2023/08/23 2023/08/24
【働く方向け】風邪や腰痛などで4日以上病欠、欠勤するときは傷病手当金は使える場合がありますが、注意も必要です
今回は、ちょっとした豆知識くらいのお話です。ご質問が多いので、記事にしました。
皆さんは、ちょっと長めに会社を休むことはありますでしょうか。まあ、ありますよね。
例えば、以下のような例はいかがでしょう。
- 休日にぎっくり腰になってしまい、お仕事ができず、腰痛で4日間欠勤してしまった。
- 風邪をひいてしまい、5日間休んでしまった。
- インフルエンザに罹ってしまい、6日間休んでしまった。
このような場合には傷病手当金を利用できる場合があります。
ポイントは、4日以上お休み(欠勤)する場合になります。
ただ、傷病手当金は欠勤時に支給されることから、欠勤により生じる問題を考慮しなければなりません。
4日以上お休みするときは、傷病手当金が使える場合があります
傷病手当金の要件に連続した3日間の待機が必要です
まず、前提として、お休みされる原因が、業務上でないことは重要です。もし、業務上が疑われる場合は、労災申請を行います。例えば、業務中に物を運ぼうとしたら、ぎっくり腰になってしまったという場合は、労災が認められる可能性があります。風邪やインフルエンザについては、明らかに業務上感染したという話でなければ、業務上でない私傷病ということになるでしょう。
傷病手当金の要件については、以下の記事で解説しています。
傷病手当金が支給されるには、健康保険の被保険者である必要があるなどありますが、今回は基本的な要件を満たしていることと仮定します。
仕事を休んだ日から連続して3日間の次の日である4日目以降の日に対して、1日ごと傷病手当金が支給されます。この連続した3日間を待機と呼びます。以下の図では、3月29日から4月3日まで風邪をひき、有休を使っていない例ですが、4月1日、2日、3日は傷病手当金が支給されます。3月29日から3月31日までを待機期間と呼びます。
この図のように、インフルエンザ、風邪、腰痛であっても4日目から傷病手当金が支給されます。欠勤とすることで、有給休暇を消費しなくていいという大きなメリットもあります。つまり、原則として待機期間中は傷病手当金が支給されません。
多くの企業では、就業規則などで特別な取り決めがない限り、この待機期間は単に無給の欠勤とされることが多いです。また、待機期間のお休みに有給休暇を使用することも一般的です。
待機期間と、その後の欠勤に有給休暇を使用した場合、従業員は欠勤扱いにはならず、出勤したとみなされます。これは重要ですので覚えておきましょう。
有給休暇を申請するか? 欠勤とすべきか?
例えば、待機の3日に、傷病手当金が出ず、有給休暇も余っているので、有給休暇を取得した場合を想定しましょう。このような場合、欠勤の4日目以降に有給休暇を利用せず傷病手当金を受給するかはしっかり考えましょう。なぜなら、傷病手当金は欠勤している場合に支給されます。この欠勤が発生すること自体で従業員に不利益が生じる場合があります。
その前に、会社で欠勤できるかどうかを確認しておきましょう。少々難しいかもしれませんが、病気で休んだ場合の規定をチェックしましょう。通常は、就業規則等に記載があります。就業規則がない場合には、会社と相談しましょう。
多くの場合、休職期間として、病気でお休みできる期間が設定されているでしょう。こちらの期間内であれば欠勤できます。多くの場合は「〇か月」とか記載されているでしょうし、軽い病気で数日間欠勤する場合には休職期間満了での退職についてはほとんどの場合、心配はないかと思います。
しかし、注意していただきたいのは、欠勤となることにより、事実上のペナルティが発生する場合があることです。
有給休暇を申請せず、欠勤となる場合の会社の対応に注意しましょう
例えば、インフルエンザ(私傷病)で5日間休む場合、待期期間である3日間は傷病手当金が支給されません。前述のように、この最初の3日間については、業務上でないので労災の給付は支給されず、傷病手当金も支給されないの無給になります。
多くの方は、有給休暇があれば、ここで待期期間の3日間に対して有給休暇を取得するかと思います。もし、有休がなければ欠勤となるでしょう。
このインフルエンザに罹った例でいえば、4日目、5日目の欠勤日に対して傷病手当金を申請することで受給することができます。しかし、注意が必要なのは、4日目、5日目が欠勤となることです。
会社によっては、欠勤となることにより、賞与の減額や昇格の妨げになる場合があります。
また、ひょっとしたら、一定の期間欠勤しないことを要件に支給される皆勤手当等が支給されないかもしれません。
もし、賞与の減少や昇格の妨げ等、実質的にペナルティが生じる場合については、欠勤として傷病手当金を受給するかについては慎重に考えるべきでしょう。
会社に欠勤となった場合の対応について、会社に直接、問い合わせるのは一つのよい方法でしょう。
会社を欠勤して傷病手当金を受給することが不利になる場合で、有給休暇を取得できるのであれば、有休休暇とする方が良いかもしれません。こちらは、状況次第になります。
また、例えば、以下のような例において、有給休暇を取得するか考えてみましょう。
近いうちに親族の結婚式で、どうしても有給休暇を取得する必要がある。
しかし、今回、インフルエンザで働けず欠勤してしまうが、この期間に対して有給休暇を取得すると有給休暇を使い切ってしまう。
この場合、就業規則次第にはなりますが、二つの選択肢がありますね。
①今回はインフルエンザで欠勤として、今後の結婚式で有給休暇を使う
②今回のインフルエンザは有給休暇を取得して、今後の結婚式で欠勤する。
みなさんはどうされますか?
①であれば、インフルエンザの欠勤期間について傷病手当金が支給されるでしょうし、②の場合はプライベートな結婚式で欠勤ということになってしまいますよね。
療養担当者(医師)の証明について
傷病手当金を受給するには、療養担当者(医師)の証明が必要になります。
つまり、医療機関を受診していることが必要になります。受診していなければ、療養担当者(医師)は証明してくれません。
風邪をひいたので、家でじっと寝ていて治ったという場合は、証明がありませんので、傷病手当金の申請を考慮している場合は、医療機関をきちんと受診しましょう。
医療機関を受診していた場合であっても、主治医が証明を拒否するかもしれません。証明を明確でない理由で拒否されることもあるようです。
もし、皆様の会社に産業医がいれば、相談してみましょう。産業医の任意の意見による証明が使えるかもしれません。
協会けんぽ:傷病手当金鍼灸申請書、療養担当者記入用
傷病手当金の規定については健康保険組合に確認しましょう。
傷病手当金の支給要件については、原則として健康保険法99条の規定によります。しかし、健康保険組合によっては、傷病手当金の額や、支給日数などが微妙に原則と違う場合があります。加入している健康保険組合に直接確認することをお勧めいたします。
まとめ
よく、忘れられているのですが、5日間や7日間休むくらいの病気休業であっても、傷病手当金が支給される場合があります。
ポイントは、4日以上お休みする場合になります。
ただ、傷病手当金を取得するということは、欠勤するということになりますので、欠勤になることによるペナルティについては注意しましょう。
また、療養担当者(医師)の証明を得るためには、医療機関の受診が必要となりますので、きちんと医療機関を受診し、治療しましょう。
労働衛生コンサルタント事務所LAOでは、産業医・顧問医の受託をお受けしております。労務管理と一体になった産業保健業務を多職種連携で行います。