事務所LAO – 行政書士・社会保険労務士・労働衛生コンサルタント・海事代理士

【まとめ】産業医・人事労務担当者が傷病手当金につき知っておくべき論点を解説

産業医は、傷病手当金についてよく知っておく必要があります。
職場復帰支援や、両立支援において、傷病手当金は頻用されます。
傷病手当金のルールを知っておかなければ使いこなせません。

傷病手当金に関する基本事項と、申請前に注意すべき事 

傷病手当金の支給要件に関する基本的な知識について解説

傷病手当金が支給されるには、3つの要件が満たされなければなりません。傷病手当金を受給するためには、業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であることが必要です。業務による病気やケガであれば、労災保険の対象になります。

支給される要件の一つに、待期期間があります。待機期間を満たすのには、様々なパターンがあります。
傷病手当金がいつから支給されるかは、当該休職する従業員にとって重要な事項なので間違いがないようにしましょう。
実際の事案では、支給されると思っていても、微妙に支給要件に合致しなかったりする場合もありますので、必ず、加入する健康保険組合に状況をお話しして、確認しながら対応しましょう。



 傷病手当金を申請する際に注意すべき点について

リハビリ出勤時の傷病手当金の支給額に注意しましょう

休職していた従業員が復職する際には、リハビリ出勤を行うことがあります。ただし、短時間でも出勤し賃金を得た場合、原則として傷病手当金が支給されないことに注意してください。

この辺りは、従業員と主治医の話し合い、会社の労務管理の方針、主治医の診断書、産業医との面談、当該従業員の状態、労働契約・就業規則等、業務内容、健康保険組合との相談などを分析し進めてゆくことになります。

復職に関して、社会保障について正確な理解があり、適切なアドバイスができる産業医は少ないと感じられます。将来的には、職場復帰支援や、治療と仕事の両立支援のために必要不可欠な知識となるでしょう。人事労務担当者の方も把握しておきましょう。

傷病手当金は1日ごとで受給できますが、その要件を解説

傷病手当金は、待期期間を満たしたのち、要件を満たせば1日単位で傷病手当金を利用することができます。
実際にメンタルヘルス不調の方が発生した場合、職場復帰支援の過程で、「職場復帰支援プログラム」の策定時に、休職中に利用できる社会保障について従業員に情報提供することが重要です。
また、治療と仕事の両立支援では、頻繁に欠勤が発生します。このような場合、傷病手当金をうまく活用することが望ましいです。
産業医は、休職に関与し、医師の意見に基づいて従業員を休職させることが可能です。また、具体的なケースによっては、産業医が傷病手当金の申請に関与することもあります。

傷病手当金支給申請のための「産業医の意見」による証明

主治医が傷病手当金申請書の記入を拒否した場合、産業医は任意で作成した書類を保険者に提出することができます。また、主治医が労働に支障がないと診断したが産業医が休業が必要と述べた場合でも、産業医は任意で作成した書類を保険者に提出することができます。なお、申請は必ず通るわけではないので、その点はクライアントにしっかりと説明しましょう。



傷病手当金の期限が切れそうなときは、障害年金の申請を考えましょう

傷病手当金の期限が近付いたら障害厚生年金の請求をしましょう

健康保険法の傷病手当金が支給されている場合、その受給期間が長引くことがあります。その結果、受給期間が終了する場合もあります。もし受給期間が終了する場合は、金銭面で困る可能性があるため、障害年金(障害厚生年金・障害基礎年金)への切り替えが必要になります。
障害年金に切り替えるためには、適切なタイミングで年金事務所に相談することが重要です。



傷病手当金から障害厚生年金3級への切替え時の要件緩和について

障害年金の中で最も障害の重篤度が低いのは、傷病手当金3級ですが、傷病が治っていない場合は、本来の障害厚生年金3級の条件を満たさなくても、障害手当金相当の障害(3級より軽度の障害)であれば、障害厚生年金3級が支給される場合があります。
障害厚生年金は、治療と仕事の両立支援において重要な要素となります。人事労務担当者や産業医の方々は、これらの内容を把握しておくことが重要です。



退職後も傷病手当金を受給できる継続給付の制度について

退職後に傷病手当金を受給する条件について(傷病手当金の継続給付)

傷病手当金には、継続給付という制度があります。この制度は、特定の要件を満たした場合に退職後も傷病手当金を受け取ることができるものです。

産業医や人事労務担当者の方々は、このルールを覚えておくことが重要です。しかし、退職後にも傷病手当金を受け取ることができるということを、従業員の中には知らない方が多くいます。特に金銭面で困っている方もいらっしゃるかもしれませんので、注意が必要です。

この継続給付はもらえるかもらえないかで人生を左右するような問題になる場合があります。
傷病手当金支給の要件は非常に重要なので、実際の例では必ず健康保険組合等に確認しながら手続きを勧めましょう。



 まとめ

傷病手当金は、労働者が疾病やケガによって働けなくなった場合に支給される給付金です。この申請に際して、産業医や人事労務担当者は基本的な知識を把握しておくことが必要です。
また、傷病手当金は職場復帰支援や仕事と健康の両立支援を行う上で重要な制度です。労働者の経済的な負担を軽減します。

傷病手当金が不支給となると、労働者の経済的な困難を引き起こす可能性があります。そのため、正確な手続きと要件を理解し、迅速な申請が不可欠です。

傷病手当金の要件を満たしていると思っていても、些細な情報の見落としで支給されないことがあります。そのため、申請を行う前には健康保険組合に確認することを心掛けましょう。的確な情報を得ることで、円滑に手続きを進めることができます。

労働衛生コンサルタント事務所LAOでは、産業医・顧問医の受託をお受けしております。労務管理と一体になった産業保健業務を多職種連携で行います。

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この記事を書いた人

清水 宏泰

1975年生まれ。公衆衛生分野の専門家。現在はさまざまな組織の健康問題を予防するためにLAOにて行政書士・社労士・労働衛生コンサルタントとして活動しています。主に健康、心理系、産業保健の情報について発信していきます。

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