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【医師・人事労務担当者向け】診療情報提供依頼書とはなにか?基本的な部分について解説

皆様は、産業医が発行する診療情報提供依頼書という書面をご存知ですか?診療情報提供書とは異なる書類です。私は多用しますが、産業医の中で頻繁に使用する方はかなり少ないように思います。
私にとっては診療情報提供依頼書がないと産業医活動は困難です。
治療と職場復帰支援の両立を支援する現場では、診療情報提供依頼書は不可欠です。

しかし、この診療情報提供依頼書はその使いかたを誤れば、非常に大きな問題になることがあります。
産業医にとっては、かなりの高等テクニックになるかと思います。
今回は産業保健現場にて利用する診療情報提供書の基本的な部分について解説いたします。

主治医へ診療情報の提供の依頼を行う書面とその根拠

今からのお話で、診療情報提供書と、診療情報提供依頼書は全く違うものなので区別して読んでいただきたいと思います。
ここでは、産業保健の現場である企業や企業から嘱託を受けている産業医と医療機関の主治医とのやり取りを前提としてお話いたします。
医療機関同士のやり取りでは、診療情報提供依頼書と診療情報提要書は別の意味合いになってきますので注意しましょう。

まず、前提として、今回解説する診療情報提供依頼書と診療情報提供書ですが、産業保健の現場(企業で主に産業医)と主治医との場面において利用される書面です。以下の図のような構図になっています。

診療情報は、従業員が診療を行う医療機関へ産業医が単独で情報開示を行っても、主治医は個人情報の観点、守秘義務の存在により拒否するだけです。そのため、従業員の診療情報の提供に同意する旨の意思表示が情報開示に必要です。

では、最初に診療情報提供書について解説いたします。
この、診療情報提供書と診療情報提供依頼書の違いは、診療に関する情報が記載されているだけなのか、主治医に診療に関する情報提供を依頼している書面なのかの違いになります。

診療情報提供書とは何か、どのような目的で発行されるのかについて

その前に、診療情報について確認してみましょう。指針「診療情報の提供等に関する指針の策定について〔医師法〕」によりますと以下の定義があります。

・「診療情報」とは、診療の過程で、患者の身体状況、病状、治療等について、医療従事者が知り得た情報をいう。
・「診療情報の提供」とは、①口頭による説明、②説明文書の交付、③診療記録の開示等具体的な状況に即した適切な方法により、患者等に対して診療情報を提供することをいう。


診療情報の提供等に関する指針の策定について〔医師法〕(平成15年9月12日 医政発第0912001号)

ここでは、産業保健現場のみを想定いたしますので、診療情報提供書は、診療情報を提供する書面ですが「書」なので口頭での説明を除き、また、「患者等」が「産業医等」となりますので、まとめますと以下のようになります。

産業保健現場における診療情報提供書

診療の過程で、患者の身体状況、病状、治療等について、医療従事者が知り得た情報を、説明文書の交付、診療記録の開示等具体的な状況に即した適切な方法により、産業医等に対して診療情報を提供する書面

 

「診療情報提供依頼書」とは

では、診療情報提供依頼書について解説していきます。
上記の指針、診療情報の提供等に関する指針の策定について〔医師法〕(平成15年9月12日 医政発第0912001号)においては、「医療従事者からの求めによる診療情報の提供」として、以下のようにも記載されています。他の医療従事者からの求めによる診療情報の提供の場面について「できる」と記載されており、これはまさに、産業医が患者の同意を得て、他の医療従事者に診療情報の提供を依頼する場面です。

10 他の医療従事者からの求めによる診療情報の提供

○ 医療従事者は、患者の診療のため必要がある場合には、患者の同意を得て、その患者を診療した又は現に診療している他の医療従事者に対して、診療情報の提供を求めることができる。

○ 診療情報の提供の求めを受けた医療従事者は、患者の同意を確認した上で、診療情報を提供するものとする。

診療情報の提供等に関する指針の策定について〔医師法〕(平成15年9月12日 医政発第0912001号)

