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化学物質の管理を解説

2023/08/15 2023/08/15

【プロ向け】小さな工事(解体・改修)の建築物石綿含有建材調査と届出、報告等について

「小規模な工事では建築物石綿含有建材調査は不要では?」という質問を受けることがあります。たとえば、エアコンの設置で外壁に新しいダクトを通すような工事がその例です。このような場合でも、結論としては、事前調査としての建築物石綿含有建材調査が必要です。今回は、以下のような工事について考えてみましょう。

場所:大阪府内
工事:エアコン設置工事
工事費用:本体を除き、5万円
工事の具体的な内容:一戸建て住宅の壁にダクト穴を開ける作業を伴い、エアコンを設置する。

この工事で石綿の調査に関する論点について解説いたします。

建築物石綿含有建材調査はどのような場合に必要?

建築物石綿含有建材調査は石綿障害予防規則と大気汚染防止法に規定があります。

まず、こちらの記事で解説をいたしましたが、石綿障害予防規則3条により、建築物、工作物又は船舶(鋼製の船舶に限る。)の解体又は改修(封じ込め又は囲い込みを含む。)の作業を行うときは石綿に関する事前調査について、規模の大小は関係なく、義務となります。また、大気汚染防止法18条の15によっても事前調査を行わなければなりません。


条文も再掲しておきます。

石綿障害予防規則(事前調査及び分析調査)
第三条 事業者は、建築物、工作物又は船舶(鋼製の船舶に限る。以下同じ。)の解体又は改修(封じ込め又は囲い込みを含む。)の作業(以下「解体等の作業」という。)を行うときは、石綿による労働者の健康障害を防止するため、あらかじめ、当該建築物、工作物又は船舶(それぞれ解体等の作業に係る部分に限る。以下「解体等対象建築物等」という。)について、石綿等の使用の有無を調査しなければならない。
(以下、略)
e-Gov 石綿障害予防規則

大気汚染防止法
(解体等工事に係る調査及び説明等)
第十八条の十五 建築物等を解体し、改造し、又は補修する作業を伴う建設工事(以下「解体等工事」という。)の元請業者(発注者(解体等工事の注文者で、他の者から請け負つた解体等工事の注文者以外のものをいう。以下同じ。)から直接解体等工事を請け負つた者をいう。以下同じ。)は、当該解体等工事が特定工事に該当するか否かについて、設計図書その他の書面による調査、特定建築材料の有無の目視による調査その他の環境省令で定める方法による調査を行うとともに、環境省令で定めるところにより、当該解体等工事の発注者に対し、次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面を交付して説明しなければならない。
(以下略)
e-Gov 大気汚染防止法

例えば、エアコンの設置のために壁に穴を開ける必要がある場合、工事の内容によっては「改修工事」(石綿則第3条に該当)に該当する可能性が高いです。この場合、建築物石綿含有建材調査が必要となります。

建築物石綿含有建材調査が必要でない場合もあります。

エアコンの工事であれば、建築物石綿含有建材調査は原則必要なのですが、解体等工事の対象建築物等が、平成18年9月1日以降に工事に着工したものであることが明らかなときは石綿が含まれていないことが明らかなので、対象建築物等が平成18年9月1日以降に工事に着工した証拠があれば、その時点で調査は終了であり、目視調査は必要ありません。

この場合でも、建築物石綿含有建材調査報告書、つまりアウトプットとしての書類は、石綿含有建材調査者が作成しなければなりませんので注意しましょう。

また、例えば、過去の事前調査にて石綿が使用されていないことがわかっている、または、船舶において有害物質一覧表の証明で石綿が存在しない等の証明があれば必要ありません。
または明らかに石綿が含まれていない、例えば木材だけから作られた壁の工事であれば届出も報告も必要ないかと思われます。

この点、以下の「建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び 石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル」に事前調査を行う必要がない場合が列挙されています。

