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化学物質の管理を解説

2023/05/20 2023/05/20

【まとめ】化学物質の自律的管理におけるリスクアセスメントの実務について解説

今回は、労働安全衛生法の改正による化学物質の自律的管理におけるリスクアセスメントの実際についてまとめます。
このまとめでは、リスクアセスメントを実施するための最初の段階のみを考慮します。
今回は、これまでリスクアセスメントをあまり実施してこなかった事業所を想定し、手順をまとめています。

注意点ですが、まだ具体的な指針が示されていない部分もあり、何をすべきか具体的にわかり次第、追記いたします。まだ、不完全にしか説明できませんのでご了承下さい。

化学物質の自律的管理におけるリスクアセスメントの手順

事業所で使用する化学物質を網羅的にを洗い出しましょう。

 リスクアセスメント対象物とは労働安全衛生法第57条の3でリスクアセスメントの実施が義務付けられている危険・有害物質のことです。このリスクアセスメント対象物が事業所で使用している場合には、リスクアセスメントを行わなければなりません。
 まず、事業所で使用する化学物質を洗い出しましょう。 2016(平成28)年6月1日から、全ての業種・企業規模において、化学物質を取り扱う事業場がリスクアセスメントを実施すること(化学物質リスクアセスメント)が義務化されています。多くの事業所では化学物質のリストがあるかと思いますが、まだ化学物質リスクアセスメントをしていない事業所もあるかもしれません。

 また、事務系や小売業等で化学物質を取り扱わないと思われる事業所にもリスクアセスメント対象物がある可能性がありますので注意しましょう。例えば、業務用の漂白剤(次亜塩素酸)や業務用の掃除用の薬品がリスクアセスメント対象物に該当する場合があります。
 まずは、使用している化学物質と場所(業務)をリスト化しましょう。

(第五十七条第一項の政令で定める物及び通知対象物について事業者が行うべき調査等)
第五十七条の三 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、第五十七条第一項の政令で定める物及び通知対象物による危険性又は有害性等を調査しなければならない。
2 事業者は、前項の調査の結果に基づいて、この法律又はこれに基づく命令の規定による措置を講ずるほか、労働者の危険又は健康障害を防止するため必要な措置を講ずるように努めなければならない。
3 厚生労働大臣は、第二十八条第一項及び第三項に定めるもののほか、前二項の措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を公表するものとする。
4 厚生労働大臣は、前項の指針に従い、事業者又はその団体に対し、必要な指導、援助等を行うことができる。
e-Gov 労働安全衛生法

 化学物質がリスクアセスメント対象物か検索する前にCAS番号を調べましょう。

 事業所で使用する化学物質と場所(業務)のリストができたら、その化学物質のCAS番号を調べましょう。
CAS番号は化学物質1つにつけられている番号です。このCAS番号がないと、似た名前の物質や表記が違ったりするので検索が大変なのです。CAS番号については以下の記事を参考にしてください。

 リストができたら、リスクアセスメント対象物かどうかを確認しましょう。

 リスクアセスメント対象物かどうかは、以下の記事に記載してあるサイト、またはサイトからダウンロードできるエクセルファイルで検索できます。この時、CAS番号を利用すると簡単です。
これで、リスクアセスメント対象物質がわかりましたね。
リスクアセスメント対象物は、今後追加されていきます。

リスクアセスメント対象物のSDSを集めましょう

 リスクアセスメントの対象物である場合は、SDS(安全データシート)が存在するはずですので、それを収集しましょう。
当該物質の製造者に問い合わせれば入手できます。製造者のウェブサイトからダウンロードできることも多いです。

 いらないリスクアセスメント対象物は捨てましょう。

 こちらは非常に重要な点ですが、化学物質をリスト化する際には、今後、使用する見込みのない化学物質が発見される可能性があります。不要なリスクアセスメントの対象物は廃棄しましょう。

がん原性物質について

がん原性物質については、こちらについては別にまとめてありますので、参考にしてください。

 いよいよリスクアセスメントを行いましょう。

 リスクアセスメントを行うツール

リスクアセスメントの方法については、自由です。様々な方法がありますが、最近、労働基準監督署でもお勧めしているようなのが、クリエイト・シンプルです。条件が合えば、こちらを使うと簡単です。
厚生労働省のリーフレットに他の方法も記載されています。
こちらについても別記事で解説してゆく予定です。

労働災害を防止するため リスクアセスメントを実施しましょう(厚生労働省)

リスクレベルを低下させるための措置

 リスクアセスメントを行った結果、リスクレベルが高い場合には、リスクレベルを低下させるために対応策を実施する必要があります。
 労働者がリスクアセスメント対象物にばく露される濃度の低減措置の内容と労働者のばく露の状況について、労働者の意見を聴く機会を設け、記録を作成し、3年間保存しなければなりません。
 そのため、これらについては、50人以上の事業所では衛生委員会によって労働者の意見を聴取しましょう。また、50人未満の事業所では、衛生委員会相当の機関(懇談会等)を設けて意見を聴取しましょう。

記録の保存

 リスクアセスメントの結果と、その結果に基づき事業者が講ずる労働者の健康障害を防止するための措置の内容等は、関係労働者に周知するとともに、記録を作成し、次のリスクアセスメント実施までの期間(ただし、最低3年間)保存しなければなりません。
記録については、以下のQ&Aが厚生労働省HPに記載されていますので参照にしましょう。

Q13-2.リスクアセスメントを実施した結果を記載する決められた様式はあるか。また、結果を行政に提出しなければならないか。
A.