なお、前述の指針の内容からわかるように、診療情報提供書は、本来、主に医療機関同士の診療情報のやり取りに使用される書面です。通常、医療機関同士の診療情報のやり取りは、医療の円滑な提供を目的として行われますが、産業保健の現場において産業医と主治医の間の診療情報提供は就業上の措置のために行われることが一般的であり、ややニュアンスに違いがあります。

また、私は産業医面談の結果を従業員の同意の下に主治医に伝えるために、主治医に書面で情報提供することもあります。これも診療情報提供書と呼ばれます。さらに、産業医面談後に従業員に受診を勧める場合、紹介状を発行することもありますが、これも診療情報提供書に含まれます。

この件に関しては、指針があり令和5年に改正が行われているため、確認することをお勧めします。

診療情報の提供等に関する指針の策定について〔医師法〕平成15年9月12日 医政発第0912001号


「診療情報の提供等に関する指針」の一部改正について 医政発0125第7号 令和5年1月25日

診療情報提供依頼書の使い方

「診療情報提供依頼書」は、名前に「依頼書」とあるように、主治医等へ診療情報の提供の依頼を行う書面です。そして、主治医からのお返事は診療情報提供書になります。この区別に注意しながら読み進めていただきたいと思います。

前述のように、例えば、会社が従業員の診療内容を主治医から知りたい場合、主治医に直接、診療内容を教えてほしいと伝えても、従業員が受診しているかどうかも含めて、個人情報保護の観点から病院は直接教えることができないと回答されるでしょう。

このような場合、個人情報の開示の同意を得るために、書面に診療情報の開示に関する同意の意思を明記し、それを主治医に送付します。そして、会社(産業医)は主治医から提供された情報が記載された書面を受け取ります。

なお、「診療情報提供依頼書」という用語は法令上の定義は存在しません。診療情報の開示に関しては以下の定義がありますが、「診療記録の閲覧」と「診療記録の写しを交付」はやや異なる概念となっています。

「診療記録の開示」とは、患者等の求めに応じ、診療記録を閲覧に供すること又は診療記録の写しを交付することをいう。
引用:診療情報の提供等に関する指針の策定について〔医師法〕平成15年9月12日 医政発第0912001号

なお、会社の代わり(代理人)として書面を作成し、主治医に送付するという業務は、後述しますが行政書士業務になります。しかし、診療情報については医学的に専門的な内容が多く、主治医も非医療職に対しては詳細な内容を返答しないと思われますので、医師、行政書士のダブルライセンスがないと難しいと思われます。

後述のように、主治医へ従業員の診療情報の開示を依頼する根拠となる指針(ガイドライン)はあるのですが、指針の想定する場面がそれぞれ違い、まとめた呼び名はありません。このまとめた呼び名を一般的に「診療情報提供依頼書」と呼ばれるかと思いますので、このブログではこのように呼びます。

中間まとめ(産業保健現場で産業医と主治医がやり取りする書面)

以下、まとめます。

診療情報提供書
診療の過程で、患者の身体状況、病状、治療等について、医療従事者が知り得た情報を説明文書の交付、診療記録の開示等具体的な状況に即した適切な方法により、産業医等に対して診療情報を提供する書面をいう。

診療情報提供依頼書
産業医等が、労働者の健康を確保するため必要があると認めるとき(労働安全衛生法13条5項)に、患者の同意を得て、その患者を診療した又は現に診療している他の医療従事者に対して、診療情報の提供を求める書面であり、診療情報の提供の求めを受けた医療従事者は、患者の同意を確認した上で、診療情報を提供する。

診療情報提供書は、通常は主治医が診療の情報を産業医に伝える書面になります。私は時々、産業医面談の結果このような就業上の配慮をしましたというお手紙を、従業員の同意の下、主治医へ送付ことがあります。いわゆる紹介状も診療情報提供書に含まれます。

診療情報提供依頼書は産業保健分野においては、通常、産業医から主治医へ診療情報提供書を依頼するものです。
本人の個人除法の開示に関する同意について記載されているのが一般的です。

診療情報提供依頼の産業保健上の位置づけ

さて、診療情報提供依頼書については以下の二つの指針に、診療情報の提供を依頼する旨があります。

「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(厚生労働省)
「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」(厚生労働省)