事前調査は大防法、石綿則のいずれにおいても原則として全ての建築物、工作物の解体等を行う際に実施することが義務付けられている。ただし、以下の作業については、建築物等の解体等には該当しないことから、事前調査を行う必要はない。
(ア)除去等を行う材料が、木材、金属、石、ガラス等のみで構成されているもの、畳、電球等の石綿等が含まれていないことが明らかなものであって、手作業や電動ドライバー等の電動工具により容易に取り外すことが可能又はボルト、ナット等の固定具を取り外すことで除去又は取り外しが可能である等、当該材料の除去等を行う時に周囲の材料を損傷させるおそれのない作業。
(イ)釘を打って固定する、又は刺さっている釘を抜く等、材料に、石綿が飛散する可能性がほとんどないと考えられる極めて軽微な損傷しか及ぼさない作業。なお、電動工具等を用いて、石綿等が使用されている可能性がある壁面等に穴を開ける作業は、これには該当せず、事前調査を行う必要が 86 あること。
(ウ)既存の塗装の上に新たに塗装を塗る作業等、現存する材料等の除去は行わず、新たな材料を追加するのみの作業。
(エ)国土交通省による用途や仕様の確認、調査結果から石綿が使用されていないことが確認されたaからkまでの工作物、経済産業省による用途や仕様の確認、調査結果から石綿が使用されていないことが確認されたl及びmの工作物、農林水産省による用途や仕様の確認、調査結果から石綿が使用されていないことが確認されたf及びnの工作物並びに防衛装備庁による用途や仕様の確認、調査結果から石綿が使用されていないことが確認されたoの船舶の解体・改修等の作業。

a 港湾法(昭和25年法律第218号)第2条第5項第二号に規定する外郭施設及び同項第三号に規定する係留施設
b 河川法(昭和39年法律第67号)第3条第2項に規定する河川管理施設
c 砂防法(明治30年法律第29号)第1条に規定する砂防設備
d 地すべり等防止法(昭和33年法律第30号)第2条第3項に規定する地すべり防止施設及び同法第4条第1項に規定するぼた山崩壊防止区域内において都道府県知事が施工するぼた山崩壊防止工事により整備されたぼた山崩壊防止のための施設
e 急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律(昭和44年法律第57号)第2条第2項に規定する急傾斜地崩壊防止施設
f 海岸法(昭和31年法律第101号)第2条第1項に規定する海岸保全施設
g 鉄道事業法施行規則(昭和62年運輸省令第6号)第9条に規定する鉄道線路(転てつ器及び遮音壁を除く)
h 軌道法施行規則(大正12年内務省令運輸省令)第9条に規定する土工(遮音壁を除く)、土留壁(遮音壁を除く)、土留擁壁(遮音壁を除く)、橋梁(遮音壁を除く)、隧道、軌道(転てつ器を除く)及び踏切(保安設備を除く)
i 道路法(昭和27年法律第180号)第2条第1項に規定する道路のうち道路土工、舗装、橋梁(塗装部分を除く。)、トンネル(内装化粧板を除く。)、交通安全施設及び駐車場(工作物のうち建築物に設置されているもの、石綿等が使用されているおそれが高いものとして厚生労働大臣及び環境大臣が告示に掲げる工作物を除く。) j 航空法施行規則(昭和27年運輸省令第56号)第79条に規定する滑走路、誘導路及びエプロン
k 雪崩対策事業により整備された雪崩防止施設
l ガス事業法(昭和29年法律第51号)第2条第13項に規定するガス工作物の導管のうち地下に埋設されている部分 m 液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行規則(平成9年通商産業省令第11号)第3条に規定する供給管のうち地下に埋設されている部分
n 漁港漁場整備法(昭和25年法律第137号)第3条に規定する漁港施設のうち基本施設(外郭施設、係留施設及び水域施設)
o 自衛隊の使用する船舶(防熱材接着剤、諸管フランジガスケット、電線貫通部充填・シール材及びパッキンを除く)

建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び 石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル 令和3年3月 (令和4年3月訂正事項を反映) 厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課 環境省水・大気環境局大気環境課

