事務所LAO – 行政書士・社会保険労務士・労働衛生コンサルタント・海事代理士

【資格・医師向け】日本温泉気候物理医学会の温泉療法医について解説します。

私は以前、「特に専門医の資格は必要ない。医師免許さえあれば十分だ」と考えていました。それは2016年頃までの話です。
もっとも、当時の私も実際には二つの資格を保有していました。一つは、産業医として必要な労働衛生コンサルタントの資格です。 そしてもう一つが、温泉療法医の資格でした。
今回は、その温泉療法医に関するお話をしてみたいと思います。

日本温泉気候物理医学会と温泉療法医・温泉専門医

日本温泉気候物理医学会とは?

このブログを読まれている方の中には、「日本温泉気候物理医学会」という名称を耳にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
その名のとおり、日本温泉気候物理医学会は、温泉・気候・物理医学に関する研究と実践を目的とした学会です。
この学会は、昭和10年(1935年)に設立され、さらに昭和13年(1938年)には、日本医学会の第15番目の学術団体として正式に加入したという、非常に長い歴史を持つ学会です。

以下に、この学会の定款に定められている「目的」をご紹介いたします。

 本法人は、温泉・気候・物理医学の学術研究ならびにその応用を推進し、加えて、会員相互の親睦と発展を図ることを目的に、次の事業を行う。
(1) 学術集会の開催
(2) 学会誌の編集・発行
(3) 専門医の育成・教育研修の実施
(4) 専門医・研修施設などの認定
(5) 国内外の関連学会および諸団体との交流ならびに協力助成
(6) その他本会の目的達成上必要な事業

一般社団法人 日本温泉気候物理医学会 定款

ここで、「専門医の育成」とありますよね。こちらを解説します。

温泉療法医と温泉療法専門医

温泉療法医と温泉療法専門医は、日本温泉気候物理医学会が認定する資格です。日本温泉気候物理医学会は、その歴史も古く、1935年に「日本温泉気候学会」として設立され、以降、温泉・気候・物理療法に関する研究と実践の推進を目的として活動を続けてきました。

温泉療法医は、さらに上位資格である「温泉療法専門医」へのステップとなる資格であり、いわゆる「認定医」に相当します。
温泉療法や物理医学に興味がある方は、こうした段階的な資格制度を通じて、より専門的な知識と技術を身につけていくことが推奨されています。

これらの資格を取得するには、まず、学会に加入する必要があります。
入会については、私が加入した時には、推薦者が必要だったような気がしますが、今は、推薦者の記載は任意のようです。

温泉療法医

まず、温泉療法医についてです。日本温泉気候物理医学会の温泉療法医制度の第1条には、温泉療法医に関する記載があります。
この制度によれば、温泉療法医は、患者に対して温泉・気候・物理療法の指導を行うことができる医師となります。

日本温泉気候物理医学会のホームページには、温泉療法医とは、「正しい温泉・気候・物理療養指導を行えるよう教育研修会全課程を修了し、当学会入会年より3年を経て、認定を受けた医師を指します。」とされています。(日本温泉気候物理医学会HPより) 。

日本温泉気候物理医学会 温泉療法医制度(目的)

第1条 一般社団法人日本温泉気候物理医学会(以下学会と略す)は正しい温泉・気候・物理療法を普及・発展させるために、患者に対し温泉・気候・物理療養指導を行い得る医師を温泉療法医(以下療法医と略す)に認定する。

一般社団法人日本温泉気候物理医学会 規則集

温泉専門医になるためには、以下のの要件を満たす必要があります。

療法医資格を取得するためには・・・
①温泉療法医教育研修会を受講し全過程を修了(年に1度学術集会に併せて開催されます)
②学会に入会し、3年以上経過
(例:2020年4月に入会した場合最短での認定日は2023年4月1日~)
③日本の医師免許を持っている

温泉療法医

つまり、温泉療法医の資格は、学会に3年以上在籍し、かつ「温泉療法医教育研修会」を受講することで取得できます。取得のハードルは比較的低く、特別に難易度の高い資格ではありません。
では、温泉療法専門医はどうでしょうか。

温泉療法専門医とは

それでは、上級資格である温泉療法専門医を取得するには、特定の要件を満たす必要があります。その要件として、「研修指定施設(別途指定される)で2年以上温泉療法専門医の指導の下で研修を行っていること」ということであり、ハードルは高いです。
研修指定施設についても規定に記載されていますが、数は多くはありません。