以下、解説します。

①「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」

メンタルヘルス不調等で休職した従業員の職場復帰を円滑に進めるためのガイドラインとして、厚生労働省の「職場復帰支援の手引き」という指針があります。

この指針の中で、産業医等による主治医からの意見収集について規定されています。以下、主治医からの意見収集に関する記載の部分を抜粋しました。ここでは、「職場復帰支援に関する情報提供依頼書」という呼ばれています。

職場復帰支援の手引き(抜粋)
(イ)産業医等による主治医からの意見収集
診断書に記載されている内容だけでは十分な職場復帰支援を行うのが困難な場合、産業医等は労働者の同意を得た上で、下記(ウ)のa及びbの判断を行うに当たって必要な内容について主治医からの情報や意見を積極的に収集する。この際には、「職場復帰支援に関する情報提供依頼書」(様式例1)等を用いるなどして、労働者のプライバシーに十分配慮しながら情報交換を行うことが重要である。
(ウ)労働者の状態等の評価
a 治療状況及び病状の回復状況の確認
(a)今後の通院治療の必要性及び治療状況についての概要の確認
(b)業務遂行(自ら自動車等を運転しての通勤を含む。)に影響を及ぼす症状や薬の副作用の有無
(c)休業中の生活状況
(d)その他職場復帰に関して考慮すべき問題点など

b 業務遂行能力についての評価
(a)適切な睡眠覚醒リズムの有無
(b)昼間の眠気の有無(投薬によるものを含む。)
(c)注意力・集中力の程度
(d)安全な通勤の可否
(e)日常生活における業務と類似した行為の遂行状況と、それによる疲労の回復具合(読書やコンピュータ操作が一定の時間集中してできること、軽度の運動ができること等)
(f)その他家事・育児、趣味活動等の実施状況など

「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(厚生労働省)

ただし、この情報提供依頼書は「職場復帰支援の手引き」に示されるように、主に「職場復帰支援」のために利用されます。他にも、この通達には「メンタルヘルス不調により休業した労働者の職場復帰を促進するために」と記載されています。

そのため、メンタルヘルスの問題がない場合や職場復帰が関係しない場合には、どのような手続きを行うべきかという問題が生じます。

参考のため以下に「職場復帰支援に関する情報提供依頼書」(様式例1)を示します。
引用:「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(厚生労働省)

②治療と仕事の両立支援

もし、メンタル系の疾患が関与しない場合には、「職場復帰支援の手引き」の対象者とは少し異なる従業員の範囲になります。たしかし、病気で治療中の方の就業配慮を行うためには、主治医から情報を提供してもらう必要があります。

結論として、このような場合には「治療と仕事の両立支援」を行っていくことになります。以下に、厚生労働省の治療と仕事の両立支援に関するWebサイトを示します。

参考サイト:治療と仕事の両立支援ナビ (厚生労働省)

また、以下に治療と仕事の両立支援に関する記事をまとめております。

こちらの指針においては、治療と仕事を両立するために主治医との連携が重視されており、その診療情報や、主治医の意見を得るための書面の例がいくつか提示されています。

これらの書面では、産業医が関与せず会社が主治医に意見を求めるバージョンもありますが、実際に診断名や疾病の状態の詳細を知るには医師の方が適切です。おそらく、主治医も会社からの診療情報提供依頼については、専門的な情報は提供せず、ざっくりした回答を行うでしょう。

なお、このこの書面の作成者は、後述しますが、労働者の所属する会社自身か、産業医自身でなければ、トラブルの元になる可能性があります。

引用:事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン(厚生労働省)

たくさん様式はあるのですが、1例です。他にも様式はたくさん掲載されています。
「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」(厚生労働省)

また、厚生労働省の指針はあくまで例であり、必ずしも特定の様式を使用しなければならないということではありません。
私は、「職場復帰支援の手引き」を基に独自の書面を作成し、使用しています。