しかし、石綿がないことが明らかでない場合でなければ建築物石綿含有建材調査が必要です。

注意が必要なのですが、結果として、後述する行政への届出、報告の必要性に関わらず、事前調査は必要になります。

行政への報告・届出の必要性について

大気汚染防止法と労働安全衛生法の下では、行政機関への「届出」と「報告」が必要な場合があります。これに関しては別の記事で詳しく解説しています。今回は、それぞれの届出について別々に解説しましょう。

行政への「届出」の必要性について

石綿含有建材がレベル1やレベル2に分類される場合、大気汚染防止法および石綿障害予防規則に基づき届出が必要です。レベル1とレベル2の届出には、工事の規模について要件がありません。つまり、事前調査でレベル1またはレベル2の石綿含有建材の存在が判明した場合、工事の大きさに関係なく届出が必要となります。また、「届出」と「報告」は異なるものなので、その違いにも注意が必要です。

なお、大阪府ですが、レベル1とレベル2以外も届出が必要となる場合があります。以下に示すように、府条例では石綿含有仕上塗材と石綿含有成形板等が大規模に使用されている場合ですね。

このように、条例によって届け出が規定されている場合がありますので、建築物の工事を行う地域の条例には注意しましょう。

(2)府条例に基づく届出
特定粉じん排出等作業実施届出書 府条例第40の7
届出対象建材
石綿含有仕上塗材の使用面積が1,000平方メートル以上の工事
石綿含有成形板等(注6)の使用面積が1,000平方メートル以上の工事
 (注6)石綿含有成形板等とは、吹付け石綿、石綿含有断熱材、石綿含有保温材、石綿含有耐火被覆材、石綿含有仕上塗材を除くすべての石綿含有建築材料とし、石綿含有下地調整材やこれまで対象外であった樹脂等で被覆、固定化された建材(ビニル床シート等)も含まれます。

大阪市 特定粉じん排出等作業実施届出 ホームページ

行政への「報告」の必要性について

別記事で解説していますが、石綿障害予防規則と大気汚染防止法により労働基準監督署長と都道府県知事に報告が必要な工事については、規模等が定められており、これより規模等が小さい場合には所轄労働基準監督署長と都道府県知事に報告は必要ありません。

以下の石綿事前調査結果報告システムにも規模要件が記載されていますね。

今回の場合、「改修」において、工事費用が「5万円」なので、石綿障害予防規則と大気汚染防止法の報告は必要ないということになります。

 調査すべき範囲について

なお、エアコンの工事のために建物の一部を工事する場合には、その工事する部分の調査を行えばよく、建物全体の調査を行う必要はありません。

石綿があるとみなしてしまう方法

もし、今回の例で、エアコンの穴あけ工事を行う場合において、石綿が含まれている建材があるかもしれない場合には、石綿が含有されているとみなしてしまうのも一つの方法です。

しかし、石綿があるとみなして工事する場合でも、その工事部位の建材がレベル1、レベル2、レベル3のどれに該当しそうかは判断しなければなりません。

ひょっとしたら、貫通する壁の中に吹付け石綿(レベル1)やケイカル板2種(レベル2)が隠れているかもしれません。この場合、最も危険性が高いレベルの石綿建材があるとみなして対応していきます。まあ、普通の一戸建てでは、ほとんどがレベル3だとは思いますが、やはり思い込みはよくありません。

どのレベルかで安全衛生の対策のため石綿則上必要とされる措置が違ってきます。当然、レベルにより工事費用も大きく変わってきますので、発注者へのお見積りの金額も変わってくるかと思います。発注者に加算される費用について説明するには、それなりの根拠も必要でしょう。

そういった意味で、実際に工事を行うために事前調査を行うのは、建築物石綿含有建材調査者である必要があります。

小さな工事における建築物石綿含有建材調査報告書の作成について

上記のように、エアコンの穴あけ工事においても、建築物石綿含有建材調査者が調査を行わなければならないことが分かりました。

では、このような小規模な工事においても、石綿が含まれている場合には建築物石綿含有建材調査報告書を作成しなければならないのでしょうか。きちんとした、報告書を作成すべきかということです。
結論は、建築物石綿含有建材調査報告書を作成しなければなりません。

