事務所LAO – 行政書士・社会保険労務士・労働衛生コンサルタント・海事代理士

【まとめ】医師と社労士・労働衛生コンサルタントのトリプルライセンスは産業保健分野で非常に相性がいいです

今回は、医師、社会保険労務士、労働衛生コンサルタントのトリプルライセンスについてお話ししたいと思います。このようなトリプルライセンスの組み合わせを持つ方々が少しずつ増えているようですね。産業保健の分野では、これらのライセンスの組み合わせによって非常に大きな相乗効果が期待されます。

医師、社会保険労務士・労働衛生コンサルタントのトリプルライセンスは産業保健分野で非常に相性がいい

 社会保険労務士はどのような職業なのか?

産業医の先生方には、社会保険労務士という職業について全く知らない方もいらっしゃるかもしれません。

通常の産業医の業務の中では、クライエント企業の外部にいる社会保険労務士とはほとんど関わる機会はないと思われます。大企業の人事労務担当者として内部に社会保険労務士がいる場合は、接触する機会があるかもしれません。

社会保険労務士の業務については、様々な情報源やウェブサイトが存在しますので、そちらをご覧いただければと思います。参考までに、各都道府県に社労士が加入する都道府県社会保険労務士会という組織があるのですが、その連合組織である社会保険労務士連合会のウェブサイトを示しますので、ご参考にしていただければと思います。

全国社会保険労務士会連合会とは

安心して働き、暮らせる社会へ。
厚生労働大臣の認可を受けた、法定団体です。
連合会は、各都道府県の社会保険労務士会の連合組織で、厚生労働大臣の認可を受けた法定団体です。
国民の皆さまに信頼できる情報を発信し、ひとつでも多くの労働・社会保険問題、そして個別労働関係紛争の解決に貢献することで、安心して働き、暮らせる社会をつくることが私たちの使命です。

社労士とは
「人を大切にする企業」づくりから「人を大切にする社会」の実現へ
社労士は、社会保険労務士法に基づいた国家資格者です。

企業の成長には、お金、モノ、人材が必要とされておりますが、社労士はその中でも人材に関する専門家であり、「労働及び社会保険に関する法令の円滑な実施に寄与するとともに、事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上に資すること」を目的として、業務を行っております。

社労士は、企業における採用から退職までの「労働・社会保険に関する諸問題」や「年金の相談」に応じるなど、業務の内容は広範囲にわたります。
職場や企業の悩みは、人を大切にする企業づくりの支援をしている、社労士にお任せください。

引用:全国社会保険労務士連合会ホームページ

この社労士の主な業務には、1号業務、2号業務、3号業務があります。以下、簡単にまとめます。

1号業務(手続き代行)

労働及び社会保険に関する法令に基づいて申請書等を作成すること。申請書等の提出に関する手続を代わって行うこと。労働社会保険諸法令に基づく申請等、または当該申請等に係る行政機関等の調査や処分に関して、当該行政機関等に対して代理で主張または陳述すること。

2号業務(帳簿作成)
労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類(申請書等を除く)を作成すること。労働者名簿、賃金台帳、出勤簿や就業規則の作成が含まれる。

3号業務(相談業務)
労務管理その他労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項について相談に応じ、指導すること。

社労士の3号業務は産業医の業務と非常に相性が良いと言えます。2号業務も、就業規則の作成・変更が可能なのは大きな利点です。

 社会保険労務士の試験科目

社会保険労務士になるには、社会保険労務士試験に合格しなければなりません。この試験は法律関連の科目から構成されており、試験科目は以下の通りです。

労働基準法
労働安全衛生法 
労働者災害補償保険法 (労働保険の保険料の徴収等に関する法律を含む。)
雇用保険法 (労働保険の保険料の徴収等に関する法律を含む。)
労務管理その他の労働に関する一般常識
社会保険に関する一般常識 
健康保険法
厚生年金保険法
国民年金法

産業医で重要な労働安全衛生法が入っていますね。

また、社会保険労務士になる場合、試験に合格したのちに臨床研修のような長期間の研修は必要ありません。しかし、社会保険労務士として登録するには、「2年以上の実務経験」または「指定講習の受講」のどちらかが必要です。産業医としての活動は「2年以上の実務経験」には当たらないでしょうが、「指定講習の受講」を選択した場合でも、講習は1週間程度で完了するため、大きな負担にはならないでしょう。現在の臨床や産業医活動を行いながら、勉強をして社会保険労務士となることができます。

 産業医と社会保険労務士で勉強する法令科目とのかかわりについて

それでは、社会保険労務士の試験科目である法令と、産業医のかかわりについて解説していきましょう。どのように産業医活動に活かすことができるかのヒントになります。

労働安全衛生法・労働基準法と産業医

産業医は労働安全衛生法に基づいて定められ、その実務においては労働安全衛生法に関連する知識が求められます。産業医は、労働安全衛生法に関して専門的な知識を有していると考えられることが多いです。しかし、産業医の役割は主に衛生面に関するもので、安全面については原則として専門ではありません。一方、社会保険労務士の研修では、安全に関する知識も学びます。また、産業医は、労働基準法に関して、学ぶ機会は少ないかもしれませんが、社会保険労務士の勉強を通じて、労働基準法について正確に理解することができるのは大きな利点です。

社会保障に関連する法令と産業医

その他にも、労災保険給付、健康保険の給付、年金給付などは、職場復帰支援や治療と仕事の両立支援において重要な要素です。

例えば、私傷病による4日以上の休職であれば、健康保険法の傷病手当金が関与します。傷病手当金の細かい論点については知っておかなければなりません。退職が絡む場合に、退職後も傷病手当金を受給できることを考慮する必要があるかもしれません。