ほとんど、職場復帰支援の手引きの様式と同じだと思われる方が多いと思いますが、このひな形の中に「労働者の健康を確保する」という部分があり、これが重要なのです。これは産業医の条文、安衛法13条5項の文言の引用になります。つまり、意見書依頼書の返信である診療情報提供依頼書の内容を勘案して、「労働者の健康管理等について必要な勧告をする」ということになります。

労働安全衛生法(産業医等)
第十三条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、医師のうちから産業医を選任し、その者に労働者の健康管理その他の厚生労働省令で定める事項(以下「労働者の健康管理等」という。)を行わせなければならない。
2 産業医は、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識について厚生労働省令で定める要件を備えた者でなければならない。
3 産業医は、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識に基づいて、誠実にその職務を行わなければならない。
4 産業医を選任した事業者は、産業医に対し、厚生労働省令で定めるところにより、労働者の労働時間に関する情報その他の産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要な情報として厚生労働省令で定めるものを提供しなければならない。
5 産業医は、労働者の健康を確保するため必要があると認めるときは、事業者に対し、労働者の健康管理等について必要な勧告をすることができる。この場合において、事業者は、当該勧告を尊重しなければならない。
6 事業者は、前項の勧告を受けたときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該勧告の内容その他の厚生労働省令で定める事項を衛生委員会又は安全衛生委員会に報告しなければならない。

e-Gov 労働安全衛生法

本人の個人情報である診療情報開示の同意について

このように、主治医へ情報提供依頼を行う場合は、本人の同意を得て個人情報の開示に同意してもらう必要があります。この同意に関しては、職場復帰支援の手引きの様式のように、同じ書類内に同意について記述する欄を設けるのでもよいですし、別途、同意書を作成してもいいでしょう。

この診療情報提供依頼については厚生労働省のガイドラインに記載されているものであり、多くの医師は存在を知っているので同意があれば問題なく返答してもらえるでしょう。さらに主治医には、医師法19条2項により、診断書発行義務がありますので、本人の同意があれば事実上、発行を拒否できません。

医師法
第十九条 診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。
2 診察若しくは検案をし、又は出産に立ち会つた医師は、診断書若しくは検案書又は出生証明書若しくは死産証書の交付の求があつた場合には、正当の事由がなければ、これを拒んではならない。

e-Gov 医師法

以下の記事にも、診断書発行義務について記載しています。

診療情報提供依頼書に関わる就業規則

主治医の情報適用依頼にかかる、手続きや費用について、あらかじめ就業規則に記載しておくことをお勧めいたします。
診断書の費用は、病院・診療所により自由に設定しているため、診療情報提供書の費用についても注意が必要です。以下の記事を参考にしてください。あらかじめの費用確認は行いましょう。

この情報提供依頼は医師が行うべきです。当然ながら、病気や障害に関する事項がほぼ確実に記載されるでしょう。また、主治医も非医療関係者に対して返信する場合、医学的・専門的な内容で返答しない可能性があります。

また、労務管理を理解していない産業医が安易に診療情報提供依頼書を用いて意見を求めた場合、やりとりの内容によってはトラブルが生じる可能性があります。




さらに、主治医よりの情報提供依頼書・診断書の内容が明らかでない場合は再度の情報提供依頼を行う場合もあります。

 診療情報提供依頼書は、原則として事業所自身や産業医自身でなければ作成できません

実は、診療情報提供依頼書は、行政書士法との関係で問題となる可能性があります。実は、行政書士は、文書作成の代理人として法的効力が生じる書面をとりまとめる業務ができます。以下に、行政書士の業務を紹介した、日本行政書士連合会のWebサイトの引用を載せておきます。

診療情報提供依頼書は内容証明郵便として出す必要はありませんが、その返信である診療情報提供依頼書の内容によっては就業上の措置に直結するものであり、労務管理上の効果については考慮が必要です。

また、「交渉において解決しなければならない法的紛議が生ずることがほぼ不可避である案件に関わるものを除く」との記載がありますが、こちらは「紛争」がかかわる場合は弁護士の事案になるため行政書士が行うことはできないという意味になります。但し、診療情報提供依頼は、あくまで復職支援、治療と仕事の両立支援のために行う、事実証明の依頼であるため、交渉が発生することがないことを前提としています。