建築物石綿含有建材調査報告書の保存期間については石綿則と大気汚染防止法により事業者が調査終了日から、3年間保存しなければなりません。この3年の起算点は大気汚染防止法と石綿則で違うので注意しましょう。
こちらは石綿障害予防規則の抜粋です。

石綿障害予防規則3条5項
5項 事業者は、事前調査又は分析調査(以下「事前調査等」という。)を行ったときは、当該事前調査等の結果に基づき、次に掲げる事項(第三項第三号から第八号までの場合においては、第一号から第四号までに掲げる事項に限る。)の記録を作成し、これを事前調査を終了した日(分析調査を行った場合にあっては、解体等の作業に係る全ての事前調査を終了した日又は分析調査を終了した日のうちいずれか遅い日)(第三号及び次項第一号において「調査終了日」という。)から三年間保存するものとする。

e-Gov 石綿障害予防規則

大気汚染防止法については、後述する大気汚染防止法18条の15により、元請業者は記録を工事の終了日から3年間保存しなければなりません。

この3年の起算日は大気汚染防止法と石綿則で違うので注意しましょう。

①大気汚染防止法  → 解体等工事の終了日を起算日として3年間保存
②石綿障害予防規則 → 調査終了日を起算日として3年間保存

また、石綿則において、解体等作業の作業場の見やすい箇所に、事前調査又は分析調査の終了日及び調査結果(石綿等の使用の有無)の概要を掲示する義務があります。また、大気汚染防止法上は、解体等工事の現場において公衆に見やすいよう、事前調査結果等(石綿等の使用の有無、調査終了日等)を掲示する義務がありますので、こちらのためにも建築物石綿含有建材調査報告書が必要です。

ちなみに、皆様が建物の所有者でしたら、建築物石綿含有建材調査報告書を3年で廃棄されますでしょうか?
せっかく調査を行い、様々な情報が載っている事前調査の報告書はを残しておこうと思いませんでしょうか。
報告書は3年間保存となっていますが、3年を経過した以後も調査者の名前の記載された報告書がずっと保存される可能性があることを建築物石綿含有建材調査者は覚悟しておきましょう。

まとめ1

以下の小規模な工事を行う場合に、どのような点に注意すべきかをまとめます。

場所:大阪府内
工事:エアコン設置工事
工事費用:本体を除き、5万円
工事の具体的な内容:一戸建て住宅の壁にダクト穴を開ける作業を伴い、エアコンを設置する。

石綿に関する規定は多岐にわたり、ここで述べた事項はほんの一例に過ぎませんので、注意が必要です。

小規模な工事を行う際に注意すべきこと
  1. エアコンの工事等の小規模な工事であっても、建築物石綿含有建材調査は必要です。
  2. 建築物につき、平成18年9月1日以降に着工したことの証明がある場合は、目視調査が必要ありませんが、石綿含有建材調査結果報告書の作成は必要です。
  3. 「建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び 石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル」に事前調査を行う必要がない場合が列挙されています。
  4. レベル1、レベル2の石綿含有建材があった場合には、石綿障害予防規則と大気汚染防止法の対応が必要です。
  5. この工事では、規模が小さいので、石綿障害予防規則と大気汚染防止法における、石綿事前調査結果報告システムでの「報告」は必要ありません。
  6. 石綿があるとみなして対応する方法もあります。
  7. 小さな工事であっても、事前調査はひつようなので建築物石綿含有建材調査報告書は作成して、保存が必要です。

このように、小規模の工事でも、石綿の事前調査に関して、さまざまなルールがあります。

元請け業者の発注者への説明等は必要か?(大阪府内のエアコンの工事について例示)

