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【産業医・人事労務担当者向け】健康診断による聴力の評価と騒音性難聴と老年性難聴の違いについて解説

難聴は、一般健診でもよく確認される症状です。
今回は一般の方に向けて身近な難聴について解説します。
病気については医学に詳しくない方でも理解しやすいよう説明を行います。
安全衛生に関しては、専門的な解説をさせていただきます。

健康診断による聴力の評価と騒音性難聴と老年性難聴の違いについて解説

音の大きさについて

大きな音は難聴を引き起こす可能性があります。この音の大きさですが通常、dB(デシベル)で表記されます。
デシベルの大きさは対数的のスケールのため、振幅の2倍の音は約6dB上昇します。つまり、デシベルが6dB増加すると、音の振幅は2倍になっています。
しかし、エネルギーは振幅の2乗に比例するため、音の振幅が2倍になると、エネルギーは4倍になります。
音量が6dB上昇するということは、振幅が2倍になり、エネルギーは4倍になるため少しのデシベルの大きさは大きな違いとなります。

例えば、80デシベルの音に対して、86デシベルの音は4倍のエネルギーを持っているということになります。
環境基準においては、85デシベルと90デシベルが基準となることをご存じの方も多いかと思いますが、5デシベルの違いは大きいのです。

騒音障害防止のためのガイドラインの改訂について 基発0420第2号 令和5年4月20日

引用元:https://www.mhlw.go.jp/content/001089239.pdf



騒音性難聴と老人性難聴とは

大きな音は難聴を引き起こします。
この難聴は2種類あって、160dbくらいの大きな音に一度さらされることにより、一時的に難聴が生じますが、しばらくすれば元に戻ります。
これを、 急性音響性外傷(※ICD10でH833)と呼びます。

それに対して、何年もの間、慢性的に大きな音にさらされていると、以下の図「耳の構造」において、内耳の蝸牛にある、聴覚に関与する有毛細胞が変性(障害される)してしまい、難聴をきたすことがあります。これを騒音性難聴(※こちらもICD10でH833)と呼びます。
この騒音性難聴の特徴ですが、オージオグラムで4000Hz付近の聴力が主に低下します。
このオージオグラムについては後ほど解説します。

一方、老人性難聴(ICD10でH911)という形で非常に一般的な難聴が存在します。以下の総説によれば、65歳以上の人々の半数以上がこの難聴を抱えています。
ただし、この文献では難聴を26dB以上と定義していますが、実際に聞き取りにくい等の症状が現れるのは40dB以上だと思われます。
それでも、多くの方が老人性難聴を有しており、今後、定年の延長や70歳までの雇用継続により、職場での難聴の発生率が増加することは間違いありません。
この難聴を意味する「〇dB以上」という部分については後ほど説明します。

老人性難聴の特徴は、4000Hzだけでなく、高い周波数から徐々に低下していくという点がポイントとなります。

日本において,WHOの基準通り26dB以上を難聴と定義した場合の老人性難聴の有病率は,男性では65~69歳:43.7%,70~74歳:51.1%,75~79歳:71.4%,80歳以上:84.3%,女性では年齢群順にそれぞれ27.7%,41.8%,67.3%,73.3%と推計される

引用元:高齢者の難聴 増田正次 日老医誌2014;51:1―10

※(プロ向け)ICD11が公表されていますが、厚生労働省の改定がまだなのでICD10にしています。



オージオグラムについて

聴力を評価するには、オージオグラムと呼ばれるものを使用します。オージオグラムは、横軸に周波数を、縦軸に音の強さ(dB)を表します。左側は低い音、右側は高い音を示します。オージオグラムでは、点が下にあるほど聞き取りにくいことを意味します。このグラフは、各周波数でどの程度の音の強さ(dB)で聞き取れるかを示すものです。
つまり、「60dB」であれば、60dBの大きさの音でやっと聞き取れるということになります。

以下の図は非常に簡略化されたものです。若く聴力障害がない人、「異常なし」はすべての周波数でよく聞き取れるため、青い線のように一定になります。
オレンジ色の線は騒音性難聴のパターンを示しており、特に4000Hz付近で聞き取りにくくなり、さらに高い周波数の音でよく聞こえるようになっています。
このようなオージオグラムのパターンをC5dipと呼びます。これは騒音性難聴の特徴的な所見です。


それに対して、老人性難聴においては、高音がさらに聞き取りにくくなります。
その為、右肩下がりのグラフになります。

 騒音性難聴の健康管理

 労働安全衛生法における一般健診において

一般健診においては、聴力検査を行いますが1000Hzと4000Hzのみになります。
検査としては、1000Hz(低音)において30dBの大きさの音を、4000Hz(高音)において40dB(定期健診)又は30dB(雇入健診)の聴力をチェックします。
先ほどのデーターで一般健診を行うとどうなるでしょうか。

ちょっと見にくいですが、健康診断の結果上は以下のような結果になります。

1000Hzでは、「異常なし」と判定されており、騒音性難聴や老人性難聴のいずれも1000Hzにおいては異常が見られません。
一方、4000Hzでは、騒音性難聴と老人性難聴の両方に異常が見られます。
ただし、問題なのは、4000Hz以上の高音の難聴を区別できないため、C5dipかどうかわからず、騒音性難聴と老人性難聴を見分けることができないということです。

また、前述の通り、老人性難聴は高い有病率を示しているため、騒音作業場で働く労働者が老人性難聴かどうかを確認する必要があり、そのためには、オージオグラムを取る必要があることに留意する必要があります。

騒音障害防止に関する2023年のガイドラインについて

023年には、騒音障害の予防に関するガイドラインが改訂されました。詳細については別の記事をご参照ください。
ガイドラインはあくまで努力義務ですが、このガイドラインに従うことで、オージオグラムの周波数に関しては広範囲を、また音圧(dB)も低い値から行うことが求められます。

 まとめ

騒音性難聴と老人性難聴について解説しました。
老人性難聴の有病率は高く、今後、定年延長や雇用継続の年齢の上昇により、難聴の方が増加することが予想されます。
一般健診においては、老人性難聴と騒音性難聴の区別がつかない場合があることに留意しましょう。
騒音性難聴の対策については、騒音障害防止に関する2023年のガイドラインを参照しましょう。

労働衛生コンサルタント事務所LAOでは、産業医・顧問医の受託をお受けしております。労務管理と一体になった産業保健業務を多職種連携で行います。

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この記事を書いた人

清水 宏泰

1975年生まれ。公衆衛生分野の専門家。現在はさまざまな組織の健康問題を予防するためにLAOにて行政書士・社労士・労働衛生コンサルタントとして活動しています。主に健康、心理系、産業保健の情報について発信していきます。

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