内容証明郵便を出したい
内容証明とは、何年何月何日に誰から誰宛てに、どのような文書が差し出されたかを謄本によって証明するもので、後々のトラブル防止や契約後のクーリングオフ等に有効な手段です。
行政書士は依頼者の意思に基づき、文書作成の代理人として法的効力が生じる書面にとりまとめ、内容証明郵便として作成します。

交渉において解決しなければならない法的紛議が生ずることがほぼ不可避である案件に関わるものを除く

引用:日本行政書士会連合会 「契約書」

そして、診療情報提供依頼書は、行政書士法1条の2の「事実証明に関する書類 」に該当する可能性が高いです。

よって、本人である会社や産業医が診療情報提供依頼書を作成する場合には問題がないのですが、どこかの産業保健サービス会社などの非行政書士が診療情報提供依頼書を会社や産業医のために作成することや、文書作成の代理人として活動することは行政書士法違反となるでしょう。以下に行政書士法の条文を挙げておきます。

行政書士法
(業務)
第一条の二 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。
2 行政書士は、前項の書類の作成であつても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない。

(業務の制限)
第十九条 行政書士又は行政書士法人でない者は、業として第一条の二に規定する業務を行うことができない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合及び定型的かつ容易に行えるものとして総務省令で定める手続について、当該手続に関し相当の経験又は能力を有する者として総務省令で定める者が電磁的記録を作成する場合は、この限りでない。
2 総務大臣は、前項に規定する総務省令を定めるときは、あらかじめ、当該手続に係る法令を所管する国務大臣の意見を聴くものとする。

e-Gov 行政書士法

もし、産業医本人なら診療情報提供依頼書を作成できるとして、産業保健サービス会社から派遣されている産業医が、産業保健サービス会社の作成した書面を、産業医で作成したことにして、診療情報提供依頼書を発行した場合はどうでしょうか。

この場合、行政書士法違反に該当することはもちろんですが、形式的には診療情報提供依頼書を産業医自身が作成したことになり、例えば、配転や自然退職等で後に紛争になった場面でトラブルの渦中にいるのは産業医だけになるかもしれません。

行政書士は依頼者の意思に基づき、文書作成の代理人として法的効力が生じる書面に取りまとめ、内容証明郵便を作成します。私は、行政書士になってからわかったのですが、診療情報提供依頼書はほとんどの場合、内容証明郵便ではありませんが、診療情報提供依頼書とそのお返事である診療情報提供書は事実証明に関する書類にあたる場合がほとんどですので注意しましょう。

多くの産業医は気づいていないのですが、そのような意味で、診療所法提供依頼書の発行は産業医業務において、高等テクニックになります。

こちらの内容は、別記事も参照してください。

まとめ

産業医(医師)は、主治医と労働者(患者)との間で書面によるやり取りを行うことがあります。診療情報提供書と診療情報提供依頼書について、通達から解説しました。

産業医(医師)が主治医に意見を求める場合、診療情報提供依頼書と呼ばれる書面を使用します。この診療情報手狂依頼書を通じて主治医とやり取りを行い、就業上の措置を実施します。

これらは、厚生労働省の「職場復帰支援の手引き」と「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」が根拠となります。

書面のやり取りには慎重に取り組み、本人や会社、産業医と適切に相談しながら進めましょう。この診療情報提供依頼書と診療情報提供書については、「事実証明に関する書類」にあたる可能性が極めて高く、行政書士又は行政書士法人でない者は、業として第一条の二に規定する業務を行うことができないこととなります。

産業医が労働法の詳細を理解せずに軽率に意見を求めると、やり取りの内容によってはトラブルが生じる可能性があるため、注意が必要ですので気を付けましょう。最低限、労務管理をよくわかっている産業医が発行すべきです。


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この記事を書いた人

清水 宏泰

1975年生まれ。公衆衛生分野の専門家。現在はさまざまな組織の健康問題を予防するためにLAOにて行政書士・社労士・労働衛生コンサルタントとして活動しています。主に健康、心理系、産業保健の情報について発信していきます。

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