元請け業者の記録の保存義務について

まず、建築物等を解体し、改造し、又は補修する作業を伴う建設工事の元請業者は、当該解体等工事の発注者に対し特定粉じん(石綿)について、書面を交付して説明しなければなりません。大気汚染防止法第18条の15第1項で説明の義務について規程されており、第18条の15第3項に記録の保存が規定されています。

大気汚染防止法
(解体等工事に係る調査及び説明等)
第十八条の十五 建築物等を解体し、改造し、又は補修する作業を伴う建設工事(以下「解体等工事」という。)の元請業者(発注者(解体等工事の注文者で、他の者から請け負つた解体等工事の注文者以外のものをいう。以下同じ。)から直接解体等工事を請け負つた者をいう。以下同じ。)は、当該解体等工事が特定工事に該当するか否かについて、設計図書その他の書面による調査、特定建築材料の有無の目視による調査その他の環境省令で定める方法による調査を行うとともに、環境省令で定めるところにより、当該解体等工事の発注者に対し、次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面を交付して説明しなければならない。
一 当該調査の結果
二 当該解体等工事が特定工事に該当するとき(次号に該当するときを除く。)は、当該特定工事に係る次に掲げる事項
イ 特定粉じん排出等作業の対象となる建築物等の部分における特定建築材料の種類並びにその使用箇所及び使用面積
ロ 特定粉じん排出等作業の種類
ハ 特定粉じん排出等作業の実施の期間
ニ 特定粉じん排出等作業の方法
三 当該解体等工事が第十八条の十七第一項に規定する届出対象特定工事に該当するときは、当該届出対象特定工事に係る次に掲げる事項
イ 前号に掲げる事項
ロ 前号ニに掲げる特定粉じん排出等作業の方法が第十八条の十九各号に掲げる措置を当該各号に定める方法により行うものでないときは、その理由
四 前三号に掲げるもののほか、環境省令で定める事項
2 解体等工事の発注者は、当該解体等工事の元請業者が行う前項の規定による調査に要する費用を適正に負担することその他当該調査に関し必要な措置を講ずることにより、当該調査に協力しなければならない。
3 解体等工事の元請業者は、環境省令で定めるところにより、第一項の規定による調査に関する記録を作成し、当該記録及び同項に規定する書面の写しを保存しなければならない。
4 解体等工事の自主施工者(解体等工事を請負契約によらないで自ら施工する者をいう。以下同じ。)は、当該解体等工事が特定工事に該当するか否かについて、第一項の環境省令で定める方法による調査を行うとともに、前項の環境省令で定めるところにより、当該調査に関する記録を作成し、これを保存しなければならない。
5 解体等工事の元請業者又は自主施工者は、第一項又は前項の規定による調査に係る解体等工事を施工するときは、環境省令で定めるところにより、前二項に規定する記録の写しを当該解体等工事の現場に備え置き、かつ、当該調査の結果その他環境省令で定める事項を、当該解体等工事の現場において公衆に見やすいように掲示しなければならない。
6 解体等工事の元請業者又は自主施工者は、第一項又は第四項の規定による調査を行つたときは、遅滞なく、環境省令で定めるところにより、当該調査の結果を都道府県知事に報告しなければならない。

e-Gov 大気汚染防止法

大気汚染防止法施行規則
(解体等工事に係る説明の時期)
第十六条の六 法第十八条の十五第一項の規定による説明は、解体等工事の開始の日までに(当該解体等工事が届出対象特定工事に該当し、かつ、特定粉じん排出等作業を当該届出対象特定工事の開始の日から十四日以内に開始する場合にあつては、当該特定粉じん排出等作業の開始の日の十四日前までに)行うものとする。ただし、災害その他非常の事態の発生により解体等工事を緊急に行う必要がある場合にあつては、速やかに行うものとする。

