2023/04/24 2023/04/24
【安全衛生】じん肺健診の事後措置はすごく特殊ですが、わかりやすく解説
別の記事では、じん肺の健康診断の種類、項目、および流れについて説明しています。
今回は、じん肺の健康診断が終了した後に、どのように事後措置を行うかについてお話しします。
じん肺健診は、じん肺法によるものであり、特化物健診や、有機溶剤健診のような労働安全衛生法に基づく健康診断とは事後措置の流れが大きく違います。
じん肺健診の事後措置について
一般健診の事後措置についての比較
健診はやりっぱなしではいけない健康診断の後に事後措置を行わなければいけないということでした。
そして、一般健診、特殊健診(じん肺を除く)は同じような就業判定を行わなければなりませんでした。この、「じん肺を除く」という部分が重要です。
じん肺健診にも事後措置が必要です。しかし、じん肺の事後措置は他の特殊健診とは異なります。
その理由は、他の特殊健診が労働安全衛生法に基づいているのに対し、じん肺健診はじん肺法に基づいているからです。
じん肺の健診後の事後措置について
じん肺についてですが、当ブログでは以下のような呼び方をしています。
一次健診
二次健診
合併症に関する検査
これらの3つの健診については、以下の記事で解説しています。
その中で、「じん肺の所見あり」と判定された場合には、じん肺法の第12条により労働局長へじん肺のレントゲンを提出する必要があります。
じん肺法(事業者によるエックス線写真等の提出)
第十二条 事業者は、第七条から第九条の二までの規定によりじん肺健康診断を行つたとき、又は前条ただし書の規定によりエックス線写真及びじん肺健康診断の結果を証明する書面その他の書面が提出されたときは、遅滞なく、厚生労働省令で定めるところにより、じん肺の所見があると診断された労働者について、当該エックス線写真及びじん肺健康診断の結果を証明する書面その他厚生労働省令で定める書面を都道府県労働局長に提出しなければならない。
ちなみに、「第7条から9条の2までの規定により」の部分ですが以下になり、結局、じん肺健診すべてということになります。
じん肺法
7条 終業時健康診断
8条 定期健康診断
9条 定期外健康診断
9条の2 離職時健康診断
じん肺健診の事後措置として非常に特殊な労働局での手続き
さて、特化物健診や有機溶剤健診などの労働安全衛生法に基づく健康診断の事後措置についてですは、異常がある場合に限り、事業主は医師の意見を聴くことになります。
事業主は、意見を聴く医師を自由に選ぶことができました。もちろん、産業医に依頼することも可能です。
しかし、じん肺健診に関しては、事業者には意見を聴く医師の選択権はありません。じん肺の所見がある場合、エックス線写真は労働局に提出され、労働局内で事後措置の手続きが行われます。
地方じん肺審査医と呼ばれる医師がエックス線写真を読影し、労働局長が管理区分を決定します。
また、じん肺の所見がなく、労働局長へのエックス線写真の提出がなかった場合、管理区分1とされます(じん肺法第13条)。
労働局へ提出されたエックス線写真及びじん肺健康診断の結果を証明する書面その他の書面の提出については以下の図のようになります。
このように、労働安全衛生法の事後措置とは全く違いますね。こちらは条文です。
(じん肺管理区分の決定手続等)
第十三条 第七条から第九条の二まで又は第十一条ただし書の規定によるじん肺健康診断の結果、じん肺の所見がないと診断された者のじん肺管理区分は、管理一とする。
2 都道府県労働局長は、前条の規定により、エックス線写真及びじん肺健康診断の結果を証明する書面その他厚生労働省令で定める書面が提出されたときは、これらを基礎として、地方じん肺診査医の診断又は審査により、当該労働者についてじん肺管理区分の決定をするものとする。
3 都道府県労働局長は、地方じん肺診査医の意見により、前項の決定を行うため必要があると認めるときは、事業者に対し、期日若しくは方法を指定してエックス線写真の撮影若しくは厚生労働省令で定める範囲内の検査を行うべきこと又はその指定する物件を提出すべきことを命ずることができる。
4 事業者は、前項の規定による命令を受けてエックス線写真の撮影又は検査を行つたときは、遅滞なく、都道府県労働局長に、当該エックス線写真又は検査の結果を証明する書面その他その指定する当該検査に係る物件を提出しなければならない。
5 第十一条本文の規定は、第三項の規定による命令を受けてエックス線写真の撮影又は検査を行なう場合に準用する。
