必要があります。

産業医や人事労務担当者はつい目先の仕事、キャリアに焦点を当てがちですが、産業医が長期的なライフプランを明確にし、それに基づいて中長期的なキャリアプランを立て、それを実現するために短期的な目標を設定することが重要です。

 

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この記事を書いた人

清水 宏泰

1975年生まれ。公衆衛生分野の専門家。現在はさまざまな組織の健康問題を予防するためにLAOにて行政書士・社労士・労働衛生コンサルタントとして活動しています。主に健康、心理系、産業保健の情報について発信していきます。

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