e-Gov 大気汚染防止法施行規則

第18条の15第3項に記録の保存については、元請業者により3年間の保存が必要です。こちらは、大気汚染防止法施行規則16条の8に記載があります。

大気汚染防止法施行規則
(解体等工事に係る調査に関する記録等)
第十六条の八 法第十八条の十五第三項及び第四項に規定する記録は、次に掲げる事項(解体等工事に係る建築物等が第十六条の五第一号イからホまでに掲げるもののいずれかに該当する場合にあつては、第一号から第五号までに掲げる事項に限る。)について作成し、これを解体等工事が終了した日から三年間保存するものとする。
一 解体等工事の発注者の氏名又は名称及び住所並びに法人にあつては、その代表者の氏名
二 解体等工事の場所
三 解体等工事の名称及び概要
四 前条第一号及び第二号に掲げる事項
五 解体等工事に係る建築物等の設置の工事に着手した年月日(解体等工事に係る建築物等が第十六条の五第一号ロからホまでに掲げるもののいずれかに該当する場合にあつては、これに加えて、これらの規定に規定する建築材料を設置した年月日)
六 解体等工事に係る建築物等の概要
七 解体等工事が建築物等を改造し、又は補修する作業を伴う建設工事に該当するときは、当該作業の対象となる建築物等の部分
八 分析による調査を行つたときは、当該調査を行つた箇所並びに当該調査を行つた者の氏名及び所属する機関又は法人の名称
九 解体等工事に係る建築物等の部分における各建築材料が特定建築材料に該当するか否か(第十六条の五第二号ただし書の規定により解体等工事が特定工事に該当するものとみなした場合にあつては、その旨)及びその根拠
2 法第十八条の十五第三項に規定する書面の写しは、解体等工事が終了した日から三年間保存するものとする。

e-Gov 大気汚染防止法施行規則

このように、元請業者は、当該解体等工事の発注者に対し特定粉じん(石綿)について、書面を交付して調査の結果について説明しなければならず、その記録については3年間保存しなければなりません。

発注者の記録の保存義務について(大阪府の場合)

したがって、エアコン工事を依頼した発注者も、書面の保存が必要な場合があります。これは、地方自治体による条例で発注者に保存義務が課せられていることがあるためです。条例は自治体によって異なるため、各自で確認することが重要です。

今回、あえて例示で大阪府でのエアコンの工事と地域を限定したのは、そのような理由があるからです。

大阪府であれば、「大阪府生活環境の保全等に関する条例」等が関与します。以下に示しておきます。
「解体等工事の発注者は、第一項の規定により交付された事前調査書面を、規則で定める期間保存しなければならない」(大阪府生活環境の保全等に関する条例40条の3)にばっちり記載されています。規則で定める保存期間は、大阪府生活環境の保全等に関する条例施行規則16条の4で3年間になります。

よって、大阪府の条例によれば、発注者も書面の保存義務があるということになります。

大阪府生活環境の保全等に関する条例
(解体等工事に係る調査及び説明等)

第四十条の三 大気汚染防止法第十八条の十五第一項に規定する解体等工事(以下「解体等工事」という。)の元請業者(発注者(解体等工事の注文者で、他の者から請け負った解体等工事の注文者以外のもの(当該解体等工事が特定工事に該当するときは、特定工事の注文者で、他の者から請け負った特定工事の注文者以外のもの)をいう。以下同じ。)から直接解体等工事を請け負った者(当該解体等工事が特定工事に該当するときは、直接特定工事を請け負った者)をいう。以下同じ。)は、同項の調査を行うとともに、当該解体等工事の発注者に対し、同項各号に掲げる事項その他規則で定める事項を記載した書面(以下「事前調査書面」という。)を交付して説明しなければならない。

2 解体等工事の自主施工者(解体等工事を請負契約によらないで自ら施工する者(当該解体等工事が特定工事に該当するときは、特定工事を請負契約によらないで自ら施工する者)をいう。以下同じ。)は、大気汚染防止法第十八条の十五第四項の調査を行うとともに、事前調査書面を作成しなければならない。

3 解体等工事の元請業者又は自主施工者は、前二項の調査に係る解体等工事を施工するときは、当該解体等工事に係る適切な場所において、当該解体等工事が完了するまでの間、事前調査書面又はその写しを公衆の閲覧に供しなければならない。