管理区分が決定されたら
管理区分については以下のような分類になります。
管理1から4で、1が正常で、数が上がっていくと悪くなります。
管理1 :じん肺の所見がないと認められるもの
管理2 :エックス線写真の像が第1型で、じん肺による著しい肺機能の障害がないと認められるもの
管理3イ:エックス線写真の像が第2型で、じん肺による著しい肺機能の障害がないと認められるもの
管理3ロ:エックス線写真の像が第3型又は第4型
(大陰影の大きさが1側の肺野の3分の1以下のものに限る)で、じん肺による著しい肺機能の障害がないと認められるもの
管理4 :
1)エックス線写真の像が第4型(大陰影の大きさが1側の 肺野の3分の1を超えるものに限る)と認められるもの
2)エックス線写真の像が第1型、第2型、第3型又は第4 型(大陰影の大きさが1側の肺野の3分の1以下のものに 限る)で、じん肺による著しい肺機能の障害があると認め られるもの
このように、健診の結果に基づいて管理区分が労働局長によって決定され、事業主または本人に通知されます。
通知に関しては、労働者自身が申請を行う場合は通知が労働者に、事業所の健康診断であった場合は事業所に通知されます。
労働者が自身で労働局に管理区分の申請を行う場合を「随時申請」と呼びます。
自身のじん肺の管理区分に疑問がある場合に利用することができます。
また、過去に粉じん作業を行っていた場合でも、随時申請を行うことができます。
じん肺法(随時申請)
第十五条 常時粉じん作業に従事する労働者又は常時粉じん作業に従事する労働者であつた者は、いつでも、じん肺健康診断を受けて、厚生労働省令で定めるところにより、都道府県労働局長にじん肺管理区分を決定すべきことを申請することができる。
2 前項の規定による申請は、エックス線写真及びじん肺健康診断の結果を証明する書面その他厚生労働省令で定める書面を添えてしなければならない。
3 第十三条第二項から第四項まで及び前条第一項の規定は、第一項の規定による申請があつた場合に準用する。この場合において、第十三条第二項中「前条」とあるのは「第十五条第二項」と、同条第三項及び第四項中「事業者」とあるのは「申請者」と、前条第一項中「当該事業者」とあるのは「申請者及び申請者を使用する事業者」と、「第十二条又は前条第三項若しくは第四項」とあるのは「前条第三項若しくは第四項又は次条第二項」と読み替えるものとする。
事業者の取るべき措置
事業者は、通知された管理区分に基づいて対応を行わなければなりません。
これは法令で明確に定められています。ただし、管理区分が2以上の通知があった場合、粉じん作業においては3つの管理(作業環境管理、作業管理、健康管理)を見直す必要があるでしょう。
事業者の取るべき措置
ここで重要なのは合併症です。
合併症に関しては、じん肺法で規定されていますね。
以下の6つの合併症について覚えておきましょう。
じん肺法施行規則
(合併症)
第一条 じん肺法(以下「法」という。)第二条第一項第二号の合併症は、じん肺管理区分が管理二又は管理三と決定された者に係るじん肺と合併した次に掲げる疾病とする。
一 肺結核
二 結核性胸膜炎
三 続発性気管支炎
四 続発性気管支拡張症
五 続発性気胸
六 原発性肺がんe-Gov じん肺法施行規則
つまり、管理2または3であっても、これらの合併症がある場合には、管理4という扱いになる可能性があります。
「「じん肺有所見者に対する健康管理教育のためのガイドライン」というのがありますので、管理2または3になった労働者に対して健康教育を行いましょう。
「じん肺有所見者に対する健康管理教育のためのガイドライン」の周知・普及について
基発第70号 平成9年2月3日
まとめ
じん肺健診は、労働安全衛生法に基づく健康診断と事後措置が全く異なります。
労働安全衛生法の健康診断では、事業者は医師を自由に選び、医師からの意見を聞くことができ、それに基づいて就業上の措置を行うことができます。
しかし、じん肺健診では医師の選択はできません。
エックス線写真は労働局に提出され、そこから管理区分が通知されます。
粉じん作業が行われている事業所では、この流れを知っておくことが重要です。
管理区分が決定された場合、適切な措置を行うことが求められます。
労働衛生の3つの管理(作業環境管理、作業管理、健康管理)により、作業条件を改善しましょう。
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