さらに、傷病手当金の受給期間が終了する際には、障害厚生年金の申請を検討する必要があることもあります。障害厚生年金は厚生年金保険法に基づいています。年金手続きは企業内で頻繁に行われるわけではないため、人事労務担当者にこの分野についてアドバイスを提供できると、喜ばれるでしょう。

医療職と「士業」の組み合わせは、医療職は「士業」独特のルールが適用されないので、活動範囲が広がります。

このように、産業医と社会保険労務士の業務は互いに補完し合い、相性が良く、特に産業保健の分野では、両者のダブルライセンスが非常に有効であると言えます。また、医師は士業には含まれないため、士業特有の制約からは自由である点もメリットであり、幅広い活動が可能となります。

実際の話ですが、私の場合、労働局に電話でお問い合わせする際には、許認可等の行政書士業務に関わる場合には「行政書士の清水です」、社保系申請などの社労士業務にかかわる場合は「社会保険労務士の清水です」、安全衛生の質問時には「労働衛生コンサルタントの清水です」と、それぞれの士業の独占業務や得意分野に応じて名乗る肩書を使い分けます。この点、医師の場合は、産業医であっても、何科の医師であっても、「医師の清水です」と名乗るだけで大丈夫です。

さらに実例を挙げますと、開業社会保険労務士は株式会社の従業員として活動することはできませんので、私が株式会社や医療機関の従業員として活動する場合には、「社会保険労務士」を名乗ることはできません。そのため、「医師の清水」と名乗ります。しかし、実際に産業医となった場合でも、周囲が社会保険労務士あることを知っていれば「社会保険労務士事務所LAOの清水」と認識さます。その結果、労務管理の知識がある産業医として、様々な労務に関する質問を受けます。

これは弱点でもあり、株式会社からの紹介(仲介)による産業医派遣の場合、株式会社の従業員や業務委託として、クライエント企業先で社会保険労務士や行政書士での独占業務(技)が使えなくなるため、正直、士業系産業医の実力の3割も力を発揮できないと感じます。

士業系産業医は、クライエント企業との直接契約で、その実力を発揮できます。

なお、開業社会保険労務士や開業行政書士は登録事務所を一か所しか持つことができませんが、労働衛生コンサルタントは複数の事業所を開設できます。


社会保険労務士と労働衛生コンサルタントのダブルライセンスは一般的に難しいのですが、医師には難しくありません

産業保健分野において、産業医と労働衛生コンサルタントの組み合わせは鉄板です。どちらも労働安全衛生法の上で動く資格になります。

労働安全コンサルタント・労働衛生コンサルタント(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/anzen/newpage_04164.html

ちなみに、社会保険労務士の勉強をしていると、労働安全衛生法が勉強範囲なので、当然ながら労働衛生コンサルタントの話が出てきます。

そのため、社会保険労務士の先生方で、安全衛生の方面で活躍すべく労働衛生コンサルタント資格を取得したいという方もおられるのですが、労働衛生コンサルタントの受験要件がなかなか合致せず、受験もできない場合が多いようです。

労働衛生コンサルタントの受験資格

公益財団法人 安全衛生技術試験協会ホームページ

その点、医師免許があると、労働衛生コンサルタント(保健衛生)の受験資格は簡単に得られます。

つまり、医師免許があることで、社会保険労務士と労働衛生コンサルタントの両資格の取得がしやすくなるということですね。
下の図のように、医師免許がトリプルライセンスの「かすがい」となります。

なお、こちらが「かすがい」です。

 その他の資格

それぞれの資格は、他の資格と組み合わせることで、その効果をより高めることができます。このような組み合わせにより、対応できる範囲や能力がさらに広がるのです。

医師免許、行政書士資格、そして社会保険労務士資格を兼ね備えることも、相性が良い一例です。例えば、休職を希望する従業員に対して、産業医としての立場から健康面での支援を行いながら、社会保険労務士として就業規則を解釈し、法令に基づいた休職手続きに関するアドバイスを事業所へ提案し、さらに行政書士として休職に関する通知書を作成することが可能です。このような多角的なアプローチは、職場における様々な問題解決に非常に有効です。


このように、異なる資格を組み合わせてみると、新たな発見があるかもしれません。

 まとめ

産業保健分野では、医師免許、社会保険労務士資格、そして労働衛生コンサルタント資格を持つことは、非常に有益な組み合わせです。特に、医師免許を持つことが労働衛生コンサルタントの資格取得に役立ち、さらに社会保険労務士の資格と組み合わせることで、相乗効果が期待できます。

通常、士業同士のダブルライセンスについてはよく議論されますが、士業と医療職(医師など)との組み合わせに関する話題は比較的少ないです。しかし、社会保険労務士に限らず、士業と医療職の組み合わせにより、多様な可能性が開かれると考えられます。

医師の中には、社会保険労務士を目指す方もいるかもしれません。社会保険労務士の試験については、多くのウェブサイトや予備校が詳細な情報を提供しているので、興味のある方はぜひ調べてみると良いでしょう。

 

 

 

 

 

労働衛生コンサルタント事務所LAOでは、産業医・顧問医の受託をお受けしております。労務管理と一体になった産業保健業務を多職種連携で行います。

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この記事を書いた人

清水 宏泰

1975年生まれ。公衆衛生分野の専門家。現在はさまざまな組織の健康問題を予防するためにLAOにて行政書士・社労士・労働衛生コンサルタントとして活動しています。主に健康、心理系、産業保健の情報について発信していきます。

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