4 解体等工事の元請業者又は自主施工者は、事前調査書面又はその写しを、規則で定める期間保存しなければならない。

5 解体等工事の発注者は、第一項の規定により交付された事前調査書面を、規則で定める期間保存しなければならない。

大阪府生活環境の保全等に関する条例

大阪府生活環境の保全等に関する条例施行規則
(事前調査書面の保存期間)
第十六条の四 条例第四十条の三第四項及び第五項の規則で定める期間は、当該解体等工事が完了した日から三年間とする。

大阪府生活環境の保全等に関する条例施行規則

なお、この発注者ですが、大阪府では、「建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び 石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル 」における発注者と同じ意味ということでした。よって、発注者とは、「解体等工事の注文者で、他の者から請け負つた解体等工事の注文者以外のもの」ということになります。この発注者が、誰になるのかは、実際の工事に関する契約により定まります。

大気汚染防止法 (解体等工事に係る調査及び説明等) 第18条の15 建築物等を解体し、改造し、又は補修する作業を伴う建設工事(以下「解体等工事」という。)の元請業者(発注者(解体等工事の注文者で、他の者から請け負つた解体等工事の注文者以外のものをいう。以下同じ。)から直接解体等工事を請け負つた者をいう。以下同じ。)は、当該解体等工事が特定工事に該当するか否かについて、設計図書その他の書面による調査、特定建築材料の有無の目視による調査その他の環境省令で定める方法による調査を行うとともに、環境省令で定めるところにより、当該解体等工事の発注者に対し、次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面を交付して説明しなければならない。

建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び 石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル

今回のような場合、エアコンの工事を発注した者も保存義務を負うことを知っておきましょう。
(※ここでは、詳細につき記載しませんが、もし、レベル1、レベルに2の石綿含有建材の工事を行う場合は、発注者は別の対応が必要です。)

まとめ2

小さな工事の場合、例えば、エアコンの工事で、外壁からダクトを新たに通す場合の工事でも建築物石綿含有建材調査は必要か?という例より、建築物石綿含有建材調査の必要性について解説しました。小さな工事であっても、施行部位に石綿が含有されているかどうかを確認するために、建築物石綿含有建材調査が必要です。

明らかに石綿が含有されていなければ、なにもしなくていいですが、含有されていないことが確実でなければ調査が必要です。「建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び 石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル」に調査を行わなくていい場合が列挙されていますので目を通しておきましょう。

また、対象となる建築物が平成18年9月1日以降に工事に着工したものであることが明らかなときは石綿が含まれていないので、平成18年9月1日以降に工事に着工した証拠をもって調査は終了です。

工事の規模や、石綿建材のレベルにより報告や届出が必要になる場合があります。
石綿が含有されているとみなして対応するのも一つの方法ですが、その場合でも疑われる石綿含有建材のレベルの特定のため、建築物石綿含有建材調査を行う必要があります。
石綿があるとみなす場合には、安全衛生対策上、費用が掛かりますので、発注者への見積額にも影響するでしょう。

また、建築物石綿含有建材調査報告書は発注者等と事業者による保存が必要となりますので注意しましょう。
条例等により、発注者が対応を行わなければならない場合があります。

石綿は他にも様々な規制がありますが、多くの法令や行政にわたっていることが管理の複雑さの原因の一つとなっています。
私は、行政書士、労働衛生コンサルタントですが、それでもやはり難しいです。
事業所としては、行う業務をできれば定型化したうえ、工事を行う地域の条例を含めた法令をきちんと調べて、どのような報告、届け出が必要かをマニュアル化することが必要でしょう。


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この記事を書いた人

清水 宏泰

1975年生まれ。公衆衛生分野の専門家。現在はさまざまな組織の健康問題を予防するためにLAOにて行政書士・社労士・労働衛生コンサルタントとして活動しています。主に健康、心理系、産業保健の情報について発信していきます。

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