2023/04/29 2023/04/29
【初心者向け】仕事と治療の両立支援のガイドラインと基本についてわかりやすく解説
皆さまは両立支援という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
これは、病気の治療と仕事を両立できるように支援することを言います。
そして、障害にも同じように応用できます。
今回は治療と仕事の両立支援の基本的なお話をします。
仕事と治療の両立支援の基本についてわかりやすく解説
事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン
治療と仕事の両立支援については、以下の厚生労働省のガイドラインがあります。しかも、二本立てですね。
事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン
このガイドラインは、事業場が、がん、脳卒中などの疾病を抱える方々に対して、適切な就業上の措置や治療に対する配慮を行い、治療と仕事が両立できるようにするため、事業場における取組などをまとめたものです。
https://chiryoutoshigoto.mhlw.go.jp/guideline/
企業・医療機関連携マニュアル
https://chiryoutoshigoto.mhlw.go.jp/dl/download/manual.pdf
病気になってしまった従業員が仕事を継続できるようにするため、つまり治療と仕事を両立させるための取り組みをまとめたものですね。
これは、かなり分厚いガイドラインであり、多くの事例が具体的に提示されています。具体例がきちんと記載されているため、何をすべきかイメージしやすいですね。内容については、よく考えられていると思います。作成者の気合が感じられます。ガイドライン内の書式を正しく使用すれば、ある程度の支援がうまく行えるのではないかと思います。
このガイドラインでは、主治医との連携が重要視されています。
この点、産業医がいれば、主治医との連携を対応しやすいとは思いますが、事業場に常時50人以上の労働者がいる事業所で選任されますので、常時50人未満の企業であれば、産業医がいない場合もあります。
現在、定年の引き上げや70歳までの雇用継続制度の導入が努力義務となっています。将来的には、これらが義務化される可能性もあります。その結果、従業員の年齢が上昇すれば、病気になる可能性も増えるでしょう。ですから、ますます治療と仕事の両立支援が重要性を増してくると考えられますね。
また、障害と仕事の両立支援についてもこの手法が応用できます。
両立支援コーディネーターについて
そして、両立支援コーディネーターという資格をご存じでしょうか?
以下は、平成29年の厚生労働白書に記載されている両立支援コーディネーターに関する記述です。また、令和4年の厚生労働白書においても、「働き方改革実行計画」に基づき、主治医や会社・産業医と協力し、患者が治療と仕事の両立を実現するためのトライアングル型のサポート体制の構築を推進する両立支援コーディネーターについての記述があります。
(病気の治療と仕事の両立に向けた両立支援コーディネーターによる支援)働き方改革実行計画を踏まえ、病気の治療と仕事の両立を支援するため、主治医と会社の連携の中核となり、患者に寄り添いながら継続的に相談支援を行いつつ、個々の患者ごとの治療・仕事の両立に向けたプランの作成支援などを担う両立支援コーディネーターの育成・配置等を2017(平成29)年度から進め、主治医、会社・産業医と、両立支援コーディネーターのトライアングル型のサポート体制を構築することとしている
平成29年版 厚生労働白書
こちらがトライアングル型支援の図(平成29年版 厚生労働白書)ですが、企業、医療機関、そして働く人の支援を両立支援コーディネーターが行うとされています。この中で、なんと両立支援コーディネーターのなり手として、産業カウンセラー、キャリアコンサルタント、社会保険労務士が含まれていますね。産業カウンセラーは心理系のカウンセラーになります。また、病気による仕事への影響は従業員にとっての転機となるため、キャリアコンサルタントとの親和性が高いと考えられます。また、社会保険労務士は社会保険に関する知識が豊富であり、傷病手当金や年金、助成金などについてのサポートも行えます。
医療ソーシャルワーカーは、一般的には社会福祉士や精神保健福祉士が務め、病院などで患者さんの支援を行います。今後、それぞれの職種の得意分野や役割についての情報を記事にまとめていきたいと考えています。
両立支援コーディネーターとなるためには、研修を修了しなければなりませ。しかし、聞いた話では、社会保険労務士の先生方でこちらの研修を受けたい方は多いようですが、研修の応募が多くなかなか抽選に当たらないようです。また、両立支援コーディネーター研修を修了した特定の医療従事者が、相談支援をした場合に、「療養・就労両立支援指導料」を請求できるようです。
ガイドラインにも、ちゃんと両立支援コーディネーターが入っていますね。
※…「働き方改革実行計画」(平成29年3月28日働き方改革実現会議決定)による「両立支援コーディネーター」は、労働者の同意のもと、業務や治療に関する情報を得て、労働者の治療や業務の状況に応じた必要な配慮等の情報を整理して本人に提供するなど、上記①~③の関係者の連携を支える。両立支援コーディネーターは、医療機関の医療従事者や企業の人事労務担当者、産業保健スタッフ、支援機関の相談員などが担っている。
両立支援コーディネーター研修ですが、私も受講しましたが、よく考えられていますね。
一言でいうとFP、社会保険労務士、キャリアコンサルタント、医療(医師・保健師・医療ソーシャルワーカー)の勉強内容の非常に初歩的なところを集めたような講習でした。非常に幅広いです。
あの研修プログラムを作った人はこれら全領域を一通り知っている人か、みんな集まって作ったのでは?と思います。
実際には、すべての知識がバランスよく使えたほうがいいですので、ダブル・トリプルライセンスが活きるでしょう。
多職種連携が必要なのでコミュニケーション力は必要です。
医療職の方々は、非医療属性である社会保険労務士、キャリアコンサルタント等のことを知るように心がけましょう。
まとめ
定年の引き上げや70歳までの継続雇用制度により、従業員の年齢が上昇すればそれだけ病気になる可能性は上がります。
今後ますます治療と仕事の両立支援が重要となってきます。
人事労務担当者や産業医は治療と仕事の両立支援についてのガイドラインはしっかり読み込んでおきましょう。
事例についてはガイドラインに非常によくまとめられています。
両立支援コーディネーターとトライアングル型支援についても知っておきましょう。
主治医とのやり取りが重要になります。
企業に産業医がいれば医師の意見(就業上の措置)を得られやすく、主治医との連携もしやすいのでよいかと思いますが、産業医がいない職場では会社が行ってゆくことになります。
弊所LAOは、治療と仕事の両立支援につき、産業医のみならず、スポットでも両立支援に対応いたします。
労働衛生コンサルタント事務所LAOでは、産業医・顧問医の受託をお受けしております。労務管理と一体になった産業保健業務を多職種連携で行います。