令和4年5月の省令改正によって、令和5年4月1日から、リスクアセスメント結果等の記録を作成し次のリスクアセスメントを行うまでの期間(次のリスクアセスメントが3年以内に実施される場合は3年間)保存することが義務付けられます。従来、労働者への周知項目として定められていた次の項目を記録として保存することが必要です。
・リスクアセスメント対象物の名称
・業務内容
・リスクアセスメント結果
・リスクアセスメント結果に基づき事業者が講じる労働者の危険又は健康障害を防止するため必要な措置の内容
これらの記録については、様式は規定されていません。そのため各事業場で作成や管理がしやすい様式を活用して下さい。作成にあたっては、「職場のあんぜんサイト」に「リスクアセスメント実施レポート(結果記入シート)」の一例を掲載しており、またCREATE-SIMPLEで出力可能な「実施レポート」や「結果一覧」等もリスクアセスメント結果の記録として活用頂けますので、参考にしてください。

なお、行政への提出は不要ですが、リスクアセスメントの実施状況等の確認のため、労働基準監督署等から提示を求められる場合があります。

引用元:化学物質対策に関するQ&A(リスクアセスメント関係)(厚生労働省HP)

リスクアセスメント結果の周知

リスクアセスメント結果の周知については、厚生労働省HPにQ&Aの形で記載されています。
掲示、備え付けにより周知する場合は「リスクアセスメント対象物質を取り扱う作業場」に常時掲示というのがポイントですね。

Q13-3.リスクアセスメント結果の周知はどのような方法で実施するのか。
A.

リスクアセスメントの結果は、SDSの周知と同様に、次のいずれかの方法で労働者が常時確認できるよう周知することが義務付けられています。
1.リスクアセスメント対象物質を取り扱う作業場の見やすい場所に常時掲示し、又は備え付ける
2.書面を労働者に交付する
3.電子媒体に記録し、かつ、作業場に当該記録を常時確認できる機器(パソコン端末など)を設置する

引用元:化学物質対策に関するQ&A(リスクアセスメント関係)(厚生労働省HP)

条文としては、労働安全衛生規則34条の2の8になります。

労働安全衛生規則
(リスクアセスメントの結果等の記録及び保存並びに周知)
第三十四条の二の八 事業者は、リスクアセスメントを行つたときは、次に掲げる事項について、記録を作成し、次にリスクアセスメントを行うまでの期間(リスクアセスメントを行つた日から起算して三年以内に当該リスクアセスメント対象物についてリスクアセスメントを行つたときは、三年間)保存するとともに、当該事項を、リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う業務に従事する労働者に周知させなければならない。
一 当該リスクアセスメント対象物の名称
二 当該業務の内容
三 当該リスクアセスメントの結果
四 当該リスクアセスメントの結果に基づき事業者が講ずる労働者の危険又は健康障害を防止するため必要な措置の内容
2 前項の規定による周知は、次に掲げるいずれかの方法により行うものとする。
一 当該リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う各作業場の見やすい場所に常時掲示し、又は備え付けること。
二 書面を、当該リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う業務に従事する労働者に交付すること。
三 磁気ディスク、光ディスクその他の記録媒体に記録し、かつ、当該リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う各作業場に、当該リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う業務に従事する労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。

e-Gov 労働安全衛生規則






 まとめ

(化学物質)リスクアセスメントの手順をまとめました。
①まず、事業所で使用する化学物質を網羅的にを洗い出し、リスト化しましょう。すでにリスト化されているのでしたら、他にもリスクアセスメント対象物がないか、再確認しましょう。
②リスト化した化学物質が、リスクアセスメント対象物か確認する前にCAS番号を調べましょう。
③CAS番号より、当該化学物質がリスクアセスメント対象物かどうかを確認し、 リスクアセスメントを行いましょう。
④労働者がリスクアセスメント対象物にばく露される濃度の低減措置の内容と労働者のばく露の状況について、労働者の意見を聴く機会を設け、記録を作成し、3年間保存しなければなりません。そのため、これらについては、50人以上の事業所では衛生委員会によって労働者の意見を聴取しましょう。また、50人未満の事業所では、衛生委員会相当の機関(懇談会等)を設けて意見を聴取しましょう。

労働衛生コンサルタント事務所LAOは、化学物質の自律的管理について、コンサルティング業務を行っております。

産業医として化学物質の自律的管理に対応可能な医師はあまりいないと思われますが、継続的なフォローも必要なため、産業医又は顧問医としての契約として、お受けしております。

個人ばく露測定のご相談やリスクアセスメント対象物健康診断の実施についても対応可能です。
化学物質の個別的な規制についても得意としています。

Zoom等のオンラインツールを用いて日本全国対応させていただいております。

詳しいサービス内容は以下のページをご参照ください。

新たな化学物質規制・化学物質の自律的管理支援
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この記事を書いた人

清水 宏泰

1975年生まれ。公衆衛生分野の専門家。現在はさまざまな組織の健康問題を予防するためにLAOにて行政書士・社労士・労働衛生コンサルタントとして活動しています。主に健康、心理系、産業保健の情報について発信していきます。

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