日本温泉気候物理医学会 専門医制度規則

(認定基準) 第5条 温泉療法専門医の認定を受けるためには、以下の条件をすべて満たさなければならない。
(1)日本国の医師免許証を有し、医師として人格及び見 識を備えていること。
(2)申請時において引き続き5年以上学会の会員である こと。
(3)2年以上学会の温泉療法医であること。
(4)研修指定施設(別に定める)で2年以上温泉療法専門医の指導の下に研修していること。
(5)以下の、①、②、③の1項目以上を満たすこと。
①温泉・気候・物理医学に関する学会発表抄録又は論 文を1編以上提出する、②学会が実施する調査研究事 業等に参加の履歴を提出する、③温泉・気候・物理医 学に関する症例報告を提出する(10例の症例報告。3例 は詳細報告、7例は診断名のみ {書式自由})。
(6)学会が実施する認定試験に合格すること。
(7)基本領域の認定医あるいは専門医を取得しているこ と。

一般社団法人日本温泉気候物理医学会 規則集

温泉療法専門医を目指すにあたり、いくつかの具体的な取得条件が設けられています。それぞれの要件について、ポイントを整理しつつ解説します。

見出し
  1. 日本国の医師免許証を有し、医師として人格及び見識を備えていること。
    →こちらは、ほとんどの医師にとって問題なくクリアできる基本要件です。
  2. 申請時において引き続き5年以上学会の会員である こと
    →この要件は、単純に入会からの経過年数が求められるものですので、時間が経過すれば自然に満たせます。
  3. 2年以上学会の温泉療法医であること。
    →この要件も、温泉療法医の資格取得後、2年間の継続が必要ですが、特別なハードルはなく時間が経てば問題ありません。
  4. 研修指定施設(別に定める)で2年以上温泉療法専門医の指導の下に研修していること
    →この要件が、最も難易度が高い部分です。研修施設が限定的であり、希望するタイミングで研修の機会を得るのが容易ではありません。
  5. 以下の、①、②、③の1項目以上を満たすこと。
    ①温泉・気候・物理医学に関する学会発表抄録又は論 文を1編以上提出する
    ②学会が実施する調査研究事 業等に参加の履歴を提出する
    ③温泉・気候・物理医 学に関する症例報告を提出する(10例の症例報告。3例 は詳細報告、7例は診断名のみ {書式自由}
    →この要件も、特に論文執筆や症例報告の作成が求められるため、一定の労力と時間を要します。実務経験や研究実績の積み重ねが必要です。
  6. 学会が実施する認定試験に合格すること
    →この試験は、出題範囲が明確に定められているため、しっかりと準備すれば十分に合格可能です。
  7. 基本領域の認定医あるいは専門医を取得しているこ と
    →この要件については、私は卒業年度から関係がなかったようです。

ここでやはり、難しいのは、「研修指定施設(別に定める)で2年以上温泉療法専門医の指導の下に研修していること」と「研修指定施設(別に定める)で2年以上温泉療法専門医の指導の下に研修していること」でしょう。
但し、研修指定病院については、数が減少していることもあり、経過措置があるようです。事務局に聞いてみるとよいでしょう。

 温泉療法専門医の取得同期

私が温泉療法医を取得した動機は、極めて単純です。「温泉が好きだから」という理由に尽きます。
また、日本温泉気候物理医学会は、非常にユニークで面白い学会です。新型コロナウイルスの流行以前には、学会の懇親会が各地で盛んに開催されていましたが、そこでは全国各地から集まった医師たちが、それぞれ自慢の地元温泉について熱く語り合う場面が印象的でした。

はっきり申し上げて、参加されている医師の皆さんは、ほぼ例外なく「温泉マニア」といっても良いほどの温泉好きばかりです。
今後、このブログでも、温泉療法に関連する話題を取り上げていきたいと考えていますので、ぜひ楽しみにしていてください。

 

 まとめ

今回のブログでは、日本温泉気候物理医学会が認定する「温泉療法医」と「温泉療法専門医」についてご紹介しました。温泉療法医は比較的取得しやすい資格ですが、温泉療法専門医には実務経験や研修、論文・症例報告の提出が求められ、難易度が高くなっています。

しかし、この制度は単なる資格取得を目的とするものではなく、温泉や気候、物理療法の正しい知識と実践力を持つ医師を育成するためのものです。温泉を活用した医療に関心のある方には、ぜひ挑戦していただきたい内容です。

私自身、単純に「温泉が好き」という理由からこの道に入りましたが、日本温泉気候物理医学会の活動は非常に奥が深く、全国の温泉マニアともいえる医師たちとの交流も大きな魅力です。

今後もこのブログでは、温泉療法や関連分野について、実践的な話題や私自身の経験を交えながらお伝えしていく予定ですので、どうぞお楽しみにしてください。

なお、私の名刺には、「温泉療法専門医」が記載されていますが、目についた方は、ほぼ全員と言っていい方が読み上げます。

あと、温泉療法医なら、持っているだけでなく、温泉に入りましょう。

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この記事を書いた人

清水 宏泰

1975年生まれ。公衆衛生分野の専門家。現在はさまざまな組織の健康問題を予防するためにLAOにて行政書士・社労士・労働衛生コンサルタントとして活動しています。主に健康、心理系、産業保健の情報について発信していきます。

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